TAVR vs SAVR 2-year outcome

2-Year Outcomes in Patients Undergoing Surgical or Self-Expanding Transcatheter Aortic Valve Replacement
J Am Coll Cardiol. 2015 June 2

論文のPICOやbaselineなどの詳細に関しては、TAVR VS SAVR (経カテーテル的大動脈弁留置術VS外科的大動脈弁置換術)を参照してください。

周術期の合併症リスクの高いsevereASを対象に、TAVR群とSAVR群に割り付け、1年後の死亡率をprimary endpointとした試験。1年後の死亡率はTAVR群13.9%、SAVR群18.7%(ITT解析)と有意にTAVR群で低かった。そして、その傾向は2年後も変わらず、TAVR群22.2%、SAVR群28.6%とTAVR群で死亡率が有意に低かった(ITT解析でも同様の傾向だったと記載されているが数字に記載はない)。

〇批判的吟味/感想
1年時のデータには入っていなかった症例が新たに3人ほど登録されていたり、また逸脱があったりと、純粋にランダム化が守られているわけではないこと。1年時にas-treated解析をされた群だけをフォローしていること(1年の時点ではSAVR群でSAVRが実際行われていない症例が多く見られた)。など、この試験の内的妥当性について若干疑問はあるが、手術リスクの高いsevereASではTAVRは有力な選択肢であることは確かなことだと思う。

中等度から高度のparavalvular leakは、TAVR群6.1%、SAVR群0.6%と有意にTAVR群で多く、これが長期的にみると予後を悪くする可能性がある。ただ、evrollされている症例の平均年齢は83歳なので、この試験でそれをみるのは難しいかもしれない。

TAVR vs SAVR (経カテーテル的大動脈弁留置術vs外科的大動脈弁置換術)

Transcatheter aortic-valve replacement with a self-expanding prosthesis
N Engl J Med. 2014;370:1790-8

〇この論文のPICOはなにか
P:NYHAⅡ以上の有症候性の高度大動脈弁狭窄症(severeAS)
I:経カテーテル的大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve replacement;TAVR)
C:外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement;SAVR)
O:1年後の死亡率

Inclusion criteria:術後30日以内の死亡率が15%以上になるような併存疾患を持たないこと、心エコーもしくは心カテにて大動脈弁平均圧較差40mmHg以上または大動脈弁最大血流速度4.0m/secであること、かつ大動脈弁弁口面積0.8㎠(またはAVAindex<0.5㎠/㎡、NYHAⅡ以上の有症候性のsevereAS Exclustion criteria:30日以内の心筋梗塞、30日以内のPCI/EVT、血行再建を要する冠動脈疾患、LVEF<20%、6ヶ月以内の脳梗塞/TIA、3ヶ月以内の消化管出血など 〇baselineは同等か DMはTAVR群で34%、SAVR群で42%と有意差があるが、それ以外は差がない。ざっくりというと、平均83歳、男女比は半々、NYHAclassⅢ7割・Ⅳ2割、STS PROM4-10%が最も多く3/4を占めていて>10%が15%ほど、CKDや脳梗塞の既往がそれぞれ1割ほど、CABGの既往が3割ほど、心房細動(af)は4割。LVEFは記載なし。

〇ランダム化されているか
割付方法と隠匿化は本文には記載なし。Randomly assignedとの記載はある。最初の3例はランダマイズされておらず、TAVRに割り付けられている(術者のCoreValveの使用経験のためであり、プロトコール通り)。

〇症例数は十分か
非劣性マージン7.5%、1年後の死亡率20%、power80%、αlevel0.05、フォローアップ不能10%として、必要症例数790例と算出されており、795例がランダマイズされている。

〇盲検化されているか
患者、治療介入者は盲検化できない。解析にはMedtronic社が関わっている。

〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
非劣性試験であり、as-treated解析とITT解析の両方が行われている。
TAVR群でTAVRが行われたのは390/394例(99%)、SAVR群でSAVRが行われたのは357/401例(89%)となっており、SAVR群では44例が割付通り施行されていなかった。その内訳としては、患者もしくは医師からの同意の撤回36例だった。どの試験でも同意の撤回は数例みられるものだし、どの程度脱落があれば試験の内的妥当性が保てるかは絶対的な基準はないかもしれないが、少し多い印象がある。そして、その脱落はSAVR群に偏っているため、バイアスがかかる余地はある。

〇結果
As-treated解析では、1年後の死亡率はTAVR群で14.2%、SAVR群で19.1%と、TAVR群で有意に低かった。この傾向はITT解析でも同様で、TAVR群13.9%、SAVR群18.7%であった。

1年後の大動脈弁圧較差や弁口面積はTAVRでも非劣性で、脳梗塞などの塞栓症はTAVR群で有意に低かった(TAVRvsSAVR:20.4%vs27.3%)。

手技上の合併症としては、TAVR群ではparavalvular regurgitation、血管合併症、ペースメーカの植え込みが、SAVR群では出血、AKI、新規のafが有意に多かった。

〇この論文を読んで
COIがあり、Sponsorが解析に関わっている。SAVR群で割付通りSAVRが施行された症例が89%と低くく、バイアスが入る余地があるが、severeASでリスクが高い症例ではTAVRによって生命予後が改善する可能性がある。Paravalvular regurgitationはTAVR群で多くなるため、これが長期予後にどう影響するか、これからのデータをみる必要がある。

修正大血管転位(congenitally corrected transposition of the great arteries;CCTGA)

修正大血管転位(CCTGA)とは右室から大動脈が、左室から肺動脈が起始しているもので、

静脈⇒右房⇒(僧帽弁)⇒左室⇒肺動脈⇒肺⇒

肺静脈⇒左房⇒(三尖弁)⇒右室⇒大動脈

という血液の循環になる。血行動態としては一見正常に思われるが、ポイントは解剖学的右室が左室の役割を担っているということだろう。

解剖学的右室が左室の役割を担う問題は、解剖学的右室は解剖学的左室のような緻密化した構造ではなく、また三尖弁は耐久性に乏しいということである。CCTGAの60-80%に心室中隔欠損を、30-50%に肺動脈狭窄を合併するが、そのような合併がなくても、長期的には解剖学的右室の機能不全や三尖弁閉鎖不全(TR)が問題となる。

死因は、不整脈による突然死や高度TRによる解剖学的右室の機能不全だといわれている。高度TRは独立した予後予測因子である。1)

高度TRに対しては三尖弁置換術(全身的房室弁置換術、systemic atrioventricular valve replacement;SAVV replacement)が考慮される。しかし、解剖学的右室の機能不全が進行し右室駆出率(systemic ventricular ejection fraction; SVEF)が40%未満まで低下している場合、40%以上の場合と比較し術後1年後のSVEFは低い(対象 年齢:40±14歳、severeTR:約60%)。2)

また、SVEFが44%を切ると、SAVV replacementを行ってもその長期予後は悪くなる。3)

心不全治療として、ACE阻害薬やARB、βblockerなどの薬剤が使用されるが有効性についてはデータはない。

1)Can J Cardiol. 2010:e98-117.
2)J Am Coll Cardiol. 2011:2008-17
3)J thorac cardiovasc surg 1995:642-52
他、成人先天性心疾患診療ガイドライン(日本循環器学会)より引用

ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対する酸素投与は有害かもしれない AVOID試験

Air Versus Oxygen in ST-Segment–Elevation Myocardial Infarction
Circulation 2015;131:2143-50

〇この論文のPICOはなにか
P:低酸素血症のないST上昇型心筋梗塞(STEMI)
I:酸素非投与(非投与群)
C:酸素投与(病院前からカテ後まで8L/minで投与、投与群)
O:梗塞サイズ(トロポニンI、CKで測定)
Inclusion criteria:18歳以上、発症から12時間以内、肢誘導で1mV以上・胸部誘導で2mV以上のST上昇が隣接する2誘導以上で認めること、新規の左脚ブロック、
Exclusion criteria:SpO2 94%未満、β刺激薬を要する気管支攣縮、意識障害、参加施設以外への転院が予定されている患者
Primary endpoint:トロポニンI(TnI)、CKのピーク値(来院時から24時間以内は6時間おきに、24時間以降72時間以内は12時間おきに測定)

〇ランダム割付されているか
封筒法が用いられている。
隠匿化はされている。

〇baselineは同等か
年齢、BMI、冠危険因子(糖尿病、高血圧症、高脂血症)、虚血性心疾患の既往など差はない。非投与群で喫煙者が多かった。

〇症例数は十分か
酸素投与により心筋障害が20%増加すると仮定。
トロポニンIのピークが75±35μg/L、power:0.9、αlevel:0.01とし、またprehospitalのSTEMIの陽性的中率やプロトコール違反などを考慮し、病院到着時の必要症例数は490人(両群245人ずつ)と算出した。

〇盲検化されているか
患者と治療介入者は盲検化できないが、解析者は盲検化されている

〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
プレホスピタルの段階でこのトライアルに登録され、病着後に冠動脈造影を行うこととなっている。冠動脈造影検査が施行された患者すべてを解析に含んでおりITT解析という記載があるが、厳密にはITT解析ではないのではないか。ただ、プレホスピタルの段階で登録するので、通常のトライアルと比べて、Criteriaに当てはまらない症例(そもそもSTEMIではないとかExclusion criteriaに含まれる症例)などが多く含まれることになりそう。なので、baselineの同質化は難しくなるが、冠動脈造影をした患者のみを解析するというのはreasonableだと思う。

〇結果の解釈
平均ピークTnIは投与群で57.4μg/L、非投与群で48.0μg/Lと非投与群で低い傾向にあったが、統計学的な有意差はない。しかし、平均ピークCKは投与群で1948U/L、非投与群で1543U/Lと、非投与群で有意に低かった。CKのAUC(曲線化面積)を用いて梗塞サイズを推定しているがそれでも同様の傾向があり、72時間までの平均AUCは投与群60395U/L、非投与群50726U/Lと、非投与群で有意に低かった。

〇この論文を読んで
梗塞サイズに影響しそうな要因としては、責任病変の位置、PCI前後のTIMIgrade、onset to balloon time, チエノピリジンはなにを使用しているか、GPⅡb/Ⅲa阻害薬の有無、血栓溶解療法の有無(日本ではほとんど行われないが)、OMI(あまりviabilityのない領域での梗塞だったのではないか)、側副血行路の存在などが考えられる。

責任病変の位置、PCI前後のTIMIgrade、onset to balloon time, GPⅡb/Ⅲa阻害薬の有無、血栓溶解療法の有無に群間差はない様。ただ、そのほかのチエノピリジン(PCI施行施設に一任されている)、OMI(ischemic heart diseaseについては述べられているが、それが狭心症なのか心筋梗塞なのかは不明)、側副血行路の有無に関しては記載がない。ここは気になる点ではある。

ただ、酸素投与が有害であることはおそらく確かなことだろう。これぐらいの梗塞サイズなら長期予後への影響は小さいかもしれないが(6か月後の死亡率に有意差はなかった)、LAD近位部のような梗塞サイズが大きくなるAMIであれば、酸素投与によって長期予後を悪化させるかもしれない。

ちなみに、同意が得られた人を対象(139人、32%)に発症6ヶ月後に心臓MRIが施行されている。左室容積・EFに群間差は認めず、また梗塞サイズにも群間差はなかった(投与群vs非投与群:12.6%vs9.0%)。これはランダマイズされた患者すべてを計測したわけではないので、バイアスが入りうる。

呼吸音・呼吸数に異常がなくて症状もなければ、SpO2 90%台であれば酸素投与しないこともしばしばあったけど、それでよかったのだと確認できた(この論文ではSpO2 94%未満は除外されているので、90-93%の人がほんとに酸素投与が不要なのかどうかはわからないが)。少なくとも酸素を投与しないことの有害性というものはなさそう。

ちなみに、COIのない研究でした。

安定狭心症に対するニコランジルの予後改善効果 IONA試験

Effect of nicorandil on coronary events in patients with stable angina: the Impact Of Nicorandil in Angina (IONA) randomised trial
Lancet 2002;359:1269-75

〇この論文のPICOはなにか
P:狭心症
I:ニコランジル20mg分2で2週間内服し、その後40mg分2に増量(ニコランジル群)
C:プラセボ(プラセボ群)
O:心臓死、非致死的心筋梗塞、胸痛による予定外の入院の複合エンドポイント

Inclusion Criteria:男性なら45歳以上で女性なら55歳以上が対象。心筋梗塞か冠動脈バイパス術の既往があること、もしくは2年以内に施行された運動負荷検査で陽性であること。

〇baselineは同等か
Tableに示されていて、両群でだいたいパーセンテージは似通っているか、統計学的な群間差があるのか記載されていないのでわからない。ちなみに薬剤については特に指定されていないが、9割程度は抗血小板薬を内服していて、β遮断薬やスタチンは6割弱しか内服していない。

〇ランダム割付の方法や解析方法
コンピュータによる割付が行われている。ランダマイズされて患者すべての転帰がoutcomeに反映されている(ITT解析)。
必要症例数の算出は、プラセボ群でprimary endpointは13%起こり、ニコランジルによって20%のrisk reductionがあると仮定し、power80%、αlevel5%で、5000例と算出されている。ランダマイズされたのは50126例で、必要症例数を満たしている。

〇結果の評価
Primary endpointは、ニコランジル群で337例(13.1%)、プラセボ群で398例(15.5%)であった(hazard ratio 0.83, 95%CI:0.72-0.97)。ただ、primary endpointのうち、心臓死と非致死的心筋梗塞だけみると、ニコランジル群で107例(4.2%)、プラセボ群で134例(5.2%)であり、P=0.068と統計学的有意差はなかった。心臓死と非致死的心筋梗塞を抑えることと、胸痛による予定外の入院が同列に扱われ、primary endpointに含まれていることが問題だろう。

下壁梗塞の責任病変を心電図から判断する

New electrocardiographic criteria for predicting the site of coronary artery occlusion in inferior wall acute myocardial infarction
Am J Cardiol 1998;82:1318-1322

〇概要
30分以上持続する胸痛を主訴に来院した急性心筋梗塞(AMI)の連続152例が対象。下壁誘導(Ⅱ・Ⅲ・aVF誘導)のST上昇から責任病変を同定する。

152例の内訳は
proximal RCA:64例
distal RCA:64例
LCx:19例
ちなみに、第一右室枝を分枝する手前での閉塞をproximal RCAと、その遠位部での閉塞をdistal RCAとしている。

〇結果
ST上昇(特にⅢ誘導)はLCxよりも、RCAで著明である。
proximal RCA:3.8±2.5mm
distal RCA:3.2±1.7mm
LCx:1.8±0.7mm

LCxが責任病変の場合、V3誘導でのST低下のカットオフを3.0mmとすると、3.0mm未満での陰性的中率は93%となる。

責任病変がLCxのとき、V3/Ⅲratio(V3誘導のST低下の絶対値/Ⅲ誘導のST上昇の絶対値)が1.2以下なら陰性的中率は98%である。

つまり、V3/Ⅲratioが1.2以下なら、それは責任病変はRCAである可能性が極めて高い。ただ、V3/Ⅲratioが1.2以上だからといって、責任病変がLCxであるとは言えない。V3/Ⅲratioは、Lcxが責任病変ではないことを判断するためのcriteriaである。

外科的治療困難な高度大動脈弁狭窄症に対するTAVI(PARTNER試験)

Transcatheter aortic-valve implantation for aortic stenosis in patients who cannot undergo surgery
N Engl J Med. 2010;363:1597-607

〇この論文のPICOはなにか
P:外科的治療困難な有症候性の高度大動脈弁狭窄症(severeAS)
I:TAVI
C:標準治療(BAVを含む)
O:全死亡

severeASの定義:弁口面積0.8cm2以下、大動脈弁圧較差40mmHg以上、大動脈弁口部の血流速度4.0m/分

Exclusion Criteria:二尖弁、非石灰化、急性心筋梗塞、血行再建を要する重大な冠動脈疾患、LVDF<20%、大動脈弁輪18mm以下及び25mm以上、severeMR/AR、僧帽弁置換術後、6ヶ月以内のTIA及び脳梗塞、腎不全 〇ランダム割付されているか コンピュータによる割付。 〇baselineは同等か 年齢は83歳ぐらいと高齢で、8割が男性。STSscoreは11とこれも高め。NYHAⅢ-Ⅳが9割、大動脈弁口面積0.6cm2、平均圧較差44mmHgと重症の方で、LVEF50%とそこそこ保たれている。2割でmoderate to severe MRを合併している。そのほか、心筋梗塞の既往、CABG・PCI・BAV、脳血管障害、末梢血管障害、COPD、心房細動など同等であるが、大動脈の広範囲な石灰化や心房細動は標準治療群で有意に多い。 〇症例数は十分か 1年後の全死亡が標準治療群では37.5%、TAVI群では25%と仮定し、power0.85、αlevel0.05で必要症例数は350例と算出されており、358例(TAVI群179例、標準治療群179例)ランダマイズされている。 〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか ITT解析されている(ランダマイズされた358例すべて)。 〇結果の評価 TAVI群に割付された179例のうち、TAVIを施行しなかった症例は6例(TAVI施行前の死亡2例、大腿動脈のアクセス不成功2例、大動脈弁口が大きすぎる症例が2例)。TAVI施行後24時間以内の死亡が2例、大きな脳梗塞が3例、弁塞栓(valve embolization)が1例、2つ以上の弁留置が2例であった。 TAVI群では、30日以内の死亡は11例であった。標準治療群では5例。 primary endpointである1年生存率であるが、TAVI群55例(30.7%)、標準治療群89例(49.7%)と有意にTAVI群で生存率がよく、NNT(number needed to treat)は5であった。ちなみに、標準治療群では83.8%にBAVが施行されている。

On-Pump vs Off-Pump CABG グラフト開存率の比較

A randomized comparison of off-pump and on-pump multivesselcoronary-artery bypass surgery
N Engl J Med 2004; 350:21-28

〇この論文のPICOはなにか
P:初回の冠動脈バイパス術を受ける患者で3グラフト以上のバイパスが必要な者
I:Off-Pump CABG
C:On-Pump CABG
O:3か月後のグラフト開存率(冠動脈造影での評価)

Exclusion criteria:30歳以下、80歳以上、ほかの外科的治療が必要な症例、6ヶ月以内の脳梗塞、70%以上の頸動脈狭窄、3カ月以内の心筋梗塞、LVEF<20%、妊婦と授乳婦 〇ランダム化されているか 手術を行う外科医がランダム化を行っており、隠匿化はされていない。ランダム化の方法も記載されていない。厳密なランダム化試験とはいえない。 〇baselineは同等か 年齢は60歳そこそこで、半分ぐらいが男性。LVEF>50%が7割いて、糖尿病は15%ほど。LAD・LCx・RCAへのグラフトの割合やグラフトの種類も同程度。ただ、native vessel qualityがpoor/fair/goodの3つに分類されており、どのように分けられているかは記載がない。割付の隠匿化がされていないし、主観的な分類なのでバイアスがかかる可能性は十分にある。

〇症例数は十分か
On-PumpとOff-Pumpの最小内径の差は0.3mmで、標準偏差0.5mm(これがどういう意味かはわからない)とし、power0.80、αlevel0.05で必要症例数は100例と算出されており、104例(Off-Pump群54例、On-Pump群50例)登録されている。

〇盲検化されているか
治療介入者は盲検化できない。Outcome評価者(造影所見の評価)は盲検化されている。解析者については記載なし。

〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ランダマイズされた104例のうち、登録後に1例で肺癌が見つかり、解析には含められていない。広義のITT解析(FAS)である。

〇結果の評価
グラフト開存率は全体では、On-Pump群で98%、Off-Pump群で88%で有意にOff-Pump群で開存度が悪い結果であった。一番吻合しやすいであろうLADでもOff-Pump群では92%となってしまっている(On-Pump群では100%)。ただ、discussionで書かれているがこの試験は他の試験と比較してもOff-Pumpでの開存度は低い様。だから通常であれば、というか日本ではOff-Pump CABGが欧米に比べて高い割合で行われているので、もっといいのではないかと思う。

単施設での研究で、この施設ではこの試験を開始する2年前からOff-Pump CABGが行われており、その期間で98/753グラフト(13%)がOff-Pump CABGで行われている。もっと慣れている日本の心臓外科医だと結果は変わってくるのかもしれない。

あと、グラフトの最小内径なども比較されていたが差はついておらず、それが長期の開存度とどう関連するのかはわからない。

単施設での研究であることやランダム化が厳密でないことなどがlimitationである。

安定狭心症に対するPCIは予後を変えない(COURAGE試験)

Optimal medical therapy with or without PCI for stable coronary disease
N Engl J Med 2007;356:1503

〇PICOはなにか
P:安定狭心症もしくは安定化させた不安定狭心症
I:薬物療法+PCI(PCI群)
C:薬物療法のみ(薬物療法群)
O:全死亡と非致死的心筋梗塞

Inclusion criteria:造影上70%以上の狭窄があり客観的に虚血が証明されているもの、造影上80%以上の狭窄があり虚血の証明がされていないもの
Exclusion criteria:不安定狭心症(CCS4)、軽度の運動負荷で生じる虚血、難治性心不全、心原性ショック、LVEF30%以下、6ヶ月以内の血行再建

薬物療法は、βblockerとACE阻害薬/ARBなどに加えて、60-85mg/dlを目標にしたLDL低下療法を行い、それが達成されたのちにHDL>40mg/dl、TG<150mg/dlを目標に運動療法やフィブラートなどを用いた。 〇ランダム割付されているか 本文には記載なし(Supplementary Appendixは未確認)。 〇baselineは同等か LAD近位部病変は薬物療法群で多い(PCI群31%vs薬物療法群37%)。 年齢は61歳ぐらいで、8割が男性。CCS分類・糖尿病・心不全・脳血管疾患・心筋梗塞の既往・以前のPCIやCABG・病変数などはすべて同等。 〇盲検化されているか 患者・治療介入者:盲検化できない Outcome評価者:記載なし 解析者:盲検化されていない 〇症例数は十分か 3年間のイベント発生率は薬物療法群21.0%、PCI群16.4%と仮定し、power0.85、αlevel0.05で必要症例数は2270例と算出され、2287例ランダマイズされている。 〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか PCI群には1149例ランダマイズされ、うち46例がPCIが行われず、27例が病変通過できなかったため、PCIが行われたのは1688病変1077患者である。薬剤溶出性ステントは31例に使用されている。薬物療法群には1138例登録された。Lost follow upは両群とも9%(PCI群107例、薬物療法群97例)であった。ランダマイズされたすべての患者が解析されている(ITT解析) 〇結果の評価 Primary endpointである全死亡+非致死的心筋梗塞は、PCI群19.0%、薬物療法群18.5%で有意差なし。心筋梗塞もPCI群13.2%、薬物療法群12.3%と有意差なし。 造影上の治療成功は、TIMI3のflowが得られており、POBAのみなら50%以下の狭窄、ステント留置なら20%以下の狭窄と定義されている。それが達成できるのは93%ということで、決して高くないような気がする。 これは2007年に報告されたもので、それ以前は造影上有意狭窄であれば治療対象となっていた。しかし、この試験によりPCIは薬物療法と比べて生命予後改善効果や心血管イベント抑制効果はないことが証明され、米国では待機的PCI件数は減少傾向にある。ただ、この試験には軽症例が多く含まれているため、中等度(心筋全体の10%)以上の虚血が証明された症例に対するPCIが予後を改善するかを検証するISCHEMIA試験が進行中である。

繰り返す心膜炎に対するコルヒチンの安全性と有効性(CORP-2試験)

Efficacy and safety of colchicine for treatment of multiple recurrences of pericarditis (CORP-2): a multicentre, double-blind, placebo-controlled, randomised trial.
Lancet. 2014;383:2232-7

急性心膜炎とその初回の再発ではコルヒチンの有効性が証明されているが、再発を繰り返す症例では結論がでていない。

〇この論文のPICOはなにか
P:2回以上再発する心膜炎
I:コルヒチン内服(体重70kg以上では1mg分2、70kg以下では0.5mg分1)
C:プラセボ
O:18か月後の心膜炎の再発

急性心膜炎の診断:以下の2つ以上を満たす。
鋭い胸痛(座位・前傾で軽快)、心膜摩擦音、心電図変化(ST上昇、PR低下)、新規あるいは増加する心嚢液

〇baselineは同等か
同等。年齢は48歳ぐらいで半分が男性、8割が特発性。併用された薬物療法は、アスピリン、イブプロフェン、インドメタシン、プレドニゾロンなど。

〇ランダム割付されているか
コンピュータによる中央割付方式。

〇症例数は十分か
18ヶ月の時点で、プラセボ群で30%の再発があり、コルヒチンにより15%の絶対リスクの低下がある仮定(つまり心膜炎が半分に抑えられる)。αlevel0.05、power0.80とし、必要症例数は240例と算出されており、各群120例ずつ登録されている。

〇盲検化されているか
患者、治療介入者は盲検化されている。治療介入者がoutcomeを評価する。解析はcommitteeが行うが、盲検化については記載なし。

〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
240例(コルヒチン群120例、プラセボ群120例)が登録され、フォローアップは100%。内服中止がコルヒチン群で8例、プラセボ群で7例と大きな脱落はない。

〇結果の評価
心膜炎の再発は、コルヒチン群で26例、プラセボ群で51例で有意差あり(相対リスク0.49 95%CI:0.24-0.65、P=0.0009、NNT:5)。安全性については、消化器症状(下痢、嘔気、嘔吐、腹痛)、肝機能障害、筋毒性、脱毛など有意差なし。

コルヒチンは心膜炎の再発例にも有効。

医学論文を1日ひとつ読んで書き留めています。