せん妄リスクのある重症患者への予防的ハロペリドール投与は無益

Effect of Haloperidol on Survival Among Critically Ill Adults With a High Risk of Delirium: The REDUCE Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2018;319(7):680-690.

【PICO】
P:ICUに2日以上滞在予定の患者
I:予防的ハロペリドール1mgまたは2mg 1日3回静注
C:プラセボ 1日3回静注
O:28日間の生存日数

secondary endpoint:90日生存率、せん妄発生率、delirium free time (28日間)、coma free time (28日間)、人工呼吸器装着期間、ICU滞在日数、入院日数

exclusion criteria:すでにせん妄になっている、パーキンソン病、認知症、アルコール乱用、急性神経疾患、精神疾患の既往、抗精神病薬の使用、重大な心室性不整脈の既往、QTc500ms以上など

【試験の概要】
デザイン:DB-RCT
地域:オランダ
登録期間:2013年7月〜2016年12月
観察期間:90日間
症例数:1789例 (ハロペリドール1mg群350例、ハロペリドール2mg群732例、プラセボ群707例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
同等。ざっくりとした背景は、66歳、外科と内科疾患が半々、緊急入院80%、人工呼吸器70%、APACHE-IIスコア20、PRE-DELIRICスコア26、QTc440。

【結果】
ハロペリドール1mgは無益のため早期中止。

ハロペリドール2mg vs プラセボ
28日間の生存日数 (primary endpoint)
28日 vs 28日、difference:0日、HR:1.003 (95%CI:0.78-1.30)

せん妄の発生
33.3% vs 33.0%、difference:0.4% (95%CI:-4.6to5.4)

28日生存率、delirium free days、ICU滞在日数、入院日数にも差はなかった。

【まとめと感想】
ハロペリドールの予防投与は、28日生存日数を改善しなかった。今まで小規模のRCTでせん妄が減ったというデータはあったが、確たるエビデンスではなかったので、生存日数をアウトカムにしたのはちょっと無理があるかも。残念ながら、せん妄の発生率も差がなかったので、予防的投与にメリットはない。

ステント留置後の非心臓手術 周術期のアスピリン内服は有益

AHAのガイドラインでは、非心臓手術の周術期の抗血小板療法については、こう記載してある。
classI
・DESもしくはBMSを留置後4−6週間以内に手術する場合は、出血リスクがステント血栓症リスクを上回らない限りDAPT継続。
・ステント留置後の患者で、P2Y12阻害薬を中止しなければならない場合は、アスピリンのみ継続し、術後早期にP2Y12阻害薬を再開。

classIIb
・ステント留置していない患者に非緊急手術を行う場合、出血リスクより心血管イベントリスクが高いなら、アスピリン継続は妥当かも。

classIII:No Benefit
・待機的非心臓手術で頸動脈手術でない場合で、かつステントが留置されていない患者では、アスピリンの開始・継続は有益ではない。

非心臓手術の抗血小板療法では、ステント留置後か否かに分けて考える。ステント留置後であれば、それがBMSでもDESでも留置後早期 (4-6週) だと、周術期にステント血栓症を起こしやすいため、基本的にはDAPT継続。

DESは6ヶ月までには安定するとされている。しかし、アスピリンもしくはDAPTを継続するかどうかのデータは十分ではないため、ステント留置から多少時間が経っていても、ステント血栓症を含めた心血管イベントと出血リスクを考慮し、周術期抗血小板療法どうするか決めなければならない。

ステントを留置していない患者では、アスピリンの有効性を検証した2つの大規模RCTがある。股関節手術13356例をアスピリン160mgとプラセボに無作為割付したPEP試験と、心血管疾患ハイリスク患者10010例をアスピリン200mgとプラセボに無作為割付したPOISE-2試験で、いずれもアスピリンのメリットは示されなかった。POISE-2試験では、BMS留置6週間以内、DES留置1年以内の症例は除外されており、冠動脈疾患を有する症例は23%しか含まれておらず、また頸動脈手術は除かれていたため、そのような患者群ではDAPT継続が妥当かもしれない。

というようなことが書かれてあった。

ざくっとまとめると、ステント留置早期は基本DAPT継続で、ステントを留置していない患者ではアスピリンは不要。ステント留置から多少時間が経った症例は、心血管イベントリスクと出血リスクを個々に判断って感じ。

個々に判断って、それが難しいんだけど・・・。

これはPOISE-2試験のサブ解析。

Aspirin in Patients With Previous Percutaneous Coronary Intervention Undergoing Noncardiac Surgery.
Ann Intern Med. 2018;168(4):237-244.

【PICO】
P:PCI後で非心臓手術を受ける患者
I:周術期のアスピリンの内服
C:周術期のプラセボの内服
O:30日後の死亡・非致死的心筋梗塞

secondary endpoint:出血

exclusion criteria:6週間以内のBMS留置、1年以内のDES留置

【デザイン、セッティング】
・POISE-2試験は、非心臓手術におけるアスピリンとクロニジンの単剤、あるいは併用の効果を比較した多施設RCT。
・そのPOISE-2試験のサブグループ解析 (post hoc)
・470例 (アスピリン群234例、プラセボ群236例)
・COX比例ハザードモデル

【結果】
アスピリン群 vs プラセボ群
全死亡と心筋梗塞 (primary endpoint)
6.0% vs 11.5% 絶対リスク差:5.5 (0.4 to 10.5)

全死亡
0.9% vs 1.3% 絶対リスク差:0.4 (-1.4 to 2.3)

非致死的心筋梗塞
5.1% vs 11.0% 絶対リスク差:5.9 (1.0 to 10.8)

大出血と生命を脅かす出血
5.6% vs 4.2% 絶対リスク差:-1.3 (-5.2 to 2.6)

【まとめと感想】
BMS留置から6週間以上、DES留置から1年以上経過している患者では、非心臓手術の周術期にアスピリンを内服すると、出血は少し増える傾向があるが、心筋梗塞は有意に抑制される。ステント留置後やそれに準ずる冠動脈疾患がある場合には、非心臓手術周術期にアスピリンを内服させることは有益だろう。

SVGに対するPCIにおいて、第1世代DESのBMSに対する優位性は5年で消失

大伏在静脈 (SVG) に対するPCIにおいて、DESとBMSの有効性を比較したISAR-CABG試験では、1年の心血管イベント (全死亡、心筋梗塞、TLR) は有意にDESで少なかった (15.0% vs 22.1%, HR:0.64 [95%CI:0.44-0.94])。この差は、DESによってTLRが抑えられたためだった。

このISAR-CABG試験は、2011年にLancetに掲載されており、SVGへのPCIでDESとBMSを比較した最も大きなサンプルサイズの試験だったらしい。これは、その5年のフォローアップの結果である。

Efficacy Over Time With Drug-Eluting Stents in Saphenous Vein Graft Lesions
J Am Coll Cardiol 2018;71;1973-1982.

【PICO】
P:SVGに新規の50%以上の狭窄を有する狭心症
I:DES留置 (Taxus, Cypher, Yukon)
C:BMS留置
O:5年間の全死亡、心筋梗塞、TLR

secondary endpoint:全死亡、心筋梗塞、TLR、ステント血栓症

inclusion criteria:症状もしくは客観的な心筋虚血があること
exclusion criteria:心原性ショック

【試験の概要】
デザイン:RCT (オープンラベル、評価者のみブラインド)
地域:ドイツ
登録期間:2007年11月〜2010年2月
観察期間:5年
症例数:610例 (DES群303例、BMS群307例)
解析:ITT解析
スポンサー:記載なし

【患者背景】
ざっくりと。年齢71歳、DM35%、そのうち1/3がIDDM、UAP40%、13年物のSVG、EF49%、LADとLCxとRCAが1/3ずつ、reference3.3mm、病変長15mm。

【結果】
すべてのアウトカムで有意差なし。

DES vs BMS
全死亡
27.5% vs 28.9% HR:0.94 (95%CI:0.69-1.28)

心筋梗塞
8.2% vs 9.9% HR:0.76 (95%CI:0.44-1.36)

TLR
33.1% vs 25.5% HR:1.20 (95%CI:0.87-1.64)

ステント血栓症
2.0% vs 0.4% HR:5.11 (95%CI:0.60-44.72)

【まとめと感想】
1年時点で有意差があったprimary endpoint (全死亡、心筋梗塞、TLR) は、その後徐々に差が縮まり、Kaplan-Meier曲線は5年でほぼ重なった。両群の差になっていたのはTLRで、1年時点でDES群はBMS群の半分だったが (HR:0.49, 95%CI:0.28-0.86)、1−5年のランドマーク解析では倍発生しており、DES・BMSともに曲線の傾きはほぼ一定で差は開く一方である (HR:2.02, 95%CI:1.32-3.08)。

最初の1年では第1世代DESに軍配が上がったが、その差は5年間で消失してしまった。Cypher (SES) はすでに市場から消え、Taxus (PES) は第2世代・第3世代DESに劣る。第2世代・第3世代DESではlate catch upは抑えられ、BMSよりTLRは少ないとされているため、今のDESではここまで極端な結果にはならないだろう。

潜在性甲状腺機能異常と心疾患

Subclinical thyroid dysfunction and cardiovascular diseases: 2016 update.
Eur Heart J. 2018 Feb 14;39(7):503-507.

甲状腺機能低下
・潜在性甲状腺機能低下症=TSHが正常上限以上でFT4が正常範囲
・高齢者の10%、女性に多い
冠動脈疾患、心不全、脳梗塞と関連あり。
・TSHの範囲・上限については議論あり。
TSHは年齢とともに低下するが、年齢調整したカットオフ値は標準化していない
・甲状腺機能低下症は次のような異常をきたす。リズムの異常 (徐脈や房室ブロック)、心筋の異常 (収縮能低下、拡張能低下、LVEDV増加、肺高血圧、心嚢水)、血管内皮障害と低血圧。
・よりTSHが高い甲状腺機能低下症で、異常を認めやすく、特に拡張障害が起きやすい。
・65歳以上でTSH≧10mIU/Lの症例3044例を観察したCardiovascular Health Studyでは、peak E velocityが0.80m/sとTSHが正常範囲の群よりも有意に高かった (0.72m/s, P=0.002)。
・潜在性甲状腺機能低下症は心血管死のリスクである。
 TSH:4.5-6.9mIU/L → HR:1.09 (95%CI:0.91-1.30)
 TSH:7.0-9.9mIU/L → HR:1.42 (95%CI:1.03-1.95)
 TSH>10mIU/L → HR:1.58 (95%CI:1.10-2.27)
・ただし、全死亡は増やさない。
・高いTSH (TSH:10-19.9mIU/L) は心不全イベントを増やす (HR:1.89, 95%CI1.23-2.80)。
・潜在生甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモンの補充が、心機能を改善させたという小規模のデータがあるが、limitationは多い。
・甲状腺機能が正常化すると、頸動脈IMTが薄くなり、LDLが下がる。

甲状腺機能亢進
・潜在性甲状腺機能亢進症=TSHが低下or検出できない、FT3とFT4が正常範囲
心房性・心室性期外収縮、AF、心血管疾患と関連あり。
・潜在性甲状腺機能低下症は、次のようなリスクがある。
 全死亡 HR:1.24 (95%CI:1.06-1.46)
 心血管死 HR:1.29 (95%CI:1.02-1.62)
 心房細動 HR:1.68 (95%CI:1.16-2.43)
・低いTSH (TSH<0.1mIU/L) は心不全イベントを増やす (HR:1.94, 95%CI:1.01-3.72)。

甲状腺機能のスクリーニング
・甲状腺疾患の既往、視床下部・下垂体機能異常、自己免疫疾患の既往がある場合は、TSHのモニタリングが有用。
脂質異常、低Na血症、原因不明のCK上昇、貧血、甲状腺機能に影響を与える薬剤の使用などでは、TSHの検査が有用。
・ACPでは、50歳以上の女性では定期的な検査を推奨している。
・ATAとAACEでは、60歳以上でTSHの測定を推奨している。

治療
・甲状腺ホルモン補充の閾値は、観察研究と短期間の臨床試験に基づく。
・ATAとAACEでは、TSH≧10mIU/Lで甲状腺ホルモンの補充を推奨しており、TSH<10mIU/Lではリスクなどを勘案し個々に判断するとしている。
・議論が分かれるところであるが、心血管疾患では早期の治療が有用かもしれない。
・高齢者では特に、過剰な治療が行われやすく、心不全増悪や不整脈のリスクになる。
・ATAとAACEでは、TSH<0.1mIU/Lで、不整脈を有する症例、骨粗鬆症の既往やリスクがある閉経後の女性に対する治療はリーズナブルとしている。

ハイリスク糖尿病において、SGLT-2阻害薬、GLP-1作動薬、DPP-4阻害薬のどれがよいのか?

糖尿病の治療薬であるSGLT-2阻害薬、GLP-1作動薬、DPP-4阻害薬の全死亡や心血管死に対する効果を、直接比較したRCTはない。EMPA-REG試験やCANVAS試験でSGLT-2阻害薬の全死亡・心不全に対する有効性が示されているが、GLP-1作動薬やDPP-4阻害薬ではプラセボ以上の効果は示されておらず、またDPP-4阻害薬は心不全を増加させる懸念がある(1-3)

これは、その3種類の薬剤のネットワークメタアナリシスである。

Association Between Use of Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors, Glucagon-like Peptide 1 Agonists, and Dipeptidyl Peptidase 4 Inhibitors With All-Cause Mortality in Patients With Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Meta-analysis.
JAMA. 2018;319(15):1580-1591

【概要】
・SGLT-2阻害薬、GLP-1作動薬、DPP-4阻害薬の全死亡と心血管イベントに対する効果を比較したネットワークメタアナリシス。
・観察期間が12週以上で、互いの薬剤・プラセボ・無投薬と比較したRCTを統合・解析
・期間:2017年10月11日まで
・primary endpoint:全死亡、
・secondary endpoint:心血管死、心不全イベント、心筋梗塞、不安定狭心症、脳梗塞
・safety endpoint:有害事象、低血糖

【結果】
RCT236試験、176310例を組み入れ。
risk of biasは104試験 (44.1%) でlow、3試験 (1.3%) でhigh。
Egger’s test P=0.27

全死亡 (primary endpoint)
I2=12%

SGLT-2阻害薬 vs プラセボor無投薬
HR:0.80 (95%CrI:0.71-0.89)、絶対リスク減少:−1.0% (95%CrI:-1.5to-0.6%)

GLP-1作動薬 vs プラセボor無投薬
HR:0.88 (95%CrI:0.81-0.94)、絶対リスク減少:−0.6% (95%CrI:-1.0to-0.3%)

DPP-4阻害薬 vs プラセボor無投薬
HR:1.02 (95%CrI:0.94−1.11)、絶対リスク減少:−0.1% (95%CrI:-0.3to0.6%)

SGLT-2阻害薬は、GLP-1作動薬との有意な差はないが、DPP-4阻害薬と比較し全死亡の有意な減少と関連あり (HR:0.78, 95%CrI:0.68-0.90, 絶対リスク減少:-0.9%, 95%CrI:-1.2to-0.4%)。

心血管死
I2=19%
SGLT-2阻害薬 vs プラセボor無投薬
HR:0.79 (95%CrI:0.69-0.91)、絶対リスク減少:−0.8% (95%CrI:-1.1to-0.3%)

GLP-1作動薬 vs プラセボor無投薬
HR:0.85 (95%CrI:0.77-0.94)、絶対リスク減少:−0.5% (95%CrI:-0.8to-0.1%)

DPP-4阻害薬 vs プラセボor無投薬
HR:1.00 (95%CrI:0.91-1.11)、絶対リスク減少:0.0% (95%CrI:-0.3to0.4%)

全死亡同様、SGLT-2阻害薬はGLP-1作動薬との有意差はないが、DPP-4阻害薬と比較し心血管死の有意な減少と関連あり (HR:0.85, 95%CrI:0.74-0.98, 絶対リスク減少:-0.5%, 95%CrI:-0.8to-0.1)。

心不全イベントは、DPP-4阻害薬やGLP-1作動薬と比較し、SGLT-2阻害薬で有意な減少あり。DPP-4阻害薬はコントロール (プラセボor無投薬) と比較し、有意な増加あり (HR:1.13, 95%CrI:1.00-1.28, 絶対リスク減少:0.4, 95%CrI:0.0-0.8%)。

心筋梗塞、不安定狭心症、脳梗塞では、実薬同士の比較では有意差なし。

【まとめ】
SGLT-2阻害薬やGLP-1作動薬は、DPP-4阻害薬と比較して有意に全死亡や心血管死を減少させた。また、心不全イベントはDPP-4阻害薬でプラセボと比較して増加している一方で、SGLT-2阻害薬ではDPP-4阻害薬やGLP-1作動薬と比べ有意にリスク減少を認める。

EMPA-REG試験ではエンパグリフロジンがプラセボに比べ、脳梗塞を増加させる傾向にあったが、このネットワークメタではHRや95%CrIを見る限り、それほど気にしなくてもいいのかもしれない。

糖尿病治療で、心不全や冠動脈疾患を合併している症例やそのハイリスク症例に対しては、性感染症、下肢切断、脳梗塞などに配慮した上で、SGLT-2阻害薬を第二選択薬として使っていくという流れになっているのかなと思います。

(1) N Engl J Med. 2015;373(22):2117-28.
(2) N Engl J Med. 2017;377(7):644-657
(3) N Engl J Med. 2017;377(13):1228-1239.

抗緑膿菌作用を有するβラクタム薬は持続静注がよい?

Prolonged versus short-term intravenous infusion of antipseudomonal β-lactams for patients with sepsis: a systematic review and meta-analysis of randomised trials
Lancet Infect Dis. 2018 Jan;18(1):108-120.

【概要】
・敗血症を対象に、抗緑膿菌作用を有するβラクタム薬の長時間静注 (持続静注もしくは3時間以上の長時間注入) は通常の投与方法と比べ、生命予後を改善するか検証したSR。
・RCTのみ
・期間:2016年11月まで

【結果】
長時間静注 vs 通常投与
全死亡 (primary endpoint)
・全体
RR:0.70 (95%CI:0.56-0.87)、異質性 I2=0%、Egger’s test P=0.44

・カルバペネム
RR:0.67 (95%CI:0.49-0.91)、異質性 I2=0%

・βラクタマーゼ阻害薬配合剤 (PIPC/TAZ, TIPC/CVA)
RR:0.70 (95%CI:0.50-0.98)、異質性 I2=0%

・セファロスポリン
RR:0.83 (95%CI:0.40-1.74)、異質性 I2=28%

【まとめ】
βラクタム薬の長時間静注は、通常投与より死亡率を改善した。Egger’s test P=0.44と出版バイアスはない。異質性が低いが、これは小規模のRCTが多かったせいもあるだろう。ただ、forest plotをみると症例数やイベント数が多めのRCTでは、いずれも長時間静注がfavorableな結果なので、長時間静注はよさそう。

カルバペネム系にしろ・ペニシリン系にしろ・セフェム系にしろ、TAM (time above MIC) が重要で、持続静注にするとMICを超えているのかということがわからず、感受性 (MIC) は施設によって変わってくる。なので、この結果を一般化していいのかという疑問はある。個人的な意見としては、SRで示された結果であるので、自施設での感受性を考慮しながら、実臨床に適応していくのはありだと思う。

注意したいのは投与量と投与時間で、MEPMとPIPC/TAZは米国と同じ量が使えるが、CFPMやCZOPは日本だと少なめなので、やるのであればMEPMもしくはPIPC/TAZがベター。投与時間については、このSRでは長時間静注の定義を3時間以上としているが、ほとんどが持続静注だったので、24時間の持続静注がいいだろう。

黄色ブドウ球菌菌血症に対してリファンピシンをルーチンで併用すべきではない

Adjunctive rifampicin for Staphylococcus aureus bacteraemia (ARREST): a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled trial
Lancet. 2018;391(10121):668-678.

米国感染症学会 (IDSA) のガイドラインでは、MSSA菌血症はβラクタム薬静注を少なくとも14日間続け、MRSA菌血症はグリコペプチドで治療するよう推奨している。この推奨は、観察研究と臨床的な経験に基づいている。

リファンピシンは、βラクタム薬やグリコペプチドより、細胞、組織、バイオフィルムへの浸透が良いため、重症黄色ブドウ球菌感染症のアウトカムを改善すると考えられてきた。3つのRCTと1つのコホート研究のシステマティックレビューでは、リファンピシン併用54例、標準治療44例と症例数は少ないが、リファンピシンの併用は全死亡や臨床的・細菌学的治療の失敗の減少と関連があった。

黄色ブドウ球菌感染症964例の前向き観察研究では、人工物感染のサブグループで、リファンピシン併用は30日死亡と60日死亡の低下と関連があった。

このように、黄色ブドウ球菌感染症に対しリファンピシンを併用する根拠は決して強いものではなく、リファンピシンには肝毒性や薬物相互作用も多いことから、リスクを上回るベネフィットがあるかは明らかではない。

このARREST試験は、MRSAを含む黄色ブドウ球菌菌血症に対し標準治療にリファンピシンを併用することがアウトカムを改善するか検証したRCTである。

【PICO】
P:MSSAまたはMRSAの菌血症
I:リファンピシン600or900mg経口または静注
C:プラセボ経口または静注
O:12週時点での細菌学的に証明された治療の失敗または再発+全死亡

inclusion criteria:少なくとも血培1セットからMSSAまたはMRSAの検出、抗菌薬開始から96時間以内

procedure:リファンピシンは600or900mgを1日1−2回に分けて投与。14日間か、抗菌薬中止するまで併用する。14日以降はオープンラベルでリファンピシンの使用可。臨床医が薬剤の中止が必要と判断すれば、中止可。12週まで観察する。

【試験の概要】
デザイン:RCT (二重盲検、プラセボ対照)
地域:イギリス 29施設
登録期間:2012年12月10日〜2016年10月25日
観察期間:12週間
症例数:770例 (リファンピシン併用群374例、プラセボ併用群396例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
ざっくりと。年齢65歳、MRSAが6%、自然弁のIE4%、人工弁・人工関節2%、血管内デバイス5%、皮膚・軟部組織感染18%、血管内カテーテル17%、SOFA2点、抗菌薬投与開始からランダム化まで62時間、リファンピシン耐性菌0%。

【結果】
最初のprimary endpointは全死亡、細菌学的に証明された治療の失敗または再発+全死亡の2つで、必要症例数は940例だったが、登録が進まず、細菌学的に証明された治療の失敗または再発+全死亡をprimary endpointに変更し、必要症例数を770例とした。

14日以内の試験薬の中止は、リファンピシン併用群で164/370例 (44.3%)、プラセボ併用群で 119/388例 (30.7%)だった。

リファンピシン併用群 vs プラセボ併用群
細菌学的に証明された治療の失敗または再発+全死亡 (primary endpoint)
17% vs 18% 絶対リスク差:-1.4% (95%CI:-7.0to4.3)

治療の失敗 (post hoc analysis)
1% vs 1% P=0.82

再発 (post hoc analysis)
1% vs 4% P=0.01、NNT=29

死亡 (post hoc analysis)
15% vs 13% P=0.30

有害事象のうち有意に差があったものは、投与量調整を要する有害事象 (17%vs10%)、胃腸障害、腎・尿管障害、薬物相互作用、治療薬の中止で、いずれもリファンピシン併用群で多かった。

【まとめと感想】
黄色ブドウ球菌菌血症に対し、標準的治療のみでも、リファンピシンを併用しても、全死亡や治療の失敗に差はない。なので、黄色ブドウ球菌菌血症だからと言って、ルーチンに併用する必要はない。

ただ、患者背景は皮膚軟部組織や血管内カテーテルなどが感染源になっている症例が多く、またSOFAも軽めなので、重症感染 (MRSAを含む) でもリファンピシンを併用しなくて良いとは結論できない。そして、今までの観察研究で示されているような人工物の感染も、割合が少ないため、リファンピシン併用の効果は定かではない。

耐糖能異常 (IGT) へのアカルボース投与は、糖尿病の新規発症を抑制するが心血管イベントは減らさない

食後高血糖に対し介入し心血管アウトカムを評価したRCTに、NAVIGATOR試験がある。IGTを対象にナテグリニドとプラセボの2群にわけ、糖尿病の新規発症と心血管アウトカムについて評価した。結果は、心血管アウトカムに差はなかったが、糖尿病の新規発症はナテグリニド群で有意に多かった(1)

食後高血糖は心血管リスクになるが、薬剤による食後高血糖の是正が心血管リスクの減少に繋がるわけではないことを表している。

STOP-NIDDM試験では、アカルボースがIGTから糖尿病への進展を抑制し、その二次解析では心血管アウトカムを49%減少させた。ただ、これはサンプルサイズが小さく、また二次解析でもあったため、偶然による結果の可能性があり、質が高いエビデンスではない(2)

このACE試験は、アカルボースがIGTの心血管イベントを抑制するか検証したRCTである。

Effects of acarbose on cardiovascular and diabetes outcomes in patients with coronary heart disease and impaired glucose tolerance (ACE): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 Nov;5(11):877-886.

【PICO】
P:耐糖能異常 (IGT) +冠動脈疾患
I:アカルボース
C:プラセボ
O:5point MACCE (心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、UAPによる入院、心不全による入院)

secondary endpoint:3point MACCE (心血管死、心筋梗塞、脳梗塞)、全死亡、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、新規の糖尿病など

inclusion criteria:50歳以上、75gGTTで診断されたIGT、冠動脈疾患 (OMIやUAPの既往, 安定狭心症)

procedure:アカルボースは50mgを1日3回。50mgとしたのは中国でよく処方されている容量であり、100mgのアカルボースを用いたSTOP-NIDDM試験では中断が多く、消化器症状は容量依存的に現れるため。受診は、試験開始1,2,4ヶ月後、以降4ヶ月おき。その際に、空腹時血糖・低血糖エピソード・血圧・体重・臨床的アウトカム・アドヒアランスを確認する。年に1回、75gOGTTを行い、またHbA1c・血清Cr・eGFRを測定。糖尿病の診断がされた患者は、盲検化されたままメトホルミンや他の経口血糖降下薬で糖尿病の治療を開始する。

【試験の概要】
デザイン:RCT (double-blind)
地域:中国
登録期間:2009年3月20日〜2015年10月23日
観察期間:中央値5.0年 (IQR:3.4-6.0)
症例数:6522例 (アカルボース群3272例、プラセボ群3250例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり (Bayer)
途中でプロトコールの変更あり (primary endpointを5point MACCEへ変更し、必要症例数を7500→6500例に減らした)

【患者背景】
両群に差はなかった。
ざっくりと。年齢64歳、男性3/4、BMI25、腹囲91cm、血圧130/78mmHg、HbA1c5.9%、eGFR88ml/min、HDL1.18mmol/L、LDL2.25mmol/L、OMIとUAPの既往が40%ずつで安定狭心症が20%、93%でスタチン、98%で抗血小板薬。

【結果】
割り付けられた薬剤の内服中断は、アカルボース群49%、プラセボ群51%で、内服していた期間はそれぞれ3.0年 (IQR:1.3-5.0), 3.0年 (IQR:1.1-4.9)だった。

治療開始1年後のHbA1cはアカルボース群で有意に低く(5.88 vs 5.94%)、75gOGTT2時間値も有意に低かった (8.4 vs 8.7mmol/L)。

アカルボース群 vs プラセボ群
5point MACCE (primary endpoint)
14.4% vs 14.7%, HR0.98 (0.86-1.11)

心血管死+心筋梗塞+脳梗塞
8.7% vs 9.2%, HR0.95 (0.81-1.11)

全死亡
6.6% vs 6.7%, HR0.98 (0.81-1.19)

心血管死
4.4% vs 5.0%, HR0.89 (0.71-1.11)

心筋梗塞
3.7% vs 3.3%, HR1.12 (0.87-1.46)

脳梗塞
2.3% vs 2.4%, HR0.97 (0.70-1.33)

新規の糖尿病
13.3% vs 15.8%, HR0.82 (0.71-0.94)

【まとめと感想】
IGTに対するアカルボースを用いた介入は、新規の糖尿病発症を抑制するが、心血管イベントは減らさない。新規の糖尿病発症を抑制したといっても、一方はプラセボであり、血糖値やHbA1cにも統計学的な差がでているので、それがアカルボースという薬剤独自の糖尿病抑制効果なのかはわからない。薬効をみるなら、ターゲットとなる血糖やHbA1cは揃えた方がよかったのではないか。

STOP-NIDDM試験でアカルボースが良さげな結果を出していたので、ちょっと残念。ただ、アカルボースは比較的安全で安価な薬剤なので、それ自体に心血管イベントを抑える効果がなかったとしても、糖尿病の早期に治療介入によって得られるlegacy effectを期待して使うならいいかも。

STOP-NIDDM試験では、アカルボースの1回量は100mgだったので、もしかしたら容量で違いがあるかもしれないが、容量依存的に増える消化器症状には注意。

(1) JAMA. 2003;290:486-494.
(2) N Engl J Med. 2010;362:1463-76.

CKD合併心房細動 ワーファリンとDOACの比較

Direct oral anticoagulants versus warfarin for preventing stroke and systemic embolic events among atrial fibrillation patients with chronic kidney disease
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Nov 6; doi:10.1002/14651858.CD011373.pub2.

AF+CKDで、ワーファリンとDOACを比較したコクランのレビュー。

DOAC:アピキサバン、ダビガトラン、エドキサバン、リバロキサバン
観察期間:1.8−2.8年
CKDは、CrClまたはeGFR:15−60mL/min (CKD G3とG4) と定義した。
G3:12155例、G4:390例

5つの試験を統合。
• ARISTOTLE Study 2010: 3,017/18,122 (17%)
• ENGAGE AF-TIMI 48 Study 2013: 2,740/14,071 (19.5%)
• J-ROCKET AF Study 2012: 284/1,278 (22.2%)
• RE-LY Study 2009: 3,554/17,951 (19.8%)
• ROCKET AF Study 2010: 2,950/14,264 (20.7%).

【結果】
ワーファリン vs DOAC
脳梗塞+全身性塞栓症
29/1000 vs 23/1000 (95%CI:19-29/1000)
RR:0.81 (95%CI:0.65-1.00)
quality of the evidence:moderate

大出血
55/1000 vs 43/1000 (95%CI:32-57/10000)
RR:0.79 (95%CI:0.59-1.04)
quality of the evidence:low

心筋梗塞
11/1000 vs 10/1000 (95%CI:5-21/1000)
RR:0.92 (0.45-1.90)
quality of the evidence:-

小出血
74/1000 vs 72/1000 (95%CI:43−119/1000)
RR:0.92 (0.58−1.61)
quality of the evidence:low

消化管出血
17/1000 vs 24/1000 (95%CI:17−35/1000)
RR:1.40 (0.97-2.01)
quality of the evidence:moderate

頭蓋内出血
14/1000 vs 6/1000 (95%CI:4−9/1000)
RR:0.43 (0.27−0.69)
quality of the evidence:moderate

全死亡
78/1000 vs 71/1000 (95%CI:61-82/1000)
RR:0.91 (0.78−1.05)
quality of the evidence:moderate

【まとめ】
CKDを合併した心房細動において、脳梗塞+全身性塞栓症のリスクはワーファリンとDOACで同程度だった。出血性合併症は、頭蓋内出血は有意にワーファリンが多かったが、大出血・消化管出血に差はなかった。全死亡についても差はなかった。

RCTのSRであるということと、CKDG4はほとんど含まれないという点は、実臨床で抗凝固療法を行う上で留意すべき。

オメガ3系脂肪酸はHDL・TGの改善に役立つが、心血管イベントの予防には役立たない

米国のAgency for Healthcare Research and Qualityは、オメガ3系脂肪酸について次のように結論づけている(1)

・魚油サプリメントは、HDLコレステロールとLDLコレステロールをちょっと (≦2mg/dl) 上昇させる。

・容量依存的に中性脂肪を下げるし、もともと中性脂肪が高めの人は下がりやすい。

・心血管疾患を減らさない (RCTより)。

・魚油サプリメントを高容量とれば、動脈硬化性脳梗塞については減るかもしれない (観察研究より)。

・心血管死、致死的・非致死的脳卒中 (虚血性・出血性) への効果はRCTと観察研究で結果が異なっていて、RCTではベネフィットは示されていないが、観察研究ではベネフィットがありそう。

まとめると、HDLコレステロール上がったり、中性脂肪下がったり、なんかいい効果がありそうだけど、死亡とか心筋梗塞とかを予防するまでの効果はほぼ期待できないってことでしょうか。

さらに、別のシステマティックレビューでは、心筋梗塞二次予防、糖尿病、低HDL血症、高TG血症、スタチンの有無などのいずれのサブグループでも心血管イベント (非致死的心筋梗塞、心血管死、非致死的・致死的脳梗塞、血行再建) は減らないことが示された。ただ、投与量別のサブグループ解析はされていなかったので、残念ながら魚油の高容量投与ではどうなのかってところまではわからない(2)

とはいえ、心血管イベント予防としてのオメガ3系脂肪酸の出番はなさそう。

(1) Omega-3 Fatty Acids and Cardiovascular Disease: An Updated Systematic Review (https://effectivehealthcare.ahrq.gov/topics/fatty-acids-cardiovascular-disease/research)
(2) JAMA Cardiol. 2018 Mar 1;3(3):225-234.

医学論文を1日ひとつ読んで書き留めています。