重症のC.difficile感染症の治療は、バンコマイシンが良い

Comparative Effectiveness of Vancomycin and Metronidazole for the Prevention of Recurrence and Death in Patients With Clostridium difficile Infection.
JAMA Intern Med. 2017 Feb 6. [Epub ahead of print]

《要約》
<重要性>
メトロニダゾール塩酸塩は、軽症から中等症のクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の治療の第一選択と考えられているが、臨床的な効果ではバンコマイシンに劣る。治療の選択は、その先にあるCDI再発や死亡率といったアウトカムに影響を与えるが、これらのアウトカムを調べた研究は少ない。

<目的>
軽症から中等症および重症のCDIを、メトロニダゾールまたはバンコマイシンで治療した場合の、再発と30日全死亡のリスクを評価すること。

<デザイン、セッティング、患者>
便検査でCDトキシンまたはトキシン遺伝子が陽性となったCDIを対象とした、プロペンシティスコアマッチング、後ろ向き研究である。2005年1月1日〜2012年12月31日の退役軍人病院のデータで、解析は2015年2月7日〜2016年11月22日に行った。

<暴露>
バンコマイシンまたはメトロニダゾールの投与

<アウトカムと測定>
この研究でのアウトカムは、CDI再発と30日全死亡率である。再発の定義は、初回のCDIの診断から8週以内に検査が陽性になること。30日全死亡率の定義は、初回のCDIの診断から30日以内の全死亡率である。

<結果>
47471例(平均68.8±13.3歳、女性1947例、男性45524例)がCDIと診断され、バンコマイシンまたはメトロニダゾールが投与され、この研究の組み入れ基準を満たした。47471例のうち、2068例(4.4%)がバンコマイシンで治療され、メトロニダゾールで治療された患者8069例とプロペンシティスコアがマッチし、計10137例を組み入れた。5452例の軽症から中等症のCDIと、3130例の重症CDIでサブコホートを構成した。全集団では、バンコマイシンで治療してもメトロニダゾールで治療しても、CDI再発リスクになかった。また、全集団では30日全死亡率が低かった(調整後相対リスク0.86、95%CI:0.74−0.98、調整後リスク差:−0.02)。軽症から中等症のCDIでは30日全死亡率に有意差はなかったが、重症CDIではバンコマイシンで有意に30日全死亡率が低かった(調整後相対リスク0.79、95%CI:0.65-0.97、調整後リスク差:-0.04)。

<結論>
CDIをバンコマイシンで治療してもメトロニダゾールで治療しても、再発率に差はなかった。しかし、30日全死亡率はバンコマイシン治療群で有意に低かった。この結果は、重症CDIの初回治療でバンコマイシンを使用することを、一層正当化するかもしれない。

◇批判的吟味
・CDIの再発を8週間以内の検査陽性としていいのか??
・バンコマイシンとメトロニダゾールの選択は主治医次第。

◇感想
UpToDateよると・・・
接触予防と趣旨衛生を。アルコールは効かないので、石鹸と流水で洗った方がいいけど、本当にいいかのエビデンスはないよ。

初発では・・・
重症でないならメトロニダゾールで。
重症CDIではバンコマイシン125mg/回、4回/日を10−14日間。
改善がなければ、500mg/回に増量。

初回の再発では・・・
重症でないならメトロニダゾールだけど、バンコマイシンでも可。

2回目の再発では・・・
バンコマイシンを上記の通り。そのあと、漸減し継続していく。

という感じで推奨されています(2017年2月18日現在)。

この研究は、バンコマイシンとメトロニダゾールのどちらを選択するかは主治医次第であり、プロペンシティスコアマッチですが、調整できない要因(交絡)はあると思います。ただ、今までの流れに一致するデータだと思います。

ちなみに重症CDIとは、白血球<15000、診断から4日以内に血清Cr値がベースラインの1.5倍以上に上昇、ということみたいです。

JPAD2試験 アスピリンに心血管疾患一次予防効果はない

Low-Dose Aspirin for Primary Prevention of Cardiovascular Events in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus10-Year Follow-Up of a Randomized Controlled Trial
Circulation. 2017;135:659-670.

《要約》
背景
2型糖尿病での心血管イベント一次予防に対する低容量アスピリンの長期の安全性・有効性に関しては、結論が出ていない。

方法
JPAD試験(Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis
With Aspirin for Diabetes)は、無作為化、オープンラベル、標準治療を対照群においた試験である。2539例の2型糖尿病の日本人を対象に、低容量アスピリンの有効性・安全性を評価した。アスピリン群(81mgまたは100mg)とアスピリン非投与群に無作為に割り付けた。2008年の試験終了後、2015年までフォローアップし割り付けられた治療は継続した。主要評価項目は、心臓突然死、致死性・非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳梗塞、末梢動脈疾患である。安全性については、消化管出血、頭蓋内出血、その他の出血を解析した。主要評価項目はper-protocol解析を行い、出血イベントと感度分析はITT解析を行った。

結果
フォローアップ期間の中央値は10.3年で、1621例(64%)が試験を通してフォローアップされた。2160例(85%)で、割り付けられた治療を維持した。per-protocol解析では、アスピリン群とアスピリン非投与群で、心血管イベントに差はなかった(HR:1.14、95%CI:0.91-1.42)。年齢、性別、血糖コントロール、腎機能、喫煙の有無、高血圧、高脂血症で調整した多変量COX比例ハザードモデルでも似たような結果で(HR1.04、95%CI:0.83-1.30)、サブグループ解析でも結果の異質性はなかった(interaction P<0.05)。感度分析の結果も一貫していた(HR:1.01、95%CI:0.82-1.25)。消化管出血はアスピリン投与群で25例(2%)、非投与群で12例(0.9%)と差があり(P=0.03)、出血性脳卒中に群間差はなかった。

結論
心血管疾患のない2型糖尿病では、低容量アスピリンは心血管イベントのリスクに影響がなく、消化管出血は増大させる。

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患のない2型糖尿病の日本人
I:アスピリン81mgまたは100mgの内服
C:アスピリンの内服なし
O:心臓突然死、致死性・非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳梗塞、末梢動脈疾患

nclusion criteria:30−85歳
exclusion criteria:心電図の虚血性変化(ST変化、Q波など)、心血管疾患の既往(冠動脈造影で診断されている、TIA・脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の既往、薬物療法を要するPAD)、心房細動、妊娠、抗血小板薬・抗凝固薬の内服

◇baselineは同等か

(本文から引用)
年齢、血圧、喫煙率、HbA1c、Cr、Hbでいずれもわずかであるが、有意な群間差がある。

◇試験の概要
地域:日本
登録期間:2002年〜2005年
観察期間:10.3年(中央値)
無作為化:乱数表を用いる。層別化はされていない。
盲検化:密封された封筒法
必要症例数:1年あたり主要評価項目が52/1000例発生し、低容量アスピリンにより30%の相対リスク低下があると仮定。αlevel0.05、power0.95、フォローアップ期間は3年間として、必要症例数は2450例と算出されている。
症例数:2539例(アスピリン群1262例、アスピリン非投与群1277例)
追跡率:試験早期中止と追跡不能が、アスピリン群480/1262例(38.0%)、アスピリン非投与群438/1277例(34.2%)と多いのは、10年のフォローアップのデータなので致し方ないか。クロスオーバーはアスピリン群270/1262例(21.3%)、アスピリン非投与群109/1277例(8.5%)であった。
解析:Per-Protocol解析
スポンサー:企業の関与なし

◇結果
解析はper-protocol。

(本文から引用)

・出血イベント(アスピリン群vsアスピリン非投与群)
全出血  6% vs 5%、P=0.2
消化管出血 2% vs 0.9%、P=0.03
出血性脳卒中 0.9% vs 1.2%、P=0.4

◇批判的吟味
・数少ない日本人でのアスピリンによる心血管疾患一次予防の長期データ。
・追跡率は低い。
・クロスオーバーを除いたper-protocol解析で、アスピリンの効果を強め、有害事象は減らす方向に働くと思われる(アスピリン群では低リスクなら投与中止され、非投与群ではリスクが高い症例ならアスピリンが処方されている可能性がある)が、それでもprimary endpointで有意差なし。
・アスピリンにより、消化管出血は有意に増える。

◇感想
このJPAD2試験では、2型糖尿病で罹病期間が7年ぐらい、高血圧・高脂血症の人がそれぞれ50%以上いて、喫煙者が20%と、結構リスクがある人が対象になっている。それでもアスピリンの心血管疾患一次予防の効果は示せなかった。

欧米人でもアスピリンの心血管一次予防効果は限定的なので、欧米人に比べ心血管イベントリスクは低い日本人なら、なおさらだろう。JPPPの結果と合わせて考えると、日本人ではアスピリンを心血管疾患一次予防目的で使用することのnet clinical benefitはないと考えていいだろう。

非心臓手術の周術期でのスタチン使用と死亡率

Association of Perioperative Statin Use With Mortality and Morbidity After Major Noncardiac Surgery
JAMA Intern Med. 2017;177(2):231-242

◇論文の概要
<重要性>
非心臓手術において、スタチンの使用が周術期の心血管や他の臓器の合併症を減少させるかどうかは議論がある。RCTが少ないため、データベースの解析は、新たな仮説や試験デザインを促進するかもしれない。

<目的>
非心臓手術を行った退役軍人のコホートで、周術期早期のスタチンの使用とアウトカムに関連があるか評価すること。

<デザイン、セッティング、患者>
待機的または緊急非心臓手術を行った180478例の後ろ向き観察研究である。手術の7日以内に入院した患者を、Veterans Affairs Surgical Quality Improvement Program(VASQIP)から抽出した。患者は退役軍人病院に入院し、術後30日間フォローアップした。2005年10月1日〜2010年9月30日のデータを収集し、2013年11月28日〜2016年10月31日に解析した。

<暴露>
手術日と手術後にスタチン使用

<アウトカムと測定>
30日死亡率(主要評価項目)と、標準化した30日心血管アウトカムと非心血管アウトカムである。スタチンの使用とその他の周術期心血管治療薬は、Vaterans Affairs Pharmacy Benefits Management research databaseを確認した。

<結果>
180478例(男性95.6%、女性4.4%、平均年齢63.8±11.6歳)を解析した。96486例でプロペンシティスコアがマッチした(男性96.3%、女性3.7%、平均年齢65.9±10.6歳)。入院時に、37.8%が外来でもともとスタチンの処方を受けており、その80.8%でシンバスタチンが処方されており、59.5%が中等量から高容量使用されていた。手術日と術後にスタチンが処方されていたのは31.5%である。プロペンシティスコアがマッチした48243ペアで、30日死亡率はスタチン使用群で有意に減少した(相対リスク0.82、95%CI:0.75−0.89、NNT:244)。副次評価項目である、合併症も有意に減少した(相対リスク0.82、95%CI:0.79−0.86,NNT67)。中枢神経と血栓症カテゴリを除いた全てで、心臓合併症が有意に減少した(相対リスク0.73、95%CI:0.64−0.83)。

<結論>
周術期早期のスタチン使用は、全死亡といくつかの心血管・非心血管合併症の有意な減少と関連があった。しかし、選択バイアスは考慮しなければならない。

◇感想
非心臓手術でのスタチンの効果に対する見解は一致していない。この後ろ向き観察研究では、スタチンにより30日死亡率は低下したがNNT244であり、これが費用対効果に見合ったものなのか議論の余地がある。また、高容量のスタチンは腎障害のリスクにもなるため、その点も考慮する必要がある。

発作性心房細動は永続性心房細動より脳梗塞・全身性塞栓症が少ない ENGAGE AF試験より

Stroke and Mortality Risk in Patients With Various Patterns of Atrial Fibrillation
Circ Arrhythm Electrophysiol. 2017;10:e004267.

◇論文の概要
<背景>
心房細動(AF)のパターンで抗凝固療法のリスクとベネフィットが変わるかは、議論がある。ENGAGE AF-TIMI48試験では、第Xa因子阻害薬のエドキサバンが脳梗塞と全身性塞栓症の予防においてワーファリンに対し非劣性で、出血と心臓血管死を有意に減少させた。しかし、AFのパターンによる詳細な解析は報告していない。

<方法と結果>
21105例を、登録時のデータをもとに発作性心房細動(>7日)、持続性心房細動(7日-1年未満)、永続性心房細動(≧1年)に分類した。2.8年間(中央値)のフォローアップで有効性と安全性のアウトカムを評価した。主要評価項目である脳梗塞と全身性塞栓症は、持続性心房細動(1.83%/年、P-adj=0.015)や永続性心房細動(1.95%/年、P-adj=0.004)より、発作性心房細動では低かった(1.49%/年)。全死亡も、持続性心房細動(4.4%/年、P-adj<0.001)や永続性心房細動(4.4%/年、P-adj<0.001)より、発作性心房細動では低かった(3.0%/年)。年間の大出血発症率は、すべての心房細動で同程度であった(発作性vs持続性vs永続性:2.86%vs2.65%vs2.73%)。治療薬による効果修飾はなかった。



いずれも本文から引用

<結論>
ENGAGE AF-TIMI48試験では、発作性心房細動は持続性あるいは永続性心房細動と比べ、塞栓症と死亡が少なかった。エドキサバンと有効性・安全性のプロファイルは、3つのパターンの心房細動で一貫していた。

◇感想
1980年代のいくつかの観察研究では、発作性心房細動は永続性よりも塞栓症が少ないと報告されていた。しかし、2000年に発作性心房細動460例と持続性と永続性心房細動1552例を比較したSPAF試験で、差がないことが報告された。

最近になって、SPORTIF、ARISTOTLE、ROCKET-AF、ACTIVE-A、AVERROESなどの試験で、やはり発作性心房細動の方が塞栓症は少ないということが報告されている。

心房細動が永続的なものになる過程として、内皮障害、繊維化、左房拡大が進んでいくなら、やはり発作性心房細動の方が永続性心房細動より塞栓症が少ないというのは、合点がいきます。

80歳代のスタンフォードA型急性大動脈解離の手術成績

Early and Late Outcomes of Surgical Repair for Stanford A Acute Aortic Dissection in Octogenarians.
Circ J. 2016 Nov 25;80(12):2468-2472

◇論文の概要
<背景>
高齢であることは死亡率と罹患率の強力な独立した予後因子と考えられ、80歳代のスタンフォードA型急性大動脈解離(AAD)では手術が避けられるかもしれない。

<方法と結果>
2005年から2015年の間に、胸骨正中切開でAADの外科的手術を158例行なった。80歳代の患者24例(15.2%、平均年齢83±3歳)と、79歳以下の患者134例(平均年齢62±13歳)をレトロスペクティブに比較した。80歳代では女性が多かった(79.2%vs44.8%、P=0.0033)。


(本文より引用)

上行大動脈の置換は80歳代で多く(95.8%vs65.7%、P=0.0015)、全弓部置換は70歳代以下で多かった(4.2%vs26.9%、P=0.00165)。院内死亡は70歳代以下では14例、80歳代では0例であった(0%vs10.4%、P=0.1303)。主要な罹患率は同程度であった。慢性期の死亡は、80歳代で3例、70歳代以下で9例であった。1,3,5年生存率は、80歳代では94.4%、81.5%、81.5%で、70歳代以下では86.9%、85.6%、83.9%で、有意差はなかった。


(本文より引用)

<結論>
80歳代のAADに対する外科的手術は、より若い集団と比較しても良好な結果であった。院内死亡率は低く、長期的なアウトカムも良好であった。したがって、患者が80歳代というだけで外科的手術を忌避すべきではない。

◇この論文のPECOは?
P:スタンフォードA型急性大動脈解離
E:80歳以上
C:79歳以下
O:院内死亡率、1-,3-,5-年生存率

◇批判的吟味
・80歳代では、大動脈基部置換はゼロ。上行大動脈置換のみで済む症例がほとんど。臓器環流障害もゼロ。比較的状態がよさそうな症例に手術が行われている。

・80歳以上で手術に回らなかった症例について検討されていない。

・交絡因子の調整なし。

・単施設、少数。

◇結果
80歳代の大動脈解離であっても、70歳代以下と院内死亡率、遠隔期死亡率は有意差がないという結果。

80歳代であったとしても、解離が上行に限局(DebakeyII型)、大動脈弁手術や基部置換が不要で上行置換のみで済む、循環動態が安定、臓器環流障害なしなど、状態が比較的良さそうな症例では、高齢であること自体はそこまでネガティブな要因にならないのかもしれない。

女性の急性冠症候群は男性より予後が悪い

Outcomes of Women and Men With Acute Coronary Syndrome Treated With and Without Percutaneous Coronary Revascularization.
Am Heart Assoc. 2017 Jan 20;6:e004319

◇論文の概要
<背景>
非ST上昇型急性冠症候群(ACS)で入院した女性は、男性に比べ臨床的アウトカムが悪い。急性期の冠動脈血行再建による侵襲的治療が、アウトカムの性差を軽減する可能性がある。しかし、早期に侵襲的治療戦略をとった場合の臨床的アウトカムの性差について評価した研究はほとんどない。

<方法と結果>
人口ベースの観察研究である。2008−2011年にカナダのオンタリオで、早期のカテーテル治療を受けたACS患者を最長2年間フォローアップした。臨床的なアウトカムは、カテーテル治療の有無で層別化し、男女間で比較した。プロペンシティスコアを用いたIPW法で調整した。入院中にカテーテル治療を行った23473例のACSを解析した。


(本文より引用)

同一入院中にカテーテル治療を行なったのは、男性では66.1%、女性では51.8%であった。傾向で重み付けされたカテーテル治療が行った集団では、1年間の死亡とACSの再発は、カテーテル治療を行なった男性では10.6%、女性では13.1%であった(HR:1.24、95%CI:1.16−1.33)。対照的に、カテーテル治療を行わなかった男女間では、有意差はなかった(17.8%vs16.9%、HR:1.06、95%CI:0.99−1.14)。


(本文より引用)

<結論>
ACSにおいて早期の侵襲的な治療戦略をとった場合、男性と比べ女性では臨床的なアウトカムは悪かった。

◇この論文のPECOは?
P:非ST上昇型急性冠症候群
E/C:性別
O:死亡とACSの再発

◇批判的吟味
男女間で死亡率は同程度。ACSの再発が女性で多い。baselineでは、二枝・三枝疾患の割合は男女で差はないが、ACSの再発はほとんどの症例で試験登録時ACSの非責任病変以外で起こっているはずなので、女性は男性より不安定病変(壊死性プラーク、TCFA、びらん)、びまん性病変が多いのか。

また、出血は同程度だが、輸血は女性で多いので、30日までのアウトカムならそれも影響があるかもしれない(12.8%vs7.3%)。

◇感想
非ST上昇型急性冠症候群では、PCIやっても女性は男性よりACSの再発が多い。女性では、遠隔期の薬物療法がより重要ということかもしれない。

ワルファリンによるカルシフィラキシス

Warfarin-Associated Nonuremic Calciphylaxis
JAMA Dermatol. 2017 Jan 11. [Epub ahead of print]

《要約》
重要性
腎不全に関連した古典的なカルシフィラキシスは、生命を脅かす疾患である。腎不全がないワルファリン関連カルシフィラキシスは報告されていたが、それが古典的カルシフィラキシスの一種なのか、別の存在なのかは不明であった。我々は、1例のワルファリン関連カルシフィラキシス、我々の施設での別の2例、そして文献から得られたすべてのワルファリン関連カルシフィラキシスのレビューを報告する。我々のレビューは、ワルファリン関連カルシフィラキシスは古典的カルシフィラキシスとは、臨床的、病理生理学的に異なったものであることを示している。

目的
ワルファリン関連カルシフィラキシスのレビューと古典的カルシフィラキシスとの関連を明らかにすること。

デザイン、セッティング、患者
MEDLINEで、”calciphylaxis and warfarin”, “non-uremic calciphylaxis”, “nonuremic calciphylaxis”で検索した。非尿毒性カルシフィラキシスは、高度な腎疾患(血清Cr<3mg/dl、eGFR>15ml/min、透析を必要とする急性腎不全、腎移植)がない病理組織学的なカルシフィラキシスと定義した。

暴露
すべての患者はカルシフィラキシス発症以前にワルファリンを内服していた。

アウトカム
患者のデータは、公表された報告より要約した。患者の医療情報は可能であれば取り寄せ、レビューした。

結果
18例の非尿毒性カルシフィラキシスを確認し、うち15例は文献からで、3例は自施設のものであった。患者は女性が多く(15/18例、83%)、年齢は19−86歳であった。カルシフィラキシス発症以前のワルファリンの内服期間は32ヶ月であった。病変は大抵下腿であった(12/18例、67%)。リン酸カルシウムの上昇は報告がなかった。石灰化がもっとも多かったのは中膜(8/18例、44%)、血管内腔と内皮(7/18例、39%)であった。主要な治療は、ヘパリンまたは低分子ヘパリンの置換(13/18%、72%)、チオ硫酸ナトリウムの静注(9/18例、50%)、高圧酸素療法(3/18例、17%)であった。退院時生存率は高く、15例(83%)で全治、3例が死亡した。

結論
ワルファリン関連カルシフィラキシスは古典的カルシフィラキシスとは、病理組織、経過、特に転帰が異なる。これらの所見はこの疾患の臨床的なマネージメントや治療に影響を与える。

症例は、60歳代の女性で、高脂血症、関節リウマチ、糖尿病、心房細動があり、2年前からワルファリンを内服していた。1年前から下腿に網状皮斑があり、紫斑が新たに出現した。腎疾患なし。血清Cr、Ca、P正常で、副甲状腺機能も正常。

生検すると、10日後に潰瘍を形成してしまった。


(本文より引用)

抗凝固療法をリバロキサバンに変え、チオ硫酸ナトリウムなどでよくなった。

◇感想
カルシフィラキシス自体、初めて知りました。

腎不全でみられるカルシフィラキシスとワルファリン関連カルシフィラキシスとの違いは、前者が体幹・下肢近位に多く、脂肪と関連があるのに対し、ワルファリン関連カルシフィラキシスは下腿に多いということと、前者で死亡率が高いということ(50−80%)。

ワルファリン関連カルシフィラキシスは、血管の石灰化が背景にあるようです。

治療はワルファリンの中止。チオ硫酸ナトリウム静注は、腎不全によるカルシフィラキシスでは創傷治癒を促し効果があるようですが、ワルファリン関連カルシフィラキシスでも効果があるかは不明。ビタミンKが有効かもしれない。

EMPA-REG OUTCOME試験 エンパグリフロジンは腎症の進行を抑制する

Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes
N Engl J Med 2016; 375:323-334

《要約》
背景
糖尿病は、心血管イベントと腎イベントのリスクを増加させる。EMPA-REG OUTCOME試験では、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンが心血管イベントリスクが高い2型糖尿病の心血管イベントを減少させた。我々は、事前に明示したエンパグリフロジンの長期的な腎臓への影響を評価した。

方法
eGFR≧30ml/min/1.73m2の2型糖尿病患者を、エンパグリフロジン群(10mgと25mg)とプラセボ群に無作為に割り付けた。事前に明示した腎アウトカムは、腎症の進行(顕性アルブミン尿、血清Cr値の倍増、腎代替療法の導入、腎疾患による死亡)とアルブミン尿の発生である。

結果
腎症の発生と増悪は、エンパグリフロジン群で525/4124例(12.7%)、プラセボ群で388/2061例(18.8%)だった(HR:0.61、95%CI:0.53−0.70)。血清Crの倍増は、エンパグリフロジン群で70/4645例(1.5%)、プラセボ群で60/2323例(2.6%)で、44%の有意な相対リスク低下を認めた。腎代替療法の導入は、エンパグリフロジン群で13/4687例(0.3%)、プラセボ群で14/2333例(0.6%)で55%の相対リスク低下を認めた。アルブミン尿の発生には有意な差はなかった。腎機能低下例でのエンパグリフロジンの安全性プロファイルは、試験全体と似通っていた。

結論
心血管リスクの高い2型糖尿病患者では、標準療法+エンパグリフロジンは、腎症の進行と臨床的に重要な腎イベントの低下と関連がある。

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患を有する2型糖尿病
I:エンパグリフロジン10mg/25mgの内服(エンパグリフロジン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:腎症の進行(顕性アルブミン尿、血清Cr値の倍増、腎代替療法の導入、腎疾患による死亡)とアルブミン尿の発生

◇baselineは同等か
同等。ACE阻害薬/ARB、利尿薬も差はない。

試験開始後、プラセボ群で利尿薬を開始した例が多い(37%vs27%)。これは腎障害進行の原因とも結果とも考えられる。

◇結果
mITT解析で結果は以下の通り。

◇感想
SGLT2阻害薬により尿糖の増加し尿浸透圧が上昇することと、近位尿細管でのNa再吸収の抑制による遠位尿細管(緻密班)でのNa濃度が上昇することで、緻密班を介しTGFが働き、糸球体内圧が低下し、糸球体過剰濾過が改善される。

また、SGLT2阻害薬により血中ケトン体濃度は上昇するが、ケトン体は1分子あたりのATP産生量はグルコースよりも大きいため、腎へのエネルギー供給が増加するために保護的に作用する。

遠位尿細管のCl濃度が低下することで緻密班を開始レニン分泌が促される。SGLT2阻害薬による遠位尿細管のCl濃度上昇は、レニン分泌に対し抑制的に働く。

SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)の腎保護作用については、さまざまな仮説がある。心不全イベントの減少、腎アウトカムの改善など有効性を示しているが、安全性についてはRCTでは判断できないし(プラセボと差はないといっているがパワー不足)、長期的な安全性についてのデータが待たれる。

EMPA-REG OUTCOME試験 アジア人(サブグループ解析)

Empagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Asian Patients With Type 2 Diabetes and Established Cardiovascular Disease - Results From EMPA-REG OUTCOME®.
Circ J. 2017 Jan 25;81(2):227-234.

《要約》
背景
EMPA-REG OUTCOME®︎試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者に対し、標準的治療にエンパグリフロジンを追加することで、3-point MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞)を14%、心血管死を38%、心不全入院を35%、全死亡を32%低下させた。我々は、アジア人におけるエンパグリフロジンの効果を調べた。

方法と結果
患者は、エンパグリフロジン10mg、エンパグリフロジン25mg、プラセボに無作為に割り付けられた。全体7020例のうち、1517例(21.6%)がアジア人であった。3-point MACEはエンパグリフロジン群で79/1006例(7.9%)、プラセボ群で58/511例(11.4%)、ハザード比0.68(95%CI:0.48−0.95)、人種による交互作用P=0.0872であり、アジア人での3-point MACEの減少は、試験全体と一貫していた。エンパグリフロジンのアジア人に対する効果は、MACE、全死亡、心不全アウトカムで、試験全体と一貫していた(人種による交互作用のP>0.05)。有害事象のプロファイルは、アジア人と全患者で似通っていた。

結論
心血管疾患を有するアジア人の2型糖尿病患者では、エンパグリフロジンの心血管アウトカムと死亡率に対する効果は、EMPA-REG OUTCOME試験全体の患者と一貫性があった。

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患を有する2型糖尿病のアジア人
I:エンパグリフロジン10mgもしくは25mgの内服(エンパグリフロジン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:心臓死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞(3-point MACE)

◇患者背景


EMPA-REG OUTCOME試験全体との患者背景の違いは、糖尿病罹患期間が短く、インスリン使用が少ない、体重が軽い、多枝疾患が多い、利尿薬の使用が少ないという感じ。

エンパグリフロジン群とプラセボ群で群間差はない。

◇結果
エンパグリフロジン群 vs プラセボ群
・3-point MACE
7.9% vs 11.4% HR:0.68(95%CI:0.48−0.95)

・4-point MACE(3-point MACE+不安定狭心症による入院)
10.0% vs 13.5% HR:0.73(95%CI:0.54−1.00)

・心血管死
2.2% vs 4.9% HR:0.44(95%CI:0.25−0.78)

・致死的/非致死的脳梗塞
3.8% vs 3.9% HR:0.95(95%CI:0.55-1.64)

・致死的/非致死的心筋梗塞
2.9% vs 4.5% HR:0.62(95%CI:0.36−1.08)

・心不全入院
2.2% vs 3.1% HR:0.70(95%CI:0.37−1.33)

◇批判的吟味
・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、Hb<8.5%、BMI<30で良いのではないかということが言われていた。しかし、アジア人のサブグループ解析ではサンプルサイズが小さいため、サブグープ解析による一貫性については調べられておらず、同様の傾向を示すかどうかはわからない。

・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、3-point MACEのうち心血管死が有意に減少しており、それは心不全入院を減らした結果であった。アジア人でのサブグループ解析でも3−point MACEのうち心血管死が有意に減少しており、心不全入院を抑制する傾向があったため、心不全死を減らしているものと推測する(心不全入院で有意差が付いていないのはパワー不足と思われる)。

・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、エンパグリフロジンで脳梗塞が増える傾向にあったが、アジア人ではその傾向は見られなかった。

・3-point MACEのNNTは29、心血管死のNNTは38。

◇感想
EMPA-REG OUTCOME試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者で、エンパグリフロジンを投与することにより3-point MACEを有意に減少させた。エンパグリフロジンにより心不全入院、心不全死が抑えられたためと考えら、アジア人でのサブグループ解析でも同様の傾向が認められた。

他のSGLT2阻害薬でも心血管イベントをアウトカムとした試験が進行中のようで、この効果がドラッグエフェクトなのかクラスエフェクトなのか、はたまた違う方向に議論が進んでいくのか、期待して待ちたいと思います。

ていうか、EMPA-REG OUTCOMEって商標登録されていたんですね。悪用されるのを防ぐためなのでしょうか。

メトホルミンは、CKD、CHFでも全死亡と心不全入院を減少させる

Clinical Outcomes of Metformin Use in Populations With Chronic Kidney Disease, Congestive Heart Failure, or Chronic Liver Disease: A Systematic Review.
Ann Intern Med. 2017 Jan 3. [Epub ahead of print]

◇論文の概要
<背景>
メトホルミンの使用に関するFDAの警告の変化は、今まで禁忌あるいは慎重投与だった患者への処方を増やすかもしれない。処方する者は、これらの患者に対するメトホルミンの臨床的アウトカムを理解するべき。

<目的>
2型糖尿病で、中等度から高度の慢性腎臓病(CKD)、うっ血性心不全(CHF)、肝障害のある慢性肝臓病(CLD)の患者を対象とし、メトホルミンの臨床的アウトカムを統合すること。

<データ収集>
MEDLINE:1994年1月〜2016年9月
コクランライブラリー・EMBASE:1994年1月〜2015年11月

<研究の選択>
英語論文であり、以下の3つを満たすこと。
1)CKD(eGFR60未満)、CHF、CLDを合併した2型糖尿病を対象とした研究であること
2)メトホルミンを含んだレジメンと含まないレジメンの比較であること
3)全死亡、主要な心血管イベントをアウトカムにしていること

<データ抽出>
独立した2人のレビュアーが、情報の要約を行い、研究の質とエビデンスの強度を評価する。

<データの統合>
17の観察研究を質的・量的に統合すると、メトホルミンはCKD、CHF、CLDにおいて全死亡の減少と関連があった。また、CKD、CHFでは心不全入院の減少と関連があった。


CKDでは、HR:0.78(95%CI:0.63−0.96)と、メトホルミンにより全死亡が有意に低下している。ただし、I2統計量:79.8%と異質性は高い。


CHFについての対象となった観察研究のfunnel plotで、Egger’s test P=0.09と非対象ではない。CKDとCLDは、選択された研究の数が少ないため掲載されていない。


CHFでも、HR:0.78(95%CI:0.71−0.87)と、メトホルミンにより全死亡が有意に低下しているが、これもI2統計量:62.3%と異質性は高い。

<限界>
エビデンスの強度は低く、全死亡や心血管イベント以外のデータは十分でない。観察研究の統合であり、また観察期間は一定ではない。

<結論>
CKD、CHF、CLDにおいてメトホルミンの使用は、主要な臨床的アウトカムの改善と関連があった。我々のデータは、メトホルミン使用に関する最近の流れを支持するものである。

◇論文のPICOはなにか
P:CKD、CHF、CLDを合併した2型糖尿病
I:メトホルミンを含んだレジメン
C:メトホルミンを含まないレジメン
O:全死亡、主要な心血管イベント

◇批判的吟味
・CKD、CHF、肝障害を伴うCLDでもメトホルミンにより死亡率が低下しているが、異質性は高く結果の信頼性は低い。
・CKDやCHFの定義が試験により異なっており、重症度・患者背景の違いより異質性が高くなった可能性。
・メトホルミン投与量がわからない(どのれくらいの量が許容できるのかわからない)。

◇感想
メトホルミンは体重増加や低血糖の原因にならず、血糖降下作用を超えた死亡率の低下が示されている薬剤。しかし、乳酸アシドーシスの懸念から、CKD、CHF、CLDでは禁忌になっていました。最近になり、これらの疾患でも比較的安全に投与できるとして、処方は増えているみたい。

日本人は欧米人と異なり、インスリン分泌が低下しやすく、彼らほどインスリン抵抗性が高くありませんが、薬価・低血糖リスクなどを考慮して、個人的にはまずメトホルミンから処方することが多いです。心不全やeGFR30以上のCKDでも使えるということなので、循環器内科医としてはありがたいです。