心機能が保たれた心筋梗塞ではβblockerは必要か

AMI再灌流後の薬物療法はどうするか。

抗血小板薬2剤(ステント留置した場合)、スタチン、ACE阻害薬・ARB。ここらへんは異論がないと思います。

では、βblockerは必要なのでしょうか。

答えは、YESもNOもどちらも正解かもしれません。ACS後のβblockerの有効性を示したデータの多くは、今のようにPCIが標準治療になる前のものではありますが、PCIが標準療法になってからもβblockerにより、生命予後の改善(観察期間1-2.1年)を認めています。それは、βblockerの容量には依存しないようです(1−2)

つまり、ACS発症後にβblockerを内服することは、ACS全体で見ると正解です。ただ、心機能が保たれた、いわゆるHFpEF(EF≧50%)の場合はどうでしょうか。私の知る限りでは、ACS後のHFpEFのみを対象にしてβblockerの有効性を検証した研究はありません。

非虚血を含んだデータですが、あるシステマティックレビューでは、洞調律のHFrEFやHFmrEFでは、βblockerによる死亡率低下が示されていますが、HFpEFではβblockerの有無で死亡率に差はありませんでした(3)。そして、そのHFpEFの85%が虚血ですので、虚血のHFpEFではβblockerの効果が示されていないと言い換えても間違いではないと思います。

また、冠動脈疾患の既往はないけど冠動脈疾患のリスクがある患者では、βblockerにより心血管死・心筋梗塞・脳梗塞が増える可能性もあります(ハザード比1.18 [10.2-1.36])(4)。それは糖尿病や脂質異常症などの代謝への悪影響と考えられます。

なので、冠動脈疾患リスクとして糖尿病や脂質異常症などがある場合には、より長期でみた場合にβblockerを内服することで予後の悪化に繋がる可能性があるということです。

冒頭のACS後にβblockerが必要かどうかに対する答えですが、心機能が低下している場合(EF<50%)にはYESで、心機能が保たれている場合(EF≧50%)ではNO、というのが私の意見です。そもそも、虚血であれ非虚血であれHFpEFの予後を改善させる薬剤はネプリライシン阻害薬以外にないので、上記の話は非虚血の場合でも同じなんですけどね。

一応、ACS発症後のβblockerについて、ガイドライン的にはどうなっているかというと、ECSでは・・・

・LVEF≦40%:classⅠ
・すべての患者でルーチンで入院中から開始し継続する:classⅡa

となっているので、HFpEFでもβblockerはclassⅡaということになります(5)。これからすると、私の意見はちょっと偏ってるのかもしれません。

1)J Am Coll Cardiol. 2015;66(13):1431-41.
2)Circ J. 2019;83:410-417.
3)Eur Heart J. 2018;39(1):26-35.
4))JAMA. 2012;308(13):1340-1349
5))Eur Heart J. 2018;39(2):119-177.

日本人でのPCSK9阻害薬の費用対効果

Cost-Effectiveness of PCSK9 Inhibitor Plus Statin in Patients With Triple-Vessel Coronary Artery Disease in Japan.
Circ J. 2018 Sep 25;82(10):2602-2608.

欧米の冠動脈疾患患者で家族性高コレステロール血症(FH)と思われる患者を対象としても、PCSK9阻害薬の費用対効果はよくないです。薬価を71%下げないと費用に見合った効果が見出せないとする報告もあります(1)

欧米人でもそうなので、日本人のFHでも費用対効果が低いということは想像に難くありません。

この論文をかいつまむと・・・
・PCSK9阻害薬+スタチンにかかる費用は標準療法を比較すると、1350万円/QALY。
※生存期間とその質をかけた値。健康に1年生きる=1QALY、死ぬ=ゼロQALY
・ACS+DM+3枝病変(3VD)であっても、費用対効果が低い。
・LDL高値(≧200mg/dl)のFHで3VD=340万円/QALYで、費用対効果が高い。
・この論文では調べられてないけど、PCSK9阻害薬+スタチンよりもエゼチミブ+スタチンの方が費用対効果が高い。

という感じです。LDL≧200mg/dl+3VDだと良いようですが、スタチンを投与していてそこまでLDLが高いFHは今まで見たことはありません。確かにそこまで高ければ、下げねば!という気にさせられます。

1)JAMA. 2017 Aug 22;318(8):748-750

Fushimiレジストリ 抗凝固薬と抗血小板薬の傾向と予後

Current Status, Time Trends and Outcomes of Combination Therapy With Oral Anticoagulant and Antiplatelet Drug in Patients With Atrial Fibrillation ― The Fushimi AF Registry ―
Circ J. 2018 Nov 24;82(12):2983-2991.

抗凝固薬単剤と抗凝固薬+抗血小板薬併用の現状と予後を比較。

【デザイン、セッティング】
・Fushimiレジストリ
・後向きコホート研究
・2378例(抗凝固薬単剤78%、抗凝固薬+抗血小板薬併用22%)
・交絡因子の調整:COX比例ハザードモデル

【結果】
2011年→2017年で、抗凝固薬+抗血小板薬併用は26%→14%に経時的に減少。

併用群の30%で、動脈硬化疾患の合併なし。

動脈硬化疾患ありの集団で
抗凝固薬単剤 vs 抗凝固薬+抗血小板薬併用

【まとめと感想】
抗凝固薬に抗血小板薬を加えることで、出血も塞栓症も増える傾向にあるけど、統計学的には有意な差ではない。

J-RHYTHMレジストリでは、ワルファリンにアスピリンを加えることで、ワルファリン単剤と比較して、塞栓症は変わらなかったけど、大出血(相対リスク1.6)と、全死亡(相対リスク1.5)は、有意に増加した(1)

結果は微妙に違うけど、それはそのレジストリに含まれている患者がもともと持っているリスクによっての違いもあるでしょう。まあ、出血が増えるというのはある意味当然で、それを上回るベネフィットがあるかどうかが問題で、CHA2DS2-VAScスコア≧2+HAS-BLED≧3だとワルファリンとアスピリンの併用の方が、net clinical benefitが高いという話もありますが(1)、AF+冠動脈疾患患者の慢性期の抗血栓療法は基本的には抗凝固薬単剤でいい気がします。

1)Int J Cardiol 2016;212:311-317

拡張型心筋症(DCM)で心機能が改善したら薬剤を中止にできるのか

DCMではβ遮断薬、ACE阻害薬を処方し、可能ならMRAも入れます。それらの薬剤によって心機能が改善した場合、患者さんから薬剤の中止は可能か聞かれることもありますが、副作用などの問題がない限り終生の内服が必要であることを伝えて、飲んでもらっています。心機能がよくなったからといって、中止したことはありません。

薬物療法により心機能が改善した人で、内服を自己中断して通院をやめてしまい、数ヶ月〜数年でまた心機能が低下して、非代償性心不全となり受診or搬送されてくる人がいます。そして、そういう方に薬剤を再開しても、以前のような良好な反応は得られず、心機能は低下したままだったりします。

なので、DCMで薬剤を中止しないことは当たり前のことだと思っていました。薬剤を継続すべき根拠など調べたことがありませんでした。

でも、当たり前ではなかったようです。心機能が改善したDCMで薬剤を中止できるかどうかRCTをやったようです。つまり、薬剤を中止することが倫理的には問題ないということです。なにも疑わず常識だと思っていたことも、実はそれほど明確な根拠がなかったりするものなんですね(著者によれば、後向き研究しかなかったようです)。

まあ、結果としては、心機能が改善しても中止してはいけないということのようですが。

Withdrawal of pharmacological treatment for heart failure in patients with recovered dilated cardiomyopathy (TRED-HF): an open-label, pilot, randomised trial.
Lancet. 2019 Jan 5;393(10166):61-73.

【PICO】
P:薬物療法により心機能が改善したDCM
I:薬剤の漸減中止
C:薬剤の継続
O:DCMの再発
secondary endpoint:心血管死、心血管イベント、心血管疾患による予定外入院

薬剤:ループ利尿薬、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、MRA

DCMの再発の定義
1)EFが10%以上低下し50%未満になること
2)LVEDVが10%以上増加し正常範囲を逸脱すること
3)NT-proBNPがベースラインの2倍以上上昇し400ng/Lを超えること
4)心不全の臨床的兆候

inclusion criteria:以前DCMと診断されEF<40%だった患者、ループ利尿薬・β遮断薬・ACE阻害薬・ARB・MRAを内服中、心臓MRIでEF>50%+LVESVI(LVESV/体表面積)が正常範囲、NT-proBNP<250ng/L
exclusion criteria:コントロール不良の高血圧(>160/100mmHg)、中等度以上の弁膜症、eGFR<30、上室性不整脈・心室性不整脈のためβ遮断薬の内服が必要な状態、狭心症など

【手順】
薬剤は16週以内に中止。薬剤はループ利尿薬から中止する。16週の時点で臨床症状・NT-proBNP・心臓MRIをチェック。その後、6ヶ月間両群の観察をする。6ヶ月たったら、薬剤継続群も同様の手順で薬剤を中止する。

【試験の概要】
デザイン:RCT(open-label、sigle center)
地域:イギリス
登録期間:2016年4月21日〜2017年8月22日
観察期間:12ヶ月
症例数:51例(中止群25例、継続群26例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
両群に差はない。
ざっくりと。年齢54歳、男性2/3、DCMの診断から4−5年、当初のEF25%、EFの改善30%、ACE阻害薬100%、β遮断薬90%、MRA50%、ループ利尿薬10%、LVEDVI80、EF60%、遅延造影あり40%。

【結果】
最初の6ヶ月で、薬剤中止群25例のうち、11例(44%)でprimary endpointが発生。薬剤継続群はゼロ。

次の6ヶ月(薬剤継続群も薬剤を中止する)では、25/26例で薬剤が中止され、9/25例(36%[20.6-57.8%])でprimary endpointが発生。

【まとめと感想】
心機能が改善したからといって、DCMの薬物療法は中止すべきではありません。

心原性ショックを合併した急性心筋梗塞にIABPは不要なのか

IABPについてのRCTは多くありません。観察研究では、心原性ショックに対するIABPはbetterな結果でしたが、その後に行われたIABP-SHOCKⅡ試験では心原性ショック合併急性心筋梗塞の死亡率は、30日後も1年後もIABPなしの薬物療法と変わりありませんでした(1)

IABP-SHOCKⅡ試験は心原性ショックが対象ですが、非心原性ショックを対象にしたRCTはいくつかあります。200−400例程度のRCTは3つほどあり、どれもIABPの有効性は見いだせていません。

そのうちのひとつに、The Balloon Pump–Assisted Coronary Intervention Studyというのがあります。EF<30%で虚血範囲が大きい冠動脈狭窄に対するPCIで、IABPのサポートが予後を改善するか検証されていますが、6ヶ月後、5年後の死亡率に差はありませんでした(2)

心原性ショックを合併した急性心筋梗塞では、本当にIABPは意味がないのでしょうか。IABP-SHOCKⅡ試験のサブグループ解析では、年齢、性別、糖尿病、STEMI、LADのAMI、OMIの既往、SBP<80mmHgのサブグループでは有意差はありませんでした。唯一、高血圧症の既往がないグループでIABP betterな結果でしたが、それが実臨床でIABPを使用するかどうかの判断材料にはならないように思います。

メタ解析でも、心原性ショック・非心原性ショックともに、IABPは死亡率低下には繋がっていません(3)

さらに、日本のデータ(Japan Cardiovascular Database-Keio Interhospital Cardiovascular Studies)では、IABPの院内死亡のオッズ比が3.87(95%CI:2.71−5.52)と増加していることが報告されています(4)。もちろん、IABPを導入すべき症例はより重症であるため、バイアスを含んだものだと思いますが、RCTで一貫したネガティブな結果がでているので、無視できません。

IABPを導入するかどうかは、循環動態が不安定で命に関わる状況の中で判断しなければならないため、なかなか難しいところです。

これは、IABP-SHOCKⅡ試験の6年のデータです。

ntraaortic Balloon Pump in Cardiogenic Shock Complicating Acute Myocardial Infarction: Long-Term 6-Year Outcome of the Randomized IABP-SHOCK II Trial.
Circulation. 2018;139:395–403

【PICO】
P:緊急血行再建が予定された心原性ショック合併急性心筋梗塞
I:AMI急性期のIABP導入
C:IABP導入なし
O:全死亡、心筋梗塞の再発、冠動脈血行再建、脳梗塞、ICD植込み

exclusion criteria:30分以上のCRP、重大な脳梗塞、機械的合併症による心原性ショック、12以上持続するショック、重度のPAD、grade2以上のAR、90歳以上

【試験の概要】
デザイン:RCT(open-label)
地域:ドイツ
登録期間:2009年6月〜2012月3月
観察期間:6.2年(5.6−6.7年)
症例数:600例(IABP群301例、薬物療法群299例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Maquet社)

【患者背景】
両群に有意差なし。
ざっくりと。年齢70歳、男性70%、ランダム化前のCRP施行45%、多枝病変77%、カテコラミンの使用90%、EF35%、ショックから発症まで2.17時間、IABP留置期間3日。

クロスオーバー:IABP群4.3%、薬物療法群10.0%

【結果】
フォローアップ率98.5%(591/600例)。

【まとめと感想】
心原性ショックを合併した急性心筋梗塞で、IABPは長期予後も長期予後(6年)も改善しませんでした。心原性ショックを合併していない症例を対象としたRCTとも一貫した結果です。

6年のフォローアップでも、高血圧なしのサブグループはIABP betterな結果でした。高血圧がない方が、IABP下での拡張期血圧を高めに維持でき、それが冠血流維持に繋がる・・・、なんて無理やりですね。discussionではサブグループについては、ほぼ言及なしです。ただの多重検定によるαエラーのような気がします。

1)Lancet 2013; 382: 1638–45
2)JAMA. 2010;304(8):867-874
3)JAMA Intern Med. 2015;175(6):931-939.
4)JAMA Intern Med. 2015;175(12):1980-2.

抗凝固療法にPPI併用は必要か

抗凝固薬にPPIの併用・・・
よくやられているパターンだと思います。

Association of Oral Anticoagulants and Proton Pump Inhibitor Cotherapy With Hospitalization for Upper Gastrointestinal Tract Bleeding.
JAMA. 2018 Dec 4;320(21):2221-2230.

【PECO】
P:抗凝固療法を新規で開始された患者
E:PPIあり
C:PPIなし
O:上部消化管出血による入院

抗凝固療法:アピキサバン、ダビガトラン、リバロキサバン、ワルファリン(エドキサバンは試験期間中の処方が少なかったため含まない)

inclusion criteria:30歳以上

【デザイン、セッティング】
・後向きコホート研究
・メディケア
・1643123例
・2011年1月1日〜2015年9月30日に抗凝固薬を開始された患者
・ポアソン回帰分析

【結果】

単位は調整後発生率/10000人年 (95%CI)

【まとめと感想】
PPIの内服により総じて40%ぐらい、消化管出血による入院が減っています。40/10000人年ぐらいなので、絶対値としてはそれほどインパクトは強くありません。数字だけ見ると、ダビガトランはワルファリンより消化管出血が少ないようですが、より消化管出血リスクの低い患者が選ばれているのだろうと思います。

DOAC内服時のPPIの併用について、ガイドラインではどうなっているのでしょうか。

Novel Oral Anticoagulants for Atrial Fibrillation(ESC)

DOAC投与時は、消化管出血の既往がある場合や抗血小板薬併用時は”考慮しても良い”、骨髄抑制が起こり得る化学療法や放射線療法が計画されている場合には”考慮すべき”ということになっています。それと、ダビガトランは臨床的な効果には差は長い、PPIやH2Bを併用すると10−30%吸収が低下します。アピキサバン、エドキサバン、リバロキサバンには影響はありません。

心房細動で抗凝固療法の適応になる時点で、他の併存疾患があり、それなりに薬を飲んでいる人が多いので、ポリファーマシーの観点からもルーチンにPPIを併用するのは望ましくないと思っています。

ビタミンDと心血管疾患・悪性腫瘍

前回記事にしたn-3脂肪酸の心血管イベント・悪性腫瘍への効果を検証したRCTは、2×2 factorial designで、ビタミンD製剤についても同様にその効果が調べられています。

N-3脂肪酸と心血管疾患・悪性腫瘍

日照時間が長い地域は短い地域より、心血管疾患や悪性腫瘍が少ないという報告だとか、血清25ヒドロキシビタミンDの低値と、心血管疾患・悪性腫瘍の増加に関連があるといった報告があるようです。

ただ、ビタミンDを補充することが、心血管疾患や悪性腫瘍の抑制に繋がるかどうかは定かではありません。

【PICO】
P:心血管疾患・癌の既往のない患者
I:コレカルシフェロール2000IU内服
C:プラセボ内服
O:心筋梗塞+脳梗塞+心血管死+浸潤性悪性腫瘍

【結果】

年齢、性別、血清25ヒドロキシビタミンD濃度などすべてのサブグループで有意差はありませんでした。

【まとめと感想】
ビタミンDの内服は、心血管疾患や悪性腫瘍の抑制には繋がりませんでした。

ビタミンDと心血管疾患・悪性腫瘍についてはよく知りませんが、こういうことはよくあると思います。たとえば、高尿酸血症は心血管疾患のリスクになりますが、フェブキソスタットで尿酸を抑えても、心血管疾患の抑制には繋がりませんし、潜在性甲状腺機能低下症も心血管疾患のリスクになりますが、チラーヂン®︎を内服しても心血管疾患の抑制には繋がりません。

血清25ヒドロキシビタミンD濃度の低値と心血管疾患の増加には関連があるようですが、ビタミンDを補ってもイベントは減らない。理屈としては正しそうに見えますが、話はそう簡単ではないようです。

n-3脂肪酸と心血管疾患・悪性腫瘍

昨日に引き続いて、n-3脂肪酸の論文。心血管イベントと悪性腫瘍がアウトカム。

結論から言うと、やはり高容量のEPAでないと効果はないようです。著者もdiscussionの中でコクランなどのメタ解析を引用して、n-3脂肪酸のサプリメントには心血管疾患一次予防・二次予防に効果はほとんどないと言っています。

では、なぜNEJMに載ったのでしょう。よくわかりません。

Marine n−3 Fatty Acids and Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer
N Engl J Med. 2019 Jan 3;380(1):23-32.

【PICO】
P:心血管疾患・癌の既往のない患者
I:n−3脂肪酸(EPA460mg+DHA380mg)内服
C:プラセボ内服
O:心筋梗塞+脳梗塞+心血管死+浸潤性悪性腫瘍

inclusion criteria:男性50歳以上、女性55歳以上

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:アメリカ
登録期間:2011年11月〜2014年3月
観察期間:5.3年(3.8−6.1年)
症例数:25871例(n-3脂肪酸群12933例、プラセボ群12938例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
同等。
ざっくりと。平均年齢67歳、男女半々、白人70%、黒人20%、アジア人1%、アドヒアランス81%。糖尿病13%。

【結果】

primary endpoint:心筋梗塞+脳梗塞+心血管死+浸潤性悪性腫瘍

年齢、性別、人種、糖尿病や高血圧の有無、アスピリンやスタチンの有無など、どのサブグループでも有意差なく、一貫してn-3脂肪酸の効果は見られない。

【感想・まとめ】
心筋梗塞で有意差が付いている。145例と200例。確かに差は大きく見えますが、パーセンテージで表すと1.12%と1.55%。

とても有意差とは思えない、少なくとも臨床的には。

高容量EPAにより心血管死・心筋梗塞・脳梗塞が減少する REDUCE-IT試験 

青魚を多く摂取することで冠動脈疾患が減ることは、観察研究で明らかになっています。

それは、Hugh Sinclairが1944年に最初に発見しています。当時イヌイットは魚介から14g/日のn-3脂肪酸を摂取しており、それが冠動脈疾患の少なさと関連していると考えられました。

その後に、80年代に行われたDART試験やGISSI-Prevenzion試験で、心血管イベントの減少や死亡率の改善などが報告されました。ただ、80年代の臨床試験なので、β遮断薬・ACE阻害薬・スタチンなどの内服率は低く、今の至適薬物療法とは異なるものでした。

その後も、EPAにより動脈硬化イベント・致死的不整脈・心不全などが抑制されるだろうという仮定のもと、多くのRCTが行われました。しかし、多くはネガティブな結果でした。

そして、コクランのメタ解析では、EPAのサプリメントは心血管イベントの抑制にはほとんど効果がないと結論づけられています。

ただ、RCTの多くはEPAの量はそれほど多くありません。数百mgなので、魚から摂ろうと思えば取れる量です(毎日魚だと辛いかもしれませんが)。JELIS試験でもEPA1800mg/日です。イヌイットのn-3脂肪酸摂取量が14g/日であることを考えると、かなり少ない量ですので、高容量のEPA(あるいはn-3脂肪酸)を摂取することで心血管イベントが抑えられる可能性は残っていました。

今回の論文ではEPAは4g/日と、今までのRCTの中でも最も高い容量のEPAが用いられ、心血管イベントが抑制されるか検証されています。

Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia.
N Engl J Med. 2019 Jan 3;380(1):11-22

【PICO】
P:空腹時中性脂肪150−499mg/dlの冠動脈疾患ハイリスク患者
I:EPA(イコサペント酸エチル)4g分2内服
C:プラセボ(ミネラルオイル)の内服
O:心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+冠動脈血行再建+不安定狭心症

ハイリスク患者:45歳以上の冠動脈疾患 or 50歳以上で糖尿病とそれ以外に1つ以上冠危険因子を有する患者

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:11ヶ国(アメリカ、カナダ、オランダ、オーストラリア、ニュージランド、西欧、アジアなど)
登録期間:2011年11月28日〜2016年8月4日
観察期間:4.9年(中央値)
症例数:8179例(EPA群4089例、プラセボ群4090例) 脱落は730例(9%)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Amarin Pharma社)

【患者背景】
LDL値のみ有意差あり(EPA群vsプラセボ群:74vs76mg/dl)。その他は同等。
ざっくりと。年齢64歳、男性70%、白人90%、二次予防70%、エゼチミブの内服6%、糖尿病60%、TG216mg/dl、HDL40mg/dl

【結果】

primary endpoint:心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+冠動脈血行再建+不安定狭心症

サブグループ解析でも一貫性が見られますが、65歳以上・TG<200mg/dl or HDL>35mg/dl・高感度CRP>2mg/LのサブグループではP for interaction < 0.10を下回っています。


約5年でのNNT。

【まとめと感想】
高容量のEPAにより心血管イベントが抑制されるという結果でした。どのアウトカムも20−30%リスク減少していますが、絶対値はそれほど大きくはありません。かつ観察期間は約5年です。でも、この結果は驚きました。

残念なことに、日本の保険診療ではこの量のEPAを処方することはできません(サプリメントはありますが)。エパデール®︎は1800mgまでですし、ロトリガ®︎は4gまで処方できますがn-3脂肪酸(EPA+DHA)として4gなので、その中にEPAがどれくらい含まれているか添付文書からわかりません。

メタ解析で明らかにされている通り、日本で処方できる容量では心血管イベントに対する効果は期待できません。EPAを内服して足りない分を魚を食べることで補うのはアリかもしれませんが・・・。

あと、脳梗塞も28%リスク減少している点にも注目すべきです。脳梗塞は脂質よりも血圧の関与が大きいので、これはTGを下げた効果というより、やはりEPAの作用によるものだと思います。

EPA1800mg/日程度では心血管イベントは抑えられませんので、エパデール®︎やロトリガ®︎を処方しようと思ったことはないですが、日本でも高容量EPAが処方できるようになれば、リスクの高い患者では出していいなと思いました。観察研究との一貫性もあると思います。

80代の高齢心房細動患者では、痩せが出血の危険因子

Fushimiレジストリでは、85歳以上だとそれ以下と比べて脳梗塞/全身性塞栓症が多くなるけど(HR:2.57、95%CI:1.77-3.65)、出血は多いわけではない(HR:1.40、95%CI:0.78-2.36)ということが以前報告されていました。

で、これは、高齢者の心房細動で出血にスポットを当てた論文です。高齢の心房細動患者で出血の危険因子はなにかということが調べられています。

Assessment of the bleeding risk of anticoagulant treatment in non-severe frail octogenarians with atrial fibrillation.
J Cardiol. 2019 Jan;73(1):7-13.

【PECO】
P:重度のフレイルでない80代の心房細動患者
E:暴露因子あり
C:暴露因子なし
O:出血

暴露因子:BMI(<18.5)、BW(&lt:50kg)、85歳以上、HAS-BLED3点以上、CKD、Hb<10g/dl、ワルファリン内服、抗血小板薬内服

フレイルティについては、臨床フレイルスケール(clinical frailty scale)で評価。
DOACは添付文書に準じた投与量調整がなされているか評価。
ワルファリンは、PT-INR1.6−2.6を至適範囲とし、TTR65%以上あれば適切な容量調整がなされていると判断した。

出血は3カテゴリに分類。
1)大出血:入院、または2単位以上の輸血が必要となる出血。生命に関わる出血。
2)臨床的に重大な出血:医学的介入、予約外受診、OACの一時的な中断が必要、または日常生活での支障をきたすような出血
3)小出血:上記以外

exclusion criteria:出血の既往、活動性の出血、重度腎障害、患者のコンディションが悪い場合

【デザイン、セッティング】
・症例対照研究
・単施設
・346例(ダビガトラン64例、リバロキサバン80例、アピキサバン95例、エドキサバン27例、ワルファリン80例)
・2011年1月〜2017年1月までにOACの処方が開始された患者
・観察期間:32.7ヶ月(14.0−51.0ヶ月)
・適切な容量調整がされていたのは、DOAC群では76%、ワルファリン群では65%。
・出血、抗凝固療法中止、抗凝固薬の変更、死亡、観察期間終了(2018年1月)のいずれかが起こるまでフォローアップ。
・COX比例ハザードモデル

【結果】
大出血は12例(消化管出血10例、喀血1例、肝出血1例)、臨床的に重大な出血4例(消化管出血4例)、小出血43例であった。

適切な容量調整がされている集団では、BMI<18.5が出血の最も重大な因子だった。
HR:2.17(95%CI:1.01−4.70)

一方、ワルファリンの使用(HR:0.57 [95%CI:0.26−1.27])や、抗血小板薬内服(HR:1.07 [95%CI:0.48−2.39])は有意差はなかった。

【まとめと感想】
80歳以上のAF患者では、やせ(BMI<18.5)が出血の危険因子のようです。

リアルワールドのデータでは、DOACはワルファリンと比べ出血が少ないと言われていますが、75歳以上のAF/VTEを対象としたメタ解析では出血に差はなく、このレジストリでもワルファリンの使用の有無では有意差はなかったようです。また、抗血小板薬併用下でも差はなかったということですが、ここらへんはNが大きくないので差が出なかったのかもしれません。

まあ、やせてる高齢者の抗凝固療法は要注意です。

今後ますます高齢の心房細動が増えてくると思いますが、エドキサバンのRCT(ELDERCARE-AF試験)やすべてのOACを含んだ前向きコホート研究(ANAFIEレジストリ)が走っているところのようなので、その結果が出てくると、高齢心房細動患者の治療も確立されてくるのではないでしょうか。

医学論文を1日ひとつ読んで書き留めています。