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プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用と慢性腎臓病(CKD)との関連 ARIC試験のデータから

Proton Pump Inhibitor Use and the Risk of Chronic Kidney Disease.
JAMA Intern Med. 2016 Jan 11:238-246

《要約》
重要性
プロトンポンブ阻害薬(PPI)は世界中で広く使用されている薬剤であり、急性間質性腎炎を引き起こす可能性がある。PPIの使用と慢性腎臓病(CKD)との関連は知られていない。

目標
人口ベースのコホートで、PPIとCKDの発生の関連を計測する。

デザイン・セッティング・参加者
1996年2月1日から2011年12月31日までの間にthe Atherosclerosis Risk in Communities study(ARIC試験)に登録された、eGFR60ml/min/1.73m2以上の患者10482例を対象とした。2015年3月から10月に解析を行った。

結果
10482例、平均年齢63.0歳(標準偏差5.6)、男性は43.9%であった。PPIの使用は、白人、肥満、降圧薬が使用されている患者で多かった。未調整の解析ではPPIとCKD発症には関連があり(HR:1.45、95%CI:1.11−1.90)、人口統計学的な調整、社会経済学的な調整、臨床的な変数での調整を行った後も、それらには関連があった(adjusted HR:1.35, 95%CI:1.17-1.55)。その関連は、H2受容体拮抗薬(adjusted HR:1.39, 95%CI:1.01-1.91)やプロペンシティスコアをマッチさせたPPI非使用群(adjusted HR:1.76, 95%CI:1.13-2.74)との比較でも認められた。Geisinger Health Systemのコホートでは、time-varying new-user design(adjusted HR:1.24, 95%CI:1.20-1.28)を含むすべての解析において、PPIの使用はCKDと関連していた。PPIの1日2回の内服(adjusted HR:1.46, 95%CI:1.28-1.67)は、1日2回の内服(adjusted HR:1.15, 95%CI:1.09-1.21)より、CKDとの関連が強かった。

結論
PPIの使用はCKDの発生と高い関連があった。PPIの使用を制限することがCKDの発生を減少させるかどうかは、今後の研究で評価すべきである。

◯論文のPICOはなにか
P:ARIC試験に登録された患者
I/C:PPIの内服の有無
O:CKDの発生

inclusion criteria:45−64歳
exclusion criteria:eGRF60ml/min/1.73m2未満の患者。以下の項目についてのデータを喪失している患者。尿中アルブミン値/Cr、教育年数、健康保険情報、喫煙、BMI、平均安静時収縮期血圧、降圧薬、抗血栓療法、高血圧・糖尿病・心血管疾患への罹患。

◯結果
症例数:10482例
baselineでのPPI userは332例、PPI nonuserは10160例。
フォローアップ期間:13.9年(中央値)
交絡因子の調整:プロペンシティスコア

PPIuserのnonuserと比較した場合のCKD発症リスクは、adjusted HR:1.50, 95%CI:1.14-1.96であった。
10年間のCKD発症の絶対リスクはPPIuserでは11.8%、nonuserでは8.5%で、絶対リスク差は3.3%であった。
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
PPIの使用と市中肺炎、クロストリジウムディフィシル感染、急性間質性腎炎、急性腎不全との関連が報告されている。後向きコホート研究であり、PPIとCKDの因果関係までは言えないが、相関はある。ただ、PPIの使用を控えればCKDが減らせるかどうかはわからない。

もちろん、適切にPPIを処方するなら問題はないが、不適切に長期間処方することは害を与えている可能性があるので、注意したいところ。

ちなみに冠動脈疾患患者では、心筋梗塞予防のため低容量アスピリンが使用され、低容量アスピリン使用に伴う消化性潰瘍の発生が危惧される。一般的にはPPIを予防投与することが多いが、AHAガイドライン(Stable Ischemic Heart Disease)では、低容量アスピリン使用時の消化性潰瘍予防のためのPPI投与については言及されていない。