術前の冠動脈CTは、周術期の心血管イベントのリスクの低い患者の同定に役立つ Coronary CTA VISION試験

Prognostic capabilities of coronary computed tomographic angiography before non-cardiac surgery: prospective cohort study.
BMJ. 2015 Apr 22;350:h1907

《要約》
目標
非心臓手術前の冠動脈CTが周術期のリスクの予測に寄与するか検証することと、非心臓手術術後に心筋梗塞を発症した患者の術前の冠動脈形態を評価すること。

デザイン
前向きコホート研究

セッティング
8カ国、12センター

参加者
動脈硬化性疾患、または動脈硬化性疾患のリスクを有し、非心臓手術を行う患者955例。

介入
術前に冠動脈CTを行う。左主幹部病変でない限り臨床医は盲検化されている。結果は、normal, non-obstructive(50%未満の狭窄), obstructive(1枝または2枝に50%以上の狭窄), extensive obstructive(LAD近位部病変を含む2枝病変、3枝病変、左冠動脈主幹部病変)に分類される。

主要評価項目
術後30日以内の心血管死と非致死的心筋梗塞の複合エンドポイント。

結果
心血管イベント(主要評価項目)は74例(8%)に起きた。the Revised Cardiac Risk Index(RCRI)と冠動脈CTの両方を含めたモデルは、独立した予後予測因子だった(P=0.014:C index=0.66)。調整後のハザード比は、non-obstructiveで1.51(95%CI:0.45−5.10)、obstructiveで2.05(95%CI:0.62−6.74)、extensive obstructiveで3.76(95%CI:1.12−12.62)であった。1000例のサンプルにおいて冠動脈CTモデルはRCRI単独モデルよりも、心血管イベントを起こした77例の中で17例多くhigher riskに分類できていた(P<0.001)。しかし、冠動脈CTモデルでは心血管イベントを起こしていない923例のうち、RCRI単独モデルより98例多く不適切にhigher riskに分類していた(P<0.001)。周術期心筋梗塞を発症した患者は、31%(22/71例)がextensive obstructive disease、41%(29/71例)がobstructive disease、24%(17/71例)がnon-obstructive disease、4%(3/71例)がnormalであった。

結論
冠動脈CTは、周術期の心血管死や心筋梗塞のリスク評価の向上には有効だが、心血管イベントを起こさない患者のリスクを5倍以上過大評価してしまう。

◯論文のPICOはなにか
P:非心臓手術
I/C:術前の冠動脈CT
O:心血管死と非致死的心筋梗塞

inclusion criteria:45歳以上、待機的血管・整形・胸部・腹部手術、術前に冠動脈CTを行うに十分な時間があること、動脈硬化性疾患やうっ血性心不全の既往やリスクを持っていること
exclusion criteria:術前に侵襲的冠動脈造影が予定されている患者、冠動脈ステントが留置されている患者、CCr<35ml/min、造影剤アレルギー、妊婦、持続性心房細動または頻繁な期外収縮、HR≧70/分(single source scanners)またはHR≧90/分(dual source scanners)、体重136kg以上、評価不能なセグメントが4つ以上あること、CT施行後6ヶ月以内に手術が行われない場合、日帰り手術、左冠動脈主幹部病変の疑いがあり盲検化されず術前に血行再建が行われた場合

手順
冠動脈CTは盲検化された評価者が読影し、normal, non-obstructive(50%未満の狭窄), obstructive(1枝または2枝に50%以上の狭窄), extensive obstructive(LAD近位部病変を含む2枝病変、3枝病変、左冠動脈主幹部病変)に分類する。冠動脈バイパス術が施行された患者では、保護されていない冠動脈領域(グラフトとnative coronary arteryに50%以上の狭窄を有する)を評価した。トロポニンの測定は術後6時間後、12時間後、1日後、2日後、3日後に行った。トロポニンの上昇が認められた場合、速やかに心電図検査を行った。

◯結果
観察期間:2008年7月から2013年10月
症例数:955例。1067例に冠動脈CTが施行され、112例が除外された(左冠動脈主幹部病変疑い:14例、非心臓手術中止:5例、6ヶ月以内に手術が施行されなかった:71例、術前の血行再建が施行された:33例、画像の評価不能・日帰り手術・非心臓手術と同時に血行再建を行った:33例)。
characteristics
result

◯感想/批判的吟味
・心筋梗塞の定義は、universal definition(トロポニンの上昇と以下のうち1つ以上を満たすもの。虚血症状、心電図の虚血性変化、心筋梗塞を示唆するイメージングの異常)で、トロポニンの測定する経時的に測定することになっている。

・RCRIで評価された心血管イベントの発生率は、以前の報告(Circlation1999:1043−1049)より高い。

・冠動脈CTは、よりリスクが低い患者の同定には役立つが、陽性的中率は下がる。

・冠動脈CTやRCRIにより心血管イベントのリスクが高いと判断された患者に、どのタイミングでどのような介入をすべきかはわからない。