虚血性心疾患

Alpha OMEGA試験 低容量EPA-DHAでは心血管イベント抑制効果はない

n-3 fatty acids and cardiovascular events after myocardial infarction.
N Engl J Med. 2010 Nov 18;363(21):2015-26

《要約》
背景
前向きコホート試験や無作為化対照試験で、n-3脂肪酸の心血管疾患予防効果が示されている。我々は、心筋梗塞の既往のある患者に対し、エイコサペント酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)、α−リノレン酸(ALA)の心血管イベントへの効果を検証した。

方法
多施設、二重盲検、プラセボ対照試験にて、60−80歳の心筋梗塞の既往があり至適薬物療法が行なわれている患者4837例を、EPA-DHA入りマーガリン、それにALAを加えたマーガリン、ALAのみのマーガリン、プラセボマーガリンの4群に無作為に割り付けた。DPA-DHAは400mg/日、ALAは2g/日摂取する。主要評価項目は、致死的・非致死的心血管イベントと心臓への治療介入(PCI/CABG)の複合エンドポイントである。データはITT解析され、またCox比例ハザードモデルが用いられている。

結果
マーガリンを平均18.8g/日消費し、それにはEPA:226mg、DHA:150mg、ALA:1.9gが含まれていた。フォローアップ期間中、主要な心血管イベントは671例(13.9%)に起こった。EPA-DHA、ALAはいずれも主要評価項目をを減少させなかった(DPA-DHAのハザード比1.01、95%CI:0.87−1.17、ALAのハザード比0.91、95%CI:0.78−1.05)。主要な心血管イベントにおいて、女性のサブグループではALAが、プラセボとEPA-DHAに比べ統計学的有意差に近かった(0.73、95%CI:0.51−1.03)。

結論
至適薬物療法が行なわれている心筋梗塞の患者では、低容量のEPA-DHA、またはALAは主要な心血管イベントを抑制しなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:心筋梗塞の既往がある患者
I/C:EPA-DHA(400mg)、ALA(2g)、DPA-DHAとALA、プラセボが含有されたマーガリンの摂取(EPA-DHA群、ALA群、n-3脂肪酸群、プラセボ群とする)
O:致死的・非致死的心血管疾患(心筋梗塞、心停止、脳梗塞)とPCI/CABGの複合エンドポイント

inclusion criteria:60−80歳、10年以内に心筋梗塞の既往があること。
exclusion criteria:マーガリンの1日の消費量が10g未満、n-3脂肪酸のサプリメントの使用、1年間で5kg以上の意図しない体重減少、生命予後1年未満の悪性腫瘍。

手順:ランダム化の後、4−6週間はプラセボマーガリンを摂取する。その後、割り付けられたマーガリンを40ヶ月にわたり摂取する。マーガリンは4種類で、EPA-DHA(400mg)、ALA(2g)、DPA-DHAとALA、プラセボが含有されたものである。EPAとDHAの比率は3:2である。マーガリンはユニリーバ社が提供する。マーガリンはなにが含有されたかわからない状態で、12週おきに8個(1個250g)渡され、消費しなかったものは返却する。

◯ランダム化されているか
方法についての記載なし。

◯baselineは同等か
4群間に差はなかった。以下、ざっくりと。
年齢69歳、心筋梗塞から試験登録までの期間4.2年、糖尿病21%、薬剤(抗血栓薬97%、降圧薬90%、脂質降下薬85%、抗不整脈薬3%)、LDLコレステロール96mg/dl、HDLコレステロール50mg/dl、BMI27、喫煙者16%。

◯症例数は十分か
プラセボ群でのイベント発生率や介入によるリスク減少、powerなどについて記載なし。

◯盲検化されているか
double−blind。outcome評価者も盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
すべての患者を解析に含めるITT解析が行なわれている。

◯結果
男性3783例(78.2%)、女性1054例(21.8%)の計4837例が登録された。
マーガリンは平均で18.8g/日消費した。
EPA-DHA群では1日あたり、EPA226mg、DHA150mg摂取した。
ALA群では1日あたり、1.9g摂取した。
フォローアップ期間の中央値は40.8ヶ月であった。

result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
心筋梗塞の既往がある患者でも低容量EPA-DHAでは、二次予防効果、抗不整脈作用、生命予後の改善はみられない。