虚血性心疾患

“Taxus Element” vs “Xience Prime” 糖尿病患者での成績 TUXEDO試験

Paclitaxel-Eluting versus Everolimus-Eluting Coronary Stents in Diabetes.
N Engl J Med. 2015;373:1709-19

《要約》
背景
糖尿病患者に対するPCIにおいて、どの種類のステントを用いるかは議論がある。以前のstudyでは、ステント間の同等性が示されたものやエベロリムス溶出性ステントの優越性が示されたものなど、矛盾する結果であった。

方法
PCI予定の糖尿病患者1830例を、パクリタキセル溶出性ステントかエベロリムス溶出性ステントのいずれかに割り付けた。非劣性試験であり、非劣性マージン4%とした。primary endpointは標的血管不全(心臓死、
標的血管心筋梗塞、虚血による標的血管再血行再建)とし、フォローアップ期間は1年である。

結果
primary endpointは5.6% vs 2.9%、相対リスク1.89(95%CI:1.20−2.99)であり、パクリタキセル溶出性ステントの非劣性は示されなかった。心筋梗塞(3.2% vs 0.4%, P=0.004), 標的血管再血行再建(3.4% vs 1.2%, P=0.002), 標的病変再血行再建(3.4% vs 1.2%, P=0.002)と、パクリタキセル溶出性ステント群で有意に標的血管不全が多かった。

結論
糖尿病を有する冠動脈疾患患者では、パクリタキセル溶出性ステントはエベロリムス溶出性ステントとの非劣性は証明されず、1年後の標的血管不全、心筋梗塞、ステント血栓症、標的血管再血行再建が有意に多い結果であった。

◯この論文のPICOはなにか
P:糖尿病を有する冠動脈疾患患者
I:パクリタキセル溶出性ステントでPCIを行う(Taxus群)
C:エベロリムス溶出性ステントでPCIを行う(Xience群)
O:1年後の標的血管不全(心臓死、標的血管心筋梗塞、虚血による標的血管再血行再建)

inclusion criteria:造影上34mm以下の病変、対照血管径2.25mm−4.0mm

手順:冠動脈造影を行った後にランダム化する。多枝病変の場合は、すべて同一の種類のステントで治療を行う。すべての患者は治療の前にアスピリン350mgに加えクロピドグレル600mg、プラスグレル60mg、チカグレロル180mg、いずれかの内服を行う。そして、DAPTは少なくとも1年間継続する。DAPTはアスピリン75−100mg/日と、クロピドグレル75mg/日以上、プラスグレル10mg/日、チカグレロル180mg/日のいずれかを加えたものとする。PCIのストラテジーとDAPTに使用する薬剤については主治医の判断で行う。

◯ランダム化されているか
interactive Web-based response systemを用いて、各群1:1に割り付けを行う。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢58歳、2/3が高血圧、3/4が高脂血症、喫煙者15%、インスリン依存性糖尿病40%、糖尿病の罹病期間6年ちょっと、陳旧性心筋梗塞40%、LVEF<40%が9%、2/3は急性冠症候群で残りが安定狭心症など、1枝病変75%、2枝病変20%、対照血管径2.9mm、病変長20mm。

◯症例数は十分か
SPIRIT-Ⅳ試験の結果より、primary endpointが両群で8.4%を起こると仮定し、非劣性マージン4%、power90%、αlevel5%として、必要症例数は各群915例と算出されている。Taxus群が914例、Xience群が916例、登録されている。

◯盲検化されているか
PCIを行う医師は盲検化できないが、患者・フォローアップを行う医師は盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析とper−protocol解析が行われている。フォローアップ率は97.4%であった。

◯結果
割り付け通りのステントが留置された患者は、Taxus群889例/914例、Xience群899例/916例であった。
Taxus群 vs Xience群、相対リスク(95%CI)
標的血管不全:5.6% vs 2.9%, 0.53(0.33-0.83)
虚血による標的血管再血行再建:3.4% vs 1.2%(P=0.002)
心筋梗塞:3.2% vs 1.2%(P=0.004)
ステント血栓症:2.1% vs 0.4%(P=0.002)

◯感想/批判的吟味
パクリタキセル溶出性ステントは、リムス系ステント(シロリムス、エベロリムス、ゾタリムス)に比べ劣っていると考えらていたが、糖尿病ではパクリタキセルの安全性・有効性が高いことを示唆するデータがあった。その真偽について検証したRCTであったが、心筋梗塞・ステント血栓症・標的病変再血行再建などパクリタキセル溶出性ステントで有意に多く、糖尿病においてもパクリタキセル溶出性ステントが有意に劣っていることを示す結果であった。