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急性心筋梗塞(STEMI)の残存狭窄に対するFFR guide PCIは心血管イベントを減らす PRIMULTI試験

Complete revascularisation versus treatment of the culprit lesion only in patients with ST-segment elevation myocardial infarction and multivessel disease (DANAMI-3—PRIMULTI): an open-label, randomised controlled trial
Lancet. 2015;386:665-71.

大規模研究(PRAMI試験)では、primaryPCI時の完全血行再建が、死亡・非致死的心筋梗塞・難治性狭心症の複合エンドポイントを65%も低下させることが示されている。CvLPRIT試験でも、完全血行再建が全死亡・心筋梗塞の再発・心不全・再血行再建の複合エンドポイントを減らすことが示されている。

以下の3点が明らかにされていない
・非責任血管の狭窄の評価は造影所見で十分か
・非責任血管へのPCIの最適なタイミングはいつか
・非責任血管へのPCIがすべての患者に有効なのか

このPRIMULTI試験では、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)の非責任血管へのFFR guide PCIが安全で、かつ心血管イベントを減らすかどうか検証している。

◯この論文のPICOはなにか
P:STEMIで50%以上の残存狭窄を1枝以上有する患者
I:残存狭窄に対するFFR guide PCI(完全血行再建群)
C:薬物療法のみ(薬物療法群)
O:全死亡、非致死的心筋梗塞、虚血による再血行再建(STEMIの非責任血管)の複合エンドポイント

exclusion criteria:造影剤や抗血栓薬に対するアレルギー、意識障害、心原性ショック、CABGが必要な患者、ステント血栓症、高い出血リスク

・手技
2mm以上の血管の50%以上の残存狭窄に対しPCIを行う。使用するステントはエベロリムス溶出性ステント。FFR0.80以下の病変と、造影上90%以上の狭窄を有する病変にPCIを行う。CTO、高度石灰化病変、高度屈曲病変は除外した。

◯ランダム化されているか
PrimaryPCI後(退院前)に速やかにランダム化される。electronic web-based systemで割付。

◯baselineは同等か
性別、基礎疾患、梗塞部位、三枝疾患の割合、LAD近位部に残存狭窄を有する割合などすべて同等。退院時のLVEF、Killip分類、P2Y12阻害薬の種類、statin・βblocker・ACE阻害薬/ARBの内服率も同等。

◯症例数は十分か
薬物療法群でprimary endpointが18%に起こり、完全血行再建群で30%の相対リスク低下があると仮定。αlevel0.05、power80%とし、必要症例数は618例と算出されており、627例(完全血行再建群:314例、薬物療法群:313例)がランダマイズされている。

◯盲検化されているか
オープンラベル。
PCIteamは、患者のその後の治療や評価に関与しない。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。完全血行再建群で、194日後に移住のため1例ロストフォローアップがあるが、移住前のデータは含められている。

◯結果
FFR guide PCIはprimaryPCIから中央値2日で施行されている。
完全血行再建群で6例(2%)でCABGが施行され、18例(6%)でPCIが失敗に終わっている。
完全血行再建群で97例(31%)でFFRによりdeferしている。
プラセボ群で2例、完全血行再建群へのクロスオーバーがある。

primary endpointとその内訳は以下の通り(論文より抜粋)。

◯批判的吟味/感想
・STEMIの残存狭窄に対するFFR guide PCIでは死亡と心筋梗塞は減らない。
・減るのは、虚血による血行再建のみ。
・残存狭窄へのPCIをいつ行うのかというタイミングの問題かもしれない。
・FFRでは死亡と心筋梗塞は減らないというFAME2試験と似たような結果。
・FFRによってPCI不要な病変を見極めると、医療コストは削減できるかもしれない。