虚血性心疾患

シクロスポリンはPCIを施行する急性心筋梗塞患者の予後を改善しない CIRCUS試験

シクロスポリンには、再灌流障害を減らしたり、梗塞サイズを縮小させる可能性がある。

Cyclosporine before PCI in Patients with Acute Myocardial Infarction
N Engl J Med. 2015;373:1021-1031

◯この論文のPICOはなにか
P:発症12時間以内の左前下行枝(LAD)のST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)
I:PCI施行前に2.5mg/kgのシクロスポリンの静注(シクロスポリン群)
C:PCI施行前にプラセボの投与(プラセボ群)
O:1年以内の死亡、心不全による再入院、心不全の増悪、左室リモデリングの複合エンドポイント

inclusion criteria:18歳以上、発症12時間以内、胸部誘導で連続2誘導以上での0.2mVのST上昇
LADが責任病変でTIMI flow gradeがゼ0か1
exclusion criteria:心原性ショック、良好な側副血行(Rentrop分類2または3)

◯ランダム化されているか

◯baselineは同等か
梗塞サイズに影響を及ぼしそうな、onset to balloon time, プレホスピタルの血栓溶解薬投与、LMT病変・LAD近位部病変の割合、側副血行の程度(Rentrop分類)、PCI前後のTIMI flow gradeは同等。

◯症例数は十分か
シクロスロリン投与により20%の相対リスク低下、power80%、αlevel5%として、必要症例数は790例と算出されている。そこから、心エコー検査のロストフォローアップ10%あったりで、結局は972例と算出されている。ランダム化されたのは、シクロスポリン群475例、プラセボ群495例で計970例(そのうち、インフォームドコンセントがなされていなかったため、シクロスポリン群で1例脱落している)。必要症例数は満たしていない。

◯盲検化されているか
double blind trial

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析(ただ、インフォームドコンセントが行われていなかったため、シクロスポリン群から1例脱落あり)

◯結果
当初、死亡と心不全による再入院の2つをprimary endpointとして、必要症例数を3862例としていたが、資金不足のため、心不全の増悪と左室リモデリングの2つを新たにprimary endpointに加えた。

primary outcomeは、シクロスポリン群で233例(59.0%)、プラセボ群で230例(58.1%)で、オッズ比1.04(95%CI:0.78−1.39)と統計学的有意差なし。死亡、心不全による再入院・心不全の増悪、それぞれを見ても、統計学的有意差はなかった。

secondary outcomeにCKのピーク値も含まれている。それだと、シスプラチン群で3992IU/L(四分位範囲:1910−5447)、プラセボ群で3917IU/L(四分位範囲:1878−5608)で統計学的有意差なし。

◯批判的吟味/感想
・COIあり(NeuroVive Pharmaceutical)
・funderは試験のデザインやモニタリング、解析には介入していない
・primary endpointの変更
・primary endpointに有意差がなく必要症例数に達していない試験。そうは言ってもほとんど必要症例数を満たしているため、本当に薬剤の効果がないのだと思う。
・梗塞サイズを反映するCKのピーク値も差がなかった。
ちなみに、AVOID試験では、再灌流時に酸素投与を行わないことで、梗塞サイズが小さくなることが証明されている。
ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対する酸素投与は有害かもしれない AVOID試験

シクロスポリンは、PCIを施行するSTEMI患者の予後を改善しない。