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初回の肺血栓塞栓症 ワーファリンの内服期間 PADIS-PE試験

肺血栓塞栓症を発症し(初回)、それが原因不明であった場合、二次予防のための最適なワーファリン内服期間はわかっていない。

Six Months vs Extended Oral Anticoagulation After a First Episode of Pulmonary Embolism
JAMA 2015;314:31-40

〇この論文のPICOはなにか
P;原因不明の肺血栓塞栓症
I:抗凝固療法を24ヶ月継続する(ワーファリン群)
C:抗凝固療法を6ヶ月で中止する(プラセボ群)
O:18ヶ月の時点での症候性再発性静脈血栓塞栓症(非致死的症候性肺塞栓症、近位の深部静脈血栓、致死的血栓塞栓症)と非致死的/致死的大出血の複合エンドポイント

Inclusion criteria:18歳以上で初回の原因不明の症候性肺血栓塞栓症で6ヶ月間のワーファリン内服をしたもの。PT-INRの目標値は2.0-3.0。
「原因不明」の定義としては、3ヶ月以内に明らかな可逆的な静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクがないこと(30分以上の局麻・全麻、下肢の外傷、担癌状態、2年以内の癌の寛解)。
Exclusion criteria:肺塞栓症やVTEの既往、最初の6ヶ月間での出血、栓友病、血小板10万/μl以下、18ヶ月以内に手術が予定されている症例、生命予後18ヶ月未満

Study designとしては、肺血栓塞栓症を発症し、6ヶ月抗凝固療法(ワーファリンの内服)を行った後にランダム化している。そこからさらに24ヶ月抗凝固療法を継続するワーファリン群と、抗凝固療法を中止するプラセボ群に割付を行っている。ランダム割付の時点で、採血・下肢血管エコー、肺換気血流シンチを行う。ランダム化から18ヶ月(発症から24ヶ月)の時点で、primary outcomeの評価を行う。その後、30・36・42ヶ月の時点でもフォローアップを行う。

〇baselineは同等か
女性はワーファリン群に多い(57%vs44%)。シンチでの残存した10%以上の血流欠損、下肢の残存血栓、Ddmier値、栓友病、弾性ストッキングの使用率などの血栓リスクや、抗血小板薬の併用、ACCP bleeding score、腎機能障害などの出血リスクなど両群間で有意差はない。

〇症例数は十分か
VTEがワーファリン群:1%/年、プラセボ群:9%/年で、出血がワーファリン群で3%/年、プラセボ群で1%/年で発症すると仮定。αlevel:0.05、power:80%とし、必要症例数は374例と算出されている。374例登録しているが、ランダム化の際に3例が同意を撤回している(解析には含められていない)。

〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
371/374例が解析に含まれており、mITT解析であると考えられる。

〇盲検化
患者、治療介入者:盲検化されている(プラセボ群のPT-INRはシャムを用いている)
Outcome評価者:盲検化されている(VTEの評価は超音波検査・肺換気血流シンチ・CTで行う)。
独立した解析者がデータの解析を行っている

〇結果
Primary endpointはワーファリン群で3.3%(6例:VTE再発3例、出血3例)、プラセボ群で13.5%(25例:VTE再発24例、出血1例)と、ワーファリンの内服を続けた方がイベントの発生は有意に低かった(hazard ratio 0.22; 95%CI 0.09-0.55)。
しかし、18ヶ月の時点で統計学的に有意であった群間差は、ワーファリンを中止することによって、42ヶ月の時点では消失している(ワーファリン群でワーファリン中止後のイベントが増加している)。