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TAVR vs SAVR (経カテーテル的大動脈弁留置術vs外科的大動脈弁置換術)

Transcatheter aortic-valve replacement with a self-expanding prosthesis
N Engl J Med. 2014;370:1790-8

〇この論文のPICOはなにか
P:NYHAⅡ以上の有症候性の高度大動脈弁狭窄症(severeAS)
I:経カテーテル的大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve replacement;TAVR)
C:外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement;SAVR)
O:1年後の死亡率

Inclusion criteria:術後30日以内の死亡率が15%以上になるような併存疾患を持たないこと、心エコーもしくは心カテにて大動脈弁平均圧較差40mmHg以上または大動脈弁最大血流速度4.0m/secであること、かつ大動脈弁弁口面積0.8㎠(またはAVAindex<0.5㎠/㎡、NYHAⅡ以上の有症候性のsevereAS Exclustion criteria:30日以内の心筋梗塞、30日以内のPCI/EVT、血行再建を要する冠動脈疾患、LVEF<20%、6ヶ月以内の脳梗塞/TIA、3ヶ月以内の消化管出血など 〇baselineは同等か DMはTAVR群で34%、SAVR群で42%と有意差があるが、それ以外は差がない。ざっくりというと、平均83歳、男女比は半々、NYHAclassⅢ7割・Ⅳ2割、STS PROM4-10%が最も多く3/4を占めていて>10%が15%ほど、CKDや脳梗塞の既往がそれぞれ1割ほど、CABGの既往が3割ほど、心房細動(af)は4割。LVEFは記載なし。

〇ランダム化されているか
割付方法と隠匿化は本文には記載なし。Randomly assignedとの記載はある。最初の3例はランダマイズされておらず、TAVRに割り付けられている(術者のCoreValveの使用経験のためであり、プロトコール通り)。

〇症例数は十分か
非劣性マージン7.5%、1年後の死亡率20%、power80%、αlevel0.05、フォローアップ不能10%として、必要症例数790例と算出されており、795例がランダマイズされている。

〇盲検化されているか
患者、治療介入者は盲検化できない。解析にはMedtronic社が関わっている。

〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
非劣性試験であり、as-treated解析とITT解析の両方が行われている。
TAVR群でTAVRが行われたのは390/394例(99%)、SAVR群でSAVRが行われたのは357/401例(89%)となっており、SAVR群では44例が割付通り施行されていなかった。その内訳としては、患者もしくは医師からの同意の撤回36例だった。どの試験でも同意の撤回は数例みられるものだし、どの程度脱落があれば試験の内的妥当性が保てるかは絶対的な基準はないかもしれないが、少し多い印象がある。そして、その脱落はSAVR群に偏っているため、バイアスがかかる余地はある。

〇結果
As-treated解析では、1年後の死亡率はTAVR群で14.2%、SAVR群で19.1%と、TAVR群で有意に低かった。この傾向はITT解析でも同様で、TAVR群13.9%、SAVR群18.7%であった。

1年後の大動脈弁圧較差や弁口面積はTAVRでも非劣性で、脳梗塞などの塞栓症はTAVR群で有意に低かった(TAVRvsSAVR:20.4%vs27.3%)。

手技上の合併症としては、TAVR群ではparavalvular regurgitation、血管合併症、ペースメーカの植え込みが、SAVR群では出血、AKI、新規のafが有意に多かった。

〇この論文を読んで
COIがあり、Sponsorが解析に関わっている。SAVR群で割付通りSAVRが施行された症例が89%と低くく、バイアスが入る余地があるが、severeASでリスクが高い症例ではTAVRによって生命予後が改善する可能性がある。Paravalvular regurgitationはTAVR群で多くなるため、これが長期予後にどう影響するか、これからのデータをみる必要がある。