急性心筋梗塞に合併した心原性ショックの循環動態維持には、ノルアドレリンを使用し、アドレナリンは避ける

普段、循環動態維持のために使っている薬剤はノルアドレナリンとドブタミンで、アドレナリンというものは正直使ったことがありません。

心臓に頑張ってもらいたいときはドブタミンを、血管を締めたいときにはノルアドレナリンを使います。

アドレナリンは蘇生のときにしか使ったことがないです。そのアドレナリンもPARAMEDIC2試験で、院外心停止でプラセボに比べて病院到着までの生存率は改善したものの、退院時の重度神経障害の患者の割合は増えるという結果でした。

あまり良い印象は持たれていない薬剤かもしれません。

急性心筋梗塞に合併した心原性ショックに、アドレナリンを使うか、ノルアドレナリンを使うか。ここでもアドレナリンは良い結果は出せませんでした。

Epinephrine Versus Norepinephrine for Cardiogenic Shock After Acute Myocardial Infarction.
J Am Coll Cardiol. 2018 Jul 10;72(2):173-182.

【PICO】
P:心原性ショックを合併したAMI
I:アドレナリン(AD)の投与
C:ノルアドレナリン(NAD)の投与
O:cardiac indexの変化(有効性評価項目)、難治性心原性ショック(安全性評価項目)

難治性心原性ショック:①エコーで評価した重大な心機能不全、②乳酸値上昇、③適切な血管内ボリュームを保っているにも関わらず低血圧(SAP<90mmHg or MAP<65mmHg)が持続し、1γ以上のADまたはNAD、もしくは10γ以上のドブタミンを投与しているにも関わらず臓器機能の急激な悪化(無尿、肝不全)を認めること。

inclusion criteria:
①PCIによる再灌流に成功していること
②血管収縮薬なしでSAP<90mmHg or MAP<65mmHg
③低血圧に対し血管収縮薬が必要
④cadiac index<2.2l/min/m2
⑤肺動脈楔入圧(PCWP)>15mmHg
⑥EF<40%
⑦臓器低灌流(mottled skin、無尿、乳酸値上昇、意識の変容)
⑧肺動脈カテーテル挿入

exclusion criteria:体外生命維持装置、他の原因でのショックなど

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:フランス
登録期間:2011年9月〜2016年8月
症例数:57例(AD群27例、NAD群30例)
解析:ITT解析
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【患者背景】
AD群 vs NAD群
性別のみ群間差あり(男性:50% vs 80%)。他は同等。
ざっくりと。BMI25、心拍数(100 vs 88)、MAP72、高血圧(30% vs 20%)、組み入れ前の蘇生術(41% vs 60%)、SOFA10、ランダム化前のショック持続時間6時間、組み入れ前の薬剤(アドレナリン 30% v 17%、ノルアドレナリン 70% vs 80%)、STEMI96%、乳酸値(5.0mmol/L vs 2.9mmol/L)、LVEF34%
群間差は性別のみだけど、Nが小さいから有意にならないだけで、多少の差はある

【結果】
難治性ショックがAD群で多かったため、試験は早期中止されています。

MAP70mmHgを保つのに必要な投与量は、AD:0.7±0.5γ、NAD:0.6±0.7γ。最大投与量に有意差なし。

DOBを併用したのは両群とも67%で、投与量も有意差なし。

投与開始3日までの血圧(SAP、DAP、MAP)の推移に有意差なし。

図しか示されていないので、正確にはわかりませんが、有効性評価項目であるCIはbaselineが2.0ぐらいで、72時間後には両群とも2.7ぐらいにあがっていますが、有意差はありません(P=0.43)。

AD群で、2時間後・4時間後のCIが2.4ぐらいに上がっていて、NAD群と比較し有意に高かったようです。

安全性評価項目は

【まとめと感想】
アドレナリンでもノルアドレナリンでも、血圧やCIは同じような変化をたどっており、差はありませんでした。しかし、アドレナリンで投与早期に(2−6時間)有意に心拍数が高くなり、心筋酸素消費量のサロゲートマーカーであるダブルプロダクトが有意に上昇しています。つまり、同じ血圧を維持するのに酸素を余計に消費しないといけないということで、アドレナリンは心臓の燃費を悪くさせているとも言えます。

かつ、乳酸値は投与開始2−4時間で有意に上昇(ノルアドレナリンでは投与開始後より低下)しています。CIは両群で似たようなもの(むしろ開始早期はアドレナリンの方がCIが高い)ということは、酸素供給ではなく末梢循環の問題で乳酸が上がっているのだと思います。

アドレナリンにはα受容体刺激作用もβ受容体刺激作用もありますが、ノルアドレナリンのβ受容体刺激作用は弱いです。もしかしたら、β2受容体刺激作用により末梢循環不全をきたしているのかもしれません。

不整脈、死亡が多めなのも気になります。

心筋梗塞+心原性ショックには、ドブタミンとノルアドレナリンで対処するということでよさそうです。