心機能が保たれた心筋梗塞ではβblockerは必要か

AMI再灌流後の薬物療法はどうするか。

抗血小板薬2剤(ステント留置した場合)、スタチン、ACE阻害薬・ARB。ここらへんは異論がないと思います。

では、βblockerは必要なのでしょうか。

答えは、YESもNOもどちらも正解かもしれません。ACS後のβblockerの有効性を示したデータの多くは、今のようにPCIが標準治療になる前のものではありますが、PCIが標準療法になってからもβblockerにより、生命予後の改善(観察期間1-2.1年)を認めています。それは、βblockerの容量には依存しないようです(1−2)

つまり、ACS発症後にβblockerを内服することは、ACS全体で見ると正解です。ただ、心機能が保たれた、いわゆるHFpEF(EF≧50%)の場合はどうでしょうか。私の知る限りでは、ACS後のHFpEFのみを対象にしてβblockerの有効性を検証した研究はありません。

非虚血を含んだデータですが、あるシステマティックレビューでは、洞調律のHFrEFやHFmrEFでは、βblockerによる死亡率低下が示されていますが、HFpEFではβblockerの有無で死亡率に差はありませんでした(3)。そして、そのHFpEFの85%が虚血ですので、虚血のHFpEFではβblockerの効果が示されていないと言い換えても間違いではないと思います。

また、冠動脈疾患の既往はないけど冠動脈疾患のリスクがある患者では、βblockerにより心血管死・心筋梗塞・脳梗塞が増える可能性もあります(ハザード比1.18 [10.2-1.36])(4)。それは糖尿病や脂質異常症などの代謝への悪影響と考えられます。

なので、冠動脈疾患リスクとして糖尿病や脂質異常症などがある場合には、より長期でみた場合にβblockerを内服することで予後の悪化に繋がる可能性があるということです。

冒頭のACS後にβblockerが必要かどうかに対する答えですが、心機能が低下している場合(EF<50%)にはYESで、心機能が保たれている場合(EF≧50%)ではNO、というのが私の意見です。そもそも、虚血であれ非虚血であれHFpEFの予後を改善させる薬剤はネプリライシン阻害薬以外にないので、上記の話は非虚血の場合でも同じなんですけどね。

一応、ACS発症後のβblockerについて、ガイドライン的にはどうなっているかというと、ECSでは・・・

・LVEF≦40%:classⅠ
・すべての患者でルーチンで入院中から開始し継続する:classⅡa

となっているので、HFpEFでもβblockerはclassⅡaということになります(5)。これからすると、私の意見はちょっと偏ってるのかもしれません。

1)J Am Coll Cardiol. 2015;66(13):1431-41.
2)Circ J. 2019;83:410-417.
3)Eur Heart J. 2018;39(1):26-35.
4))JAMA. 2012;308(13):1340-1349
5))Eur Heart J. 2018;39(2):119-177.