高容量EPAにより心血管死・心筋梗塞・脳梗塞が減少する REDUCE-IT試験 

青魚を多く摂取することで冠動脈疾患が減ることは、観察研究で明らかになっています。

それは、Hugh Sinclairが1944年に最初に発見しています。当時イヌイットは魚介から14g/日のn-3脂肪酸を摂取しており、それが冠動脈疾患の少なさと関連していると考えられました。

その後に、80年代に行われたDART試験やGISSI-Prevenzion試験で、心血管イベントの減少や死亡率の改善などが報告されました。ただ、80年代の臨床試験なので、β遮断薬・ACE阻害薬・スタチンなどの内服率は低く、今の至適薬物療法とは異なるものでした。

その後も、EPAにより動脈硬化イベント・致死的不整脈・心不全などが抑制されるだろうという仮定のもと、多くのRCTが行われました。しかし、多くはネガティブな結果でした。

そして、コクランのメタ解析では、EPAのサプリメントは心血管イベントの抑制にはほとんど効果がないと結論づけられています。

ただ、RCTの多くはEPAの量はそれほど多くありません。数百mgなので、魚から摂ろうと思えば取れる量です(毎日魚だと辛いかもしれませんが)。JELIS試験でもEPA1800mg/日です。イヌイットのn-3脂肪酸摂取量が14g/日であることを考えると、かなり少ない量ですので、高容量のEPA(あるいはn-3脂肪酸)を摂取することで心血管イベントが抑えられる可能性は残っていました。

今回の論文ではEPAは4g/日と、今までのRCTの中でも最も高い容量のEPAが用いられ、心血管イベントが抑制されるか検証されています。

Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia.
N Engl J Med. 2019 Jan 3;380(1):11-22

【PICO】
P:空腹時中性脂肪150−499mg/dlの冠動脈疾患ハイリスク患者
I:EPA(イコサペント酸エチル)4g分2内服
C:プラセボ(ミネラルオイル)の内服
O:心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+冠動脈血行再建+不安定狭心症

ハイリスク患者:45歳以上の冠動脈疾患 or 50歳以上で糖尿病とそれ以外に1つ以上冠危険因子を有する患者

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:11ヶ国(アメリカ、カナダ、オランダ、オーストラリア、ニュージランド、西欧、アジアなど)
登録期間:2011年11月28日〜2016年8月4日
観察期間:4.9年(中央値)
症例数:8179例(EPA群4089例、プラセボ群4090例) 脱落は730例(9%)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Amarin Pharma社)

【患者背景】
LDL値のみ有意差あり(EPA群vsプラセボ群:74vs76mg/dl)。その他は同等。
ざっくりと。年齢64歳、男性70%、白人90%、二次予防70%、エゼチミブの内服6%、糖尿病60%、TG216mg/dl、HDL40mg/dl

【結果】

primary endpoint:心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+冠動脈血行再建+不安定狭心症

サブグループ解析でも一貫性が見られますが、65歳以上・TG<200mg/dl or HDL>35mg/dl・高感度CRP>2mg/LのサブグループではP for interaction < 0.10を下回っています。


約5年でのNNT。

【まとめと感想】
高容量のEPAにより心血管イベントが抑制されるという結果でした。どのアウトカムも20−30%リスク減少していますが、絶対値はそれほど大きくはありません。かつ観察期間は約5年です。でも、この結果は驚きました。

残念なことに、日本の保険診療ではこの量のEPAを処方することはできません(サプリメントはありますが)。エパデール®︎は1800mgまでですし、ロトリガ®︎は4gまで処方できますがn-3脂肪酸(EPA+DHA)として4gなので、その中にEPAがどれくらい含まれているか添付文書からわかりません。

メタ解析で明らかにされている通り、日本で処方できる容量では心血管イベントに対する効果は期待できません。EPAを内服して足りない分を魚を食べることで補うのはアリかもしれませんが・・・。

あと、脳梗塞も28%リスク減少している点にも注目すべきです。脳梗塞は脂質よりも血圧の関与が大きいので、これはTGを下げた効果というより、やはりEPAの作用によるものだと思います。

EPA1800mg/日程度では心血管イベントは抑えられませんので、エパデール®︎やロトリガ®︎を処方しようと思ったことはないですが、日本でも高容量EPAが処方できるようになれば、リスクの高い患者では出していいなと思いました。観察研究との一貫性もあると思います。