着用型除細動器 (WCD) は心筋梗塞発症早期の心臓突然死を予防できるか

植込型除細動器(ICD)は、心機能が悪い虚血性心疾患の心臓突然死の予防に有効です。MADIT試験ではEF≦35%の虚血性心疾患で心室性不整脈がある症例を対象として、ICDにより生命予後が改善しました。また、MADITⅡ試験では心室性不整脈は問わず、EF≦30%の虚血性心疾患を対象としましたが、これでもICDよる生命予後改善を認めています(観察期間20ヶ月、ハザード比0.69)(1-2)

MADITⅡ試験はAMI発症1ヶ月以内の症例は含んでいません。

DINAMIT試験やIRIS試験は、AMI発症早期で心機能が悪い症例で、ICDで生命予後が改善するか検証したRCTです。どちらも心臓突然死は半分ぐらいに有意に減っていますが、全死亡は非ICD群とほとんど変わりません(つまり非心臓死が多い)(3-4)

なので、AHAのガイドラインでも心臓突然死一次予防の場合は、”AMI発症から40日以上もしくは血行再建から90日以上経過”していて、心機能が悪い症例がICD適応になっています。心機能は悪いけど、AMI発症から時間が経ってないような症例は、至適薬物療法を行って再評価することになります。でもまあ、虚血だと薬物療法でも心機能の改善はあまり見込めませんが。

AMI発症早期にICDを植え込んでも生命予後は改善しませんが、やはり心臓突然死のリスクが高いというのは事実です。AHAガイドラインでは、AMI発症40日以内の場合は、着用型除細動器(WCD)を着てもらってもいいかもね(classⅡb)となっています。

そして、そのAMI発症早期で心機能が悪い症例で、WCDが本当に有効なのでしょうか。

Wearable Cardioverter–Defibrillator after Myocardial Infarction
N Engl J Med 2018; 379:1205-1215

【PICO】
P:EF35%以下のAMI
I:標準治療+WCDの着用
C:標準治療のみ
O:90日以内の突然死+心室頻拍による非突然死

EFの評価は、PCI後なら8時間以上経ったあとに、CABG後なら48時間以上経ったあとに行う。

exclusion criteria:すでにICD留置、ユニポーラーペースメーカ、重度の弁膜症、長期の血液透析、WCDを着られないぐらい胸囲が小さいor大きい

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:アメリカ・ポーランド・ドイツ・ハンガリー
登録期間:2008年7月〜2017年4月
観察期間:90日
症例数:2348例(うち46例は規約違反のため除外)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(ZOLL社)

【患者背景】
両群の患者背景に差はない。EFの中央値は28%、PCI84%、血栓溶解療法8%、CABG1%、心停止・心室細動10%。内服薬にも差はない(βblocker92%、ACE阻害薬/ARB87%、アスピリンとそれ以外の抗血小板薬がそれぞれ87%、アミオダロン7%)

【結果】
primary outcomeは60日以内の全死亡だったが、登録が進まなかったため、90日以内の突然死+心室頻拍による非突然死、に途中で変更。

WCD群:1524例 vs 標準治療群:778例

標準治療群でWCD導入が2.6%。
ICD植込みはWCD群で4.4%、標準治療群で5.7%。だいたい2ヶ月ぐらいのときに植込まれている。

【まとめと感想】
AMI発症早期で心機能が悪い症例にWCDを導入すると、不整脈死が少なくなるけど、統計学的には有意な差ではありませんでした。discussionでパワー不足(不整脈死58%減少と推定)だと書かれていましたが、まあ確かに侵襲の大きな介入ではありませんし、適切に使用すれば突然死を予防できるという理屈はわかります。

不適切作動がありますので、理解力や操作能力に乏しい患者さんには導入しないなどの配慮は必要ですし、夏場は蒸れるということや、使えば使うほど病院の赤字になるという課題はあります。

AMI発症早期の心機能が悪い方でも、まず薬物療法をしっかりやるということですね。

1)N Engl J Med.1996;335:1933-1940
2)N Engl J Med 2004;351:2481-2488
3)N Engl J Med.2004;351:2481–2488
4)N Engl J Med.2009;361:1427−1436
5)Circulation.2018;138:e210–e271