虚血性心疾患

FFRガイドPCIは心血管イベントを減らすのか FAME2試験 (5年のフォローアップ)

冠動脈に50%以上の狭窄があり、FFRが0.80以下の安定狭心症・無症候性心筋虚血の患者を対象にして、PCIを行うことで、薬物療法のみで治療よりも、その後の心血管イベントを抑えられるか検証したFAME2試験。

2年間のフォローアップでは、緊急血行再建は有意にPCI施行群で少なかった。ただ、心筋梗塞や死亡の減少といったところまでは至っておらず、また、より長期的にみてFFRガイドPCIが薬物療法より優れるか否かについてのデータはない。

これはFAME2試験の5年のフォローアップの結果である。

Five-Year Outcomes with PCI Guided by Fractional Flow Reserve
N Engl J Med. 2018 May 22. doi: 10.1056/NEJMoa1803538. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:安定狭心症・無症候性心筋虚血で冠動脈に50%以上の狭窄+FFR≦0.80
I:PCI+至適薬物療法
C:至適薬物療法のみ
O:全死亡、心筋梗塞、緊急血行再建の複合エンドポイント

緊急血行再建:持続する、あるいは悪化する胸部症状 (心電図変化・バイオマーカの上昇の有無を問わない) のため予定外に入院し、その入院期間中に血行再建を行うこと

inclusion criteria:冠動脈造影にて1-3枝病変がある患者
exclusion criteria:CABG術後、左室駆出率(EF)<30%、左冠動脈主幹部病変(LMT)

【試験の概要】
デザイン:open label RCT
地域:ヨーロッポ・北米の28施設
登録期間:2010年5月15日〜2012年1月15日
観察期間:5年
症例数:888例 (PCI群:447例、薬物療法群:441例)
解析:ITT解析
スポンサー:St.Jude Medical社 (最初の3年にのみ関与。それ以上のフォローは試験の結果に変化をもたらさないこと、薬物療法群のクロスオーバーが多いことを理由にスポンサーを下りた)

【患者背景】
LVEF<50%の割合のみ、FFR群18%、薬物療法群12%で有意に群間差があった。それ以外は同等。年齢63歳、男性が3/4、喫煙者20%、糖尿病30%弱、腎不全2%。

【結果】
28施設のうち、9施設は3年でフォローアップを中止している。症例数は全体の12%で、追跡率は85%程度。5年間フォローアップした19施設の症例数は88%で、追跡率は93%ほど。

薬物療法群のクロスオーバーは255例 (51.0%)。このクロスオーバーはエンドポイントに含まれている緊急血行再建とは別のもの。

PCI群 vs 薬物療法群
全死亡+心筋梗塞+緊急血行再建 (primary endpoint)
13.9% vs 27.0% HR:0.46 (95%CI:0.34-0.63)

全死亡
5.1% vs 5.2% HR:0.98 (95%CI:0.55-1.75)

心筋梗塞
8.1% vs 12.0% HR:0.66 (95%CI:0.43-1.00)

緊急血行再建
6.3% vs 21.1% HR:0.27 (95%CI:0.18-0.41)

【批判的吟味】
・試験の早期中止 (early determination for benefit) による過大評価
・十分とは言えない追跡率
・少なくないクロスオーバー (薬物療法群で51.0%)
・オープンラベルというデザインで、ソフトエンドポイント (緊急血行再建) のウエイトが大きい

【まとめと感想】
FFRガイドPCIを行えば、薬物療法のみで治療するより心筋梗塞・緊急血行再建を有意に少なかった。2年では差がなかった心筋梗塞も、5年間のより長期のフォローで薬物療法よりも優れるという結果だった。

上にあげたような問題点もあるので、解釈は慎重に。インターベンション医を後押しする解釈としては、これだけクロスオーバーが多いにも関わらず、心筋梗塞が2/3になっているということは、実際の効果はより大きいはずということで、薬物療法を支持する解釈としては、この試験の内的妥当性は相当微妙であてにならないということ (予定した観察期間が2年だから仕方ないけど)。

正直、血行再建というソフトエンドポイントは入れずに、心筋梗塞・死亡といったより重要でハードなアウトカムでのみ検証してもらいたいなあと思う。患者さんが心配なのは、FFRガイドPCIでそれらが本当に防げるのかということだと思うし、血行動態を評価するFFRを用いたPCIが、狭窄が軽度な部位に起こることが多い心筋梗塞を本当に減らせるのかということについても、答えが出ると思われる。