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カテーテル挿入時・ドレッシング交換時の消毒は、ポビドンヨードより0.5%以上のクロルヘキシジンアルコールで

カテーテル挿入時の消毒は、ポビドンヨード (PVI) より2%クロルヘキシジン (CHG) の方が、カテーテル関連血流感染 (CRBSI) を減らすことができる(1)。ただ、日本ではCHGは、0.5%か1%のものしかなく、この結果をそのまま適応できるかは疑問があった。

IDSAのガイドラインでは、ヨードチンキより0.5%以上のCHGで消毒するよう推奨されており、CDCガイドラインでも0.5%以上のCHGの使用が推奨されている(2-3)。下の論文の著者によると、0.5%CHG、1%CHG、10%PVIの有効性を検証した臨床試験は今までなかったらしい。

Comparison of the efficacy of three topical antiseptic solutions for the prevention of catheter colonization: a multicenter randomized controlled study
Crit Care. 2017 Dec 21;21(1):320.

0.5%CHGと1%CHGは、10%PVIよりもカテーテルコロナイゼーションを減らせるか検証したRCT。CRBSIは発生率が低いので、カテーテルコロナイゼーションをサロゲートエンドポイントとしている。

【PICO】
P:CVカテーテルと動脈カテーテルを留置した患者
I/C:0.5%CHG、1%CHG、10%PVIによる消毒 (カテ挿入時とドレッシング交換時)
O:カテーテル抜去時のカテーテルコロナイゼーション
secondary outcome:CRBSI

カテーテルコロナゼーションの定義:roll plate法で培養し24時間後のコロニーが15CFU以上。sonication法では、それぞれの施設の検査室基準で。
CRBSIの定義:血液培養は末梢静脈とカテーテルからそれぞれ1セット以上採取する。1) 末梢静脈から培養された菌とカテ先培養で検出された菌が合致した場合。2) 末梢静脈とカテーテルから採取した血液培養で菌が合致した場合 (または血液培養陽性化までの時間差)。3) 2つのカテーテルルーメンから血培を採取した場合は、一方のコロニー数が他方の3倍以上であれば、たぶんそう。

inclusion criteria:18歳以上
exclusion criteria:ICU入室前のカテーテル挿入、中心静脈栄養や化学療法のため7日以上留置する患者、いずれかの消毒にアレルギーがある患者

【試験の概要】
デザイン:open label RCT
地域:日本 16施設
登録期間:2012年12月1日〜2014年3月31日
観察期間:カテーテル挿入から抜去まで (中央値3.8日)
症例数:1132例 (0.5%クロルヘキシジン群377例、1%クロルヘキシジン群387例、10%ポビドンヨード群368例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり (丸石製薬、吉田製薬)

【患者背景】
3群とも有意差なし。年齢66歳、男性63%、SOFA7.2点、免疫不全5%、ステロイド11%、糖尿病19%、AKI30%、CKD17%、内科系81%、手術症例19%、カテーテル留置前の感染56%、感染源 肺24%、腹部11%、尿路5%、カテーテル留置前の抗菌薬投与55%、CV35%、Aライン65%、内頸静脈93%、鎖骨下静脈4%、大腿静脈3%、留置期間3.8日、カテ培養 maki法83%、sonication法17%。

【結果】
0.5%CHG vs 1%CHG vs 10%PVI
テーテル抜去時のカテーテルコロナイゼーション (primary outcome)
3.7 vs 3.9 vs 10.5 /1000カテーテル日 P=0.03

CRBSI (secondary endpoint)
3.0 vs 2.0 vs 4.9 /1000カテーテル日 P=0.41

CRBSIは3群で有意差はないが、カテーテルコロナイゼーションは0.5%CHGと10%PVI、1%CHGと10%PVIの間で有意差あり (HRはそれぞれ0.33、0.35)。

【まとめと感想】
カテーテルコロナイゼーションは、10%PVIより0.5%CHGと1%CHGで低かった。CRBSIについてはパワー不足なので統計学的な差はなかったが、0.5%CHGと1%CHGで低い傾向は見て取れた。

(1) Lancet. 2015;386(10008):2069-2077
(2) http://www.idsociety.org/Guidelines/Patient_Care/IDSA_Practice_Guidelines/Other_Guidelines/Other/Management_of_Catheter-Related_Infections/
(3) https://www.cdc.gov/infectioncontrol/guidelines/bsi/index.html