鉄の経口での補充は、鉄欠乏を有するHErEFの運動耐容能の改善には効果がない

心不全患者では貧血の合併はよく見られ、ヘモグロビン (Hb) の値に関わらず、鉄欠乏は運動耐容能・QOL・死亡率の低下と関連がある。

カルボキシマルトース鉄の静注は、心不全症状や運動耐容能 (6分間歩行距離) の改善に有効である(1-2)。経口の鉄剤でも同様の効果があるかはわかっていない。

Effect of Oral Iron Repletion on Exercise Capacity in Patients With Heart Failure With Reduced Ejection Fraction and Iron Deficiency: The IRONOUT HF Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2017 May 16;317(19):1958-1966

【PICO】
P:鉄欠乏を有するNYHAⅡ-ⅣのHFrEF (EF≦40%)
I:iron polysaccharide 150mg×2の内服
C:プラセボの内服
O:最大酸素摂取量の変化量 (16週後)

鉄欠乏=フェリチン15−100ng/ml、またはフェリチン100−299ng/ml + TSAT<20%

secondary endpoint:6分間歩行距離、NT-proBNPなど

exclusion criteria:神経筋疾患や整形外科的疾患など心肺運動負荷試験 (CPET) ができない患者、CPXでガス交換比 (RER) 1.0以上

【試験の概要】
デザイン:DB-RCT
地域:米国23施設
登録期間:2014年9月3日〜2015年11月18日
観察期間:16週間
症例数:225例 (鉄投与群111例、プラセボ群114例)
解析:ITT解析
スポンサー:NHLBI (企業の関与なし)

【患者背景】
両群に統計学的な差はない。NYHAⅡ:Ⅲ=7:3だが、プラセボ群では6:4。心不全と診断されてから5−6年。虚血が3/4。βblocker95%、ACE阻害薬/ARB80%、ループ利尿薬80%、高アルドステロン薬60%で内服。NT-proBNP1100、フェリチン70、Hb12。最大酸素摂取量1180ml/min・13ml/kg/min。

【結果】
鉄投与群はベースラインでは、フェリチン75ng/ml、TSAT19%だったが、16週後ではそれぞれ95ng/ml、22%で、フェリチンは有意ではなかったものの (P=0.06)、TSATはプラセボに比べ有意に改善していた。ただ、16週後のHbのデータはなかった。

鉄投与群 vs プラセボ群
最大酸素摂取量の変化量 (primary endpoint)
23ml/min vs -2ml/min 変化量の差21ml/min (-34to76)

6分間歩行距離、NT-proBNPなども有意差なし。

【まとめと感想】
経口の鉄剤では、最大酸素摂取量、6分間歩行距離、NT-proBNP, 心不全症状 (質問表への回答) は改善しなかった。フェリチンやTSATなど鉄のパラメータはそこそこ改善したにも関わらず、これらの指標に変化がなかったということは、単純に鉄を補充してもダメということ。

以前のRCTで6分間歩行距離や心不全症状の改善を認めていて、IRONOUT試験と同じように鉄欠乏のあるHFrEFを対象としていて、baselineのHbとかフェリチンとかそれほど代わりのに結果に違いがでるのは、カルボキシマルトース鉄自体の効果なのだろうか。

経口の鉄剤にしろ、カルボキシマルトース鉄の静注にしろ、長期的な効果と、死亡率・心不全の増悪といった臨床的なアウトカムについてはデータがないため、今後に期待。

(1) N Engl J Med 2009; 361:2436-2448
(2) Eur Heart J. 2015;36(11):657-668.