虚血性心疾患

SVGに対するPCIにおいて、第1世代DESのBMSに対する優位性は5年で消失

大伏在静脈 (SVG) に対するPCIにおいて、DESとBMSの有効性を比較したISAR-CABG試験では、1年の心血管イベント (全死亡、心筋梗塞、TLR) は有意にDESで少なかった (15.0% vs 22.1%, HR:0.64 [95%CI:0.44-0.94])。この差は、DESによってTLRが抑えられたためだった。

このISAR-CABG試験は、2011年にLancetに掲載されており、SVGへのPCIでDESとBMSを比較した最も大きなサンプルサイズの試験だったらしい。これは、その5年のフォローアップの結果である。

Efficacy Over Time With Drug-Eluting Stents in Saphenous Vein Graft Lesions
J Am Coll Cardiol 2018;71;1973-1982.

【PICO】
P:SVGに新規の50%以上の狭窄を有する狭心症
I:DES留置 (Taxus, Cypher, Yukon)
C:BMS留置
O:5年間の全死亡、心筋梗塞、TLR

secondary endpoint:全死亡、心筋梗塞、TLR、ステント血栓症

inclusion criteria:症状もしくは客観的な心筋虚血があること
exclusion criteria:心原性ショック

【試験の概要】
デザイン:RCT (オープンラベル、評価者のみブラインド)
地域:ドイツ
登録期間:2007年11月〜2010年2月
観察期間:5年
症例数:610例 (DES群303例、BMS群307例)
解析:ITT解析
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【患者背景】
ざっくりと。年齢71歳、DM35%、そのうち1/3がIDDM、UAP40%、13年物のSVG、EF49%、LADとLCxとRCAが1/3ずつ、reference3.3mm、病変長15mm。

【結果】
すべてのアウトカムで有意差なし。

DES vs BMS
全死亡
27.5% vs 28.9% HR:0.94 (95%CI:0.69-1.28)

心筋梗塞
8.2% vs 9.9% HR:0.76 (95%CI:0.44-1.36)

TLR
33.1% vs 25.5% HR:1.20 (95%CI:0.87-1.64)

ステント血栓症
2.0% vs 0.4% HR:5.11 (95%CI:0.60-44.72)

【まとめと感想】
1年時点で有意差があったprimary endpoint (全死亡、心筋梗塞、TLR) は、その後徐々に差が縮まり、Kaplan-Meier曲線は5年でほぼ重なった。両群の差になっていたのはTLRで、1年時点でDES群はBMS群の半分だったが (HR:0.49, 95%CI:0.28-0.86)、1−5年のランドマーク解析では倍発生しており、DES・BMSともに曲線の傾きはほぼ一定で差は開く一方である (HR:2.02, 95%CI:1.32-3.08)。

最初の1年では第1世代DESに軍配が上がったが、その差は5年間で消失してしまった。Cypher (SES) はすでに市場から消え、Taxus (PES) は第2世代・第3世代DESに劣る。第2世代・第3世代DESではlate catch upは抑えられ、BMSよりTLRは少ないとされているため、今のDESではここまで極端な結果にはならないだろう。