未分類

潜在性甲状腺機能異常と心疾患

Subclinical thyroid dysfunction and cardiovascular diseases: 2016 update.
Eur Heart J. 2018 Feb 14;39(7):503-507.

甲状腺機能低下
・潜在性甲状腺機能低下症=TSHが正常上限以上でFT4が正常範囲
・高齢者の10%、女性に多い
冠動脈疾患、心不全、脳梗塞と関連あり。
・TSHの範囲・上限については議論あり。
TSHは年齢とともに低下するが、年齢調整したカットオフ値は標準化していない
・甲状腺機能低下症は次のような異常をきたす。リズムの異常 (徐脈や房室ブロック)、心筋の異常 (収縮能低下、拡張能低下、LVEDV増加、肺高血圧、心嚢水)、血管内皮障害と低血圧。
・よりTSHが高い甲状腺機能低下症で、異常を認めやすく、特に拡張障害が起きやすい。
・65歳以上でTSH≧10mIU/Lの症例3044例を観察したCardiovascular Health Studyでは、peak E velocityが0.80m/sとTSHが正常範囲の群よりも有意に高かった (0.72m/s, P=0.002)。
・潜在性甲状腺機能低下症は心血管死のリスクである。
 TSH:4.5-6.9mIU/L → HR:1.09 (95%CI:0.91-1.30)
 TSH:7.0-9.9mIU/L → HR:1.42 (95%CI:1.03-1.95)
 TSH>10mIU/L → HR:1.58 (95%CI:1.10-2.27)
・ただし、全死亡は増やさない。
・高いTSH (TSH:10-19.9mIU/L) は心不全イベントを増やす (HR:1.89, 95%CI1.23-2.80)。
・潜在生甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモンの補充が、心機能を改善させたという小規模のデータがあるが、limitationは多い。
・甲状腺機能が正常化すると、頸動脈IMTが薄くなり、LDLが下がる。

甲状腺機能亢進
・潜在性甲状腺機能亢進症=TSHが低下or検出できない、FT3とFT4が正常範囲
心房性・心室性期外収縮、AF、心血管疾患と関連あり。
・潜在性甲状腺機能低下症は、次のようなリスクがある。
 全死亡 HR:1.24 (95%CI:1.06-1.46)
 心血管死 HR:1.29 (95%CI:1.02-1.62)
 心房細動 HR:1.68 (95%CI:1.16-2.43)
・低いTSH (TSH<0.1mIU/L) は心不全イベントを増やす (HR:1.94, 95%CI:1.01-3.72)。

甲状腺機能のスクリーニング
・甲状腺疾患の既往、視床下部・下垂体機能異常、自己免疫疾患の既往がある場合は、TSHのモニタリングが有用。
脂質異常、低Na血症、原因不明のCK上昇、貧血、甲状腺機能に影響を与える薬剤の使用などでは、TSHの検査が有用。
・ACPでは、50歳以上の女性では定期的な検査を推奨している。
・ATAとAACEでは、60歳以上でTSHの測定を推奨している。

治療
・甲状腺ホルモン補充の閾値は、観察研究と短期間の臨床試験に基づく。
・ATAとAACEでは、TSH≧10mIU/Lで甲状腺ホルモンの補充を推奨しており、TSH<10mIU/Lではリスクなどを勘案し個々に判断するとしている。
・議論が分かれるところであるが、心血管疾患では早期の治療が有用かもしれない。
・高齢者では特に、過剰な治療が行われやすく、心不全増悪や不整脈のリスクになる。
・ATAとAACEでは、TSH<0.1mIU/Lで、不整脈を有する症例、骨粗鬆症の既往やリスクがある閉経後の女性に対する治療はリーズナブルとしている。