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STICH試験 低心機能の冠動脈疾患患者に対するCABG

Cronary-Artery Bypass Surgery in Patients with Left Ventricular Dysfunction
N Engl J Med. 2011;364:1607-16

低心機能の冠動脈疾患患者に対するCABGの効果は明らかでない。CABGと至適薬物療法が患者の予後を改善するか調べた試験。

〇この論文のPICOはなにか
P:CABG適応の冠動脈疾患を有する低心機能(EF35%以下)患者
I:CABG+薬物療法(CABG群)
C:薬物療法のみ(薬物療法群)
O:全死亡(primary endpoint)

〇ランダム割付されているか
study design(ランダム割付・Concealmentなどなど)については、別の論文に記載されているらしいが、面倒なので当たってはいない。この論文のstudy designにはrandomizedという記述は一応ある。

〇baselineは同等か
薬物療法群、CABG群ともに同等。
左室機能(EF、前壁のakinesia・dyskinesia、MRの程度、病変血管数、LM病変など)、年齢、既往(陳旧性心筋梗塞、高脂血症、高血圧症、糖尿病、以前のPCI、以前のCABG、腎機能障害の割合)、喫煙、狭心症(CCS分類)、心不全(NYHA分類)、血圧、6分間歩行距離

〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析が行われている。
CABG群に割り振られたもののうち、
lost to follow upは5/1212例で、追跡率99.6%であった。

〇盲検化されているか
治療介入者・患者:できない
解析者:されている

〇症例数は十分か
Power90%、25%のリスク減少(薬物療法群での3年生存率75%と推定)として症例数を算出し登録を開始したが、症例数が集まらなかったため、400例のイベント(死亡)が発生するよう期間を延長した。必要症例数1200例、平均観察期間5年とした。

〇結果の評価
1212例(CABG群:610例、薬物療法群:602例)が登録された。CABG群のうち、555例(91%)にCABGが行われ、薬物療法群のうち100例にCABGが行われた。
ITT解析では、CABG群と薬物療法群で有意差なし。
Hazard ratio: 0.86(CI: 0.72-1.04), P=0.12
Per protocol解析やAs treatment解析では有意差がついている。

〇この論文を読んで
薬物療法に割り付けられたOperableな患者を薬物療法のみで経過をみるのって、外科医にとっては難しいんだろうな。そういう意味でこういう試験は大変なんだと思う。
Primary Endpointには差がなかったので、症例数が足りているかどうかだが、症例数1200例・観察期間5年の予定となっていて、必要症例数には達しているが、観察期間の中央値が56か月(四分位範囲:48-68)と5年には満たない。これはどう考えたらいいのかわからないが、60か月では有意にならないように思う。
Per protocol解析やAs treatment解析では有意差がついていたが、バイアスが生じやすいため解釈には注意しなくてはいけない。基本的にITT解析で有意差がないので、そのように解釈すればいいだろう。