安定狭心症に対するPCI 運動時間への効果

Percutaneous coronary intervention in stable angina (ORBITA): a double-blind, randomised controlled trial.
Lancet. 2017 Nov 1. pii: S0140-6736(17)32714-9. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32714-9. [Epub ahead of print]

◇リサーチクエスチョン
安定狭心症に対して、世界中で年間50万件以上のPCIが行われているが、COURAGE試験ではPCIは死亡も心筋梗塞を減少させず、メタアナリシスでも同様の結果が報告されている。PCIと薬物療法の症状改善効果を比較したプラセボ治療を対照とした臨床試験は存在しない。症状の変化は主観的であり、真の治療効果とプラセボ効果の影響があるため、プラセボ対象試験によりプラセボ効果を排除し、PCIの真の治療効果を検証する。

◇PICO
P:安定狭心症(70%以上の狭窄の1枝病変)
I:薬物療法+PCI
C:薬物療法+プラセボ治療
O:トレッドミル運動時間

exclusion criteria:非標的血管に50%以上の狭窄、ACS、CABG後、LMT病変、DESが禁忌、CTO、重症弁膜症、重症低左心機能など

◇試験の概要
デザイン:double-blind RCT
地域:英国
登録期間:2014年1月6日〜2017年8月11日
観察期間:6週間
症例数:200例(PCI群105例、プラセボ治療群95例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

◇結果
LAD病変69%
治療前のFFR:0.72(IQR:0.57-0.81)
治療後のFFR:0.90(IQR:0.87–0.94)

◇まとめと感想
安定狭心症に対する治療は、薬物療法が基本になる。PCIは狭心症の症状を取るのに有効な方法だが、症状は主観的であるため、PCIの治療効果は真の治療効果にプラセボ効果が上乗せされたものになる。このORBITA試験では、プラセボ治療を行うことでプラセボ効果を排除し、PCIの真の治療効果について検証したものである。

結果としては、primary endpointのトレッドミル運動時間の増加は、プラセボ治療群よりPCI群の方が16秒長かったが、有意なものではなかった。また、Seattle Angina QuestionnaireやEQ-5D-5L questionnaireなどの質問票による症状の変化も、両群で有意な差はなかった。

PCIでは、生命予後を改善することや心筋梗塞を抑制することはできない。そして、この試験で示されたように運動耐容能や症状に対する効果も循環器内科医が期待する程でないなら、PCIの適応は極めて限定的なものになるだろう。

もちろん薬物療法では症状が取れない症例はあるので、熟練したInterventionistは不可欠である。そして、日本のほとんどの地域でAMIに対するPCIができる施設にアクセスできるという環境も素晴らしいが、安定狭心症に対するPCIは、おそらくやられ過ぎている。それができる施設と術者を制限した方が良いと思うが、今の日本ではPCIの数を抑制する方向にはなりにくい。米国ではCOURAGE試験以降、安定狭心症に対するPCI件数は減少しており、このORBITA試験を受けて、さらにPCI適応の適正化が進むかもしれない。