心臓手術

糖尿病とグラフト開存率

Influence of Diabetes on Long-Term Coronary Artery Bypass Graft Patency.
J Am Coll Cardiol. 2017 Aug 1;70(5):515-524.

◇この論文のPECOは?
P:CABG
E:糖尿病あり
C:糖尿病なし
O:グラフト開存率

inclusion criteria:糖尿病の治療内容、術前の冠動脈所見、再血行再建前の冠動脈造影所見、グラフトの狭窄の程度がわかる症例のみ組み入れ

<デザイン、セッティング>
・1972年1月1日〜2011年1月1日
・米国
・単施設(Cleveland Clinic)
・retrospective
・糖尿病あり:1372例(ITA:1132、SV:2512、その他:152)
 糖尿病なし:11519例(ITA:6771、SV:17554、その他:339)
・CABG後の冠動脈造影
 1回:8387例、2回:2267例、3回:623例、>4回:242例
・プロペンシティスコアマッチ

<結果>

(本文から引用)

・ITA
糖尿病ありでは、85%は狭窄なし。閉塞は4.6%。
糖尿病なしでは、86%が狭窄なし。閉塞は6.7%。
調整前のデータだが、差はない。

・SV
これも調整前で、差はない。
1/3は狭窄ゼロ。半分は閉塞する。


(本文から引用)


(本文から引用)

調整後。
糖尿病ありで、早期の開存率が有意に高い。
遠隔期では、差がない。
SVでは有意差なし。

propensity matched cohort
5年、10年、15年、20年生存率はそれぞれ
糖尿病あり 93%、73%、51%、35%
糖尿病なし 96%、83%、69%、58%
(P<0.0001)

◇感想
CABG後のグラフト開存率は、ITAもSVも糖尿病の有無で差がない。冠動脈造影自体が定期的にルーチンで行われているわけではないため、そのタイミングや回数にバイアスが入ってしまうが、BARI試験など以前の報告との一貫性はある。

糖尿病がある方が、冠動脈自体の動脈硬化が進みやすいため、内胸動脈はより閉塞しにくいのかもしれない。でも、そうだとすれば、なぜSVでも開存率に差がないのかはわからない。

CABG後でも糖尿病がある方が予後は悪い。グラフト開存率に差がないなら、それは非冠動脈死を反映しているのかと思ったが、この研究では心臓死、非心臓死に、両群で差はなかった(BARI試験では、5年間の心臓死に差はないが、非心臓死は糖尿病で有意に多い)。