集中治療

院外心停止後の低体温療法は、24時間でよい

脳神経学的な障害は、院外心停止の主要な死因であり、低体温療法により生命予後と神経学的予後が改善する。高体温は死亡率上昇と神経学的予後の悪化を招くため、避けるべきである。

低体温療法の目標体温は33℃と36℃でアウトカムに差はない(1)。そのため、低体温療法の目標体温は32−36℃で少なくとも24時間継続することが推奨されている(2)。ただ、より低い体温が脳浮腫を改善する効果があり、深い昏睡(体動の消失、脳幹反射の消失)が認められる症例には、ターゲットを33℃にすると良いかもしれない(3)。

脳幹反射は、対光反射、角膜反射、毛様脊椎反射(頚部への痛み刺激で散瞳)、眼球頭反射(人形の目現象:顔を回旋させると、逆方向に眼球が動く)、咽頭反射(咽頭後壁への刺激で吐き出すような反射)、咳嗽反射を確認する。

低体温療法は24時間以上に継続することが推奨されているが、それを検証したRCTはなく、これが初めてのRCTである。

Targeted Temperature Management for 48 vs 24 Hours and Neurologic Outcome After Out-of-Hospital Cardiac ArrestA Randomized Clinical Trial
JAMA. 2017;318(4):341-350.

◇この論文のPICOはなにか
P:院外心停止
I:33±1℃で48時間の低体温療法
C:33±1℃で24時間の低体温療法
O:6ヶ月後の神経学的アウトカム(Cerebral Performance Categories score:CPCスコアで評価)

inclusion criteria:心原性と思われる心停止、ROSCして20分以上自己心拍を維持、GCS<8、shockable rhythm/nonshockable rhythm
exclusion criteria:目撃のない心静止

Intervention:冷却装置、冷却した輸液などを用いて、33±1℃をターゲットに体温を管理する。体温は膀胱・直腸・食道・血管内で測定。低体温療法は、34℃以下になった時点から24−48時間継続する。復温は37℃になるまで、最大で0.5℃/時間の速度とする。重大な出血・致死的不整脈・難治性の心拍出低下があった場合は主治医判断で、36−37℃に戻す。

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:ヨーロッパ 10施設
登録期間:2013年2月〜2016年7月
観察期間:6ヶ月
無作為化:中央割付(web-based)、置換ブロック法、層別化(年齢、初期波形)
盲検化:試験の性質上、open label。評価者のblindあり。
必要症例数:338例
症例数:355例(48h群176例、24h群179例)
追跡率:99%
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

◇患者背景

(本文から引用)

witness、bystanderCPR、初期波形、AEDの使用、BLSやACLSまでの時間、使用した薬剤など、神経学的アウトカムに影響するような要因に差はない。


(本文から引用)

24h群で、ROSCから目標体温に到達するまでの時間が長い。Invasive cooling catheterがポピュラーなアイテムらしい。

◇結果

(本文から引用)

神経学的アウトカムに差はない。adverse eventは48h群で多かった。adverse eventは、痙攣などの脳の異常、低血圧、不整脈、経管栄養投与困難、腎不全、感染、出血と定義。

◇批判的吟味
・予定されていた症例数に達しているが、結果に有意差なし。
・追跡率は高い。
・24h群で目標体温に到達するまでの時間が有意に長い(281分vs320分)のは、神経学的アウトカムの悪化へ働きそう。

◇感想
低体温療法の継続時間は、24時間と48時間で6ヶ月後の神経学的アウトカムに有意差はなかった。adverse eventは48h時間群で有意に多いが、然もありなんという感じ。なかでも、肺炎がウエイトを占めてそう。

基本的には、35-36℃、24時間で、高体温は絶対に避けるというスタンスでいいかなと思っています。

(1)N Engl J Med. 2013 Dec 5;369(23):2197-206.
(2)Circulation. 2015;132:S465-S482
(3)Post-cardiac arrest management in adults(UpToDate)