虚血性心疾患

【総説】冠動脈バイパス術 (CABG)とFFR EHJ

Fractional flow reserve to guide and to assess coronary artery bypass grafting
Eur Heart J (2017) 38 (25): 1959-1968.

【FFR】
・0.014インチ(0.35mm)のプレッシャーワイヤーを使用。

・狭窄部の遠位まで進め、血管拡張薬を冠注もしくは静注する。

・FFR<0.75なら100%の精度で心筋虚血が存在し、FFR>0.80なら95%以上の精度で心筋虚血はない

【CABG】
・動脈硬化の進展リスクは動脈グラフトより静脈グラフトで高い。しかし、生存率への影響は大規模のレトロスペクティブなレジストリーでは認められなかった。

・内胸動脈(ITA)の内径と冠動脈狭窄の程度とは強い関連がある。血流の調整が働く。

・伏在静脈(SVG)のグラフト開存率は、還流域の大きさと冠動脈径による。LCxやRCAへの吻合より、LADへの吻合の方が開存率が高い。

・橈骨動脈(RA)の閉塞メカニズムは明確ではないが、スパズムが関与している。

・RAの開存率は、冠動脈の狭窄の程度に依存する。>90%ではよいが、それ以下であれば開存率は低下する。

・適切な血管を選択すれば、RAの開存率はRITAと同等であり、SVGより優れている。

【左主幹部病変】
・病変が短い場合や入口部病変では、狭窄度の評価が難しくなる。

・狭窄が50%未満だった患者の23%で、FFR<0.80だったという報告があり、LM病変は過小評価のリスクがある。

・LM病変でもFFR>0.80なら、至適薬物療法で5年までの臨床的アウトカムは良好である。

・入口部に病変がなくても、ガイドカテーテルが機能的な狭窄になり得る。

・サイドホール付きガイドカテーテルは使用しないこと。

【多枝病変】
・FFRで病変を評価するfunctional syntax scoreを用いると、治療法が変わるかもしれない(多枝病変でfunctional syntax score<23、LM病変で<32なら)。

・多枝病変(MVD)でのFFR-guided PCIと外科的血行再建を比較するためのFAME3試験が進行中である。1年間のMACE(心血管イベント)をアウトカムとした非劣勢試験である。

・LM病変+MVDのFFRは難しい。LM病変に加え、LADもしくはLCxに有意狭窄があるなら、冠動脈内イメージングを使用した方がよい。

【弁膜症の合併】
・ASでは25−50%で冠動脈疾患の合併あり。

・AS+CADで症状があれば、AVR+CABGが推奨される。

・著しい低血圧の避けるため、アデノシンは静注より冠注が良い。

・左室肥大は狭窄の過小評価(FFRの上昇)に繋がるかもしれない。

【グラフトに対するFFR】
・グラフトへのPCIは冠動脈へのPCIより、MACE(心筋梗塞と再血行再建)が多い。

・グラフトへのPCIでは、DESはBMSと比べ、より低い再血行再建率と死亡率に関連がある。

・グラフトへのFFRに関するデータは少ないが、レトロスペクティブなレジストリーデータでは、FFR-guided PCIは心血管イベントの減少とコスト削減に関連があった。ただ、動脈グラフトに限られ、SVGではその限りではない。

・冠動脈が閉塞している場合、FFRの結果は通常のFFRの解釈通りである。冠動脈が開存している場合、吻合部の遠位部で測定しFFR<0.80なら冠動脈とグラフトの両方でも十分な冠血流がないことを意味する。

【CABG前のFFR】
・グラフトの1年開存率は、FFRと関連がある。FFR陰性の冠動脈に対するグラフトは、陽性の場合より2倍の閉塞率で、それは動脈グラフトでも静脈グラフトでも同様であった。

・angio-guided CABGとFFR-guided CABGの1年開存率を比較するGRAFFITI試験が進行中である。