心臓手術

中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する外科的治療

Surgical Treatment of Moderate Ischemic Mitral Regurgitation
NEJM 2014;371:2178

〇この論文のPICOはなにか
P:中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対し
I:冠動脈バイパス術(CABG)に加えて、僧帽弁形成術を行うと(CABG+MV repair群)
C:CABGのみの場合と比較し(CABG群)
O:12ヶ月後の左室収縮末期容積係数(LVESVI)が改善するか

secondary endpointとして、MACCE(死亡、脳梗塞、僧帽弁の再手術、心不全による入院、NYHAクラスの悪化)が設定されている。

〇ランダム化について
中央割付方式

〇baselineは同等か
群間差があったのは心房細動で、CABG群:23.3%、CABG+MV repair群:12.8%でCABG群で多かった。術前のLVESVIは、CABG群:54.8±24.9ml/m2、CABG+MV repair群:59.6±25.7ml/m2であった。そのほか、年齢、性別、DM、腎不全、心筋梗塞の既往、ERO(effective regurgitant orifice area)、グラフト数、虚血性心疾患や心不全に対する薬物療法などすべて同等。

〇すべての患者の転帰が結果に反映されているか
ITT解析がなされている。

〇盲検化(masking/blinding)はされているか
患者、治療介入者、評価者に関してはされていない。
解析者については記載がない。

〇症例数は十分か
術前のLVWSVI:80ml/m2、標準偏差:35ml/m2と想定しCABG群で4ml/m2の改善が、CABG+MV repair群で16ml/m2の改善が見込めると想定。また、power:0.9、αlevel:0.05として、症例数は300例と算出されており、計301例ランダマイズされている。

〇結果の評価
CABG群:151人、CABG+MV repair群:150人
CABG群で8人がMV repairを行っており、CABG+MV repiar群では3人にMV repiarが行われず、CABGのみが行われている。

結果は、CABG群:46.1±22.4ml/m2、CABG+MV repair群:49.6±31.5ml/m2で、baselineからの変化は-9.4と-9.3ml/m2であった。両群間に有意差はない。CABG群でも約7割がMRがmild以下になっている(CABG+repair群では約9割)。CABG+MV repair群で、有意に手術時間が長く、入院日数が長かった。

primary endpointで有意差がついていないが、計算されたサンプルサイズを超えており症例数は十分と考えられる。仮説よりCABG群のリバースリモデリングが認められたということか。