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AMACING試験 生食投与でも造影剤腎症は防げない

Prophylactic hydration to protect renal function from intravascular iodinated contrast material in patients at high risk of contrast-induced nephropathy (AMACING): a prospective, randomised, phase 3, controlled, open-label, non-inferiority trial.
Lancet. 2017 Feb 20. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
ガイドラインでは、腎機能低下症例での造影剤腎症予防に生食投与が推奨されている。しかし、予防的ハイドレーションの有無での、臨床的な有効性と費用対効果は十分に検証されていない。これが、AMACING試験の目的である。

方法
AMACING試験は前向き、無作為化、第3相、パラレルグループ、オープンラベル、非劣性試験である。対象は、現在のガイドラインで造影剤腎症のリスクがあるとされる患者である。オランダのマーストリヒト大学メディカルセンターでヨード造影剤の投与を受ける18歳以上の高リスクの患者(eGFR30−59ml/min/1.73m2)を、無作為に0.9%生理食塩水群と非予防群に割り付けた。eGFR30以下、血液透析は除外した。事前に設定したリスク因子で層別化し無作為化を行なった。主要評価項目は、造影剤腎症の発症(造影剤投与2−6日で、血清Crがベースラインから25%以上、または0.5mg/dl以上上昇すること)と、予防をしないことの費用対効果である。血清Crは造影剤投与前、2−6日後、26−35日後に測定した。解析者は盲検化した。有害事象と資源の使用は記録した。非劣勢マージンは2.1%とした。intention-to-treat解析とper-protocol解析を行なった。

結果
2014年6月17日から2016年7月17日までで、660例が無作為に割り付けられた(非予防群332例、生食投与群328例)。2−6日後の血清Crは非予防群では307/332例(92%)で、生食投与群では296/328例(90%)で測定された。造影剤腎症は非予防群では8/307例(2.6%)、生食投与群では8/296例(2.7%)で認めた。絶対的な差異は−0.1%(片側95%CI:-2.25to2.06)であった。非予防は生食投与より費用が削減された。35日以内に血液透析や死亡は観察されなかった。18/328例(5.5%)で生食投与により合併症が生じた。

結論
造影剤腎症の予防において、生食を投与しないことは生食投与と比較し非劣勢であり、費用を削減できる。

◇この論文のPICOはなにか
P:ヨード造影剤を用いた検査・治療を行う予定の腎機能障害患者(eGFR30−59)
I:生食を投与しない(非予防群)
C:生食を投与する(生食投与群)
O:造影剤腎症の発症(造影剤投与2−6日で、血清Crがベースラインから25%以上、または0.5mg/dl以上上昇すること)と、非予防群の費用対効果

inclusion criteria:待機的検査を行う連続症例、18歳以上
exclusion criteria:eGFR30未満、腎代替療法、緊急検査、集中治療が行われている患者

◇baselineは同等か

同等。生食は検査前に822ml投与されていて、オランダ人の男性の平均身長は1.8mぐらいらしいのでBMI28だと体重が90kgほどになるが、それでも十分な量が投与されていると考えていいだろう。

◇試験の概要
地域:オランダ
登録期間:2014年6月17日〜2016年7月17日
観察期間:最長35日
無作為化:糖尿病、eGFR、投与ルート(動脈or静脈)、診断か治療かで層別化あり。ALEAを用いたコンピュータによる無作為化。
盲検化:オープンラベル。解析者は盲検化されている。
必要症例数:生食投与群で造影剤腎症が2.4%発症し、非劣性マージン2.1%、power80%、one-sided alpha5%と仮定して1300例と算出。2015年12月に必要症例数を改定し600例としているが、その根拠は不明。
症例数:660例(非予防群332例、生食投与群328例)
追跡率:非予防群307/332例(92%)、生食投与群296/328例(90%)
解析:ITT解析とper-protocol解析
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◇結果

糖尿病では生食投与寄り。逆に治療行為があると非予防群の方がいい。

生食投与による合併症を18例(5.5%)で認めた。利尿薬の投与や入院の延長13例、低Na血症1例、不整脈4例。

26−35日だと・・・
eGFR10以上の低下は
非投与群で11/260例(4.2%)、生食投与群7/260例(2.7%)

(費用対効果の図表はよくわからないので、ここでは割愛。とりあえず、費用対効果もよくなるらしい。)

◇批判的吟味
・患者背景は、自分の実臨床にも応用できるだろう。
・事前に設定されたサンプルサイズは1300例で、結局660例なのでパワー不足は否めない。
・費用対効果が非予防群でよかったといっても、それはせいぜい1ヶ月程度までの話で、eGFRが10以上悪くなった症例が非予防群で多い傾向にあるのでそれが長期的にどうなるかはわからない。

◇感想
生食投与では造影剤腎症を予防できないという結果。治療行為のサブグループだと、生食の予防投与をやらない方がいい傾向にある。26−35日の時点だと、eGFRが10以上低下する割合が生食投与群で少ない。

パワー不足っぽいので結果は鵜呑みにはできないですが、確かに生食投与でデコっちゃう人はたまーにいるので(心機能が悪いと)、そこらへんに注意しながらって感じでしょうか。もちろん、費用対効果の問題もありますが、自分の中では、この研究で生食を投与しないということにはなりません。