PCSK9阻害薬エボロクマブ 第Ⅱ-Ⅲ相臨床試験のデータから

Efficacy and Safety of Evolocumab in Reducing Lipids and Cardiovascular Events
N Engl J Med 2015; 372:1500-1509

《要約》
背景
エボロクマブは、PCSK9を阻害するモノクローナル抗体で、短期的な試験において、LDLコレステロールを著しく低下させた。我々は、より長期のデータを得るため、2つの試験を延長した。

方法
2つのオープンラベル、無作為化試験で、第Ⅱ相または第Ⅲ相試験(parent trials)を終えた4465例を登録した。parent trailsの割り付けに関係なく、エボロクマブ+標準治療の群(140mgを2週ごとに投与、または420mgを月に1回投与)と標準治療のみの群に、2:1に割り付けた。11.1ヶ月(中央値)フォローアップされ、脂質レベル、安全性、心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建、脳梗塞、TIA、心不全)について評価した。2つの試験のデータを複合した。

結果
標準治療群に比べ、エボロクマブ群ではLDLコレステロールが61%減少した(中央値で120mg/dlから48mg/dl、P<0.001)。神経認知機能のイベントはエボロクマブで起こりやすいことが報告されていたが、ほとんどの有害事象に有意差はなかった。神経認知機能のイベントも含め、有害事象のリスクと治療後のLDLコレステロール値に相関はなかった。1年間の心血管イベントは標準治療群では2.18%、エボロクマブ群では0.95%であった(ハザード比:0.47、95%CI:0.28−0.78)。

結論
標準治療にエボロクマブを加えることで、LDLコレステロール値と心血管イベントが有意に低下する。

◇この論文のPICOはなにか
P:高脂血症※
I:標準治療に加え、エボロクマブ投与(エボロクマブ群)
C:標準治療のみ(標準治療群)
O:有害事象の発生(重大な有害事象、エボロクマブの中止につながる有害事象、CKと肝機能の異常値、エボロクマブに対する中和抗体の産生)

secondary endpoint:LDLコレステロール値、心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建、脳梗塞、TIA、心不全)

※今までに行われた第Ⅱ相、または第Ⅲ相の12試験に登録された患者を対象にしている。12試験の患者は様々で、スタチンなしでLDL<100mg/dl、スタチン投与下でLDL<85、ヘテロ家族性高コレステロール血症でスタチン投与下でLDL<100mg/dlなど。

nclusion criteria:parent trialが終了していること、parent trialで有害事象が起きていないこと、病態が安定していること

◇baselineは同等か
同等。心血管疾患、脳血管疾患の既往がある人は多くなく、一次予防がメイン。スタチンは70%しか入っていない。

◇試験の概要
地域:北米、欧州、アジア、南アフリカ
登録期間:2011年10月〜2014年6月
観察期間:11.1ヶ月(中央値)
無作為化:interactive voice-responseまたはweb-response systemを用いて中央割り付けを行う。
盲検化:オープンラベル
必要症例数:記載なし
症例数:4465例(エボロクマブ群2976例、標準治療群1489例)
追跡率:不明
解析:ITT解析
スポンサー:Amgen社による資金提供あり。試験デザイン、データ収集、解析もAmgen社が行う。

◇結果
エボロクマブ群で、投与中止が7.2%。

○脂質
・LDL(エボロクマブ群、ベースライン→12週後)
120mg/dl → 48mg/dl
(100mg/dlを切ったのは、約90%)
・HDLは7.0%上昇

○心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建、脳梗塞、TIA、心不全)
エボロクマブ群 vs 標準治療群
0.95% vs 2.18%, HR:0.47(95%CI:0.28−0.78)

◇批判的吟味
・LDL低下効果は高い
・スタチンが70%しか内服していない
・心血管イベントに差があるが、ソフトエンドポイントも含まれており、オープンラベルなので要注意。
・心血管イベントを評価するには11ヶ月は短い。
・スポンサー企業が、試験デザイン・データ収集・解析も行なっている。
・有害事象は、それほど発生頻度が高くないので、検出力が十分あるかわからない。
・parent trialで有害事象が発生した患者は除外されているため、有害事象の発生はもっと多いはず。

◇感想
一次予防がメインの集団で、スタチン内服率は70%と高くないが、エボロクマブを投与することにより、LDLは著しく低下し、有害事象は増えなかった。心血管イベントがエボロクマブ投与により減っているが、エンドポイントの設定が適切でない可能性があり、今後のデータが待たれる。