80歳代のスタンフォードA型急性大動脈解離の手術成績

Early and Late Outcomes of Surgical Repair for Stanford A Acute Aortic Dissection in Octogenarians.
Circ J. 2016 Nov 25;80(12):2468-2472

◇論文の概要
<背景>
高齢であることは死亡率と罹患率の強力な独立した予後因子と考えられ、80歳代のスタンフォードA型急性大動脈解離(AAD)では手術が避けられるかもしれない。

<方法と結果>
2005年から2015年の間に、胸骨正中切開でAADの外科的手術を158例行なった。80歳代の患者24例(15.2%、平均年齢83±3歳)と、79歳以下の患者134例(平均年齢62±13歳)をレトロスペクティブに比較した。80歳代では女性が多かった(79.2%vs44.8%、P=0.0033)。


(本文より引用)

上行大動脈の置換は80歳代で多く(95.8%vs65.7%、P=0.0015)、全弓部置換は70歳代以下で多かった(4.2%vs26.9%、P=0.00165)。院内死亡は70歳代以下では14例、80歳代では0例であった(0%vs10.4%、P=0.1303)。主要な罹患率は同程度であった。慢性期の死亡は、80歳代で3例、70歳代以下で9例であった。1,3,5年生存率は、80歳代では94.4%、81.5%、81.5%で、70歳代以下では86.9%、85.6%、83.9%で、有意差はなかった。


(本文より引用)

<結論>
80歳代のAADに対する外科的手術は、より若い集団と比較しても良好な結果であった。院内死亡率は低く、長期的なアウトカムも良好であった。したがって、患者が80歳代というだけで外科的手術を忌避すべきではない。

◇この論文のPECOは?
P:スタンフォードA型急性大動脈解離
E:80歳以上
C:79歳以下
O:院内死亡率、1-,3-,5-年生存率

◇批判的吟味
・80歳代では、大動脈基部置換はゼロ。上行大動脈置換のみで済む症例がほとんど。臓器環流障害もゼロ。比較的状態がよさそうな症例に手術が行われている。

・80歳以上で手術に回らなかった症例について検討されていない。

・交絡因子の調整なし。

・単施設、少数。

◇結果
80歳代の大動脈解離であっても、70歳代以下と院内死亡率、遠隔期死亡率は有意差がないという結果。

80歳代であったとしても、解離が上行に限局(DebakeyII型)、大動脈弁手術や基部置換が不要で上行置換のみで済む、循環動態が安定、臓器環流障害なしなど、状態が比較的良さそうな症例では、高齢であること自体はそこまでネガティブな要因にならないのかもしれない。