疫学

動物性蛋白と植物性蛋白の摂取と死亡率との関連

Association of Animal and Plant Protein Intake With All-Cause and Cause-Specific Mortality.
JAMA Intern Med. 2016 Oct 1;176(10):1453-1463.

《要約》
背景
栄養のバランスが取れた食事がどのようなものかは未解決の問題で、優先順位の高い研究である。蛋白質摂取量は明確な効果があるかもしれないが、なにで蛋白質を摂取するかは、他の栄養にも影響があり、アウトカムの重大な決定要因かもしれない。

目的
動物性蛋白質と植物性蛋白質の摂取と死亡リスクとの関連を調べること。

デザイン、セッティング、患者
この前向き観察研究は、Nurses’ Health Study (1980 to end of follow-up on June 1, 2012)とHealth Professionals Follow-up Study (1986 to end of follow-up on January 31, 2012).から、131342例を組み入れた。動物性蛋白質と植物性蛋白質は質問票によって評価され、データは2014年6月20日から2016年1月18日に解析された。

アウトカムと測定
全死亡率と死因が特定された死亡率のハザード比

結果
131342例のうち、女性は85013例(64.7%)、男性は46329例(35.3%)で、平均年齢49±9歳であった。総エネルギーに占める蛋白摂取量の中央値は、動物性が14%(5−95パーセンタイル:9−22%)、植物性が4%(5−95パーセンタイル:2−6%)であった。生活習慣や食生活のリスク因子を調整した後では、動物性蛋白質は全死亡率に関連がなかったが(HR:1.02/10% energy increment、95%CI:0.98-1.05)、高い心血管死率とは関連があった(HR:1.08/10% energy increment、95%CI:1.01−1.16)。植物性蛋白は低い全死亡率と関連があり(HR:0.90/3% energy increment、95%CI:0.86−0.95)、低い心血管死率とも関連があった(HR:0.88/3% energy increment、95%CI:0.80−0.97)。これらの関連は、喫煙、アルコール過剰摂取、過体重または肥満、運動不足などの不健康な生活習慣がひとつでもある患者に限定され、不健康な生活習慣がない患者では明らかではなかった。動物性蛋白を植物性蛋白に切り替えることは、低い死亡率と関連があった。全死亡率に対するハザード比は、総エネルギーの3%を加工した赤肉から植物性蛋白質に置き換えた場合には0.66(95%CI:0.59−0.75)、加工していない赤肉から植物性蛋白質に置き換えた場合には0.88(95%CI:0.84−92)、卵から植物性蛋白質に置き換えた場合には0.81(95%CI:0.75−0.88)であった。

結論
動物性蛋白質を多く摂取することは心血管死亡率の上昇と関連があり、植物性蛋白質を多く摂取することは全死亡率と心血管死亡率と負の関連があった。特に、1つ以上の生活習慣リスクを持っている患者では、全死亡率と心血管死亡率との負の関連が強かった。動物性蛋白質、特に加工した赤肉を植物性蛋白質へ変えることは、より低い全死亡と関連があり、どのような蛋白質を摂取するかが重要であることが示唆された。

◇この論文のPECOは?
P:重篤な併存疾患がない看護職の人(The Nurses’ Health StudyとThe Health Professionals Follow-up Studyの参加者)
E:植物性蛋白質の摂取
C:動物性蛋白質の摂取
O:全死亡率、死因が特定された死亡率

exclusion criteria:悪性腫瘍(悪性黒色腫を除く)の既往、心血管疾患、糖尿病、質問票への未解答欄が10個以上(NHS)、質問票への未解答欄が70個以上(HPFS)、エネルギー摂取量過少または過多(女性:<500kcal/d &mt;または3500kcal/d、男性:<800kcal/d &mt;または4200kcal/d)

◇デザイン、対象、観察期間
・前向き観察研究
・131342例 フォローアップ率は、NHS・HPFSともに約95%
・フォローアップ:3540791人年(平均フォローアップ期間:約26.0年)
・アウトカムは、the National Death Indexで確認する。
・交絡因子の調整:時間依存性COX比例ハザードモデル


動物性蛋白をよくとる人は、脂肪、飽和脂肪酸、果物の摂取が少ないというのはなんとなくイメージできる。豆などの植物性蛋白の単位は皿なのか??日本人なら納豆や豆腐などでとることが多そうだけど、アメリカ人はどうやって摂取しているのか??



動物性蛋白の摂取量が多いと心血管死が多くなり、植物性蛋白の摂取が多いと全死亡、心血管死が少ない。植物性蛋白の摂取が多くても、悪性腫瘍による死亡は変わらない。


加工した赤肉が一番良くない。ナトリウム、硝酸塩、亜硝酸塩が多く含まれるからということらしい。13のコホート研究のメタ解析でも加工した赤肉は死亡率の増加と関連があったみたい。

◇感想
植物性蛋白といえば大豆と思っていましたが、小麦やナッツにも多く含まれるみたいです。ただ、植物性蛋白を多くとるって結構難しそうで、納豆1パック、豆腐1丁の中に10g程度しか含まれていない様。穀物と木の実など食べた方がよさそうです。

体に悪いものって美味しいんですけどね。加工した赤肉(ベーコン、ソーセージ、ホットドックなど)は減らしましょう。

take home messageは、肉がダメというより、加工した赤肉がダメで、それより大豆・穀物を多く取りましょうということでしょうか。患者さんにもそのように説明したいと思います。