退行性僧帽弁閉鎖不全症 僧帽弁形成術は置換術よりも周術期死亡率・長期生存率が良い

Twenty-Year Outcome after Mitral Repair Versus Replacement for Severe Degenerative Mitral Regurgitation. Analysis of a Large, Prospective, Multicenter International Registry.
Circulation. 2016 Nov 29. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
僧帽弁形成術は、ガイドラインでは置換術より優先され、また退行性の僧帽弁閉鎖不全症(MR)における外科的治療の重要な決定要因である。現在の推奨を支持するエビデンスレベルは低く、最近のデータからはその有効性について疑問がある。したがって、この研究の目的は、退行性MRに対する僧帽弁形成術と置換術の超長期のアウトカムを解析することである。

方法
MIDAは、退行性MRが登録された多施設レジストリーで、欧州と米国の6施設のデータである。我々は、僧帽弁形成術1709例と置換術213例を、プロペンシティスコアとinverse probability-of-treatment weighting(IPTW法)を用いて解析した。

結果
登録時では、僧帽弁形成術を行なった患者では置換術を行なった患者よりも若く、併存疾患が多く、後尖の逸脱が多かった。プロペンシティスコアマッチングとIPTW後では、2つのグループはバランスがとれており、標準差異は適切なマッチとされてる10%以下であった。周術期死亡率(術後30日以内の死亡もくしは手術と同一の入院期間での死亡)は、全体でもプロペンシティスコアがマッチした集団でも、僧帽弁置換術より形成術で低かった(それぞれ、1.3%vs4.7%; P<0.001、0.2%vs4.4%; P<0.001)。平均フォローアップ期間は9.2年、552例の死亡が観察され、そのうち207が心血管死であった。全体でも、プロペンシティスコアがマッチした集団でも、20年生存率は僧帽弁置換術より形成術で良かった(それぞれ、46%vs23%; P<0.001, 41%vs24%; P<0.001)。僧帽弁形成術の優位性は、年齢、性別や他の階層でも同様に認められた。僧帽弁形成術は、弁に関連した合併症や再手術の減少とも関連があった。

結論
退行性MRの患者において、僧帽弁形成術は置換術と比較し、周術期死亡率の減少・長期生存率の上昇・弁に関連した合併症の減少と関連があった。

◇この論文のPECOは?
P:退行性僧帽弁閉鎖不全症
E:僧帽弁形成術
C:僧帽弁置換術
O:全死亡
secondary outcomeは周術期死亡率、弁に関連した合併症(再手術、血栓塞栓症、大手術、感染性心内膜炎)

◇デザイン、対象、観察期間
・前向き
・MIDAレジストリーには、虚血性MR、大動脈疾患の合併、先天性心疾患、僧帽弁狭窄症、弁手術の既往は含まれていない。
・プロペンシティスコアマッチ、inverse probability-of-treatment weighting(IPTW法)
・1922例(僧帽弁形成術:1709例、僧帽弁置換術:213例)
・観察期間:平均9.2年

characteristics
置換術の方でも後尖の逸脱の割合が多い。EFは形成術で統計学的に少し低いがエコー所見なので誤差範囲。

◇結果
ps
iptw
プロペンシティスコアマッチングでもIPTW法でも、僧帽弁形成術で生存率がよい。

プロペンシティスコアがマッチした集団(僧帽弁形成術410例 vs 置換術205例)で、
・周術期死亡率
  0.2% vs 4.4%, p<0.001
・10年生存率
  76% vs 57%, p<0.001
・20年生存率
  41% vs 24%, p<0.001
・twenty-year freedom from 3+MR after MV repair
  85% [95%CI:82%-88%]
・twenty-year freedom from valve-related events
  83% vs 50%, p<0.001

◇感想
僧帽弁逸脱の手術は、AHAやESCのガイドラインでは僧帽弁形成術が推奨されているが、その根拠は単施設の観察研究が元になっている。これまでの後ろ向きコホート研究やメタ解析でも、僧帽弁置換術より形成術の方が、周術期死亡率や長期生存率がよいという報告がほとんどらしく、このMIDAレジストリーという前向きコホート研究でも、同様の結果が示された(生存率に差がないという報告もある。J Thorac Cardiovasc Surg. 2008 Apr;135(4):885-93)。

僧帽弁閉鎖不全症の原因が逸脱であること、前尖より後尖の逸脱、硬化病変が少ないなど形態的に僧帽弁形成術が可能であれば、形成術が望ましい。