心臓手術

STICH試験 年齢別サブグループ解析

Ten-Year Outcomes After Coronary Artery Bypass Grafting According to Age in Patients With Heart Failure and Left Ventricular Systolic Dysfunction: An Analysis of the Extended Follow-Up of the STICH Trial (Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure).
Circulation. 2016 Nov 1;134(18):1314-1324.

《要約》
背景
EFが低下し、冠動脈バイパス術(CABG)の合併症のリスクがより高い心不全において、高齢により冠動脈疾患(CAD)の有病率は高くなる。虚血性心筋症による心不全で、異なる年齢でもCABGの効果が同等にあるかどうかは明らかではない。

方法
STICH試験で、CABGの適応があるEF35%以下のCAD患者1212例を、CABGと薬物療法に無作為に割り付け、9.8年間フォローした。

結果
平均年齢60歳、12%が女性、36%が非白人、baselineのEFは28%であった。年齢により4つのカテゴリに分けた。Quartile1:54歳以下、Quartile2:55−59歳、Quartile3:60−67歳、Quartile4:68歳以上である。より高齢の患者で併存疾患が多かった。高齢者(Quartile4)と若年者(Quartile1)の全死亡を比較した場合、薬物療法でも(79%vs60%、P=0.005)、CABGでも(68%vs48%、P<0.001)、高齢者で高かった。対照的に、心血管死の年齢による統計学的な差は、薬物療法でも(Quartile4vs1、53%vs49%、P=0.388)、CABGでも(Quartile4vs1、39%vs35%、P=0.103)認めなかった。Quartile4でも1でも、もっとも多い死亡原因は心血管死であった(79%、62%)。全死亡に対するCABGの効果は、年齢が上昇するほど減少する傾向にあるが(P for interaction=0.062)、心血管死に対するCABGの効果は、年齢に関わらず一貫している(P for interaction=0.307)。CABGは、高齢者よりも若年者で、全死亡と心血管イベントによる入院を減少させた(P for interaction=0.004)。CABGを行った患者で、人工心肺接続時間およびICU滞在日数は、年齢による違いはなかった。

結論
高齢者と比較し若年者では、薬物療法に加えCABGを行うことで、全死亡および全死亡と心血管イベントによる入院が大きく減少した。年齢に関わらず、薬物療法に加えCABGを行うことが、心血管死を減少させる。

◇この論文のPICOはなにか
P:CABGの適応があるEF35%以下のCAD
I:CABG+薬物療法
C:薬物療法のみ
O:全死亡

◇デザイン、対象、観察期間
・RCTの年齢によるサブグループ解析
・COX比例ハザードモデル?
・1212例
・観察期間:9.8年(中央値)

characeristics
年齢があがるほど白人が多くなる。非白人の方が生命予後が悪くなる要因(経済的要因など)があるのでしょうか。基礎疾患は、やはり年齢が高いほど多い。Quartile4で症状がない人が多いのは活動性の低さを表している気がする。当たり前だが、年齢が高いほど、Hbが低く、Crが高くなる。

medical-and-device
βblockerは入れにくいのか、80%強しか内服していない。スタチンは80%と低め。おそらく100%近い割合で、なんらかの抗血栓薬を内服してそう。

anatomy
MRの程度は年齢による差がない。三枝疾患やLAD近位部病変が多い。

◇結果
result
全死亡は、CABG群で低い。心血管死もQuartile3でほぼ同等だが、他は一応CABG群で低い。

◇批判的吟味
・心血管のアウトカムを評価するのに十分な観察期間。
・交絡因子の調整は??
・Quartile3だと、心血管死は薬物療法と変わらないし、Quartile4だとunkownが多いので、これが心血管死と考えると、高齢になるといろいろ併存疾患もあるし、ちょっとCABGは微妙かもしれない。
・Quartileの年齢の切り方が67歳としているのは、事前に設定されているのか。あるいは事後なのか。
・当たり前だが、60歳を超えると、非心血管死が多くなる。

◇感想
STICH試験の年齢によるサブグループ解析で、どの年齢層でもCABG+薬物療法を行うことで、全死亡、全死亡と心血管イベントによる入院を減らしたという結果。当たり前かもしれないが、CABG群でも薬物療法群でも、年齢が高くなると10年生存率は低くなってしまう。60歳以下の人でも10年生存率が半分ぐらいなので、冠動脈疾患はここまで進行してしまうと厳しい。