高血圧症

葉酸は高血圧患者のCKDの進行を抑える

Efficacy of Folic Acid Therapy on the Progression of Chronic Kidney Disease: The Renal Substudy of the China Stroke Primary Prevention Trial.
JAMA Intern Med. 2016 Oct 1;176(10):1443-1450.

《要約》
重要性
腎アウトカムに対する葉酸療法の有効性は研究されていない。

目的
高血圧を持つ成人の中国人において、正常もしくは中等度の腎臓病(CKD)に対し、エナラプリルと葉酸はエナラプリル単独と比較し、腎機能障害の進行を遅らせるかどうか調べた。

デザイン、セッティング、患者
China Stroke Primary Prevention Trial(CSPPT)のサブスタディで、15104例のうちeGFR30ml/min/1.73m2以上のCKD患者1671例を組み入れた。中国江蘇省の20施設で行った。

介入
エナラプリル10mg+葉酸0.8mgの合剤を内服する群と、エナラプリル10mg単剤を内服する群に無作為に割り付けた。

アウトカム
主要評価項目はCKDの進行である。CKDの進行の定義は、ベースラインのeGFRが60ml/min/1.73m2以上の場合にはeGFRが30%以上の低下しeGFRが60を下回ること、ベースラインのeGFRが60ml/min/1.73m2以上の場合にはeGFRが50%以上低下すること、もしくは末期腎不全とした。副次評価項目は、主要評価項目に加え、全死亡、急激な腎機能障害の進行、eGFRの減少率である。

結果
CSPPT全体では、成人の中国人15104例で、平均年齢60歳で、フォローアップ期間の中央値は4.4年である。主要評価項目はエネラプリル単独群で164例、葉酸併用群で132例であった。エナラプリル単独群と比較し、葉酸併用群でオッズ比が21%(95%CI0.62−1.00)減少した。CKDを有する症例に限ると、葉酸併用療法は、主要評価項目(OR0.44、95%CI0.26−0.75)、急激な腎機能の進行(OR0.67、95%CI0.47−0.96)、複合イベント(OR0.62、95%CI0.43−0.90)を有意に低下させた。CKDではない患者群では、主要評価項目に有意差はなかった。

結論
軽度〜中等度のCKD患者において、エナラプリルと葉酸の併用療法はエナラプリル単独療法と比較し、CKDの進行を有意に遅らせた。

◇この論文のPICOはなにか
P:高血圧患者
I:エナラプリル10mg+葉酸0.8mgの合剤の内服(葉酸併用群)
C:エナラプリル10mgの内服(エナラプリル単独群)
O:CKDの進行(ベースラインのeGFRが60ml/min/1.73m2以上の場合にはeGFRが30%以上の低下しeGFRが60を下回ること、ベースラインのeGFRが60ml/min/1.73m2以上の場合にはeGFRが50%以上低下すること、もしくは末期腎不全)

inclusion criteria:記載なし
exclusion criteria:eGFR30ml/min/1.73m2未満

◇baselineは同等か
同等。血中の葉酸のbaselineは、葉酸併用群で7.6ng/mlとエナラプリル単独群で7.7ng/mlと同等。
characteristics

◇結果
地域:中国
登録期間:2008年3月〜2013年8月
観察期間:4.5年(中央値)
無作為化:記載なし
盲検化:記載なし
必要症例数:記載なし
症例数:15104例(エナラプリル単独群7559例、葉酸併用群7545例)
追跡率:12917/15104例(85.5%)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

result
CKDの進行を21%減少させているが、絶対リスクとしては約0.4%で、NNT200以上。

サブグループ解析では、non-CKDだと有意差なし。CKDだとエナラプリル単独群6.8%、葉酸併用群3.3%で有意にCKDの進行が抑えられている。調整後オッズ比0.45(95%CI:0.27−0.76)で、4.5年でNNTは28ぐらい。

◇批判的吟味
・Nがすごい。
・脱落が少し多い。
・全体では4.5年でNNT200以上だが、CKDに限るとNNT28。
・ハードエンドポイントの有意な低下

◇感想
高血圧患者に対し、ACE阻害薬と葉酸を投与することでCKDの進行が抑えられるという結果。ただし、4.5年でNNT200以上なので、いくら安い薬でもコスパは微妙かもしれない。サブグループ解析ではbaselineでCKDがあるグループでは調整後オッズ比0.45(95%CI:0.27−0.76)で、4.5年でNNTは28ぐらいなので、CKDがある高血圧患者に処方するのはありだと思う。CKDがある高血圧患者を対象にして、再検証が必要。

この試験だと葉酸0.8mgとなっているが、フォリアミン錠には葉酸は5mg含有されている。粉末(100mg/g)もあるが、0.8mgを処方するは現実的ではない。週1回の内服にすると1日あたり0.7mgということになるが、それでも同様の効果があるかはわからない。