非心臓手術 合併疾患のない高血圧患者に対するβ遮断薬は有害である可能性

β-Blocker-Associated Risks in Patients With Uncomplicated Hypertension Undergoing Noncardiac Surgery.
JAMA Intern Med. 2015 Dec 1;175(12):1923-31

《要約》
重要
周術期のβ遮断治療は有害事象を減らすために重要である。有効性と安全性は患者が有しているリスクによって異なるかもしれない。

目標
合併症のない高血圧患者の非心臓手術で、長期間のβ遮断薬の内服と主要な心血管イベント(MACEs)のリスクとの関連を検証すること。

デザイン・セッティング・参加者
院内の記録とデンマークの全国規模のコホートから調べた。2005年から2011年の間に行われた非心臓手術で、少なくとも2剤以上の降圧薬(β遮断薬、サイアザイド、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬/ARB)を内服している合併症のない高血圧患者が対象である。

介入
通常の降圧治療としての、様々なレジメン

主要評価項目
30日以内のMACEs(心血管死、非致死的虚血性脳梗塞、非致死的心筋梗塞)と全死亡を、多変量ロジスティック回帰モデルと調整後のnumbers needed to harm(NNH)を用いて評価した。

結果
14644例(女性65%、年齢66.1±12.0歳)がβ遮断薬を内服しており、他の降圧療法を受けている患者40676例(女性57%、年齢±11.8歳)とbaselineのcharacteristicsは似通っていた。30日以内のMACEsは、β遮断薬群では1.3%、非β遮断薬群では0.8%であった(P<0.001)。β遮断薬と他の薬剤との2剤併用は、RAS抑制薬(OR:2.16、95%CI:1.54−3.04)、カルシウム拮抗薬(OR:2.17、95%CI:1.48−3.17)、サイアザイド(OR:1.56、95%CI:1.10−2.22)いずれも場合も、RAS抑制薬とサイアザイドの2剤併用と比較しMACEsを増加させた。全死亡でも同様であった。β遮断薬のMACEsのリスクは、70歳以上(NNH:140、95%CI:86−364)、男性(NNH:142、95%CI:93−195)、緊急手術(NNH:97、95%CI:57−331)で特に高かった。

結論
β遮断薬を用いた降圧療法は、合併症のない高血圧患者の非心臓手術周術期のMACEsと全死亡を増加させる可能性がある。

◯論文のPECOはなにか
P:合併症のない高血圧患者
E/C:2剤以上の降圧薬(β遮断薬、サイアザイド、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬/ARB)の内服
O:30日以内のMACEs(心血管死、非致死的虚血性脳梗塞、非致死的心筋梗塞)と全死亡

inclusion criteria:20歳以上

◯結果
デザイン:後ろ向きコホート
登録期間:2005年〜2011年
フォローアップ期間:術後30日間
地域:デンマーク
症例数:55320例
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:多変量ロジスティック回帰モデル

result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
合併症のない高血圧患者に対するβ遮断薬の投与は現在では推奨されていないが、まだまだ見かける処方パターンではある。循環器内科に術前にコンサルトがある症例は割とリスクを抱えている人が多いので、合併疾患のない患者を診ることは少ないように思う。

β遮断薬の心血管イベント抑制効果があることは確かなことだと思われるが、どのような患者にどれくらいの量が適切かは明らかではない。リスクがない患者に対しては、むしろ有害である可能性がある。前向きの試験での検証が必要だし、β遮断薬を内服している患者でそれを中止することでMACE・死亡が減らせるかどうかは、さらなる検証が必要。この結果だけで、合併疾患のない高血圧患者の術前にβ遮断薬を切るというのは、ちょっと乱暴だけど、害を及ぼす可能性があるなら切りたくなってしまう。