抗血栓療法

安定狭心症を合併した心房細動患者の抗血栓療法 ワルファリン単剤がbetter

Antiplatelet therapy for stable coronary artery disease in atrial fibrillation patients taking an oral anticoagulant: a nationwide cohort study.
Circulation. 2014 Apr 15;129(15):1577-85

《要約》
背景
心房細動と安定狭心症の患者に対する至適な長期の抗血栓療法は未解決であるが、抗凝固療法に単剤の抗血小板薬を加えることが一般的である。安定狭心症を有する心房細動患者に、ビタミンK拮抗薬(VKA)に抗血小板薬を加えることの有効性と安全性を検証した。

方法・結果
2002年から2011年の間の、安定狭心症(急性冠動脈イベント発症後12ヶ月)を有する心房細動患者を特定した。心血管イベントと重大な出血イベントのリスクを、抗血小板薬に応じてCox比例ハザードモデルを用いて調整した。8700例(平均年齢74.2歳、女性38%)を組み入れた。平均のフォローアップ期間は3.3年で、心筋梗塞と冠動脈死、血栓塞栓症、重大な出血の調整前発生率はそれぞれ、7.2%/年、3.8%/年、4.0%/年であった。VKA単独療法の心筋梗塞と冠動脈死のリスクは、VKA+アスピリン(HR:1.12、95%CI:0.94−1.34)とVKA+クロピドグレル(HR:1.53、95%CI:0.93−2.52)と同程度であった。血栓塞栓症のリスクは、VKA単独療法とすべての治療法で同程度であったが、出血リスクはVKA+アスピリン(HR:1.50、95%CI:1.23−1.82)、VKA+クロピドグレル(HR:1.84、95%CI:1.11−3.06)ともに増加した。

結論
安定狭心症を有する心房細動患者では、VKAに抗血小板薬を追加することは、冠動脈イベントの再発や血栓塞栓症のリスク減少に関連せず、出血のリスクを著しく増加させる。これらの患者に対するVKAと抗血小板薬の併用療法は再評価する必要がある。

◯論文のPECOはなにか
P:安定狭心症を有する心房細動患者
E/C:VKA、アスピリン、クロピドグレル、アスピリン+クロピドグレル、VKA+アスピリン、VKA+クロピドグレル、VKA+アスピリン+クロピドグレル
O:心筋梗塞/冠動脈死、血栓塞栓症、出血、全死亡

inclusion criteria:2001年1月1日〜2011年12月31日に心筋梗塞もしくはPCIのために入院した患者、360日以内に心筋梗塞や安定/不安定狭心症で入院していないこと、抗血栓療法が行なわれている患者
exclusion criteria:心房細動の診断の前に心筋梗塞・PCIの既往がないこと

◯結果
デザイン:後ろ向きコホート
登録期間:2002年1月〜2012年12月
フォローアップ期間:平均3.3年
地域:デンマーク
症例数:8700例
outcome観察者のmasking:影響はない
交絡因子の調整:Cox比例ハザードモデル

characteristics
VKA、アスピリン、クロピドグレルの組み合わせで7群あるので、一言ではまとめられないが、ざっくりと言うと、アスピリン単剤群もしくはVKA単剤群ではステント留置している患者が少ない。7群間でCHA2DS2−VAScとHAS−BLEDにほとんど差はない。アスピリン単剤群もしくはVKA単剤群ではβ遮断薬とスタチンの内服率が低い。

result1
result2
A:心筋梗塞/冠動脈死、B:血栓塞栓症、C:出血、D:全死亡
(figureはすべて本文より引用)

◯感想/批判的吟味
冠動脈疾患と心房細動を合併した患者に対する抗血栓療法については、未だ結論はでていない。後ろ向きのデータなのでバイアスは排除しきれず、抗血栓療法とイベントの因果関係までは言えないが、ESCガイドラインでもPCI施行後1年以上経過している心房細動合併患者ではOAC単剤が推奨されている。

PCI施行から12ヶ月以上経過した心房細動患者での抗血栓療法について、OAC-ALONE試験などRCTが行われているところであり、その結果が待たれる。