重症患者のDVT・PE予防には、抗凝固療法に間欠的空気圧迫法(IPC)を併用すべきか

抗凝固療法と間欠的空気圧迫法(IPC)はどちらがよいのでしょうか。あるいは、それを組み合わせたほうがいいのでしょうか。

コクランのSR(15RCT、7762例)では、IPC単独と比べIPC+抗凝固療法は症候性PEは減りませんでしたが、DVTは有意に減少しています(4.1% vs 2.1%, OR:0.52[0.33-0.82])。その代わり、出血は増えてしまっています(0.6% vs 4.0%, OR:5.04[2.36-10.77])(1)

IPC+抗凝固療法と抗凝固療法単独との比較では、症候性PEは2.9%から1.2%へ減りましたが(OR:0.39[0.23-0.64])、DVTの有意な減少はみとめませんでした(6.2% vs 2.9%, OR:0.42[0.18-1.03])。抗凝固療法にIPCを加えても、大出血は増えません(OR:1.21[0.35-4.18])(1)

つまり、DVT・PEの予防にはIPC+抗凝固療法を行う方がいいけど、出血はIPC単独より増えてしまうよう。ICPよりかは抗凝固療法の方が、DVTの予防効果は高いらしいので、DVT予防は抗凝固療法単独でやるか、あるいは抗凝固療法にIPCを併用するかのどちらかでしょう。

Adjunctive Intermittent Pneumatic Compression for Venous Thromboprophylaxis
N Engl J Med. 2019 Feb 18. doi: 10.1056/NEJMoa1816150. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:72時間以上ICUに滞在しそうな患者
I:間欠的空気圧迫法(IPC)+抗凝固療法
C:抗凝固療法のみ
O:近位部DVT

inclusion criteria:成人(14−18歳以上)の内科疾患・術後・外傷患者、45kg以上

【治療の流れ】
ICU入室48時間以内に登録。IPCは、大腿までの連続圧迫できるマルチチャンバーカフのデバイスを推奨。膝までで非連続圧迫(シングルチャンバーカフ)でも許容する。デバイスは両下肢に少なくとも1日18時間以上装着し、8時間ごとに取り外し皮膚の観察とケアをする。

深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症(PE)を発症した場合・疑う場合・皮膚潰瘍を生じた場合・虚血が生じた場合には、デバイスを取り外す。観察期間は、動けるようになるまでと、ICU退室までと、試験開始後28日までのいずれか。

両群とも弾性ストッキングは使わない。

ランダム化後48時間以内に近位下肢静脈エコーを行う。それ以降も2回/週の頻度で下肢静脈の
行い、臨床的にDVTを疑う場合にも施行する。下肢静脈エコーは大腿静脈・膝窩静脈・下腿三分枝を1cm間隔で評価する。ソノグラファーとは別のブラインドされた放射線科医が画像を評価する。

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:サウジアラビア、カナダ、オーストラリア、インド
登録期間:2014年7月〜2018年8月
観察期間:7日(中央値)
症例数:2003例(IPC併用群991例、抗凝固療法単独群1012例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
両群に差はない。
ざっくりと。58歳、男性6割、BMI29、人工呼吸器2/3、血管収縮薬1/3、抗凝固薬(未分画ヘパリン60%、低分子ヘパリン40%)、大腿静脈へのCV挿入15%

【結果】

治療期間は両群とも中央値7日。IPCを使用したのは、IPC併用群で98%、抗凝固療法単独群で10%、IPC併用群のIPC使用時間は22時間/日、スリーブの長さは大腿19%、膝79%、フットポンプの使用12%。


stage1:nonblanchable erythema, stage2:partial-thickness ulceration, stage3:full-thickness skin or tissue loss

【まとめと感想】
報告によって異なりますが、重症患者でのDVT発生率は5−20%のようで、このPREVENT試験では両群とも4%程度でした(PEは1%程度)。抗凝固療法にIPCを追加しても、効果はありませんでした。ただ、皮膚障害などの有害事象もほとんど同程度なので、IPCを併用しても別に悪くはないでしょう。

予防をしていても、DVTやPEの発生はそこそこあるので、忘れてはいけない疾患です。

1)Cochrane Database Syst Rev. 2016;9:CD005258

着用型除細動器 (WCD) は心筋梗塞発症早期の心臓突然死を予防できるか

植込型除細動器(ICD)は、心機能が悪い虚血性心疾患の心臓突然死の予防に有効です。MADIT試験ではEF≦35%の虚血性心疾患で心室性不整脈がある症例を対象として、ICDにより生命予後が改善しました。また、MADITⅡ試験では心室性不整脈は問わず、EF≦30%の虚血性心疾患を対象としましたが、これでもICDよる生命予後改善を認めています(観察期間20ヶ月、ハザード比0.69)(1-2)

MADITⅡ試験はAMI発症1ヶ月以内の症例は含んでいません。

DINAMIT試験やIRIS試験は、AMI発症早期で心機能が悪い症例で、ICDで生命予後が改善するか検証したRCTです。どちらも心臓突然死は半分ぐらいに有意に減っていますが、全死亡は非ICD群とほとんど変わりません(つまり非心臓死が多い)(3-4)

なので、AHAのガイドラインでも心臓突然死一次予防の場合は、”AMI発症から40日以上もしくは血行再建から90日以上経過”していて、心機能が悪い症例がICD適応になっています。心機能は悪いけど、AMI発症から時間が経ってないような症例は、至適薬物療法を行って再評価することになります。でもまあ、虚血だと薬物療法でも心機能の改善はあまり見込めませんが。

AMI発症早期にICDを植え込んでも生命予後は改善しませんが、やはり心臓突然死のリスクが高いというのは事実です。AHAガイドラインでは、AMI発症40日以内の場合は、着用型除細動器(WCD)を着てもらってもいいかもね(classⅡb)となっています。

そして、そのAMI発症早期で心機能が悪い症例で、WCDが本当に有効なのでしょうか。

Wearable Cardioverter–Defibrillator after Myocardial Infarction
N Engl J Med 2018; 379:1205-1215

【PICO】
P:EF35%以下のAMI
I:標準治療+WCDの着用
C:標準治療のみ
O:90日以内の突然死+心室頻拍による非突然死

EFの評価は、PCI後なら8時間以上経ったあとに、CABG後なら48時間以上経ったあとに行う。

exclusion criteria:すでにICD留置、ユニポーラーペースメーカ、重度の弁膜症、長期の血液透析、WCDを着られないぐらい胸囲が小さいor大きい

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:アメリカ・ポーランド・ドイツ・ハンガリー
登録期間:2008年7月〜2017年4月
観察期間:90日
症例数:2348例(うち46例は規約違反のため除外)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(ZOLL社)

【患者背景】
両群の患者背景に差はない。EFの中央値は28%、PCI84%、血栓溶解療法8%、CABG1%、心停止・心室細動10%。内服薬にも差はない(βblocker92%、ACE阻害薬/ARB87%、アスピリンとそれ以外の抗血小板薬がそれぞれ87%、アミオダロン7%)

【結果】
primary outcomeは60日以内の全死亡だったが、登録が進まなかったため、90日以内の突然死+心室頻拍による非突然死、に途中で変更。

WCD群:1524例 vs 標準治療群:778例

標準治療群でWCD導入が2.6%。
ICD植込みはWCD群で4.4%、標準治療群で5.7%。だいたい2ヶ月ぐらいのときに植込まれている。

【まとめと感想】
AMI発症早期で心機能が悪い症例にWCDを導入すると、不整脈死が少なくなるけど、統計学的には有意な差ではありませんでした。discussionでパワー不足(不整脈死58%減少と推定)だと書かれていましたが、まあ確かに侵襲の大きな介入ではありませんし、適切に使用すれば突然死を予防できるという理屈はわかります。

不適切作動がありますので、理解力や操作能力に乏しい患者さんには導入しないなどの配慮は必要ですし、夏場は蒸れるということや、使えば使うほど病院の赤字になるという課題はあります。

AMI発症早期の心機能が悪い方でも、まず薬物療法をしっかりやるということですね。

1)N Engl J Med.1996;335:1933-1940
2)N Engl J Med 2004;351:2481-2488
3)N Engl J Med.2004;351:2481–2488
4)N Engl J Med.2009;361:1427−1436
5)Circulation.2018;138:e210–e271

悪性腫瘍の静脈血栓塞栓症とリバロキサバンの予防投与

AVERT試験では、アピキサバン2.5mgの1日2回投与により血栓イベントは有意に減りました(出血は有2倍に増えましたが)。このCASSINI試験は同じような試験デザインで、リバロキサバンでのVTE予防効果が検証されています。

Rivaroxaban for Thromboprophylaxis in High-Risk Ambulatory Patients with Cancer.
N Engl J Med. 2019 Feb 21;380(8):720-728.

【PICO】
P:外来化学療法を行う固形癌・リンパ腫でKhoranaスコア2点以上
I:リバロキサバン10mg
C:プラセボ
O:180日間の血栓イベント(下肢の近位部深部静脈血栓症、遠位部深部静脈血栓症、症候性肺血栓塞栓症、血栓塞栓症による死亡)
安全性評価項目:大出血(輸血を要する出血、Hb>2g/dlの出血)

exclusion criteria:脳腫瘍、脳転移、活動性出血

Khoranaスコア
胃癌、膵癌=2点
肺癌、リンパ腫、婦人科腫瘍、膀胱癌、精巣癌=1点
血小板>35万/μL=1点
Hb<10g/dlまたはESA製剤の使用=1点 白血球数>1.1万/μL=1点
BMI>35=1点

Khoranaスコア別のVTE発症リスク(2.5ヶ月)
低リスク群(0点):0.3%
中リスク群(1−2点):2.0%
高リスク群(3−6点):6.7%

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:? 11ヶ国143施設
登録期間:?
観察期間:平均4.3ヶ月(予定は180日)
症例数:841例(リバロキサバン群420例、プラセボ群421例)
解析:ITT解析
スポンサー:Janssen社、Bayer社

【患者背景】
DVT既往がリバロキサバン群で多いが、それ以外は有意差なし。
ざっくりと。年齢62歳、男女半々、白人80%、Khoranaスコア2点70%、3点25%、DVT既往(プラセボ群0.5%、リバロキサバン群2.6%)、癌種(膵癌1/3、胃癌20%、肺癌15%、リンパ腫6%)

【結果】
リバロキサバン群の43.7%、プラセボ群の50.2%が薬剤を途中で中止している。

【まとめと感想】
悪性腫瘍のVTE予防のためにルーチンで抗凝固薬が必要かどうかは置いといて、少なくともリバロキサバンでは有意な差にはなりませんでした。

アピキサバンについてはこちらをご参照ください。
悪性腫瘍の静脈血栓塞栓症とアピキサバンの予防投与

たこつぼ型心筋症の再発

ヨーロッパでは、「たこつぼ症候群(Takotsubo syndrome)」と言うそうです。アメリカでは、「たこつぼ型心筋症(Takotsubo Cardiomyopathy)」です。ほかにも、stress cardiomyaopathyとか、broken heart syndromeとは言われたりします。

そんなたこつぼ型心筋症のスイスのレジストリから、再発についてのLetterです。

Takotsubo RecurrenceMorphological Types and Triggers and Identification of Risk Factors
J Am Coll Cardiol. 2019;73(8):982-984

たこつぼ型心筋症で壁運動異常が完全に回復し、4週間以上フォローされてる症例が対象で、再発した集団と再発しなかった集団を比較。

1402例、観察期間921日±883日

4.7%(66例)で再発。
発生率は18.7例/1000人年。

再発は初回の発症から30日〜9.9年。

COX回帰分析では、神経学的疾患(痙攣・脳血管疾患・偏頭痛)や精神疾患(情緒障害・不安症・適応障害)は再発の独立した予後因子。
神経学的疾患:ハザード比1.76(95%CI 1.01−3.07)
精神疾患:ハザード比1.77(95%CI 1.05-3.00)

再発は、34.8%で初回のバルーニングパターンとは違うパターンになり、誘因(身体的、情動的、両方、特定できない)も47%で初回とは違うものだった。

5/66例で2回の再発あり。すべて神経学的疾患や精神疾患を持っていた。

βblokcerに再発予防効果なし。

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循環器内科医にとってたこつぼ型心筋症は、診断はできるけど、治療できるわけじゃないし、再発も予防できない。そんな病気。