スタチンは75歳以上の高齢者でも心血管イベント抑制に有効

ベースのLDLコレステロール値とか、患者さんの状態にもよりますが、心筋梗塞二次予防だったら基本的にスタチンは出しています。

Efficacy and safety of statin therapy in older people: a meta-analysis of individual participant data from 28 randomised controlled trials.
Lancet. 2019 Feb 2;393(10170):407-415.

【PICO】
P:高齢者
I/C:スタチンvsコントロール、高容量vs低容量スタチン
O:大血管イベント(冠動脈イベント・脳梗塞・冠動脈血行再建)、死因別死亡率、悪性腫瘍

<研究の選択>
症例数1000以上、観察期間2年以上のRCTを組み入れ
文献データベース:MEDLINE、EMBASE、Pubmed
検索語: “statins OR HMG CoA Reductase Inhibitors” “Elderly OR Aged”
期間:1996年1月1日〜2017年12月31日
28のRCT
出版バイアス:low

◇まとめと感想
観察期間の中央値4.9年。心不全と透析を対象としたRCTでは高齢者でのスタチンは有効性が見出せなかったけど、高齢者でもスタチン療法・高容量スタチン療法により、1mmol/LのLDLコレステロール低下で21%(RR:0.79 [0.77-0.81])の冠動脈イベント減少を認めました。心不全と透析を除くと、どの年齢のサブグループでも冠動脈イベントが減少していますが、高齢になるほど減少率は小さくなっています(≦55歳:RR0.75 [0.69-0.81]、≧75歳:RR0.87 [0.77-0.99])。

相対リスクにすると20%前後のイベント減少ですが、絶対リスクにすると1%/年にも満たないです。75歳以上だと絶対リスク減少0.5%で、NNT200になります。75歳以上の患者さん200人に1年間スタチンを処方し、LDLコレステロールを1mmol/L(=39mg/dl)下げると、冠動脈イベントがひとり減る感じです。

日本人ならもっと絶対リスク減少は小さいのかも。そうなると、スタチンを処方すべきかどうかは患者さんの状況によりけりなんでしょうね。

AKI後のACE阻害薬・ARBの使用は、死亡率低下と関連あり

入院患者に起こるAKIは、退院後の死亡率の増加と関連があり、高血圧や心血管イベントが引き金となっていると考えられます。

AKIを起こした患者で、ACE阻害薬やARBと長期予後の関連を検証した前向き研究はまだありません。

Association of Angiotensin-Converting Enzyme Inhibitor or Angiotensin Receptor Blocker Use With Outcomes After Acute Kidney Injury
JAMA Intern Med. 2018;178(12):1681-1690.

【PECO】
P:入院中にAKIを生じた症例
E:退院後6ヶ月以内にACE阻害薬・ARBを開始
C:ACE阻害薬・ARBの内服なし
O:死亡率
secondary endpoint:腎疾患による入院、ESRD、ESRD+Crの倍化

inclusion criteria:入院の前180日以内にCrが測定されていること、入院中にCrが測定されていること
exclusion criteria:初回の入院中に死亡した症例、初回の入院中にESRD(<15ml/min/1.73m2)に至った症例

【デザイン、セッティング】
・後向きコホート研究
・カナダ
・Alberta Kidney Disease Network population based database
・2008年7月1日〜2013年3月31日
・46253例(ACE阻害薬・ARBあり群22193例、なし群24060例)
・観察期間:最低2年
・交絡因子の調整:COX比例ハザードモデル

【結果】

【まとめと感想】
後向き研究では、AKI後にACE阻害薬やARBの使用は、死亡率の低下と関連がありました。ただ、腎疾患による入院・高K血症の増加とも関連があるようです。現時点で、AKI後にACE阻害薬やARBを使用することは妥当だけど、CrやKなどのモニタリングは必要、ということでしょう。

ACE阻害薬やABRの使用がうっ血性心不全の増加と関連があるようですが、discussionでは特に触れられていませんでした。むしろ、減りそうですが。よくわかりません。

CABGで使用する内胸動脈は片側で良いか、両側が良いか

冠動脈多枝病変では、PCIよりCABGの方が予後が良いです。それはCABGに心筋梗塞予防効果があるためですが、CABGでは左内胸動脈(LITA)が使われるのが一般的です。

観察研究では、内胸動脈を片側のみ用いたCABGより、左右の内胸動脈を用いたCABGの方が、死亡率を低下させることが報告されています。

このART試験は、両側内胸動脈を用いることで、LITAのみの場合と比べ生命予後を改善させるか検証したRCTで、5年の時点では死亡率に差はありませんでした。10年ではどうなのでしょうか。

Bilateral versus Single Internal-Thoracic-Artery Grafts at 10 Years
N Engl J Med 2019; 380:437-446

【PICO】
P:冠動脈多枝病変
I:両側の内胸動脈を用いたCABG
C:片側の内胸動脈を用いたCABG
O:全死亡
secondary endpoint:全死亡、心筋梗塞、脳梗塞、再血行再建、出血、創部合併症

exclusion criteria:冠動脈1枝病変、同時の弁膜症手術、CABGの既往

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験など)
地域:オーストラリア、オーストリア、ブラジル、インド、イタリア、ポーランド、イギリス
登録期間:2004年6月〜2007年12月
観察期間:10年
症例数:3102例(両側群1548例、片側群1554例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
群間差なし。
ざっくりと。年齢63歳、男性85%、白人90%、インスリン依存性糖尿病6%、陳旧性脳梗塞3%、OMI40%、

【結果】
片側内胸動脈群で内胸動脈を使用したのは96.1%、両側内胸動脈群で両側とも内胸動脈を使用できたのは83.6%。両群とも約40%でoff-pumpで行われている。

橈骨動脈は、両側群で19.4%、片側群で21.8%使用されている。

10年時点での薬剤に群間差なし。
アスピリン81%、β遮断薬74%、スタチン90%、AEC阻害薬/ARB72%。

サブグループ
糖尿病、70歳未満、off pumpかon pumpか、橈骨動脈の有無、グラフト本数、EF<50%などすべてのサブグループでも有意差なく、一貫した結果。

【まとめと感想】
両側群で想定よりクロスオーバーが多かったり、片側群で橈骨動脈使用率がちょっと多かったり、両群の差を薄める要因はあるかもしれませんが、CABGで内胸動脈を両側使おうが、LITAだけにしようが、生命予後に変わりないという結果でした。

敗血症性ショックでの循環蘇生はcapillary refill timeを指標にする

敗血症では、末梢循環をターゲットとした循環蘇生が良いのか、あるいは乳酸をターゲットとした循環蘇生が良いのか。

Effect of a Resuscitation Strategy Targeting Peripheral Perfusion Status vs Serum Lactate Levels on 28-Day Mortality Among Patients With Septic Shock: The ANDROMEDA-SHOCK Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2019 Feb 17. doi: 10.1001/jama.2019.0071.

【PICO】
P:高乳酸血症(≧2.0mmol/L)+輸液負荷・血管収縮薬を要する敗血症性ショック
I:capillary refill timeを指標とした循環蘇生
C:乳酸を指標とした循環蘇生
O:28日死亡率
secondary endpoint:90日死亡率、72時間以内の臓器不全(SOFAスコアによる)、28日間の人工呼吸器離脱期間・腎代替療法離脱期間・血管収縮薬離脱期間など

inclusion criteria:MAP≧65mmHgを維持するため60分以内に20ml/kgの輸液を行った上で血管収縮薬が必要な症例
exclusion criteria:出血、重症ARDS、DNR

手順:介入期間は8時間。まずCRT測定。右手の人差し指の腹でスライドグラスを皮膚に押し付け、皮膚が白くなった状態で10秒間キープ。計測器でrefill timeを測定し、3秒以上を異常とした。
CRTは30分おきに、乳酸は2時間おきに測定。

目標は、CRTターゲット群ではCRTの正常化、乳酸ターゲット群では乳酸の正常化、または2時間ごとに20%の減少。

1st step:輸液反応性の評価。輸液反応性があれば、目標が達成されるか、CVPが上限に達するか、輸液反応性がなくなるまで500mlの晶質液を30分ごとに投与。輸液反応性が判断ができない場合は、目標が達成されるかCVPが上限に達するまで輸液を継続。
2nd step:高血圧患者で、1st stepで目標に到達しなかった場合、ノルアドレナリンを用いてMAP80−85mmHgに上げ、CRTと乳酸を1−2時間で評価。目標に到達すればその血圧を維持。目標に到達しなければノルアドレナリンをもとの投与量まで減量して3rd stepへ。
3rd step:目標に到達していなければ、低容量のドブタミンかミルリノンを投与し、1−2時間後に評価。それでも目標に到達しない、もしくは安全性の問題がでてきたら、ドブタミン・ミルリノンは中止。

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:南米5ヶ国
登録期間:2017年3月〜2018年3月
観察期間:28日間
症例数:424例(CRTターゲット群212例、乳酸ターゲット群212例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
両群に差はない。
ざっくりと。年齢62歳、男女半々、APACHEⅡ22、SOFA9.7、高血圧40%、敗血症の原因は腹腔内感染と肺炎が1/3ずつ、尿路感染が20%、MAP69mmHg、CVP9mmHg、乳酸4.5mmol/L、ScvO2 71%、CRT5秒、輸液量25−30ml/kg、敗血症の診断から抗菌薬投与まで1.5-2時間

【結果】

【まとめと感想】
統計学的には有意な差ではないけど、CRTを指標とした循環蘇生を行うことで、28日死亡率が低下しています(HR:0.75 [0.55-1.02])。ベットサイドで簡単にできる方法だし、これはいい。

私自身は、CRTをターゲットとして循環蘇生を行ったことがありませんでした。末梢循環が改善した結果として、「CRT・mottled skinよくなってんじゃん」って感じでみてました。今度からはこのやり方を取り入れようと思います。

まず、CRTをターゲットとした循環蘇生を行い、さらに乳酸値も確認していくという感じでやってみます。

感染性心内膜炎の初期治療が奏功していれば、経口抗菌薬に切り替えてもいいかもしれない

感染性心内膜炎(IE)では、静注が基本です。経口薬に切り替えた経験はありません。

治療の失敗は悲惨な結果に繋がることを考えると、”腸管からの吸収”という余計なステップがある経口薬は使いづらいと感じます。

そんなIEで経口薬への切り替えをトライするという、なかなか勇気ある?RCTです。

Partial Oral versus Intravenous Antibiotic Treatment of Endocarditis.
N Engl J Med. 2019 Jan 31;380(5):415-424.

【PICO】
P:感染性心内膜炎
I:経口抗菌薬にスイッチ
C:抗菌薬静注を継続
O:全死亡、計画されていない心臓手術、臨床的に明らかな塞栓症、同じ起炎菌による菌血症の再燃

inclusion criteria:左心系のIE、Duke診断基準を満たしていること、起炎菌がstreptococcus・Enterococcus faecalis・Staphylococcus aureus・CNSのいずれかであること、安定した状態であること(初期治療への反応が良く治療開始から10日以上経過している、弁手術を行った場合は術後7日以上経過している)、

手順:ランダム化の前に経食道心エコー(TEE)を行い、膿瘍や手術を要する弁異常がないか確認する。ランダム化の時点で予定治療期間が10日以上あること。経口抗菌薬は異なるクラスの薬剤を2剤併用する。静注群は入院で治療。経口群は2−3回/週外来へ通院する。予定された治療が終わる1−3日前にTEE再検。治療終了後、1週間後、1,3,6ヶ月後に外来受診。

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験:非劣性マージン10%)
地域:デンマーク
登録期間:2011年7月15日〜2017年8月30日
観察期間:6ヶ月
症例数:400例(経口群201例、静注群199例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
同等。ざっくりと。
年齢67歳、男性3/4、基礎疾患も差はない(DM、腎不全、透析、COPD、悪性腫瘍)、起炎菌 Streptococcus50%、Enterococcus faecalis25%, Staphyrococcus aureus20%, CNS5%、人工弁25%、ペースメーカ10%、既知の弁膜症40%、半分が大動脈弁、1/3が僧帽弁、残りが両方

【結果】
割り付けられた治療法の期間は、経口群17(14−25)日、静注群19(14−25)日。

primary endpoint
経口群9.0% vs 静注群12.1%、P=0.40

【まとめと感想】
初期治療によって安定したIEは、経口薬に切り替えても静注薬に劣らないという結果でした。

バイオアベイラビリティが高く作用機序の異なる薬剤を2剤併用することで、治療失敗のリスクを回避できるのかもしれません。ただ、この結果で、「経口薬に切り替えてさっさと退院させるかー」という感じにはなりません。早期に退院させなければならない事情があれば、やってもいいかもしれませんが。

ケチをつけるわけではないですが、非劣性の証明なので非劣性マージン分(この場合は10%)だけ劣る可能性があることは認識しておいた方がいいでしょう。

急性心筋梗塞に合併した心原性ショックの循環動態維持には、ノルアドレリンを使用し、アドレナリンは避ける

普段、循環動態維持のために使っている薬剤はノルアドレナリンとドブタミンで、アドレナリンというものは正直使ったことがありません。

心臓に頑張ってもらいたいときはドブタミンを、血管を締めたいときにはノルアドレナリンを使います。

アドレナリンは蘇生のときにしか使ったことがないです。そのアドレナリンもPARAMEDIC2試験で、院外心停止でプラセボに比べて病院到着までの生存率は改善したものの、退院時の重度神経障害の患者の割合は増えるという結果でした。

あまり良い印象は持たれていない薬剤かもしれません。

急性心筋梗塞に合併した心原性ショックに、アドレナリンを使うか、ノルアドレナリンを使うか。ここでもアドレナリンは良い結果は出せませんでした。

Epinephrine Versus Norepinephrine for Cardiogenic Shock After Acute Myocardial Infarction.
J Am Coll Cardiol. 2018 Jul 10;72(2):173-182.

【PICO】
P:心原性ショックを合併したAMI
I:アドレナリン(AD)の投与
C:ノルアドレナリン(NAD)の投与
O:cardiac indexの変化(有効性評価項目)、難治性心原性ショック(安全性評価項目)

難治性心原性ショック:①エコーで評価した重大な心機能不全、②乳酸値上昇、③適切な血管内ボリュームを保っているにも関わらず低血圧(SAP<90mmHg or MAP<65mmHg)が持続し、1γ以上のADまたはNAD、もしくは10γ以上のドブタミンを投与しているにも関わらず臓器機能の急激な悪化(無尿、肝不全)を認めること。

inclusion criteria:
①PCIによる再灌流に成功していること
②血管収縮薬なしでSAP<90mmHg or MAP<65mmHg
③低血圧に対し血管収縮薬が必要
④cadiac index<2.2l/min/m2
⑤肺動脈楔入圧(PCWP)>15mmHg
⑥EF<40%
⑦臓器低灌流(mottled skin、無尿、乳酸値上昇、意識の変容)
⑧肺動脈カテーテル挿入

exclusion criteria:体外生命維持装置、他の原因でのショックなど

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:フランス
登録期間:2011年9月〜2016年8月
症例数:57例(AD群27例、NAD群30例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
AD群 vs NAD群
性別のみ群間差あり(男性:50% vs 80%)。他は同等。
ざっくりと。BMI25、心拍数(100 vs 88)、MAP72、高血圧(30% vs 20%)、組み入れ前の蘇生術(41% vs 60%)、SOFA10、ランダム化前のショック持続時間6時間、組み入れ前の薬剤(アドレナリン 30% v 17%、ノルアドレナリン 70% vs 80%)、STEMI96%、乳酸値(5.0mmol/L vs 2.9mmol/L)、LVEF34%
群間差は性別のみだけど、Nが小さいから有意にならないだけで、多少の差はある

【結果】
難治性ショックがAD群で多かったため、試験は早期中止されています。

MAP70mmHgを保つのに必要な投与量は、AD:0.7±0.5γ、NAD:0.6±0.7γ。最大投与量に有意差なし。

DOBを併用したのは両群とも67%で、投与量も有意差なし。

投与開始3日までの血圧(SAP、DAP、MAP)の推移に有意差なし。

図しか示されていないので、正確にはわかりませんが、有効性評価項目であるCIはbaselineが2.0ぐらいで、72時間後には両群とも2.7ぐらいにあがっていますが、有意差はありません(P=0.43)。

AD群で、2時間後・4時間後のCIが2.4ぐらいに上がっていて、NAD群と比較し有意に高かったようです。

安全性評価項目は

【まとめと感想】
アドレナリンでもノルアドレナリンでも、血圧やCIは同じような変化をたどっており、差はありませんでした。しかし、アドレナリンで投与早期に(2−6時間)有意に心拍数が高くなり、心筋酸素消費量のサロゲートマーカーであるダブルプロダクトが有意に上昇しています。つまり、同じ血圧を維持するのに酸素を余計に消費しないといけないということで、アドレナリンは心臓の燃費を悪くさせているとも言えます。

かつ、乳酸値は投与開始2−4時間で有意に上昇(ノルアドレナリンでは投与開始後より低下)しています。CIは両群で似たようなもの(むしろ開始早期はアドレナリンの方がCIが高い)ということは、酸素供給ではなく末梢循環の問題で乳酸が上がっているのだと思います。

アドレナリンにはα受容体刺激作用もβ受容体刺激作用もありますが、ノルアドレナリンのβ受容体刺激作用は弱いです。もしかしたら、β2受容体刺激作用により末梢循環不全をきたしているのかもしれません。

不整脈、死亡が多めなのも気になります。

心筋梗塞+心原性ショックには、ドブタミンとノルアドレナリンで対処するということでよさそうです。

心機能が保たれた心筋梗塞ではβblockerは必要か

AMI再灌流後の薬物療法はどうするか。

抗血小板薬2剤(ステント留置した場合)、スタチン、ACE阻害薬・ARB。ここらへんは異論がないと思います。

では、βblockerは必要なのでしょうか。

答えは、YESもNOもどちらも正解かもしれません。ACS後のβblockerの有効性を示したデータの多くは、今のようにPCIが標準治療になる前のものではありますが、PCIが標準療法になってからもβblockerにより、生命予後の改善(観察期間1-2.1年)を認めています。それは、βblockerの容量には依存しないようです(1−2)

つまり、ACS発症後にβblockerを内服することは、ACS全体で見ると正解です。ただ、心機能が保たれた、いわゆるHFpEF(EF≧50%)の場合はどうでしょうか。私の知る限りでは、ACS後のHFpEFのみを対象にしてβblockerの有効性を検証した研究はありません。

非虚血を含んだデータですが、あるシステマティックレビューでは、洞調律のHFrEFやHFmrEFでは、βblockerによる死亡率低下が示されていますが、HFpEFではβblockerの有無で死亡率に差はありませんでした(3)。そして、そのHFpEFの85%が虚血ですので、虚血のHFpEFではβblockerの効果が示されていないと言い換えても間違いではないと思います。

また、冠動脈疾患の既往はないけど冠動脈疾患のリスクがある患者では、βblockerにより心血管死・心筋梗塞・脳梗塞が増える可能性もあります(ハザード比1.18 [10.2-1.36])(4)。それは糖尿病や脂質異常症などの代謝への悪影響と考えられます。

なので、冠動脈疾患リスクとして糖尿病や脂質異常症などがある場合には、より長期でみた場合にβblockerを内服することで予後の悪化に繋がる可能性があるということです。

冒頭のACS後にβblockerが必要かどうかに対する答えですが、心機能が低下している場合(EF<50%)にはYESで、心機能が保たれている場合(EF≧50%)ではNO、というのが私の意見です。そもそも、虚血であれ非虚血であれHFpEFの予後を改善させる薬剤はネプリライシン阻害薬以外にないので、上記の話は非虚血の場合でも同じなんですけどね。

一応、ACS発症後のβblockerについて、ガイドライン的にはどうなっているかというと、ECSでは・・・

・LVEF≦40%:classⅠ
・すべての患者でルーチンで入院中から開始し継続する:classⅡa

となっているので、HFpEFでもβblockerはclassⅡaということになります(5)。これからすると、私の意見はちょっと偏ってるのかもしれません。

1)J Am Coll Cardiol. 2015;66(13):1431-41.
2)Circ J. 2019;83:410-417.
3)Eur Heart J. 2018;39(1):26-35.
4))JAMA. 2012;308(13):1340-1349
5))Eur Heart J. 2018;39(2):119-177.

日本人でのPCSK9阻害薬の費用対効果

Cost-Effectiveness of PCSK9 Inhibitor Plus Statin in Patients With Triple-Vessel Coronary Artery Disease in Japan.
Circ J. 2018 Sep 25;82(10):2602-2608.

欧米の冠動脈疾患患者で家族性高コレステロール血症(FH)と思われる患者を対象としても、PCSK9阻害薬の費用対効果はよくないです。薬価を71%下げないと費用に見合った効果が見出せないとする報告もあります(1)

欧米人でもそうなので、日本人のFHでも費用対効果が低いということは想像に難くありません。

この論文をかいつまむと・・・
・PCSK9阻害薬+スタチンにかかる費用は標準療法を比較すると、1350万円/QALY。
※生存期間とその質をかけた値。健康に1年生きる=1QALY、死ぬ=ゼロQALY
・ACS+DM+3枝病変(3VD)であっても、費用対効果が低い。
・LDL高値(≧200mg/dl)のFHで3VD=340万円/QALYで、費用対効果が高い。
・この論文では調べられてないけど、PCSK9阻害薬+スタチンよりもエゼチミブ+スタチンの方が費用対効果が高い。

という感じです。LDL≧200mg/dl+3VDだと良いようですが、スタチンを投与していてそこまでLDLが高いFHは今まで見たことはありません。確かにそこまで高ければ、下げねば!という気にさせられます。

1)JAMA. 2017 Aug 22;318(8):748-750

Fushimiレジストリ 抗凝固薬と抗血小板薬の傾向と予後

Current Status, Time Trends and Outcomes of Combination Therapy With Oral Anticoagulant and Antiplatelet Drug in Patients With Atrial Fibrillation ― The Fushimi AF Registry ―
Circ J. 2018 Nov 24;82(12):2983-2991.

抗凝固薬単剤と抗凝固薬+抗血小板薬併用の現状と予後を比較。

【デザイン、セッティング】
・Fushimiレジストリ
・後向きコホート研究
・2378例(抗凝固薬単剤78%、抗凝固薬+抗血小板薬併用22%)
・交絡因子の調整:COX比例ハザードモデル

【結果】
2011年→2017年で、抗凝固薬+抗血小板薬併用は26%→14%に経時的に減少。

併用群の30%で、動脈硬化疾患の合併なし。

動脈硬化疾患ありの集団で
抗凝固薬単剤 vs 抗凝固薬+抗血小板薬併用

【まとめと感想】
抗凝固薬に抗血小板薬を加えることで、出血も塞栓症も増える傾向にあるけど、統計学的には有意な差ではない。

J-RHYTHMレジストリでは、ワルファリンにアスピリンを加えることで、ワルファリン単剤と比較して、塞栓症は変わらなかったけど、大出血(相対リスク1.6)と、全死亡(相対リスク1.5)は、有意に増加した(1)

結果は微妙に違うけど、それはそのレジストリに含まれている患者がもともと持っているリスクによっての違いもあるでしょう。まあ、出血が増えるというのはある意味当然で、それを上回るベネフィットがあるかどうかが問題で、CHA2DS2-VAScスコア≧2+HAS-BLED≧3だとワルファリンとアスピリンの併用の方が、net clinical benefitが高いという話もありますが(1)、AF+冠動脈疾患患者の慢性期の抗血栓療法は基本的には抗凝固薬単剤でいい気がします。

1)Int J Cardiol 2016;212:311-317

拡張型心筋症(DCM)で心機能が改善したら薬剤を中止にできるのか

DCMではβ遮断薬、ACE阻害薬を処方し、可能ならMRAも入れます。それらの薬剤によって心機能が改善した場合、患者さんから薬剤の中止は可能か聞かれることもありますが、副作用などの問題がない限り終生の内服が必要であることを伝えて、飲んでもらっています。心機能がよくなったからといって、中止したことはありません。

薬物療法により心機能が改善した人で、内服を自己中断して通院をやめてしまい、数ヶ月〜数年でまた心機能が低下して、非代償性心不全となり受診or搬送されてくる人がいます。そして、そういう方に薬剤を再開しても、以前のような良好な反応は得られず、心機能は低下したままだったりします。

なので、DCMで薬剤を中止しないことは当たり前のことだと思っていました。薬剤を継続すべき根拠など調べたことがありませんでした。

でも、当たり前ではなかったようです。心機能が改善したDCMで薬剤を中止できるかどうかRCTをやったようです。つまり、薬剤を中止することが倫理的には問題ないということです。なにも疑わず常識だと思っていたことも、実はそれほど明確な根拠がなかったりするものなんですね(著者によれば、後向き研究しかなかったようです)。

まあ、結果としては、心機能が改善しても中止してはいけないということのようですが。

Withdrawal of pharmacological treatment for heart failure in patients with recovered dilated cardiomyopathy (TRED-HF): an open-label, pilot, randomised trial.
Lancet. 2019 Jan 5;393(10166):61-73.

【PICO】
P:薬物療法により心機能が改善したDCM
I:薬剤の漸減中止
C:薬剤の継続
O:DCMの再発
secondary endpoint:心血管死、心血管イベント、心血管疾患による予定外入院

薬剤:ループ利尿薬、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、MRA

DCMの再発の定義
1)EFが10%以上低下し50%未満になること
2)LVEDVが10%以上増加し正常範囲を逸脱すること
3)NT-proBNPがベースラインの2倍以上上昇し400ng/Lを超えること
4)心不全の臨床的兆候

inclusion criteria:以前DCMと診断されEF<40%だった患者、ループ利尿薬・β遮断薬・ACE阻害薬・ARB・MRAを内服中、心臓MRIでEF>50%+LVESVI(LVESV/体表面積)が正常範囲、NT-proBNP<250ng/L
exclusion criteria:コントロール不良の高血圧(>160/100mmHg)、中等度以上の弁膜症、eGFR<30、上室性不整脈・心室性不整脈のためβ遮断薬の内服が必要な状態、狭心症など

【手順】
薬剤は16週以内に中止。薬剤はループ利尿薬から中止する。16週の時点で臨床症状・NT-proBNP・心臓MRIをチェック。その後、6ヶ月間両群の観察をする。6ヶ月たったら、薬剤継続群も同様の手順で薬剤を中止する。

【試験の概要】
デザイン:RCT(open-label、sigle center)
地域:イギリス
登録期間:2016年4月21日〜2017年8月22日
観察期間:12ヶ月
症例数:51例(中止群25例、継続群26例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
両群に差はない。
ざっくりと。年齢54歳、男性2/3、DCMの診断から4−5年、当初のEF25%、EFの改善30%、ACE阻害薬100%、β遮断薬90%、MRA50%、ループ利尿薬10%、LVEDVI80、EF60%、遅延造影あり40%。

【結果】
最初の6ヶ月で、薬剤中止群25例のうち、11例(44%)でprimary endpointが発生。薬剤継続群はゼロ。

次の6ヶ月(薬剤継続群も薬剤を中止する)では、25/26例で薬剤が中止され、9/25例(36%[20.6-57.8%])でprimary endpointが発生。

【まとめと感想】
心機能が改善したからといって、DCMの薬物療法は中止すべきではありません。