心原性ショックを合併した急性心筋梗塞にIABPは不要なのか

IABPについてのRCTは多くありません。観察研究では、心原性ショックに対するIABPはbetterな結果でしたが、その後に行われたIABP-SHOCKⅡ試験では心原性ショック合併急性心筋梗塞の死亡率は、30日後も1年後もIABPなしの薬物療法と変わりありませんでした(1)

IABP-SHOCKⅡ試験は心原性ショックが対象ですが、非心原性ショックを対象にしたRCTはいくつかあります。200−400例程度のRCTは3つほどあり、どれもIABPの有効性は見いだせていません。

そのうちのひとつに、The Balloon Pump–Assisted Coronary Intervention Studyというのがあります。EF<30%で虚血範囲が大きい冠動脈狭窄に対するPCIで、IABPのサポートが予後を改善するか検証されていますが、6ヶ月後、5年後の死亡率に差はありませんでした(2)

心原性ショックを合併した急性心筋梗塞では、本当にIABPは意味がないのでしょうか。IABP-SHOCKⅡ試験のサブグループ解析では、年齢、性別、糖尿病、STEMI、LADのAMI、OMIの既往、SBP<80mmHgのサブグループでは有意差はありませんでした。唯一、高血圧症の既往がないグループでIABP betterな結果でしたが、それが実臨床でIABPを使用するかどうかの判断材料にはならないように思います。

メタ解析でも、心原性ショック・非心原性ショックともに、IABPは死亡率低下には繋がっていません(3)

さらに、日本のデータ(Japan Cardiovascular Database-Keio Interhospital Cardiovascular Studies)では、IABPの院内死亡のオッズ比が3.87(95%CI:2.71−5.52)と増加していることが報告されています(4)。もちろん、IABPを導入すべき症例はより重症であるため、バイアスを含んだものだと思いますが、RCTで一貫したネガティブな結果がでているので、無視できません。

IABPを導入するかどうかは、循環動態が不安定で命に関わる状況の中で判断しなければならないため、なかなか難しいところです。

これは、IABP-SHOCKⅡ試験の6年のデータです。

ntraaortic Balloon Pump in Cardiogenic Shock Complicating Acute Myocardial Infarction: Long-Term 6-Year Outcome of the Randomized IABP-SHOCK II Trial.
Circulation. 2018;139:395–403

【PICO】
P:緊急血行再建が予定された心原性ショック合併急性心筋梗塞
I:AMI急性期のIABP導入
C:IABP導入なし
O:全死亡、心筋梗塞の再発、冠動脈血行再建、脳梗塞、ICD植込み

exclusion criteria:30分以上のCRP、重大な脳梗塞、機械的合併症による心原性ショック、12以上持続するショック、重度のPAD、grade2以上のAR、90歳以上

【試験の概要】
デザイン:RCT(open-label)
地域:ドイツ
登録期間:2009年6月〜2012月3月
観察期間:6.2年(5.6−6.7年)
症例数:600例(IABP群301例、薬物療法群299例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Maquet社)

【患者背景】
両群に有意差なし。
ざっくりと。年齢70歳、男性70%、ランダム化前のCRP施行45%、多枝病変77%、カテコラミンの使用90%、EF35%、ショックから発症まで2.17時間、IABP留置期間3日。

クロスオーバー:IABP群4.3%、薬物療法群10.0%

【結果】
フォローアップ率98.5%(591/600例)。

【まとめと感想】
心原性ショックを合併した急性心筋梗塞で、IABPは長期予後も長期予後(6年)も改善しませんでした。心原性ショックを合併していない症例を対象としたRCTとも一貫した結果です。

6年のフォローアップでも、高血圧なしのサブグループはIABP betterな結果でした。高血圧がない方が、IABP下での拡張期血圧を高めに維持でき、それが冠血流維持に繋がる・・・、なんて無理やりですね。discussionではサブグループについては、ほぼ言及なしです。ただの多重検定によるαエラーのような気がします。

1)Lancet 2013; 382: 1638–45
2)JAMA. 2010;304(8):867-874
3)JAMA Intern Med. 2015;175(6):931-939.
4)JAMA Intern Med. 2015;175(12):1980-2.

抗凝固療法にPPI併用は必要か

抗凝固薬にPPIの併用・・・
よくやられているパターンだと思います。

Association of Oral Anticoagulants and Proton Pump Inhibitor Cotherapy With Hospitalization for Upper Gastrointestinal Tract Bleeding.
JAMA. 2018 Dec 4;320(21):2221-2230.

【PECO】
P:抗凝固療法を新規で開始された患者
E:PPIあり
C:PPIなし
O:上部消化管出血による入院

抗凝固療法:アピキサバン、ダビガトラン、リバロキサバン、ワルファリン(エドキサバンは試験期間中の処方が少なかったため含まない)

inclusion criteria:30歳以上

【デザイン、セッティング】
・後向きコホート研究
・メディケア
・1643123例
・2011年1月1日〜2015年9月30日に抗凝固薬を開始された患者
・ポアソン回帰分析

【結果】

単位は調整後発生率/10000人年 (95%CI)

【まとめと感想】
PPIの内服により総じて40%ぐらい、消化管出血による入院が減っています。40/10000人年ぐらいなので、絶対値としてはそれほどインパクトは強くありません。数字だけ見ると、ダビガトランはワルファリンより消化管出血が少ないようですが、より消化管出血リスクの低い患者が選ばれているのだろうと思います。

DOAC内服時のPPIの併用について、ガイドラインではどうなっているのでしょうか。

Novel Oral Anticoagulants for Atrial Fibrillation(ESC)

DOAC投与時は、消化管出血の既往がある場合や抗血小板薬併用時は”考慮しても良い”、骨髄抑制が起こり得る化学療法や放射線療法が計画されている場合には”考慮すべき”ということになっています。それと、ダビガトランは臨床的な効果には差は長い、PPIやH2Bを併用すると10−30%吸収が低下します。アピキサバン、エドキサバン、リバロキサバンには影響はありません。

心房細動で抗凝固療法の適応になる時点で、他の併存疾患があり、それなりに薬を飲んでいる人が多いので、ポリファーマシーの観点からもルーチンにPPIを併用するのは望ましくないと思っています。

ビタミンDと心血管疾患・悪性腫瘍

前回記事にしたn-3脂肪酸の心血管イベント・悪性腫瘍への効果を検証したRCTは、2×2 factorial designで、ビタミンD製剤についても同様にその効果が調べられています。

N-3脂肪酸と心血管疾患・悪性腫瘍

日照時間が長い地域は短い地域より、心血管疾患や悪性腫瘍が少ないという報告だとか、血清25ヒドロキシビタミンDの低値と、心血管疾患・悪性腫瘍の増加に関連があるといった報告があるようです。

ただ、ビタミンDを補充することが、心血管疾患や悪性腫瘍の抑制に繋がるかどうかは定かではありません。

【PICO】
P:心血管疾患・癌の既往のない患者
I:コレカルシフェロール2000IU内服
C:プラセボ内服
O:心筋梗塞+脳梗塞+心血管死+浸潤性悪性腫瘍

【結果】

年齢、性別、血清25ヒドロキシビタミンD濃度などすべてのサブグループで有意差はありませんでした。

【まとめと感想】
ビタミンDの内服は、心血管疾患や悪性腫瘍の抑制には繋がりませんでした。

ビタミンDと心血管疾患・悪性腫瘍についてはよく知りませんが、こういうことはよくあると思います。たとえば、高尿酸血症は心血管疾患のリスクになりますが、フェブキソスタットで尿酸を抑えても、心血管疾患の抑制には繋がりませんし、潜在性甲状腺機能低下症も心血管疾患のリスクになりますが、チラーヂン®︎を内服しても心血管疾患の抑制には繋がりません。

血清25ヒドロキシビタミンD濃度の低値と心血管疾患の増加には関連があるようですが、ビタミンDを補ってもイベントは減らない。理屈としては正しそうに見えますが、話はそう簡単ではないようです。

n-3脂肪酸と心血管疾患・悪性腫瘍

昨日に引き続いて、n-3脂肪酸の論文。心血管イベントと悪性腫瘍がアウトカム。

結論から言うと、やはり高容量のEPAでないと効果はないようです。著者もdiscussionの中でコクランなどのメタ解析を引用して、n-3脂肪酸のサプリメントには心血管疾患一次予防・二次予防に効果はほとんどないと言っています。

では、なぜNEJMに載ったのでしょう。よくわかりません。

Marine n−3 Fatty Acids and Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer
N Engl J Med. 2019 Jan 3;380(1):23-32.

【PICO】
P:心血管疾患・癌の既往のない患者
I:n−3脂肪酸(EPA460mg+DHA380mg)内服
C:プラセボ内服
O:心筋梗塞+脳梗塞+心血管死+浸潤性悪性腫瘍

inclusion criteria:男性50歳以上、女性55歳以上

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:アメリカ
登録期間:2011年11月〜2014年3月
観察期間:5.3年(3.8−6.1年)
症例数:25871例(n-3脂肪酸群12933例、プラセボ群12938例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
同等。
ざっくりと。平均年齢67歳、男女半々、白人70%、黒人20%、アジア人1%、アドヒアランス81%。糖尿病13%。

【結果】

primary endpoint:心筋梗塞+脳梗塞+心血管死+浸潤性悪性腫瘍

年齢、性別、人種、糖尿病や高血圧の有無、アスピリンやスタチンの有無など、どのサブグループでも有意差なく、一貫してn-3脂肪酸の効果は見られない。

【感想・まとめ】
心筋梗塞で有意差が付いている。145例と200例。確かに差は大きく見えますが、パーセンテージで表すと1.12%と1.55%。

とても有意差とは思えない、少なくとも臨床的には。

高容量EPAにより心血管死・心筋梗塞・脳梗塞が減少する REDUCE-IT試験 

青魚を多く摂取することで冠動脈疾患が減ることは、観察研究で明らかになっています。

それは、Hugh Sinclairが1944年に最初に発見しています。当時イヌイットは魚介から14g/日のn-3脂肪酸を摂取しており、それが冠動脈疾患の少なさと関連していると考えられました。

その後に、80年代に行われたDART試験やGISSI-Prevenzion試験で、心血管イベントの減少や死亡率の改善などが報告されました。ただ、80年代の臨床試験なので、β遮断薬・ACE阻害薬・スタチンなどの内服率は低く、今の至適薬物療法とは異なるものでした。

その後も、EPAにより動脈硬化イベント・致死的不整脈・心不全などが抑制されるだろうという仮定のもと、多くのRCTが行われました。しかし、多くはネガティブな結果でした。

そして、コクランのメタ解析では、EPAのサプリメントは心血管イベントの抑制にはほとんど効果がないと結論づけられています。

ただ、RCTの多くはEPAの量はそれほど多くありません。数百mgなので、魚から摂ろうと思えば取れる量です(毎日魚だと辛いかもしれませんが)。JELIS試験でもEPA1800mg/日です。イヌイットのn-3脂肪酸摂取量が14g/日であることを考えると、かなり少ない量ですので、高容量のEPA(あるいはn-3脂肪酸)を摂取することで心血管イベントが抑えられる可能性は残っていました。

今回の論文ではEPAは4g/日と、今までのRCTの中でも最も高い容量のEPAが用いられ、心血管イベントが抑制されるか検証されています。

Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia.
N Engl J Med. 2019 Jan 3;380(1):11-22

【PICO】
P:空腹時中性脂肪150−499mg/dlの冠動脈疾患ハイリスク患者
I:EPA(イコサペント酸エチル)4g分2内服
C:プラセボ(ミネラルオイル)の内服
O:心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+冠動脈血行再建+不安定狭心症

ハイリスク患者:45歳以上の冠動脈疾患 or 50歳以上で糖尿病とそれ以外に1つ以上冠危険因子を有する患者

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:11ヶ国(アメリカ、カナダ、オランダ、オーストラリア、ニュージランド、西欧、アジアなど)
登録期間:2011年11月28日〜2016年8月4日
観察期間:4.9年(中央値)
症例数:8179例(EPA群4089例、プラセボ群4090例) 脱落は730例(9%)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Amarin Pharma社)

【患者背景】
LDL値のみ有意差あり(EPA群vsプラセボ群:74vs76mg/dl)。その他は同等。
ざっくりと。年齢64歳、男性70%、白人90%、二次予防70%、エゼチミブの内服6%、糖尿病60%、TG216mg/dl、HDL40mg/dl

【結果】

primary endpoint:心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+冠動脈血行再建+不安定狭心症

サブグループ解析でも一貫性が見られますが、65歳以上・TG<200mg/dl or HDL>35mg/dl・高感度CRP>2mg/LのサブグループではP for interaction < 0.10を下回っています。


約5年でのNNT。

【まとめと感想】
高容量のEPAにより心血管イベントが抑制されるという結果でした。どのアウトカムも20−30%リスク減少していますが、絶対値はそれほど大きくはありません。かつ観察期間は約5年です。でも、この結果は驚きました。

残念なことに、日本の保険診療ではこの量のEPAを処方することはできません(サプリメントはありますが)。エパデール®︎は1800mgまでですし、ロトリガ®︎は4gまで処方できますがn-3脂肪酸(EPA+DHA)として4gなので、その中にEPAがどれくらい含まれているか添付文書からわかりません。

メタ解析で明らかにされている通り、日本で処方できる容量では心血管イベントに対する効果は期待できません。EPAを内服して足りない分を魚を食べることで補うのはアリかもしれませんが・・・。

あと、脳梗塞も28%リスク減少している点にも注目すべきです。脳梗塞は脂質よりも血圧の関与が大きいので、これはTGを下げた効果というより、やはりEPAの作用によるものだと思います。

EPA1800mg/日程度では心血管イベントは抑えられませんので、エパデール®︎やロトリガ®︎を処方しようと思ったことはないですが、日本でも高容量EPAが処方できるようになれば、リスクの高い患者では出していいなと思いました。観察研究との一貫性もあると思います。

80代の高齢心房細動患者では、痩せが出血の危険因子

Fushimiレジストリでは、85歳以上だとそれ以下と比べて脳梗塞/全身性塞栓症が多くなるけど(HR:2.57、95%CI:1.77-3.65)、出血は多いわけではない(HR:1.40、95%CI:0.78-2.36)ということが以前報告されていました。

で、これは、高齢者の心房細動で出血にスポットを当てた論文です。高齢の心房細動患者で出血の危険因子はなにかということが調べられています。

Assessment of the bleeding risk of anticoagulant treatment in non-severe frail octogenarians with atrial fibrillation.
J Cardiol. 2019 Jan;73(1):7-13.

【PECO】
P:重度のフレイルでない80代の心房細動患者
E:暴露因子あり
C:暴露因子なし
O:出血

暴露因子:BMI(<18.5)、BW(&lt:50kg)、85歳以上、HAS-BLED3点以上、CKD、Hb<10g/dl、ワルファリン内服、抗血小板薬内服

フレイルティについては、臨床フレイルスケール(clinical frailty scale)で評価。
DOACは添付文書に準じた投与量調整がなされているか評価。
ワルファリンは、PT-INR1.6−2.6を至適範囲とし、TTR65%以上あれば適切な容量調整がなされていると判断した。

出血は3カテゴリに分類。
1)大出血:入院、または2単位以上の輸血が必要となる出血。生命に関わる出血。
2)臨床的に重大な出血:医学的介入、予約外受診、OACの一時的な中断が必要、または日常生活での支障をきたすような出血
3)小出血:上記以外

exclusion criteria:出血の既往、活動性の出血、重度腎障害、患者のコンディションが悪い場合

【デザイン、セッティング】
・症例対照研究
・単施設
・346例(ダビガトラン64例、リバロキサバン80例、アピキサバン95例、エドキサバン27例、ワルファリン80例)
・2011年1月〜2017年1月までにOACの処方が開始された患者
・観察期間:32.7ヶ月(14.0−51.0ヶ月)
・適切な容量調整がされていたのは、DOAC群では76%、ワルファリン群では65%。
・出血、抗凝固療法中止、抗凝固薬の変更、死亡、観察期間終了(2018年1月)のいずれかが起こるまでフォローアップ。
・COX比例ハザードモデル

【結果】
大出血は12例(消化管出血10例、喀血1例、肝出血1例)、臨床的に重大な出血4例(消化管出血4例)、小出血43例であった。

適切な容量調整がされている集団では、BMI<18.5が出血の最も重大な因子だった。
HR:2.17(95%CI:1.01−4.70)

一方、ワルファリンの使用(HR:0.57 [95%CI:0.26−1.27])や、抗血小板薬内服(HR:1.07 [95%CI:0.48−2.39])は有意差はなかった。

【まとめと感想】
80歳以上のAF患者では、やせ(BMI<18.5)が出血の危険因子のようです。

リアルワールドのデータでは、DOACはワルファリンと比べ出血が少ないと言われていますが、75歳以上のAF/VTEを対象としたメタ解析では出血に差はなく、このレジストリでもワルファリンの使用の有無では有意差はなかったようです。また、抗血小板薬併用下でも差はなかったということですが、ここらへんはNが大きくないので差が出なかったのかもしれません。

まあ、やせてる高齢者の抗凝固療法は要注意です。

今後ますます高齢の心房細動が増えてくると思いますが、エドキサバンのRCT(ELDERCARE-AF試験)やすべてのOACを含んだ前向きコホート研究(ANAFIEレジストリ)が走っているところのようなので、その結果が出てくると、高齢心房細動患者の治療も確立されてくるのではないでしょうか。

植込み型心臓電気デバイス(CIED)手術での感染予防 抗菌薬の追加延長投与は有効か

Prevention of Arrhythmia Device Infection Trial: The PADIT Trial.
J Am Coll Cardiol. 2018 Dec 18;72(24):3098-3109.

【PICO】
P:デバイス植込みで感染症リスクの高い症例
I:抗菌薬追加延長投与
C:従来の抗菌薬予防投与
O:1年以内のデバイスもしくはポケット感染による入院

感染症リスクの高い症例:ジェネレーター交換、リード追加、CRTの植込み

従来の抗菌薬予防投与:皮膚切開60分前のセファゾリン1−2g投与。ペニシリンアレルギーの場合には、皮膚切開120分前にバンコマイシン1−1.5gを投与。

抗菌薬追加投与:術前のセファゾリン+バンコマイシン投与に加え、閉創前にバクトラシン50000万単位+生食/50mlでポケット内を洗浄し、術後はセファレキシン500mgを1日4回、2日間内服。もしくは、セファトドキシル1000mgを1日2回投与。ペニシリンアレルギーの場合は、クリンダマイシン150−300mgを1日3回内服。オランダの全施設とカナダの1施設ではバクトラシンが入手できなかったので、生食もしくはセファゾリンでポケット内を洗浄した。

【試験の概要】
デザイン:RCT(cluster randomized crossover trial)
地域:カナダ24施設、オランダ4施設
登録期間:2012年12月〜2016年7月
観察期間:12ヶ月
症例数:12826例(従来治療群6285例、追加延長群6541例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
施設:術者5.5人、手術室25%・その他はカテ室かその両方、PMジェネレータ交換86件/年、ICDジェネレータ交換34件/年、CRTジェネレータ交換14.5件/年、消毒はクロルヘキシジン93%

従来治療群と追加延長群では、性別、腎機能障害、CRT新規植込み、ポケット手技で有意差あり。

ざっくりと。年齢72歳、女性(従来治療群33%、追加延長群31%で差あり)、糖尿病1/4、腎機能低下(従来治療群16%、追加延長群18%で差あり)、ペニシリンアレルギー10%、ジェネレータ交換38%・ICDジェネレータ交換16%・CRTジェネレータ交換6%・CRT/ICD新規植込み18%、手技時間<1時間 2/3

【結果】
従来治療群 vs 追加延長群
▶︎デバイス感染による(primary endpoint)
1.23% vs 1.01% OR:0.82(95%CI:0.59−1.15)

▶︎血流感染・感染性心内膜炎
0.45% vs 0.32% OR:0.72(95%CI:0.41−1.28)

▶︎ポケット感染・びらん
0.78% vs 0.69% OR:0.89(95%CI:0.58-1.37)

【まとめと感想】
デバイスの手術で、感染は1番嫌な合併症だと思いますが、抗生剤を追加・延長しても感染症の減少には結びつかないようです。

心房細動への房室結節アブレーションとCRT

narrowQRSの心房細動では、ジャン切り(房室結節アブレーション)して普通のペースメーカを入れると、薬物療法単独よりも症状はよくなるけど、心不全入院とか生存率は改善しない。50%の患者で右室ペーシングによる左室非同期が起こるためと思われる。

では、ジャン切りしてCRTに乗せちゃうとどうなのか。

A randomized controlled trial of atrioventricular junction ablation and cardiac resynchronization therapy in patients with permanent atrial fibrillation and narrow QRS
Eur Heart J. 2018 Dec 1;39(45):3999-4008.

【PICO】
P:症候性慢性心房細動+narrowQRSで1年以内に心不全入院歴あり
I:房室結節アブレーション(ABL)+CRT
C:薬物療法
O:心不全死+心不全入院+心不全の悪化

CRTの設定は主治医に一任。
薬物療法では安静時心拍数110/min未満が目標。

exclusion criteria:NYHAⅣ度、SBP≦80mmHgなど

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:ヨーロッパ 10施設
登録期間:2014年10月〜
観察期間:16ヶ月(中央値)
症例数:102例
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Boston Scientific社)

【患者背景】
ジゴキシンのみABL+CRT群36%、薬物療法群58%と差あり。
ざっくりと。年齢71歳、男女半々、AFの期間1−1.5年、2/3がHYNAⅢ度、HR100/min、QRS97ms、LVDd59mm、LVDs44mm、EF40%、冠動脈疾患30%、β遮断薬84%、ACE阻害薬・ARB60%、抗アルドステロン薬50%。

【結果】
ABL+CRT群 vs 薬物療法群
▶︎心不全死+心不全入院+心不全の悪化
20% vs 38% HR:0.38(95%CI:0.18−0.81)

▶︎心不全死
1例 vs 2例

▶︎全死亡
4%(2例)vs 12%(6例)HR:0.30(95%CI:0.06−1.50)

▶︎心不全入院
10% vs 25% HR:0.30(95%CI:0.11−0.84)

▶︎心不全の悪化
10% vs 15% HR:0.55(95%CI:0.18−1.68)

サブグループ解析では、EF35%以下、SP120mmHg未満、SSSスコア(自覚症状のスコア)32以上で有意差あり。

【まとめと感想】
ジャン切り+CRTは薬物療法より心不全入院を減らす。EF35%以下だとなお良し。もしかしたら、生命予後も変わってくるかもしれないという期待はあります。でかい規模のRCTが進行中のようです。

お高い治療ですが、これで心不全入院が防げて、結果的に医療費の削減になればいいのですが。