悪性腫瘍の静脈血栓塞栓症とアピキサバンの予防投与

Apixaban to Prevent Venous Thromboembolism in Patients with Cancer
N Engl J Med. 2018 Dec 4. doi: 10.1056/NEJMoa1814468. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:化学療法を行う新規、または再発の悪性腫瘍で、Khoranaスコア2点以上
I:アピキサバン2.5mg/回 1日2回
C:プラセボの内服
O:180日間の静脈血栓塞栓症(VTE)

Khoranaスコア
胃癌、膵癌=2点
肺癌、リンパ腫、婦人科腫瘍、膀胱癌、精巣癌=1点
血小板>35万/μL=1点
Hb<10g/dlまたはESA製剤の使用=1点
白血球数>1.1万/μL=1点
BMI>35=1点

Khoranaスコア別のVTE発症リスク(2.5ヶ月)
低リスク群(0点):0.3%
中リスク群(1−2点):2.0%
高リスク群(3−6点):6.7%

【試験の概要】
デザイン:RCT
地域:カナダ
登録期間:2014年2月〜2018年4月
観察期間:210日
症例数:563例(アピキサバン群288例、プラセボ群275例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Bristol-Myers社、Squibb–Pfizer社)

【患者背景】
両群間に差はない。
ざっくりとした背景。年齢61歳、男性4割、体重80kg、リンパ腫と婦人科腫瘍が1/4ずつ、肺癌・胃癌・膵癌が10%ずつ、Khonaraスコア2点:2/3、3点:1/4、4点:1/12、抗血小板薬の併用1/4、VTEの既往3%。

【結果】
アピキサバン群 vs プラセボ群
▶︎180日以内のVTE
4.2% vs 10.2% HR:0.41(95%CI:0.26−0.65)

▶︎肺塞栓症
1.7% vs 5.8%(統計学的有意差の検証なし)

▶︎すべての出血
3.5% vs 1.8% HR:2.00(95%CI:1.01-3.95)

アピキサバン群で10例、プラセボ群で5例で、そのうち出血性ショック・頭蓋内出血まで至ったのは、アピキサバン群で1例(10%)、プラセボ群で2例(40%)。致死的な出血はいずれの群でも認めなかった。

▶︎全死亡
12.2% vs 9.8% HR:1.29(95%CI:0.98−1.71)

【まとめと感想】
悪性腫瘍のVTEはアピキサバンにより減らすことができるようです。Khoranaスコアというのは知りませんでしたが、この試験通りVTEリスクが高い2点以上でアピキサバンの予防投与をやってもいいのかもしれません。重大な出血を増やさずに、VTEを予防できる可能性はあると思います。

ただ、自分はこの結果をみても、悪性腫瘍+Khoranaスコア2点以上でアピキサバンを勧めようとは思いません。アピキサバンの内服期間は180日間となっている意味がよくわからないからです。この180日というのは恣意的で、アピキサバンのVTE予防効果が発揮されるだけの期間で、かつ出血がそれほど増えない期間として設定されてるのではないかと勘ぐってしまいます。

実臨床で、VTEの予防として内服し始めた薬を180日でやめるでしょうか。おそらく、副作用などの問題がなければ180日経過した後も続けるケースが大半を占めることになるのではないでしょうか。メーカが狙っているのはそこだろうと思います。企業のマーケティングに乗っかる必要はありません。

この論文の中にはありませんでしたが、Khoranaスコアがより高いグループではどうなのかは気になりますし、どのような患者群で本当に抗凝固療薬の恩恵を享受できるかを知りたいです。

REAL-CAD試験 日本人での高容量スタチンの効果

High-Dose Versus Low-Dose Pitavastatin in Japanese Patients With Stable Coronary Artery Disease (REAL-CAD)
Circulation. 2018 May 8;137(19):1997-2009.

【リサーチクエスチョン】
日本人(アジア人)でも冠動脈疾患へのスタチン投与は、more is betterなのか?

【PICO】
P:安定冠動脈疾患
I:ピタバスタチン4mg
C:ピタバスタチン1mg
O:心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+不安定狭心症

心血管死=心臓死(突然死+心臓手技関連死)+心臓に由来しない血管死

inclusion criteria:OMIの既往、血行再建から3ヶ月以上、冠動脈造影で75%以上の狭窄
exclusion criteria:スタチン非使用下でLDL100mg/dl以下

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:日本
登録期間:2010年1月31日〜2013年3月31日
観察期間:3.9年(中央値)
症例数:13054例
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(興和創薬)

【患者背景】
ざっくりと。
平均年齢68歳、男性82%、BMI24、EF60%、OMI51%、血行再建歴90%、うっ血性心不全5%、心房細動6%、LDL88mg/dl。

【結果】
3年以上フォローアップできたのは、両群とも89%程度。

高容量群 vs 低容量群
LDLコレステロール値(3年)
76mg/dl vs 91mg/dl

▶︎心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+不安定狭心症(primary endpoint)
累積4年発生率
4.3% vs 5.4% HR:0.81(95%CI:0.69−0.95)

▶︎心血管死
1.4% vs 1.8% HR:0.78(95%CI:0.59−1.04)

▶︎心筋梗塞
0.6% vs 1.2% HR:0.57(95%CI:0.38−0.83)

▶︎脳梗塞
1.3% vs 1.4% HR:1.03(95%CI:0.76-1.40)

▶︎不安定狭心症
1.2% vs 1.4% HR:0.86(95%CI:0.63-1.17)

【まとめと感想】
日本人でもスタチンを高容量にすれば、心血管イベントは減るという結果でした。心血管イベント(primary endpoint)のNNT=91、心筋梗塞のNNT=167なので、費用対効果としてはちょっと微妙だと思います。より効果の高い集団がわかったらいいですが、年齢・性別・DM・LDL・高感度CRP・HDL・中性脂肪・BMIのどのサブグループでも、有意な差はありませんでした。

薬価はピタバスタチン1mg:19円、4mg:72円らしいので、心筋梗塞を1件減らすのに約1290万円かかってしまいます。なので、個人的にはこの結果をみても、冠動脈疾患全員にスタチンを高容量で投与しようとは思いません。心筋梗塞を繰り返しているような人とか、家族性高コレステロール血症は別ですが。

とは言え、OMIが半分を占める集団で心筋梗塞が4年間で1%程度というのは、やっぱり日本人は心筋梗塞が少ないなあと改めて思いました。

ダビガトランvsワルファリン 日本のレセプトデータベースより

Comparative effectiveness and safety of warfarin and dabigatran in patients with non-valvular atrial fibrillation in Japan: A claims database analysis
J Cardiol. 2018 Nov 23. pii: S0914-5087(18)30293-4. doi: 10.1016/j.jjcc.2018.09.004. [Epub ahead of print]

【PECO】
P:新規で抗凝固薬を開始した非弁膜症性心房細動
E:ダビガトラン
C:ワルファリン
O:脳梗塞+全身性塞栓症+頭蓋内出血
secondary endpoint:大出血

【デザイン、セッティング】
・後向き
・日本のレセプトデータベース(Medical Data Vision)
・2011年3月14日〜2016年6月30日
・22490例(プロペンシティスコアマッチ後は両群4606例ずつ)
・交絡因子の調整:プロペンシティスコアマッチ

【結果】
プロペンシティスコアマッチ後の患者背景。
平均74歳、女性34%、心不全35%、糖尿病27%、心筋梗塞1%、脳梗塞/TIA13%、PPI40%、H2blocker17%、CHADS2スコア2.0点、HAS-BLEDスコア1.0点。

ワルファリン vs ダビガトラン
脳梗塞+全身性塞栓症+頭蓋内出血(primary endpoint)
35.6 vs 29.0%/1000人年 HR:0.72(95%CI:0.53-0.97)

大出血(secondary endpoint)
11.3 vs 6.4%/1000人年 HR:0.55(95%CI:0.30−0.99)

消化管出血
6.4 vs 1.6%/1000人年 HR:0.24(95%CI:0.28−0.80)

【まとめと感想】
後向きのデータではありますが、ダビガトランの方が消化管出血が少なかったみたいです。

DOAC・ワルファリンを開始したAF患者の心筋梗塞発症率と死亡率

Risk of Myocardial Infarction in Anticoagulated Patients With Atrial Fibrillation
J Am Coll Cardiol. 2018 Jul 3;72(1):17-26.

RE-LY試験では、ダビガトランで心筋梗塞の増加を認めた。ARISTOTLE試験やROCKET-AF試験では、アピキサンバンやリバロキサバンに心筋梗塞の増加は認めなかった。これらの試験では、高齢者・フレイルは除かれており、また心筋梗塞をアウトカムにしたDOAC間の比較データはない。

【PECO】
P:AFと診断され初めて抗凝固療薬を内服する患者
E:DOAC(アピキサバン、ダビガトラン、リバロキサバン)
C:VKA(ワルファリン)
O:抗凝固療法開始後1年以内の心筋梗塞による入院
secondary outcome:抗凝固療法開始後1年以内の心筋梗塞による入院+全死亡

exclusion criteria:弁膜症性心房細動、DOACが禁忌となる腎障害

【デザイン、セッティング】
・the Civil Registration System(デンマーク)
・2013年1月1日〜2016年6月30日
・後向き
・31739例(ワルファリン8913例、アピキサバン8611例、ダビガトラン7377例、リバロキサバン6838例)
 うち1年間の脱落が8905例(28%)
・観察期間:1年
・COX比例ハザードモデル

【結果】
1年間の絶対リスク(95%CI)とワルファリンとのリスク差

心筋梗塞(primary endpoint)
ワルファリン 1.56%(1.33-1.80%) 
アピキサバン 1.16%(0.94-1.39%)リスク差-0.40% (−0.72to-0.07%)
ダビガトラン 1.20%(0.95-1.47%)リスク差−0.36%(−0.71to-0.03%)
リバロキサバン 1.07%(0.83-1.32%)リスク差-0.49%(−0.82to−0.16%)

DOAC間では、リスク差に有意差はない。

心筋梗塞+全死亡(secondary endpoint)
ワルファリン 12.2%(11.5-12.9%) 
アピキサバン 10.9%(10.3-11.5%)リスク差-0.40% (−0.72to-0.07%)
ダビガトラン 9.3%(8.6-10.0%)リスク差-0.36% (−0.71to-0.03%)
リバロキサバン 12.0%(11.3-12.7%)リスク差-0.49% (−0.82to-0.16%)

【まとめと感想】
DOACはワルファリンと比べ、低い心筋梗塞発症率と関連あり。心筋梗塞発症率は1.1%-1.2%程度で、ワルファリンとの差も有意とはいえ、年間0.4%程度。

システマティックレビューでは、ダビガトランはワルファリンと比べ心筋梗塞が増えることが報告されているが、このコホート研究ではその傾向は認めなかった。

それよりなにより、全死亡がその10倍起きている。平均年齢70歳ちょっとなので、10%/年の死亡率はインパクトがある。

抗血小板薬併用下でのDOACとワルファリンの比較

Combining Oral Anticoagulants With Platelet Inhibitors in Patients With Atrial Fibrillation and Coronary Disease
J Am Coll Cardiol. 2018 Oct 9;72(15):1790-1800.

【PECO】
P:OMI+AF、もしくはPCI施行後+AF
E:DOAC+抗血小板薬
C:VKA+抗血小板薬
O:出血、虚血性脳卒中、心筋梗塞、全死亡

【デザイン、セッティング】
・Danish nationwide administrative registries
・後向き
・3222例
(VKA+SAPT 875例、DOAC+SAPT 595例、DAPT 1074例、DOAC+DAPT 678例)
・2011年8月〜2017年7月
・観察期間:12ヶ月
・PT-INR、血圧、腎機能のデータは含んでいない
・COX比例ハザードモデル
・著者には、DOAC企業とのCOIあり

【結果】
DOACは、リバロキサバン、ダビガトラン、アピキサバンが1/3ずつぐらい。2/3は減量投与。

VKA+DAPTを基準として、DOAC+DAPTのハザード比は・・・
出血:0.51(95%CI:0.33-0.78)

脳卒中:1.44(95%CI:0.78-2.67)

心筋梗塞:0.92(95%CI:0.58-1.45)

全死亡:0.83(95%CI:0.59-1.17)

VKA+SAPTを基準として、DOAC+SAPTのハザード比は・・・

出血:0.90(95%CI:0.60-1.53)

脳卒中:0.64(95%CI:0.30-1.36)

心筋梗塞:0.63(95%CI:0.40-1.00)

全死亡:1.08(95%CI:0.80-1.44)

【まとめと感想】
VKA+DAPTは、DOAC+DAPTと比較すると心筋梗塞・脳梗塞・全死亡には差はないが、約2倍の出血と関連あり。

VKA+SAPTは、DOAC+SAPTと比較すると出血・脳梗塞・全死亡には差がないが、約2/3倍の心筋梗塞と関連あり。

DOAC betterな結果でした。PT-INR、血圧、腎機能などイベントに関連がありそうな因子は、解析には含まれてないというのはlimitation。