HFmrEFへのβ遮断薬の効果

2016年にESCのガイドラインが改訂され、それまで収縮能が保持され拡張障害が主体であるHFpEF(heart failure with preseved EF:ヘフペフ)と、収縮能が低下したHFrEF(heart failure with reduced EF:HFrEFヘフレフ)に分けられていた考えられていた心不全に、その中間であるEFmrEF(heart failure with mid-range EF:ミッドレンジ)が定義された(1)。

それまでも”preserved EF”は厳密には定義されていなかったが、そのグレーゾーンをmid-rangeとした。

HFrEFには、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ミネラロコルチコイド受容体拮抗薬が用いられるが、HFpEFではこれらの薬剤の有効性は確認されておらず、生命予後を改善させる薬剤はない。また、ESCガイドラインではHFmrEFはHFpEFとしてフォローすべきとしている。

Beta-blockers for heart failure with reduced, mid-range, and preserved ejection fraction: an individual patient-level analysis of double-blind randomized trials.
Eur Heart J. 2018 Jan 1;39(1):26-35.

心不全に対しβ遮断薬の効果をみたRCTを対象としたSR。
300症例以上、フォローアップ期間6ヶ月以上の11RCTを解析。


洞調律なら、HFmrEFでもHFrEFと同程度の効果が期待できる。
しかし、AFだと効果なし。


AFであってもLVEFは改善する。
ただ、HFpEFではLVEFの有意な改善はない。

AFでも洞調律でもLVEFは同じように改善するが、死亡率は洞調律でのみ減少する。また、虚血性心筋症ではLVEFの改善が非虚血よりも小さいが、死亡率の改善は同程度。なので、死亡率の改善は、LVEFによらないが、なぜ洞調律とAFで差が出るかはわからない。

HFmrEFは、HFpEFよりもHFrEFに近いのかもしれないが、そもそもetiologyが雑多なので、一概に言えない。なんだかんだでHFmrEFでもHFpEFでも、β遮断薬やACE阻害薬/ARBなどを使う循環器医は多いと思います。

(1)Eur Heart J.2016;37(27):2129-200.

近位深部静脈血栓症とカテーテル治療

DVTの慢性期には、下腿浮腫、色素沈着、うっ滞性皮膚潰瘍などの血栓後症候群(PTS)を合併することが知られており、急性近位深部静脈血栓症では約40%で発症すると言われている。そして、PTS予防には、静脈の開存、弁機能維持が重要と考えられている。

DVTの標準的治療は弾性ストッキングと抗凝固療法だが、カテーテル血栓溶解療法(CDT)を加えることにより、PTSの発症率を減少させることが期待されている。発症21日以内のDVTを対象としたCaVenT試験(1)では、CDT群で24ヶ月時点でのPTSが有意に減少した(NNT=7)。

このATTRACT試験は発症14日までのDVTを対象としており、CaVenT試験よりも、より早期の患者を対象としている。そして、PTSリスク低減のため、CDTに加え、血栓吸引・バルーン拡張・ステント留置といった機械的な治療も行うPCDT(pharmacomechanical CDT)も行われた。

Pharmacomechanical Catheter-Directed Thrombolysis for Deep-Vein Thrombosis.
N Engl J Med. 2017 Dec 7;377(23):2240-2252.

◇PICO
P:有症候性の近位深部静脈血栓症
I:標準治療+PCDT
C:標準治療のみ
O:6−24ヶ月でのPTS

両群ともに、長期の抗凝固療法、膝までの弾性ストッキングの着用を行う。血栓溶解薬はアルテプラーゼを用いる。

inclusion criteria:16−75歳、発症14日以内、大腿静脈・総大腿静脈・腸骨静脈の血栓
exclusion criteria:悪性腫瘍、血栓後症候群の既往

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:米国
登録期間:2009年12月〜2014年12月
観察期間:24ヶ月
症例数:692例(PCDT群336例、PCDT群355例)
解析:mITT解析
スポンサー:Boston Scientific社、Covidien社、Genentech社、BSN Medical社などから資金・薬剤・デバイスの提供あり

◇結果
PCDT群で11例割り付けられた治療が行われず、標準治療群で5例PCDTが行われた。

PCDT群 vs 標準治療群
▶︎primary endpoint
47% vs 48%(RR:0.96、95%CI:0.82−1.11)
PP解析・・・RR:0.94、95%CI:0.81−1.10

▶︎中等症〜重症の血栓後症候群
18% vs 24%(RR:0.73、95%CI:0.54−0.98)

▶︎10日以内の重大な出血
1.7% vs 0.3%(RR:6.18、95%CI:0.78-49.2)

◇まとめと感想
標準治療にPCDTを併用してもPTSの発症は抑えらず、PP解析でも有意な差は認めなかった。重大な出血に関しては有意差はないが、PCDT群で多い傾向であった。

CaVenT試験よりもPTS予防効果の期待できる対象(発症早期)、方法(PCDT)だったが、結果は期待したものではなく、CaVenT試験とも矛盾するものだった。

AHAガイドラインでは、CDT/PCDTの適応は、有痛性青股腫のような急性の循環不全をきたしている場合はclassⅠで、抗凝固療法下でも血栓の進展or症状の増悪がある場合や、出血リスクが低い患者に対するPTS予防に対してはclassⅡaで推奨している。そして、出血リスクが高い場合や発症21日以上経過している場合は、classⅢとなっている。

ATTRACT試験の結果を加味すると、CDT/PCDTは有痛性青股腫や、抗凝固療法下でも血栓の進展or症状の増悪がある場合に限った方がいいのかもしれない。

(1)Lancet 2012;379:31–38
(2)Circulation.2011;123:1788-1830