ACSの完全血行再建 至適タイミング

STEMI患者の50%で、責任病変以外に狭窄があると言われている。残存狭窄に対するPCIのタイミングは、primaryPCIの際に一期的に行うか、あるいは後日待機的に行うかに分かれ、その至適タイミングについては結論がでていない。

循環動態が不安定であれば責任病変と残存狭窄を一期的にPCIを行うことはあるが、循環動態が安定している患者に関しては二期的にやる場合がほとんどだと思われる。

このメタ解析は、残存狭窄に対するPCIを一期的に行うか、あるいは待機的に行うかで、心血管イベントを比較したものである。

Optimal Timing of Complete Revascularization in Acute Coronary Syndrome: A Systematic Review and Meta-Analysis.
J Am Heart Assoc. 2017 Apr 10;6(4). pii: e005381.

◇論文のPICOはなにか
P:多枝病変を有するACS
I:primaryPCIの際に残存狭窄に対するPCIを行う(single-stage群)
C:primaryPCIとは別のタイミングで残存狭窄に対するPCIを行う(multistage群)
O:全死亡、心筋梗塞の再発、血行再建の複合エンドポイント

◇患者背景
4つのRCTが解析に組み入れられた。うち、3つのRCTで心原性ショックとLM病変が除外されている。

(本文から引用)
SMILE試験のサンプルサイズが一番大きく、全体に占める割合も大きい。


(本文から引用)
冠危険因子は両群で差はない。


(本文から引用)
使用したステントはSMILE試験は、BMSもDESも両方、他の試験ではDESを用いたり、記載がなかったり。

◇結果

(本文から引用)
6ヶ月の時点では、single-stage群もmultistage群も差はない。

これが、各試験の最長観察期間(2RCT:6ヶ月、1RCT:12ヶ月、1RCT:2.5年)のデータを統合すると、血行再建のみで有意差がつく。ハザード比0.68(95%CI:0.47−0.99)。

◇感想
多枝病変を有するACSに対し、どのタイミングで残存狭窄に対するPCIをやるかについては、6ヶ月の時点では差がないという結果。ただ、各試験の最長観察期間で解析すると、single-stage群で血行再建が有意に少なくなった。

なぜ観察期間を伸ばすと血行再建に差がつくかわからない。血行再建で差がつくなら、予定した待機的PCIの前に起こりそうなものだが。まあ、イベント数も少ないので、たぶん偶然誤差だろう。

そもそも、STEMIの残存狭窄へPCIを行うことにメリットがあるかということ自体、現時点では議論が分かれるところであり、現在進行中のCOMPLETE試験で決着がつくだろう。

primaryPCI直後のFFRと、それに続く非責任病変へのPCIは安全に行うことができる

STEMIでは責任病変に対しprimaryPCIが行われるが、約50%の患者が責任病変以外に狭窄がある。それに対しPCIをやるかどうかについて議論があるが、PCIを行う場合はFFRで評価することが妥当とされる。しかし、それをどのタイミングで行い、どのタイミングでPCIをやるべきかは結論がでていない。

このCompare-Acute試験は、primaryPCIの際に残存狭窄に対するFFR、PCIを行うストラテジーが、責任病変に対するprimaryPCIのみ行うストラテジーより優れているか検証する目的で行われた。

Fractional Flow Reserve–Guided Multivessel Angioplasty in Myocardial Infarction
N Engl J Med. 2017 Mar 30;376(13):1234-1244

◇この論文のPICOはなにか
P:50%以上の残存狭窄があるSTEMI
I:FFRガイドで残存狭窄にPCI(完全血行再建群)
C:FFRのみでPCIは行わない(梗塞血管のみ群)
O:12ヶ月の全死亡、非致死的心筋梗塞、血行再建、脳血管イベント

血行再建は、冠動脈に50%以上の狭窄があり以下の条件を1つでも満たす場合か、虚血の症状や兆候がなくても70%以上の狭窄があれば、臨床的適応があると判断する。ただし、45日以内の血行再建はイベントに含めない。
責任血管由来と考えられる狭心症の再発、安静時・労作時の心電図の虚血性変化で責任血管由来と考えられるもの、フォローアップ期間中の侵襲的機能的診断検査での異常(FFRなど)

exclusion criteria:LMT、CTO、非責任血管がTIMI2以下、primary PCIの結果が良くないor合併症あり、高度の弁膜症、KillipⅢ/Ⅳ

primary PCIが終わった時点で血行動態が安定していれば、FFRを行い、完全血行再建群と梗塞血管のみ群に無作為化する。FFRの結果に関しては、患者と主治医(PCIチームとは別)は知らされない。完全血行再建群では、primary PCIに引き続き非責任血管へのPCIを行う。できない場合は、遅くとも72時間以内に施行。

◇試験の概要
地域:ヨーロッパ、アジアの24施設
観察期間:12ヶ月
無作為化:封筒法
盲検化:オープンラベル
必要症例数:885例
症例数:885例(完全血行再建群295例、梗塞血管のみ群590例)
追跡率:99.9%(フォローアップ不能1例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Abbott Vascular社、St. Jude Medical社)

◇患者背景

(本文から引用)
差はない。UAP的なものが多く含まれているのか、CKが低め。


(本文から引用)
完全血行再建群では、primaryPCIの際に残存狭窄に対しても一期的にやるので、手技時間は長くなり、造影剤使用量も増える。完全血行再建群では、163例でFFRが陽性となりPCIが行われている。

◇結果

(本文から引用)
primary endpointで有意差あり。中身は、血行再建のみで有意差が付いている。自然発生のAMIが完全血行再建群で少ない傾向。手技に関連したAMIも完全血行再建群で少ないが、これはprimaryPCIと一緒にやっているので、CK上昇がマスクされる影響もありそう。

◇批判的吟味
・複合エンドポイントのうち、血行再建というソフトエンドポイントのみで有意差あり。そして、その血行再建というのは、冠動脈に70%以上の狭窄があれば虚血の証拠や症状がなくても、血行再建をやればイベントとしてカウントされている。それなら、梗塞血管のみ群でイベントが増えるに決まっている。エンドポイントに含める必要があったのか。

・心筋梗塞が完全血行再建群で少ない傾向にあるが、両群ともイベント数は10例前後なので、信頼性は低い。

・完全血行再建群では163例で残存狭窄に対し血行再建を行なっている。それをあえてエンドポイントに含めてしまうと、完全血行再建群では梗塞血管のみ群より1.8倍多く血行再建を行なっていることになる。つまり、梗塞血管のみ群では45%も血行再建が少ないということになる。血行再建が45%も抑えられていて、かつ、死亡も心筋梗塞も完全血行再建群と変わらないという結果なら、FFRガイド完全血行再建をしない方がいいのではないか。

◇感想
STEMIに対し、FFRガイド完全血行再建を行うと、責任血管のみ治療した場合に比べて、12ヶ月の心血管イベントが抑えられるという結果だった。ただ、心血管イベントというのは、血行再建というソフトエンドポイントのみ減少し、死亡や心筋梗塞に差はなかった。

正直、結果は微妙だったと思うが、primaryPCIの際にFFRをやり、非梗塞血管に対してもPCIを行うというストラテジーが安全であることは確認できた。

冠動脈疾患 心筋梗塞とLVSTの発生率

Incident Myocardial Infarction and Very Late Stent Thrombosis in Outpatients With Stable Coronary Artery Disease.
J Am Coll Cardiol. 2017 May 2;69(17):2149-2156

◇この論文のPECOは?
P:安定した冠動脈疾患
E/C:なし
O:心筋梗塞(MI)と突然死

inclusion criteria:MIや血行再建から1年以上経過した患者、冠動脈の50%以上の狭窄

<デザイン、セッティング>
・フランス
・前向きコホート研究
・登録期間:2010年2月〜2011年4月
・4184例 うち4094例を完全にフォローアップ(98%)と良い
・1つでもステントが留置されていた患者は2816例
・観察期間:4.9年(中央値)

<患者背景>

(本文から引用)
だいたい2/3にOMIありステントが入っているが、EFは保たれている。抗血小板薬は95%以上、スタチンは90%ほど内服している

170例がフォローアップ期間中にMIを発症した。

MIを発症した患者では、フォローアップ開始時点で狭心症の症状、HbA1c>7%、多枝病変、DAPTが多く、喫煙率、LDLが高く、CABGが少なかった。

<結果>
ステント留置患者でMIを再発した170例のうち、冠動脈造影(CAG)が行われたのは95.5%だった。4.5%でCAGが行われなかったが、心電図上、以前ステントを留置した冠動脈の閉塞の所見を示した患者はいなかった。

全体では、MIの発症率は0.8%/年。


(本文から引用)
喫煙は最も強力な予後因子であり、コントロールが悪い糖尿病もやはり良くない。


(本文から引用)
20%(27例)がVLST(超遅発性ステント血栓症)。ステント留置から5.2年(中央値)で、最大17年。およそ半分(14例)が第一世代DESで、BMSが10例、第二世代DESが3例。25/27例がなんらかの抗血栓療法を行なっていた。

VLSTの死亡率は18%/年。一方、VLSTではないMIの死亡率は7%/年だった。

◇感想
OMI、postCABGが多くを占める安定した冠動脈疾患をフォローしたレジストリーデータで、薬物療法も比較的しっかりやられている印象。MIの発症率は0.8%/年(4%/5年)と低い。そのためか、ステント血栓症の多さが目立つ。

半分が第一世代DESだからとはいえ、MIの23%がステント血栓症であり、ステントを留置することの重大さを認識させられる。MIでステントを留置するのはまだ良いが、まだステントが入っていない狭心症なら、PCIをやる前に十分な薬物療法はやらねばと思う。

心血管疾患のない心房細動で、ワルファリンの心筋梗塞・脳梗塞予防効果はアスピリンに勝る

Antithrombotic Therapy and First Myocardial Infarction in Patients With Atrial Fibrillation.
J Am Coll Cardiol. 2017;69(24):2901-2909

◇この論文のPECOは?
P:心血管疾患の既往のない心房細動
E/C:ワルファリンのみ、アスピリンのみ、ワルファリン+アスピリンの併用の3群
O:心筋梗塞

secondary endpointは脳梗塞と出血。

<デザイン、セッティング>
・デンマークのレジストリーデータ
・71959例
・観察期間:4.1年(中央値)
・ポアソン回帰モデル

<患者背景>

(本文から引用)
ASA+VKA群で、心不全、高血圧、糖尿病などの冠危険因子が多い。
ASA単独群は、年齢が高く出血を危惧され、アスピリンを処方されているのか?

<結果>

(本文から引用)
脳梗塞はアスピリンよりワルファリンがいいに決まっているが、出血に関してはアスピリンとワルファリンで有意差がない。心筋梗塞はアスピリンよりワルファリンの方が、予防効果が高い。

アスピリンとワルファリンの併用は、アスピリン単剤より心筋梗塞、脳梗塞を抑えるが、出血は逆に増える。

◇感想
ワルファリンも心筋梗塞予防効果があるが、その効果がアスピリンより高く出血も増えていないのは意外な結果だった。デンマークのレジストリーデータなので、フォローアップ率も極めて高く、まさにリアルワールドのデータ。

PT-INRの値やTTRもわかればよかったけど、この研究では調べられていないのは残念。この比較にDOACが入ってくるとどうなるか気もなるところです。

【総説】急性心筋梗塞 NEJM

Acute Myocardial Infarction
N Engl J Med 2017; 376:2053-2064

【定義】
・急性心筋梗塞には6つのタイプがある。
type1:アテローム血栓症によるもの
type2:需要と供給のミスマッチ
type3:心筋梗塞による突然死(バイオマーカーやECGなし)
type4a:PCIによるもの
type4b:ステント血栓症
type5:CABGによるもの

【疫学】
・米国ではここ30−40年で減少傾向にあるが、それでもAMIは55万人/年。低所得、中所得の国では増えている。

【病理】
・急性心筋梗塞は、不安定で脂質に富んだ動脈硬化性プラークの破裂や侵食によって起こる。

【初期評価】
・ACSが疑われる場合、来院から10分以内にECGをとり、トロポニン検査を行うこと。

・トロポニンは心筋炎などの心筋障害、心不全、腎不全、呼吸不全、脳梗塞、脳出血、敗血症性ショック、心構造疾患でも上昇する。トロポニンに加えて、CK-MBやミオグロビンを測ることは推奨されていない。

・リスク評価にはTIMIモデル、GRACEモデルが有効。

【初期治療】
・より迅速なprimaryPCIがアウトカムを改善する。

・院外心停止(初期波形VF)に対し、プレホスピタルで低体温療法を開始した2つのRCTがある。病着時の体温は有意に下がっていたが、病着後に低体温療法を開始する場合と比べ退院時のアウトカムは改善しなかった。

・酸素投与はルーチンでされることが多いが、SpO2<90%でない限り酸素投与はすすめられない。酸素投与は、SpO2<90%、呼吸不全など低酸素血症のリスクがある場合のみ勧める。現在、AMI6650例を対象として酸素投与の影響を検証するDETO2X-AMI試験が進行中である。

【治療戦略】

・βblockerは、ショック・LOS・心不全などがなければ、24時間以内に開始。
・アトルバスタチン40−80mg、ロスバスタチン20−40mg(注:日本ではアトルバスタチン20mg、ロスバスタチン20mgが最大量)の高容量のスタチンは、コレステロール低下作用と多面的効果あり。
・ACE阻害薬/ARBは、特にLAD、左室機能不全、心不全への導入が望ましく、24時間以内に開始を。
・OMIがあればアルドステロン拮抗薬を。


(日本では例外的な場所を除いて、120分以内にカテができるところにたどりつけるので、STEMIであればPCI。bivalirudinは使えず、ticagrelorも出番がないので、ASA+クロピドグレルorプラスグレルのDAPT。PCI前後は未分画ヘパリンを使用。)

・ステントは、ベアメタルステントよりコバルトクロム・エベロリムス溶出性ステント(Xience)が最も安全性・有効性(心臓死、AMI、ステント血栓症の減少)が高い。

・非責任病変に対するPCIは議論が分かれる。AHA/ACCのガイドラインでは、非責任病変へのPCI(primaryPCIと同時に、またはstagedPCIで)はclassⅡb。現在、非責任病変に対するPCIのタイミング(primaryPCIと同時かstagedか)を検証するための大規模RCT(COMPLETE試験)が進行中である。

・血栓吸引は、TOTAL試験で180日時点の心血管死、心筋梗塞、心不全を減少させず、30日時点の脳梗塞をわずかではあるが有意に増加させた(0.7%vs0.3%)。AHA/ACCガイドラインでは、ルーチンでの血栓吸引は推奨されていない。

・PCIのアクセスは、大腿動脈より橈骨動脈が出血が少ない。ただ、メタ解析では手技時間はわずかに(2分)増加することが示されている。

【抗血栓療法】
・腸溶性でないアスピリン(=バイアスピリンはダメ)162−325mgの投与。

・維持量は81−325mg。ただし、チカグレロル(ブリリンタ)とプラスグレル(エフィエント)を併用するときは、アスピリンは81mgがよい(注:日本では、ブリリンタはプラビックスとエフィエント(とパナルジン)が使えない時だけ使用可、なので出番なし)。クロピドグレル(プラビックス)を併用するときの至適容量は不明。

・PCI時に速やかにP2Y12阻害薬(プラビックス、エフィエント、ブリリンタ)を投与し、少なくとも1年間は継続すること。

・エフィエントとブリリンタのPCI前のローディングは、効果がなかった。

・プラビックスの効果はCYP2C19に依存する。

・ワルファリンとDAPTの3剤併用は、心房細動、機械弁、静脈血栓塞栓症の際に推奨されるが、出血リスクは増加するため極力短い方がいい。WOEST試験では、抗凝固薬+プラビックスが3剤併用より塞栓リスクを増加させず、出血リスクを低下させた(ハザード比:0.36、95%CI:0.26−0.50)。

・PIONEER AF-PCI試験では、ワーファリンとDAPTの3剤併用、リバロキサバン(イグザレルト)低容量とプラビックスの2剤併用、イグザレルト超低容量(2.5mg)とDAPTの3剤併用の3群に分け、有効性と安全性が検証された。どの群でも心血管死、心筋梗塞、脳梗塞に差はなかったが、出血リスクは、イグザレルトの低容量群と超低容量群で有意に減少した。

来院からフロセミド静注までの時間の短縮が、心不全の院内死亡率を改善する

ime-to-Furosemide Treatment and Mortality in Patients Hospitalized With Acute Heart Failure
J Am Coll Cardiol. 2017;69(25):3042–3051

◇この論文のPECOは?
P:急性心不全
E:D2Ftime60分未満(early群)
C:D2Ftime60分以上(non-early群)
O:院内死亡率

D2Ftime:病院到着からフロセミド静注までの時間

組み入れ基準:病院到着から3時間以内に急性心不全の診断がついた患者、24時間以内にフロセミドが静注されていること
除外基準:透析、AMIなど

<デザイン、セッティング>
・前向きコホート研究
・2014年8月〜2015年12月
・1291例(early群:481例、non-early群:810例)
・ロジスティック回帰

<患者背景>

(本文から引用)
early群の方が、救急車利用、うっ血の症候(下腿浮腫、頸静脈怒張など)が多く、D2Ftimeが短縮しそうな要因がある。心房細動はnon-earlyで多い。EF、腎機能、Nohria-Stevenson分類に群間差はない。

<結果>

(本文から引用)
60分未満のフロミセミドの静注により院内死亡率は低下。


(本文から引用)
100分ぐらいのところにひとつピークがある。

◇感想
急性心不全患者で、来院から60分以内にフロセミドを静注できた群は、それよりも時間がかかった群に比べて院内死亡率が低い。

Figure3をみると100分ぐらいのところにピークがあって、右肩上がりになっていない。左側の山の群と右側のなだらかな右肩上がりの群は、そもそも患者の質が違うんじゃないかな。characteristicsをみてもはっきりとはわからないけど、なんかそんな気がする。だから、いくら交絡を調整しても、そもそも母集団が違っているから比較ができないんじゃないかな。

ただ、100分以内でみると時間経過とともに院内死亡率が上昇しているので、早く心不全と診断してフロセミドを静注することは良いアウトカムに繋がりそうではある。まあ、迅速かつ的確な診断と早期の治療開始が重要ということで。

Deferred Stenting (二期的PCI)は梗塞サイズ、EFを改善しない

Myocardial Damage in Patients With Deferred Stenting After STEMI: A DANAMI-3-DEFER Substudy.
J Am Coll Cardiol. 2017;69(23):2794-2804.

primaryPCIでステント留置を避けた場合、冠血流の改善や心筋障害が減少することが報告されている。

DAMANI-3-DEFER試験は、primaryPCIの際に通常通りステントを留置する群と、急性期はPOBAのみでステント留置を行わず、数日後に改めてステントを留置する群に分け、臨床的なアウトカムが改善するか検証したRCTである。しかし、42ヶ月後の全死亡、心不全による入院、心筋梗塞の再発、計画されていない責任血管の再血行再建は、両群間で統計学的な差はなかった。

これはそのRCTのサブスタディである。

◇この論文のPECOは?
P:STEMI
E:primaryPCIの際にPOBAまで行い、48時間後にステントを留置する(Deferred Stenting)
C:primaryPCIの際にステントを留置する(Conventional Stenting)
O:心臓MRI(CMR)で測定した硬塞サイズ

<デザイン、セッティング>
・前向き(RCTのサブスタディ)
・510例 (もとの試験は1215例)
・急性期と90日後にCMRを撮像
・交絡因子の調整:COX比例ハザードモデル

CMRは退院前と、90日後に撮像して、急性と最終の硬塞サイズ、心筋サルベージインデックス(梗塞心筋量/還流域の心筋量)を調べる。

<患者背景>

(本文から引用)
両群間で差なし。症状からPCIまでの時間にも差はない。


(本文から引用)
Deferred Stentingの方が、ステント長が短い。最終的なTIMI分類に有意差はないが、Deferred StentingでもTIMIゼロ、TIMI1がある。

<結果>

(本文から引用)
急性期のCMRでEFのみ有意差がついているが、90日後のCMRでは硬塞サイズ、心筋サルベージインデックス、EF、LVEDVに差はない。


(本文から引用)
ステント長が24mmより長くなると、Defer betterになるが、そもそもprimary endpointに差が付いておらず、post hoc解析であり、信頼区間も広い。

◇感想
DANAMI-3-DEFER試験でDeferred Stentingによる臨床的アウトカムは認められず、心臓MRIでも梗塞サイズの減少やEFの改善などは認められなかった。

post hoc解析ではステント長が長くなると、Deferred Stentingに良い傾向があった。確かに、ステント長はslow flow/no-reflowの予測因子と言われているため、過去の報告に矛盾はしない。まあそうは言っても、二期的にPCIをやるのは医療経済的にもよろしくないので、十分な血管内腔が確保されていて解離がないなら、そのままステントを入れないって選択肢の方が良さそうだけど。

トルバプタンとフロセミド 心不全の症状改善効果は同じ

Efficacy and Safety of Tolvaptan in Patients Hospitalized With Acute Heart Failure.
J Am Coll Cardiol. 2017;69(11):1399-1406.

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心不全
I:トルバプタン30mg/日の内服
C:プラセボの内服
O:24時間以内に呼吸困難が中等度以上改善した患者の割合(7-point Likert scaleで評価)

inclusion criteria:安静時または軽労作で呼吸困難がある心不全、BNP>400pg/ml、血清Na140mEq/L以下
exclusion criteria:低血圧(SBP<90mmHg)、高度腎機能障害(Cr>3.5mg/dl)、血液透析

◇試験の概要
地域:米国
観察期間:30日
盲検化:二重盲検
必要症例数:250例
症例数:257例(トルバプタン群129例、プラセボ群128例)
追跡率:97.7%(追跡不能と同意撤回が計6例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(大塚製薬)

◇患者背景

(本文から引用)
EF30%と心機能は悪く、BNPも1400台と高く、普段のフロセミドの使用量も多め。腎機能も悪め。

◇結果

(本文から引用)
トルバプタンを内服すると尿はよく出る。でも、3日たつと差は薄まる。


たくさん尿が出ても、症状はサムスカを使わない場合と変わらない。いずれの時点でも有意差なし。

30日後の再入院+死亡、30日死亡率ともに差はなかった。

◇感想
EVEREST試験では、急性心不全に対するトルバプタンの使用は、10ヶ月後の死亡率も再入院も改善しなかったが、症状はトルバプタン群で早期に改善する症例が多かった。

このTACTICS-HF試験は、その症状をエンドポイントに検証した試験である。尿量はやはりトルバプタン群で多く、早期から体重も減っていたが、症状はフロセミド単独と変わりはなかった。つまり、水はよく出すが、症状改善効果はフロセミドと変わりがないということ。

重症心不全でサムスカを使って良くなるケースもあるが、そんなに多用する薬じゃない。フロセミドと同程度に安ければいくらでも使っていいと思うが、”値段は高いけど症状改善効果は安い薬と変わらず予後が良くなるわけでもない”というと、多くの症例には使う理由がない。

ST上昇型心筋梗塞 予後の性差

Infarct size, left ventricular function, and prognosis in women compared to men after primary percutaneous coronary intervention in ST-segment elevation myocardial infarction: results from an individual patient-level pooled analysis of 10 randomized trials.
Eur Heart J. 2017 Jun 1;38(21):1656-1663.

◇論文のPICOはなにか
P:primaryPCIが行われたSTEMI患者
E/C:男性と女性
O:全死亡と心不全入院

primary PCIが行われたSTEMI患者を対象とし、1ヶ月以内にMRIもしくはSPECT(テクネシウム)で梗塞サイズが評価された10のRCTを解析に組み入れた。すべての患者は6ヶ月以上フォローされており、死亡や心不全入院について評価されている。

◇患者背景

(本文から引用)
女性の方が、年齢が高い。糖尿病が多い。責任病変の部位や治療前のTIMI分類に差はないけど、最終造影がTIMI3の割合が若干少ない。発症から再還流までの時間が長い。


(本文から引用)
女性の方が、最終造影がTIMI3の割合が少なく、発症から再還流までの時間が長いので、硬塞サイズが大きくなりそうだけど、そうでもない。

◇結果
フォローアップ期間は352日(中央値)。


(本文から引用)
年齢、糖尿病などの併存疾患などで調整しても、女性のハザード比は約2倍。


(本文から引用)
女性では、心不全入院も死亡も増える。心筋梗塞の再発に差はない。

◇感想
女性だと、再還流までの時間が長くなる傾向があるが、硬塞サイズに性差はなかった。しかし、退院後1年間で、心不全入院や死亡は男性の2倍多い。女性の方がHFpEFが多いということだろう。

心筋梗塞の再発には性差はないので、死亡は心不全死が増えていると考えられる。もしかしたら不整脈も増えるのかもしれない。

心不全のない心筋梗塞 1年後の生存率とβ遮断薬

β-Blockers and Mortality After Acute Myocardial Infarction in Patients Without Heart Failure or Ventricular Dysfunction
J Am Coll Cardiol. 2017;69(22):2710-2720.

◇この論文のPECOは?
P:AMI(STEMIとNSTEMI)
E/C:β遮断薬内服の有無
O:1年後の死亡率

<デザイン、セッティング>
・イギリス
・2007年から2013年のデータ
・前向きコホート研究
・179810例
・院内死亡、すでにβblockerが処方されている、心不全、LVEF<30%、ループ利尿薬の使用、100歳以上は除外
・観察期間:1年
・プロペンシティスコアマッチ

<患者背景>


(本文から引用)
トロポニンのピーク値が低い。CAGをやってない症例も多い。冠動脈インターベンションが施行されたのは半分程度。

<結果>

(本文から引用)
STEMI、NSTEMIにかかわらず、β遮断薬の効果なし。

◇感想
AMIに対するβ遮断薬は、ガイドラインによって推奨度が異なる。AHA/ACCではすべてAMI患者に推奨されており、ESCでは心不全や左室収縮不全がない症例ではclassⅡaである。

心不全や左室収縮不全のない症例を対象にβ遮断薬の効果を検証したRCTはない。このデータは約18万人の前向きコホート研究なので、β遮断薬の効果を調べるにはパワーは十分と思われる。

患者背景についてだが、トロポニンのピークの中央値は低く、ほんとに軽いAMIが多い。この結果を、たとえばピークCKが2000ぐらいの心不全がないAMIにも適応できるのかはわからない。そういう患者でもβ遮断薬の効果がないと言っていいのかどうなのか。

少なくとも、β遮断薬が予後を悪化させているわけではないので、血圧や心拍数が許容できるなら処方していても悪くないし、血圧や心拍数が低いのにあえて入れる必要はないということだろう。