失神に占める肺塞栓症の割合

Prevalence of Pulmonary Embolism among Patients Hospitalized for Syncope
N Engl J Med 2016; 375:1524-1531

《要約》
背景
失神のため入院した患者のうち、肺塞栓症の有病率は明らかではなく、現在のガイドラインではこれらの患者に対する肺塞栓症の精査については、ほとんど注意が払われていない。

方法
イタリアの11施設で、初回の失神で入院した患者を対象に、肺塞栓症に代わる失神の原因の有無に関わらず、肺塞栓症のシステマチックな精査を行った。臨床的に検査前確率が低い(Wellsスコアによる)ことと、Dダイマーが陰性であることで除外し、他のすべての患者にCTによる肺動脈造影もしくは肺換気血流シンチを行った。

結果
560例(平均年齢76歳)が試験に組み入れられた。330/560例(58.9%)が、臨床的に低い検査前確率とDダイマー陰性によって肺高血圧症が除外された。残った230例のうち、97例(42.2%)が肺塞栓症と特定された。全集団のうち、肺塞栓症の有病率は17.3%(95%CI14.2−20.5)であった。主肺動脈または葉動脈の肺塞栓症の所見、両肺の25%以上の血流欠損の所見は、61例に認めた。肺塞栓症以外で失神が説明可能である355例のうち45例(12.7%)で、失神の原因が特定されなかった205例のうち52例で、肺塞栓症を認めた。

結論
失神の初回のエピソードがあり入院した患者のうち、約6人に1人で肺塞栓症が特定された。

◇この論文のPICOは?
O:肺塞栓症
P:初回の失神のため入院した患者

失神の定義:突然発症の一過性の意識消失で、1分以内に自然に意識が回復すること。また、癲癇、脳梗塞、頭部外傷などの明らかな原因による一過性の意識消失は除外。

入院の理由:転落による外傷、重篤な併存疾患、原因不明の失神、心原性失神の可能性が高い

除外基準:失神歴があること、抗凝固療法を行っていた患者、妊娠

◇デザイン、対象
・横断研究
・失神を主訴にERを受診したのは、2584例
・診断がついたものなどを除いた560例(肺塞栓症の有病率が10−15%、αlevel0.05として、必要症例数は550例)が対象

◇結果
低い検査前確率、Dダイマー陰性:330/560例

230例のうち、
CTによる確定診断:72/180例
肺換気血流シンチによる確定診断:24/49例
剖検による確定診断:1/1例(肺動脈主幹部)

失神患者全体では、17.3%(97/560例)が肺塞栓症だった。

CTで診断した肺塞栓の血栓の部位は、
肺動脈主幹部30例(41.7%)
肺葉動脈18例(25.0%)
区域動脈19例(26.4%)
亜区域動脈5例(6.9%)

肺換気血流シンチで診断した肺塞栓症で血流の欠損は
50%以上が4例(16.7%)
26−50%が8例(33.3%)
1−25%が12例(50.0%)

characteristics
血圧・心拍数・呼吸数などのバイタルは結構重要。足の所見(発赤・腫脹)も確認すべき。

◇感想
失神を主訴にER受診した患者2584例のうち、97例(3.8%)は肺塞栓症を起こしている。見つかった肺塞栓が、必ずしも失神の原因かどうかはわからない。この試験では、問診とDダイマーからルーチンでCTもしくは肺換気血流シンチを行っているので、他の原因で失神した人にたまたま肺塞栓が見つかったっていう症例も含まれる。

肺塞栓症を疑う際の重要な所見は、呼吸数(>20回/分)、心拍数(>100回/分)、収縮期血圧(<110mmHg)、DVTの臨床所見(下肢の発赤・腫脹)など。Dダイマーももちろん測定すること。

OPCAB(心拍動下冠動脈バイパス術)の長期生存率と再血行再建率

Long-Term Survival and Freedom From Reintervention After Off-Pump Coronary Artery Bypass GraftingA Propensity-Matched Study
Circulation. 2016;134:1209-1220

《要約》
背景
心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)の長期的なアウトカムは議論の的である。我々の施設では15年以上、OPCABと人工心肺を使用した冠動脈バイパス術(on-pump CABG)を行ってきた。我々の仮説は、OPCABとon-pump CABGに長期的なアウトカム(死亡と再血行再建)の差がないことである。

方法
2001年から2015年までにCABGの単独手術について、後ろ向きに検討した。プロペンシティスコアで調整後にITT解析を行った。OPCAB5882例、on-pump CABG7344例の合計13226例で、フォローアップ期間の中央値は6.2年であった。

結果
OPCAB群では、76/5882例(1.3%)でCPBへの切り替えがあった。1年、5年、10年生存率は両群で似通っていた(OPCAB vs CPB:96.7%、87.9%、72.1% vs 96.2%、87.4%、72.8%)。長期生存率(adjusted hazard ratio1.03、95%CI0.94−1.11)、生存率と再血行再建回避率pl0(HR0.98, 95%CI0.92-1.06)に有意差はなかった。OPCABではEuroSCOREsが高く(2.81vs2.73、P=0.01)、グラフト数が少なかったが(3.0±0.9vs3.3±0.9、P<0.001)、動脈グラフトは多かった(45.9%vs8.4%、P&;t;0.001)。OPCABは、術者がトレイニーであることが多く、心筋逸脱酵素の上昇が低く、在院日数が短く、心筋梗塞などの合併症が少なかった。

結論
我々の施設では、OPCABはon-pump CABGと長期成績は似通っていた。on-pump CABGへの切り替え率が低いことから、OPCABは安全であると言えるだろう。グラフト数は統計的には差があるが、臨床的には同等で、on-pump CABGと同等の生存率と再血行再建回避率であると明らかになった。


◇この論文のPICOは?
P:初回のCABG
I:OPCAB
C:on-pump CABG
O:生存率と再血行再建回避率

◇デザイン、対象、観察期間
・後ろ向きコホート研究
・2001年12月〜2015年10月
・プロペンシティスコアマッチ
・11078例(OPCAB5539例、on-pump CABG5539例)
・観察期間:6.2年(中央値)

characteristics1
characteristics2
OPCABの方が意外にEFが悪い人が多く、unstableな症例が多い。周術期のカテコラミンの使用率は高い。

◇結果
kaplan-meier1
生存率に有意差なし。

kaplan-meier2
生存率と再血行再建回避率の複合アウトカムにも有意差なし。

◇批判的吟味
・off-pumpとon-pumpを比較したものの中では長期のデータ。
・off-pumpの技術にはlearning curveがあるようで、off-pumpを始めた初期のデータは含んでいない。
・後ろ向きなので結論めいたことは言えない。

◇感想
off-pumpとon-pumpのどちらがよいかという、未だ結論が出ていない話題。約1万例の6.8年の後ろ向きのデータでは、off-pumpとon-pumpに生存率・再血行再建回避率に差はないという結果。

CORONARY試験など他のRCTとか、Cochrane Systematic Reviewでも、off-pumpとon-pumpの生存率に差がないみたいなので、たぶんどっちも変わらないってことでいいのでしょう。心拡大が著明とか、心膜が癒着しているような症例はon-pumpで、ということでしょうか。

off-pump CABGは、on-pump CABGと同等の長期成績 CORONARY試験

Five-Year Outcomes after Off-Pump or On-Pump Coronary-Artery Bypass Grafting
N Engl J Med. 2016 Oct 23. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
心拍動下バイパス手術(off-pump)と人工心肺使用心停止下バイパス術(on-pump)について、術後30日、1年での複合アウトカム(死亡、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全)に有意な差がないことを、以前報告した。そして、術後5年の結果を報告する。

方法
冠動脈疾患(CAD)を有する患者4752例を、off-pumpまたはon-pumpCABGに無作為に割り付けた。死亡、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、再血行再建(CABGもしくはPCI)の複合エンドポイントである。フォローアップ期間の中央値は4.8年である。

結果
off-pump群、on-pump群で複合エンドポイントに有意差はなかった(23.1%vs23.6%、off-pumpのHR0.98、95%CI0.87−1.10)。再血行再建はoff-pump群で2.8%、on-pump群で2.3%と有意差はなく(HR1.21、95%CI0.85−1.73)、それを含め、複合エンドポイントのそれぞれについても有意差はなかった。副次評価項目は患者一人あたりの医療費で、これもoff-pump群、on-pump群で有意差はなかった($15107vs$14992、群間差$115、95%CI-$697to$927)。QOLについても群間差はなかった。

結論
術後5年での、死亡、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、再血行再建の複合エンドポイントはoff-pump、on-pumpで有意差はなかった。

◇この論文のPICOはなにか
P:CABGが予定されているCAD患者
I:心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump群)
C:人工心肺使用心停止下冠動脈バイパス術(on-pump群)
O:死亡、非致死性脳梗塞、非致死性心筋梗塞、腎不全、再血行再建の複合エンドポイント

inclusion criteria:以下のうち1つ以上のリスクがあること(70歳以上、末梢血管疾患、脳血管疾患、70%以上の頸動脈狭窄、腎機能障害)、60−69歳であれば以下のうち1つ以上・55−59歳であれば2つ以上のリスクがあること(糖尿病、ACSにより緊急血行再建を要する状態、EF<35%、1年以内に喫煙歴があること)

exclusion criteria:記載なし

◇baselineは同等か
characteristics
(NEJM2016;366:1489-1487より抜粋)
 病変数にのみ群間差あり。

◇結果
地域:19ヶ国79施設
登録期間:2006年11月〜2011年10月
観察期間:4.8年間(中央値)
無作為化: 24-hour automated voice-activated telephone randomization serviceを用いて無作為化を行っている。
盲検化:試験の性質上、open-label。
必要症例数:4700例(30日後の死亡、非致死性脳梗塞、非致死性心筋梗塞、腎不全を複合エンドポイントとして、28%の相対リスク低下、power80%、また5年後の上記の複合エンドポイントに再血行再建を加えたイベントに対し相対リスク低下20%、power90%として算出)
症例数:4752例(off-pump群2375例、on-pump群2377例)
追跡率:98.8%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

off-pump群の7.9%(184例)でon-pumpに、on-pump群の6.4%(150例)でoff-pumpにクロスオーバーあり。

result
kplan-meier
second coprimary outcomeは、5年間の死亡、非致死性脳梗塞、非致死性心筋梗塞、血液透析を要する腎不全、再血行再建の複合エンドポイント。全く差がない結果。

◇批判的吟味
・primary outcomeに有意差はないが、必要症例数は満たしている。
・割り付け通りにCABGが行われたのは両群ともに90%以上で追跡率も良い。
・off-pumpだとグラフト数が少なかったり、途中でon-pumpに切り替えられたりということがあるが、それでも長期的なアウトカムに差はなかった。
・off-pumpでグラフト開存率が低いなら、心筋梗塞や死亡などへの影響は、これから出てくるのではないか。

◇感想
off-pumpとon-pumpに長期的なアウトカムに差があるかを検証した試験で、死亡、非致死性脳梗塞、非致死性心筋梗塞、血液透析を要する腎不全、再血行再建の複合エンドポイントは、両群に有意差はなかった。

off-pumpとon-pumpのどちらが優れているかについては議論がある様。短期的には、off-pumpでのaortic non-touch techniqueにより脳梗塞が減ることや、人工心肺使用による臓器障害を抑えられるが、長期的にはグラフト開存率が低いことによる心筋梗塞・再血行再建、ひいては死亡が増えるという懸念がある。日本では約60%がoff-pumpで行われるということで、グラフト開存率は海外より良く長期的なアウトカムも期待できるのかもしれない。

抗生剤の使用は、次に同一のベットを使用する患者のクロストリジウム・ディフィシル感染症のリスクを増やす

Receipt of Antibiotics in Hospitalized Patients and Risk for Clostridium difficile Infection in Subsequent Patients Who Occupy the Same Bed
JAMA Intern Med. Published online October 10, 2016.

《要約》
目的
患者が抗生剤の投与を受けた場合、同一ベットを次に使用した患者はクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)のリスクが増加するか検証すること。

デザイン・セッティング・参加者
2010年から2015年に入院した成人患者を対象とした後ろ向きコホート研究である。CDIの再発、入院48時間以内に発症したCDI、不十分なフォローアップ期間、同一ベットの前の患者が24時間以内に転出した場合は除外した。

アウトカム
主要は暴露は、同一ベットを前に使用した患者に対する抗生剤の投与で、主要なアウトカムは同一ベットを次に使用した患者のCDIの発生率である。CDIの定義は、クロストリジウム・ディフィシル毒素B遺伝子に対する便ポリメラーゼ連鎖反応陽性である。

結果
同一ベットの連続使用患者は100615ペアで、そのうち576ペアでCDIを発症した。同一ベットを前に使用した患者に対する抗生剤の投与は、次に使用した患者のCDI発症と有意に関連があった(log-rank P<0.01)。その関連は、同一ベットを次に使用した患者に対する抗生剤投与を調整した後(adjustedHR1.22, 95%CI1.02-1.45)や、同一ベットを前に使用しCDI発症した患者1497例を除いた後(adjustedHR1.20, 95%CI1.01-1.43)も認められた。同一ベットを前に使用した患者と、次に使用した患者がCDIを発症することの関連は抗生剤の使用のみであった。

結論
抗生剤の投与は、同一ベットを次に使用した患者のCDIリスクの上昇と関連がある。抗生剤は、それを直接投与されていない患者に対しても影響があるかもしれない。

◇この論文のPICOは?
P:48時間以上入院した患者
E:同一ベットを前に使用した患者に対する抗生剤投与
O:CDIの発症

◇デザイン、対象、観察期間
・後ろ向きコホート研究
・ニューヨークの4つの施設
・COX比例ハザードモデル
・100615例
・観察期間:2−14日

ベットを後に使用した患者のcharacteristics
characteristics1
高齢、アルブミン低値、入院日数の長期化、抗生剤の使用、血液透析、制酸薬の使用、免疫抑制状態が、その患者のCDIのリスクになる。

ベットを前に使用した患者のcharacteristics
characteristics2

◇結果
result
同一ベットの前の患者に対する抗生剤の投与が、後に使用した患者のCDIリスクを有意に上昇させている。

◇感想
抗生剤の投与がその患者のクロストリジウム・ディフィシルを増殖させ、環境も汚染してしまう。それにより、次にそのベットを使用した患者のCDIのリスクを増大させてしまうことの様です。つまり、抗生剤を適切に使用しなさいということでしょうか。

ω3脂肪酸による心筋梗塞後のリモデリング抑制 OMEGA-REMODEL試験

Effect of Omega-3 Acid Ethyl Esters on Left Ventricular Remodeling After Acute Myocardial InfarctionThe OMEGA-REMODEL Randomized Clinical Trial
Circulation. 2016;134:378-391

《要約》
背景
魚油のω−3脂肪酸は心血管への有益性が報告されているが、ガイドラインに準じた治療を行っている陳旧性心筋梗塞での心筋リモデリングの効果については明らかではない。

方法
急性心筋梗塞患者患者を、高容量ω−3脂肪酸またはプラセボを内服する2群に無作為に割り付けた。高容量ω−3脂肪酸群180例、プラセボ群178例で、6ヶ月間内服を継続した多施設、二重盲検、プラセボ対象試験である。心臓の構造と心筋の性状を評価するため、baselineと治療終了後に心臓MRI検査を行った。主要評価項目は左室収縮末期容積指数(LVESVI)である。副次評価項目は非梗塞部位の線維化と左室駆出率(LVEF)と梗塞サイズである。

結果
ω−3脂肪酸によって、LVESVI(−5.8%、P=0.017)、非梗塞部位の線維化(−5.6%、P=0.026)は有意に低下した。per-protcol解析では、赤血球ω−3脂肪酸指数が高い群では、低い群よりLVESVIが13%低下した。加えて、ω−3脂肪酸群では、全身性及び血管性炎症バイオマーカーと心筋線維化が減少した。

結論
急性心筋梗塞患者がガイドラインに準じた照準的治療に加え、高容量ω−3脂肪酸を内服することで、LVESVI、非梗塞部位の線維化、炎症バイオマーカーが減少した。

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心筋梗塞を発症した患者
I:EPA465mg+DHA375mgのカプセルを1日1回内服(ω−3脂肪酸群)
C:コーン油のカプセルを1日1回内服(プラセボ群)
O:6ヶ月後のLVESVI

inclusion criteria:21歳以上、症状が持続しトロポニンT>0.5ng/mlで造影で有意な冠動脈狭窄があること

exclusion criteria:心臓手術による二次的な心筋梗塞、生命予後1年未満、ω−3脂肪酸の適応である患者、妊娠、MRIの禁忌

◇baselineは同等か
characteristics1
characteristics2
この中だと、ω−3脂肪酸群でCABGの既往が有意に多い。βblockerとかACE阻害薬/ARBも同等。

characteristics-cmr
baselineのLVESVI・梗塞サイズに有意差なし。

◇結果
地域:米国、ボストン
登録期間:2008年1月〜2012年8月
観察期間:6ヶ月
無作為化:年齢(>70歳)と前壁梗塞でブロック化し、コンピュータによる無作為化を行った。
盲検化:二重盲検。ハードなエンドポイントなのでアウトカム評価者の盲検化の有無による影響はないと考えてよい。
必要症例数:記載なし
症例数:358例(ω−3脂肪酸群180例、プラセボ群178例)
追跡率:ω−3脂肪酸群73.9%、プラセボ群71.9%
解析:ITT解析
スポンサー:ω−3脂肪酸、プラセボはいずれも企業から提供(Glaxo SmithKline)

result

◇批判的吟味
・追跡率が低い。
・魚油から作ったEPA製剤は匂いでわかるので、盲検化が難しい。
・サロゲートエンドポイントの改善

◇感想
GISSI-Prevenzione試験ではOMI患者にω−3脂肪酸を投与することにより突然死が有意に減少した(虚血イベントは減らなかった)。ただ、90年代の試験であり現在のガイドラインに準じた治療とは異なる部分があり(βblockerやACE阻害薬/ARBの内服率が低い)、その結果を鵜呑みにすることには議論があった。そこで、2010年にOMEGA試験が行われ、現在のガイドに準じた治療を行っている患者群(βblockerやACE阻害薬/ARBの内服率が高い)を対象に、心臓突然死をエンドポイントにしてω−3脂肪酸とプラセボで無作為化試験を行っているが、心臓突然死は減らずGISSI-Prevenzione試験の結果は否定された形となった。

2007年に行われたJELIS試験は、心筋梗塞の一次予防・二次予防患者を対象に、ω−3脂肪酸の効果を検証したRCTであるが、一次予防群ではプラセボと変わらず、二次予防群では有意差がついたものの、その中身をみてみると不安定狭心症のみを減らしたという結果であった。これはPROBE試験であり、その解釈は慎重にならざるを得ない。

そして、2010年にOMI二次予防目的でω−3脂肪酸の効果を検証したALPHA OMEGA試験が行われ、ω−3脂肪酸の使用量が多くなかったことが影響しているかもしれないが、OMI患者の心血管イベントは抑えられなかった(こちらはJELIS試験と違い心筋梗塞・脳梗塞などのハードエンドポイント)。心筋梗塞や死亡を減らさないという点では、ALPHA OMEGA試験もJELIS試験も一致してるのかもしれない。

という流れの中で、EPA+DHA製剤を急性心筋梗塞を発症したばかりの人に内服させると、6ヶ月後のLVESVIが改善するというOMEGA-REMODEL試験の結果。追跡率が低く無作為化が維持できていない可能性があるので、ちょっと微妙かなと思ってしまう。ただ、リモデリングが抑えられれば、心不全入院・心不全死も抑えられる可能性があるし、GISSI-HF試験でも心不全患者を対象に、少し良い結果だったので、今後臨床的なエンドポイントで検証してもらいたい。

重症患者のストレス潰瘍予防に、あえてPPIを投与しなくてもよい POP−UP試験

Pantoprazole or Placebo for Stress Ulcer Prophylaxis (POP-UP): Randomized Double-Blind Exploratory Study.
Crit Care Med. 2016 Oct;44(10):1842-50.

《要約》
目的
パントプラゾールは重症患者の消化管潰瘍予防によく使用される。しかしながら、プラセボと比較はなされておらず、パントプラゾールは有害である可能性がある。

デザイン
二重盲検無作為化試験

セッティング
外科内科混合のICU

患者
人工呼吸器管理を要し、経腸栄養を行っている重症患者

介入
プラセボもしくはパントプラゾール静注

結果
主要評価項目は、、臨床的に有意な消化管出血、感染性の人工呼吸器関連合併症もしくは肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染症である。臨床的に有意な消化管出血は0例であった。感染性の人工呼吸器合併症もしくは肺炎は3例(プラセボ群1例、PPI群2例)であった。クロストリジウム・ディフィシル感染症は1例(プラセボ群0例、PPI群1例)であった。パントプラゾールは明らかな出血とも関連がなく(プラセボ群6例、PPI群3例、P=0.50)、血中ヘモグリオビン濃度とも関連がなかった(P=0.66)。

結論
人工呼吸器管理を要し、経腸栄養を行っている重症患者において、消化管出血予防のためのパントプラゾールの投与は、有用でも有害でもなかった。その有効性、有害性については、さらなる検証が必要である。


◇この論文のPICOはなにか
P:人工呼吸器管理を要し、経腸栄養を行っている重症患者
I:パントプラゾール40mgの静注(PPI群)
C:生食の静注(プラセボ群)
O:臨床的に有意な消化管出血、感染性の人工呼吸器関連合併症もしくは肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染症の複合エンドポイント

inclusion criteria:24時間以上人工呼吸器を要し、48時間以内に経腸栄養を開始する患者
exclusion criteria:入院前の制酸薬の使用、消化管出血での入院、胃潰瘍の既往、プレドニゾロン100mg/日以上の使用、上部消化管の手術・心臓手術のための入院、妊娠、エホバの証人の信者、割り付けられた薬剤が36時間以内に投与できない患者、緩和ケア、ICU再入室

◇baselineは同等か
characteristics
processes
同等。50歳ちょっとと比較的若くて、2/3が男性。カテコラミンは半分で使用されている。クロストリジウム・ディフィシル感染症の既往はない。薬剤が投与されたのは3回。経腸栄養を受けた割合・開始までの時間・投与量なども差がない。抗生剤についても差はない。

◇結果
地域:南オーストラリア
登録期間:2014年1月28日〜2015年1月27日
観察期間:人工呼吸器離脱もしくは最大で14日
無作為化:方法についての記載なし
盲検化:患者、治療介入者、アウトカム評価者は盲検化されている
必要症例数:記載なし(この病院では24時間以上人工呼吸器管理を要する患者が年間600例いるので、登録期間は1年間で十分だろうと書かれてあるが、具体的な必要症例数については記載なし)
症例数:214例(PPI群106例、プラセボ群108例)
追跡率:100%
解析:ITT解析とPP解析
スポンサー:企業の関与はなさそう

◯臨床的に有意な消化管出血
プラセボ群0/108例、PPI群0/106例

◯感染性の人工呼吸器合併症もしくは肺炎
プラセボ群1/108例(0.9%、95%CI0.02−5.1)、PPI群2/106例(1,9%、95%CI0.2−5.1)

◯クロストリジウム・ディフィシル感染症
プラセボ群0/108例(97.5%CIの上限3.4)、PPI群1/106例(0.9%、97.5%CI0.02−5.1)

◇批判的吟味
・Nが少なく、イベント発生数が少ない。
・必要症例数についての記載がなく必要症例数を満たしているかどうかわからず、本当に差がないのかわからない。

◇感想
人工呼吸器を要するような重症な患者に、ストレス潰瘍の予防目的にPPIを投与することで、有害事象が抑えられるか検証したもの。出血や呼吸器感染・CDIをエンドポイントにして、その有益性・有害性を検証したものだが、N・イベント数が少なく、これだけでははっきりとした結論はでない。ただ、重症患者だからといって、ルーチンでPPIを投与する必要はないだろう。

近位深部静脈血栓症に対する弾性ストッキングは24ヶ月続けるのがベター OCTAVIA試験

One versus two years of elastic compression stockings for prevention of post-thrombotic syndrome (OCTAVIA study): randomised controlled trial
BMJ 2016;353:i2691

《要約》
目的
近位深部静脈血栓症を発症後、弾性ストッキングを12ヶ月着用することは24ヶ月着用することに対し非劣性であるか検証する。

デザイン
多施設、盲検化、非劣性、無作為化比較対照試験

セッティング
オランダの大学病院を含む8つの教育研究病院の外来

参加者
エコーで診断がついた症候性の深部静脈血栓症(DVT)を発症後、12ヶ月の弾性ストッキング着用に同意した患者

介入
DVT発症後、弾性ストッキングを12ヶ月で中止するか否か

アウトカム
主要評価項目は血栓後症候群(standardized Villalta scaleで評価)で、事前に定めた非劣性マージンは10%である。副次評価項目はQOL(VEINES−QOL/Sym)である。

結果
DVTの診断から1年が経ち、弾性ストッキングを着用していた血栓後症候群のない患者518例を、弾性ストッキングをもう1年継続するか、あるいは中止するかの2群に無作為化した。弾性ストッキング中止群では、51/256例(19.9%)で血栓後症候群を発症した。弾性ストッキング継続群では85%が弾性ストッキングを週に6−7日着用しており、34/262例(13.0%)で血栓後症候群を発症した。absolute differenceは6.9%(95%CIの上限:12.3%)。95%信頼区間の上限が事前に定めた非劣性マージン10%を超えたため、非劣性は証明できなかった。弾性ストッキングの静脈後血栓症に対するNNTは14(95%CIの下限は8)であった。QOLに群間差はなかった。

結論
近位DVTで1年間弾性ストキングの着用を継続した患者では、弾性ストッキングの着用を1年で中止することは、2年間の着用継続に対し非劣性ではなかった。

◇この論文のPICOはなにか
P:症候性で、エコーにより近位DVTと診断され、発症1年未満の患者
I:12ヶ月で弾性ストッキングの着用を中止する(弾性ストッキング中止群)
C:24ヶ月まで弾性ストッキングを着床する(弾性ストッキング継続群)
O:

inclusion criteria:膝窩静脈より近位のDVT、ガイドラインに準じて抗凝固療法を行っていること、弾性ストッキングclassⅢ(34−46mmHg)を着用していること、週に6日以上弾性ストッキングを着用していること
exclusion criteria:DVTの同側での再発、膝窩静脈より遠位にのみDVTを認めること、試験登録前でDVT発症後1年以内に血栓後症候群を発症している患者、Villalta score5点以上、初回のDVT発症前に弾性ストッキングを使用していること、動脈機能不全やアレルギーなどの弾性ストッキング禁忌、生命予後6ヶ月以内

◇baselineは同等か
characteristics
同等。約60%が外傷・手術・妊娠など一過性の原因。抗凝固療法は、DVT発症後10日ぐらいは低分子ヘパリンで、そのあとワルファリンで6ヶ月ほど。無作為化の際に抗凝固療法を行っていたのは約15%ほど。

◇結果
地域:オランダ
登録期間:2009年2月〜2013年9月
無作為化:online randomisation module provided by the Dutch Julius Centre for Health Sciences and Primary Care in Utrecht,th Netherlands,which ensured concealed allocation.
盲検化:study personnelは盲検化されているということなので、おそらくアウトカム評価者と解析者は盲検化されているはず。
必要症例数:516例(弾性ストッキング継続群で血栓後症候群で2−3%に血栓後症候群を発症、power80%、αlevel0.05、非劣性マージン10%、死亡やDVTの再発があることも加味し算出)
症例数:522例(弾性ストッキング中止群260例、弾性ストッキング継続群262例)
追跡率:489/522例(93.7%)
解析:mITT(弾性ストッキング中止群のうち4例がineligibleということで解析から外されている)
スポンサー:企業の関与あり(sanofi)

弾性ストッキング継続群ではアドヒアランスを把握できたのは218/262例(83.2%)であった。
result

◇感想
外傷、手術、妊娠・出産など一過性の原因については弾性ストッキングを使用しなくてもいいのではないかと思うが、それでも弾性ストッキングを12ヶ月で中止すると血栓後症候群が増えてしまっているので、弾性ストッキングを着用するなら少なくとも24ヶ月は続けておいたほうがよいということだろう。

高容量のカフェインを摂取しても、期外収縮は増えない

Short-term Effects of High-Dose Caffeine on Cardiac Arrhythmias in Patients With Heart FailureA Randomized Clinical Trial
JAMA Intern Med. Published online October 17, 2016.

《要約》
重要性
カフェインの催不整脈性については議論がある。心室性不整脈のリスクが高い左室収縮不全の心不全患者に対し、高容量のカフェインの効果を評価した研究はほとんどない。

目的
高容量カフェインとプラセボそれぞれの、安静時および運動負荷時の上室性・心室性不整脈の頻度を比較すること。

デザイン、セッティング、参加者
二重盲検、クロスオーバー、無作為化試験を3次医療の大学病院で行った。中等度から高度の収縮不全(EF<45%)で、NYHAⅠ-Ⅲの慢性心不全患者を組み入れた。

介入
デカフェのコーヒー100mlにカフェイン100mgまたはラクトースを加え、1杯1時間で、計5杯飲む。1週間のウォッシュアウト期間を設け、そのプロトコールを繰り返す。

アウトカム
連続心電図モニタリングで記録された、心室性期外収縮と上室性期外収縮の回数と割合。

結果
中等度から高度の収縮不全がありICDが植え込まれている患者51例を登録した(平均年齢60.6±10.9歳、男性37例)。心室性不整脈および上室性不整脈の回数は、両群間で有意差はなかった(心室性不整脈:185vs239beats P=0.47、上室性不整脈:6vs6beats P=0.44)。PVC2連、二段脈、非持続性心室頻拍(NSVT)も同様であった。運動負荷検査では、心室および上室性期外収縮、運動時間、推定最大酸素消費量、心拍数に対するカフェインの影響はなかった。血中カフェイン濃度が高い患者、低い患者、またはプラセボ群で心室性期外収縮に差はなかった(91vs223vs207beats)。

結論
高容量カフェインの急速摂取は、心室性不整脈のリスクが高い収縮不全の患者の不整脈を増加させない。

◇この論文のPICOはなにか
P:EF<45%の収縮不全を有するNYHAⅠ-Ⅲの心不全
I:カフェイン500mg/日の摂取(カフェイン群)
C:ラクトースの摂取(プラセボ群)
O:安静時および運動負荷時の心室性および上室性期外収縮

inclusion criteria:3ヶ月以内に施行した心エコーでEF<45%であること、安全のため試験開始初期(最初の25例まで)ではICDが植え込まれていることを必須とした、ICDが正常に機能していること
exclusion criteria:カフェインやラクトースを摂取できないこと、身体的または機能的に運動の制限がある、β遮断薬とアミオダロン以外の抗不整脈薬の使用、shockやATPを必要とする不整脈のエピソードが2ヶ月以内にあること、2ヶ月以内の心不全に関連した入院

手順:まず、7日間のカフェインのウォッシュアウト期間を設ける。ウォッシュアウト期間終了後、リサーチクリニックを訪れる。AM8時にリサーチクリニックに来院し、AM9時より連続心電図モニタリングと割り付けられたデカフェの摂取を開始する。PM1時に最後のデカフェの摂取を開始し、PM2時からトレッドミル検査を開始する。検査終了後に再度7日間のカフェインのウォッシュアウト期間を設け、クロスオーバーさせ、同様の介入を行う。

◇baselineは同等か
characteristics
クロスオーバー試験なので群間差はないが、カフェイン入りのデカフェを飲用している際に、2例が嘔気と頭痛があり、飲用を中止している。

◇結果
地域:ブラジル
登録期間:2013年3月5日〜2015年10月2日
無作為化:コンピュータプログラムによる無作為化を行っている。
盲検化:患者、治療介入者、アウトカム評価者、解析者はすべて盲検化されている。
必要症例数:47例(カフェイン摂取により心室性期外収縮が100beat増加する、power80%、αlevel0.05と仮定)
症例数:51例
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

result

◇批判的吟味
・primary endpointに有意差はないが、必要症例数は満たしているため、カフェインで期外収縮は増えないと考えていいだろう。
・高容量のカフェインを急速に摂取した場合の影響をみたものであって、慢性的に摂取することの影響はわからない。
・臨床的なアウトカムがどうなるかはわからない(PVCが増えなくても臨床的なアウトカムは悪化するかもしれない)。

◇感想
動物実験でカフェインによる不整脈の増加が報告され、80−90年代に人でも心室性期外収縮が増えるかリサーチされたが、関連は見出せていない。Myersの報告では、OMIで300mgのカフェイン投与により心室性期外収縮が26%増えたと報告されたが、メタアナリシスでは、カフェインの摂取と心室性期外収縮の関連はなかった。

高容量のカフェインを急速に摂取しても、心室性および上室性期外収縮は増えないという結果で、過去のメタアナリシスと矛盾しない。カフェインの血圧上昇作用や利尿作用には注意は必要であるが、患者さんには特別カフェインの摂取は控えてもらってないし、この試験の結果からも、あえて控えてもらわなくてもよさそう。

院内心停止患者には、低体温療法は有害かもしれない

Association Between Therapeutic Hypothermia and Survival After In-Hospital Cardiac Arrest
JAMA. 2016;316(13):1375-1382.

《要約》
重要性
低体温療法は、院外または院内心停止の患者に対して行われる。しかしながら、院内心停止に対する低体温療法の有効性を検証した無作為化試験はなく、有効性を比較したデータも限られている。

目的
院内心停止後の低体温療法と生存率の関連を評価すること。

デザイン、セッティング、患者
Get With the Guidelines-Resuscitation registryで、2002年3月1日から2014年12月31日までの間、米国の355施設で蘇生に成功した26183例を組み入れた。フォローアップは2015年2月4日までとした。

暴露
低体温療法

アウトカム
主要評価項目は院内生存率である。副次評価項目は神経学的に良好な転帰(Cerebral Performance Category score1または2)とした。プロペンシティスコアを用いて比較解析を行い、全患者、nonshockable(心静止、PEA), shockable(VT、VF)についてそれぞれ検討した。

結果
1568/26183例(6.0%)で低体温療法が施行された。そのうち1524例(平均年齢61.6±16.2歳、男性58.5%)が、低体温療法を施行していない患者(平均年齢62.2±17.5歳、男性57.1%)とマッチした。調整後、低体温療法は院内死亡率の低下と関連しており(27.4% vs 29.2%, RR0.88[95%CI0.80-0.97], risk difference-3.6%[95%CI-6.3%to-0.9%])、nonshockable(22.2% vs 24.5%, RR0.87[95%CI0.76-0.99], risk difference-3.2%[95%CI-6.2%to-0.3%])、shockable(41.3% vs 44.1%, RR0.90[95%CI0.77-1.05], risk difference-4.6%[95%CI-10.9%to1.7%])でも同様の傾向であった。低体温療法は神経学的に良好な転帰の減少とも関連があった(17.0% vs 20.5%, RR0.79[95%CI0.69-0.90], risk difference-4.4%[95%CI-6.8%to-2.0%])。

結論
院内心停止患者において、通常の治療と比べ低体温療法は、退院時生存率や神経学的に良好な転帰の減少と関連があった。無作為化試験により、院内心停止に対する低体温療法の有効性を評価する必要がある。

◇この論文のPICOは?
P:院内心停止
E:低体温療法を行う(低体温療法群)
C:低体温療法を行わない(非低体温療法群)
O:退院時生存率

◇デザイン、対象
・後ろ向きコホート
・プロペンシティスコアマッチ
・5238例(低体温療法群1524例と、プロペンシティスコアがマッチした非低体温療法群3714例)

characteristics
characteristics
ICUがメインで、循環器疾患が多い。

◇結果
result

◇批判的吟味
・予後が悪そうだから低体温療法を行うという、indication biasの可能性
・24時間以内に死亡した患者は感度解析から除外されているため、24時間以内に死亡することが予想される患者の割合が低体温療法群で少なかった可能性
・自己心拍再開時に挿管されていると意識レベルの評価ができないためで、昏睡の患者の割合が両群で異なっていた可能性
などが、低体温療法群の予後に影響を与える交絡因子として考察されている。

◇感想
今まで院内心停止への低体温療法の有効性を検証したRCTはない。いくつかの観察研究があり、低体温療法の有無で死亡率に差がないという結果になっているが、パワー不足である(サンプルサイズが大きいものでも、低体温療法200例程度)。低体温療法により死亡率が改善したというデータもあるが、プロペンシティスコアが不適切に導き出されていた。

このデータは、今までで最も大きなサンプルサイズのデータであるが、低体温療法は生存率と神経学的予後を悪化させるという結果であった。後ろ向きのデータなので、低体温療法と生存率・神経学的予後の因果関係は言えないため、今後RCTで検証してもらいたい。

葉酸は高血圧患者のCKDの進行を抑える

Efficacy of Folic Acid Therapy on the Progression of Chronic Kidney Disease: The Renal Substudy of the China Stroke Primary Prevention Trial.
JAMA Intern Med. 2016 Oct 1;176(10):1443-1450.

《要約》
重要性
腎アウトカムに対する葉酸療法の有効性は研究されていない。

目的
高血圧を持つ成人の中国人において、正常もしくは中等度の腎臓病(CKD)に対し、エナラプリルと葉酸はエナラプリル単独と比較し、腎機能障害の進行を遅らせるかどうか調べた。

デザイン、セッティング、患者
China Stroke Primary Prevention Trial(CSPPT)のサブスタディで、15104例のうちeGFR30ml/min/1.73m2以上のCKD患者1671例を組み入れた。中国江蘇省の20施設で行った。

介入
エナラプリル10mg+葉酸0.8mgの合剤を内服する群と、エナラプリル10mg単剤を内服する群に無作為に割り付けた。

アウトカム
主要評価項目はCKDの進行である。CKDの進行の定義は、ベースラインのeGFRが60ml/min/1.73m2以上の場合にはeGFRが30%以上の低下しeGFRが60を下回ること、ベースラインのeGFRが60ml/min/1.73m2以上の場合にはeGFRが50%以上低下すること、もしくは末期腎不全とした。副次評価項目は、主要評価項目に加え、全死亡、急激な腎機能障害の進行、eGFRの減少率である。

結果
CSPPT全体では、成人の中国人15104例で、平均年齢60歳で、フォローアップ期間の中央値は4.4年である。主要評価項目はエネラプリル単独群で164例、葉酸併用群で132例であった。エナラプリル単独群と比較し、葉酸併用群でオッズ比が21%(95%CI0.62−1.00)減少した。CKDを有する症例に限ると、葉酸併用療法は、主要評価項目(OR0.44、95%CI0.26−0.75)、急激な腎機能の進行(OR0.67、95%CI0.47−0.96)、複合イベント(OR0.62、95%CI0.43−0.90)を有意に低下させた。CKDではない患者群では、主要評価項目に有意差はなかった。

結論
軽度〜中等度のCKD患者において、エナラプリルと葉酸の併用療法はエナラプリル単独療法と比較し、CKDの進行を有意に遅らせた。

◇この論文のPICOはなにか
P:高血圧患者
I:エナラプリル10mg+葉酸0.8mgの合剤の内服(葉酸併用群)
C:エナラプリル10mgの内服(エナラプリル単独群)
O:CKDの進行(ベースラインのeGFRが60ml/min/1.73m2以上の場合にはeGFRが30%以上の低下しeGFRが60を下回ること、ベースラインのeGFRが60ml/min/1.73m2以上の場合にはeGFRが50%以上低下すること、もしくは末期腎不全)

inclusion criteria:記載なし
exclusion criteria:eGFR30ml/min/1.73m2未満

◇baselineは同等か
同等。血中の葉酸のbaselineは、葉酸併用群で7.6ng/mlとエナラプリル単独群で7.7ng/mlと同等。
characteristics

◇結果
地域:中国
登録期間:2008年3月〜2013年8月
観察期間:4.5年(中央値)
無作為化:記載なし
盲検化:記載なし
必要症例数:記載なし
症例数:15104例(エナラプリル単独群7559例、葉酸併用群7545例)
追跡率:12917/15104例(85.5%)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

result
CKDの進行を21%減少させているが、絶対リスクとしては約0.4%で、NNT200以上。

サブグループ解析では、non-CKDだと有意差なし。CKDだとエナラプリル単独群6.8%、葉酸併用群3.3%で有意にCKDの進行が抑えられている。調整後オッズ比0.45(95%CI:0.27−0.76)で、4.5年でNNTは28ぐらい。

◇批判的吟味
・Nがすごい。
・脱落が少し多い。
・全体では4.5年でNNT200以上だが、CKDに限るとNNT28。
・ハードエンドポイントの有意な低下

◇感想
高血圧患者に対し、ACE阻害薬と葉酸を投与することでCKDの進行が抑えられるという結果。ただし、4.5年でNNT200以上なので、いくら安い薬でもコスパは微妙かもしれない。サブグループ解析ではbaselineでCKDがあるグループでは調整後オッズ比0.45(95%CI:0.27−0.76)で、4.5年でNNTは28ぐらいなので、CKDがある高血圧患者に処方するのはありだと思う。CKDがある高血圧患者を対象にして、再検証が必要。

この試験だと葉酸0.8mgとなっているが、フォリアミン錠には葉酸は5mg含有されている。粉末(100mg/g)もあるが、0.8mgを処方するは現実的ではない。週1回の内服にすると1日あたり0.7mgということになるが、それでも同様の効果があるかはわからない。