化膿性汗腺炎は、心血管イベントリスクが少し高い

Risk of Major Adverse Cardiovascular Events and All-Cause Mortality in Patients With Hidradenitis Suppurativa.
JAMA Dermatol. 2016 Feb 17. [Epub ahead of print]

《要約》
重要性
化膿性汗腺炎は、ありふれた炎症性皮膚疾患である。この疾患と心血管リスク因子との関連があるが、心血管疾患のリスクは明らかなではない。

目標
化膿性汗腺炎の心血管疾患リスクを明らかにすること。

デザイン・セッティング・参加者
1997年1月1日から2011年12月31日までの、全国的なレジストリを使用した人口ベースのコホート研究である。化膿性汗腺炎と診断された5964例、それと年齢・性別・暦などをマッチさせた対照29404例の計35368例のデンマーク人である。

主要評価項目
アウトカムは、心筋梗塞、脳梗塞、心血管死、重大な心血管イベント(MACE)、全死亡である。発生率比(IRR)はポアソン回帰分析で求めた。

結果
化膿性汗腺炎5964例で、37.7歳(SD:11.7)、女性4346例(72.9%)であった。フォローアップ期間中に、心筋梗塞62例(42749.0人年)、虚血性脳梗塞74例(42647.8人年)、心血管死63例(42941.7人年)、MACE169例(42463.5人年)、全死亡231例(42941.7人年)を認めた。年齢、性別、社会経済的要因、喫煙、併存疾患、薬物治療で調整した後のIRR(95%CI)は、心筋梗塞1.57(1.14−2.17)、虚血性脳梗塞1.33(1.01−1.76)、心血管死1.95(1.42−2.67)、MACE1.53(1.27−1.86)、全死亡1.35(1.15−1.59)であった。重症な乾癬を対照とした場合、adjusted IRRは、心筋梗塞1.00(0.74−1.35)、虚血性脳梗塞0.93(0.71−1.22)、心血管死1.58(1.17−2.12)、MACE1.08(0.90−1.29)、全死亡1.09(0.94−1.28)であった。

結論
化膿性汗腺炎は交絡因子とは独立して、心血管疾患と全死亡を有意に増加させる。化膿性汗腺炎は、重症な乾癬よりも心血管死が多い。

◯論文のPECOはなにか
P:化膿性汗腺炎
E/C:なし
O:心筋梗塞、脳梗塞、心血管死、重大な心血管イベント(MACE)、全死亡

inclusion criteria:18歳以上(化膿性汗腺炎と最初に診断された年齢)
exclusion criteria:心筋梗塞と脳梗塞の既往

MACEの定義
心筋梗塞、虚血性脳梗塞、心血管死

characteristics

◯結果
デザイン:後ろ向き観察研究
登録期間:1997年1月1日〜2011年12月31日
フォローアップ期間:7.1±4.4年
地域:デンマーク
症例数:5964例(心筋梗塞と脳梗塞の既往がなく移住もしなかった29404例が対照)
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:ポアソン回帰分析

result

◯感想/批判的吟味
化膿性汗腺炎と心血管疾患との関連は全く知りませんでした。化膿性汗腺炎もよくわからなかったので、googleで調べました。たくさん画像がでてきます。

それを見れば、あぁこういう皮膚の人いるなぁという感じ。

アポクリン腺の開口部が閉塞する疾患で、時に最近感染を起こし膿瘍を形成するらしい。化膿性汗腺炎によって引き起こされた慢性炎症が動脈硬化に関与するのかもしれない。

女性に多いと。
この観察研究でも70%が女性でした。

肥満との関連もあるらしいが、この研究では体重はデータに含まれていないので、交絡因子になっている可能性あり。

化膿性汗腺炎の患者さんを見かけたら、心血管イベントのリスクが少し高いと認識しておけ、ということでしょうか。

再灌流前のメトプロロール投与は6ヶ月後のLVEFを改善する METOCARD−CNIC試験

Long-term benefit of early pre-reperfusion metoprolol administration in patients with acute myocardial infarction: results from the METOCARD-CNIC trial (Effect of Metoprolol in Cardioprotection During an Acute Myocardial Infarction).
J Am Coll Cardiol. 2014 Jun 10;63(22):2356-62.

《要約》
目標
この試験の目的は、再灌流前のメトプロロール静注が、左室駆出率(LVEF)と臨床的イベントに与える長期的な効果を検証することである。

背景
primary PCIと早期のメトプロロール静注が、STEMIの梗塞サイズを減少させることは報告した。

方法
METOCARD−CNIC試験では、発症6時間以内でKillip≦Ⅱの前壁のSTEMI270例を、再灌流前にメトプロロールを静注する群と対照群に無作為化した。202例に対し6ヶ月後にMRIを施行した。少なくとも12ヶ月は臨床的なフォローアップを行った。

結果
6ヶ月後のMRIでは、LVEFは有意にメトプロロール群で高かった(48.7±9.9% vs 45.0%±11.7%、adjusted treatment effect:3.49%, 95%CI:0.44-6.55%)。LVEF≦35%に低下した症例はメトプロロール群で有意に少なかった(11% vs 27%, P=0.006)。ICDがclassⅠで適応になった症例はメトプロロール群で有意に少なかった(7% vs 20%, P=0.012)。フォローアップ2年間(中央値)で、死亡・心不全入院・再梗塞・悪性不整脈の複合エンドポイントは、メトプロロール群10.8%、対照群18.3%であった(HR:0.55、95%CI:0.26−1.04)。心不全入院はメトプロロール群で有意に少なかった(HR:0.32、95%CI:0.015−0.95)。

結論
primary PCIを行ったKillip≦Ⅱの前壁のSTEMIでは、再灌流前にメトプロロールを静注することで、LVEFは高くし、左室収縮不全とICD適応を減らし、心不全入院を減らす。

◯この論文のPICOはなにか
P:Killip分類ⅠまたはⅡの前璧のSTEMI
I:再灌流前にメトプロロールの静注を行う(メトプロロール静注群)
C:メトプロロールの静注を行わない(対照群)
O:梗塞サイズ(発症5−7日にMRIで測定)

inclusion criteria:18−80歳、30分以上症状が持続するSTEMI(V1−V5の2誘導以上で、2mm以上のST上昇)、6時間以内に再灌流できると予想される症例、発症から無作為化まで4.5時間以内
exclusion criteria:Killip分類ⅢまたはⅣ、収縮期血圧<120mmHgが持続、PR間隔>240msec、HR<60bpmが持続、β遮断薬がすでに投与されている症例

手順
メトプロロール5mgを2分間かけて3回静注する。無作為化は院外のemergency medical servicesか7つの参加施設で行う。禁忌がない限り、すべての症例で発症24時間以内にメトプロロールの経口投与を行う。

◯baselineは同等か
もともとのbaselineは同等。ただ、6ヶ月後のフォローアップMRIを行った220例についてのcharacteristicsに関しては不明。

◯結果
地域:スペイン
登録期間:2010年11月〜2012年10月
観察期間:2年間(中央値)
無作為化:発症からの時間(<1.5h、≧1.5h)、DM、性別、年齢(<60歳、≧60歳)で層別化し、ブロック法にて無作為化を行う。
盲検化:single-blind
必要症例数:275例(梗塞サイズ20%減少、power90%、αlevel0.05として220例を算出し、MRIを施行しない症例が約20%と仮定している)
症例数:270例(メトプロロール静注群131例、対照群139例)
追跡率:202/270例(74.8%)
解析:
スポンサー:企業の関与なし

1週間後にMRIを施行した220例は、6ヶ月に再度MRIを施行した。220例のうち9例は梗塞所見がなく、9例は拒否・死亡・移住などを理由にフォローアップのMRIを行わなかった。

心保護薬の使用は、両群で差はなかった様。

result1
result2
(tableはすべて本文より引用)

◯感想/批判的吟味
無作為化された270例のうち202例のフォローアップで、追跡率は約75%。決して高いとはいえず、バイアスが入り込む余地あり。

6ヶ月後のLVEFの差は、3.49%,(95%CI:0.44-6.55%)と統計学的には有意だが、臨床的に意味がある数値なのか悩ましい。

2年間のフォローアップで、臨床的なエンドポイントにもう少しで有意差がつきそう。とっても、その内訳をみると心不全による入院でソフトエンドポイントである。single-blindなので、その効果を過大評価する可能性がある。

このMETOCARD−CNIC試験もそうだが、再灌流障害を抑制するために様々な試みがなされているが、CKのAUCやMRIで測定する梗塞サイズで統計学的有意差がついても、臨床的なエンドポイントを改善させることは難しい。

メトプロロールは急性心筋梗塞の梗塞サイズを縮小させる METOCARD−CNIC試験

Effect of early metoprolol on infarct size in ST-segment-elevation myocardial infarction patients undergoing primary percutaneous coronary intervention: the Effect of Metoprolol in Cardioprotection During an Acute Myocardial Infarction (METOCARD-CNIC) trial.
Circulation. 2013 Oct 1;128(14):1495-503.

《要約》
背景
primary PCIの際のβ遮断薬が、梗塞サイズに与える効果は定かではない。メトプロロールを再灌流前に静注することで梗塞サイズが縮小すると仮説を立てた。

方法・結果
Killip分類ⅠまたはⅡの前璧のST上昇型心筋梗塞(STEMI)で発症6時間以内にprimary PCIを行う症例を、再灌流前にメトプロロールを静注する群(139例)と静注を行わない群(131例)に無作為化した。禁忌でない症例すべてに、24時間以内にメトプロロールを経口投与した。事前に定められた主要評価項目は梗塞サイズで、発症5−7日目にMRIで評価した。MRIは220例(81%)で施行した。梗塞サイズはメトプロロール静注群で小さかった(25.6±15.3g vs 32.0±22.2g、adjusted difference:-.6.52、95%CI:−11.39to-1.78)。PCI前のTIMIgradeが0または1の症例は、梗塞サイズのadjusted differenceは−8.13(95%CI:−13.10to-3.16、P=0.0024)であった。CKのピーク値とAUCから推測した梗塞サイズは、メトプロロール静注群で有意に減少した。左室駆出率(EF)はメトプロロール静注群で有意に高かった(adjusted difference:2.67%、95%CI:0.09−5.21)。死亡、悪性心室性不整脈、心原性ショック、房室ブロック、24時間以内の再梗塞は、メトプロロール静注群7.1%、対照群12.3%であった(P=0.21)。

結論
primary PCIを行ったKillip分類ⅠまたはⅡの前璧のSTEMIにおいて、再灌流前早期のメトプロロール静注は24時間以内の有事事象を増やさずに、梗塞サイズを縮小させ、EFを増加させる。

◯この論文のPICOはなにか
P:Killip分類ⅠまたはⅡの前璧のSTEMI
I:再灌流前にメトプロロールの静注を行う(メトプロロール静注群)
C:メトプロロールの静注を行わない(対照群)
O:梗塞サイズ(発症5−7日にMRIで測定)

inclusion criteria:18−80歳、30分以上症状が持続するSTEMI(V1−V5の2誘導以上で、2mm以上のST上昇)、6時間以内に再灌流できると予想される症例、発症から無作為化まで4.5時間以内
exclusion criteria:Killip分類ⅢまたはⅣ、収縮期血圧<120mmHgが持続、PR間隔>240msec、HR<60bpmが持続、β遮断薬がすでに投与されている症例

手順
メトプロロール5mgを2分間かけて3回静注する。無作為化は院外のemergency medical servicesか7つの参加施設で行う。禁忌がない限り、すべての症例で発症24時間以内にメトプロロールの経口投与を行う。

◯baselineは同等か
characteristics
baselineでは両群間に差はない。
MRIを施行例の両群間の差は不明だが、LAD近位部病変、PCI成功例は対照群で多く、少しbaisが入りそう。

◯結果
地域:スペイン
登録期間:2010年11月〜2012年10月
観察期間:発症5−7日後にMRI施行
無作為化:発症からの時間(<1.5h、≧1.5h)、DM、性別、年齢(<60歳、≧60歳)で層別化し、ブロック法にて無作為化を行う。
盲検化:single-blind
必要症例数:275例(梗塞サイズ20%減少、power90%、αlevel0.05として220例を算出し、MRIを施行しない症例が約20%と仮定している)
症例数:270例(メトプロロール静注群131例、対照群139例)
追跡率:220例(81%)
解析:ITT解析と記載されているが、同意の撤回・プロトコール違反・MRI未施行例などを除外しており、modified ITTと思われる。いや、MRIを撮っていない例を除外しており、per protcol解析なのか??
スポンサー:企業の関与なし

result
メトプロロール静注群 vs 対照群
peakCK:2397±214IU/L vs 3176±254IU/L(adjusted difference-740, 95%CI-1361to-120)
CK(AUC):49427±4013IU/L vs 62953±4634IU/L(adjusted difference−12825to−24346)

◯感想/批判的吟味
MRIを使用することにより、梗塞サイズを正確に計測できるが、施行できない例がある程度でてしまう。もともと、MRIを施行しない症例を20%と仮定して試験が行なわれているが、それが妥当なのか、結果にどの程度影響を及ぼすのかはわからない。CKのAUCの方が、より簡便で脱落が少ない分、正確な評価になるのかもしれない。ただ、それもsurrogate endpointではあるが。

VADT試験 長期フォローアップ CORRESPONDENCE

TO THE EDITOR
1) 心血管死、脳梗塞、心不全など臨床的に異質のものを、複合エンドポイントとして設定している。そして、強化療法により増えることが示されている非心血管死が、エンドポイントから外されており、複合エンドポイントの設定が恣意的である。UKPDSリスクスコアの低い患者では、強化療法によって非心血管死が38%増加し、VADT試験でも標準療法群より強化療法群で非心血管死が増えていた。VADT試験の主要評価項目に全死亡も含めれば、有意差はなくなる(P=0.22)。

2) 最初の心血管イベントまでの時間は、HbA1cの変化に影響を受けないように思われ、血糖値のコントロールはアウトカムの改善に繋がるわけではない。。

3) 使用した経口血糖降下薬による影響があるのではないか。VADT試験では、BMI≧27の症例には心血管イベントを抑制することが示されているメトホルミンを使用しており、BMI<27の症例にはSU薬を使用していた。

4) 生活習慣や心保護薬の使用が確認されていない。

THE AUTHOR REPLY
1) UKPDSリスクスコアの低いサブグループの解析は、統計学的に不適切である。ただ、ACCORD試験やVADT試験から、特に高齢者において強化療法を行うことは注意が必要である。

2) VADT試験で確認された心血管イベントの減少は、試験期間中のHbA1cではなく、baselineのHbA1cの影響を受けない。心血管イベントの減少が、HbA1cの減少に影響を受けないエビデンスはない。

3) BMIと同様、メトホルミンの使用率は両群間で差はない。

4) 心保護薬に関しては、Supplementary Appendixに記載してあり、群間差はない。生活習慣について厳密に比較できないが、両群の同一の生活習慣のカウンセリングを行っており、血圧や脂質も似通っていることから、両群で生活習慣が著しく異なることはありえないだろう。

VADT試験 長期フォローアップデータ

Follow-up of glycemic control and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes.
N Engl J Med. 2015 Jun 4;372(23):2197-206

《要約》
背景
VADT試験は、退役軍人1791例を対象とし、厳格な血糖コントロールは標準療法と比較し心血管イベントを減少させなかった(観察期間中央値:5.6年)。そのフォローアップデータを報告する。

方法
データベースを用いて、手術、入院、死亡を確認した(フォローアップ率92.4%)。多くの患者は、毎年の調査やカルテの調査など、追加のデータ収集に同意した(77.7%)。主要評価項目は重大な心血管イベント(心臓発作。脳梗塞、新規または増悪したうっ血性心不全、虚血性壊死による四肢切断、心血管死)である。副次評価項目は心血管死亡率と全死亡率である。

結果
試験期間中、強化療法群と標準療法群のHbA1cの差は1.5%(6.9% vs 8.9%)であったが、試験終了後から3年間で0.2−0.3%減少した。9.8年のフォローアップ(中央値)で、強化療法群は従来療法群と比べ、主要評価項目が有意に低く(HR:0.83、95%CI:0.70−0.99)、絶対リスク減少は0.86%/年であった。しかし、心血管死は減らなかった(HR:0.88、95%CI:0.64−1.20)。全死亡も減少しなかった(HR:1.05、95%CI:0.89−1.25、フォローアップ期間の中央値:11.8年)。

結論
10年近いフォローアップで、強化療法群は標準療法群に比べ重大な心血管イベントが0.86%/年低かったが、死亡率には差がなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:2型糖尿病を有する退役軍人
I:より厳格な血糖コントロール(強化療法群)
C:標準的な血糖コントロール(標準療法群)
O:心血管イベント(心臓発作。脳梗塞、新規または増悪したうっ血性心不全、虚血性壊死による四肢切断、心血管死)

exclusion criteria:HbA1c<7.5%、6ヶ月以内の心血管イベント、高度のうっ血性心不全、重度の狭心症、7年以内の生命予後、BMI>40、Cr>1.6mg/dl、ALTが正常上限以上

治療プロトコール
BMI≧27ならビグアナイド+ロシグリタゾンで治療開始
BMI≦27ならグリメピリド+ロシグリタゾンで治療開始
強化療法群は最大量で、標準療法群は最大量の半量から治療開始
上記の治療で、強化療法群では6%未満、標準療法群では9%未満にならなければインスリンを導入する
治療目標は、強化療法群でHbA1cを1.5%低下させること

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢60歳、ほとんど男性、平均糖尿病罹患年数11.5年、60%強が高血圧合併、平均HbA1c:9.4%、血圧の平均値132/76mmHg、LDLコレステロール108mg/dl、HDLコレステロール36mg/dl

◯結果
地域:米国
登録期間:2000年12月1日~2003年5月30日
観察期間:9.8年(中央値)、もとの試験は5.6年
無作為化:置換ブロック法、施設・微小血管イベント・インスリンの有無で層別化
盲検化:オープンラベル
必要症例数:1700例(標準治療群の心血管イベント40.0%、強化療法群により心血管イベント21%減少、power86%、αlevel0.05、ドロップアウト5%として算出)
症例数:1791例(強化療法群892例、標準療法群899例)
追跡率:強化療法群703例(78.8%)、標準療法群688例(76.5%)
解析:ITT解析、ハザード比の推定にはCox比例ハザードモデルを用いた
スポンサー:企業からの資金提供はあるが、解析への関与はない。

HbA1cの差は、試験終了6ヶ月後に1.0%、1年後に0.5%(強化療法群:7.8%、標準療法群8.3%)、3年後に0.2−0.3%になった。

強化療法群 vs 標準治療群
主要評価項目:44.1% vs 52.7%(HR:0.83, 95%CI:0.70-0.99)
心血管死:10.0% vs 11.3%(HR:0.88, 95%CI:0.64-1.20)
全死亡:32.0% vs 30.3%(HR1.01, 95%CI:0.89-1.25)

result1
(Supplementary appendixより引用)

◯感想/批判的吟味
・退役軍人のデータで男性が97%と、特異な集団。
・チアゾリジンが多く使用されており、アウトカムを悪化させた可能性。
・VADT試験の以前の報告では、インスリンの使用や心血管イベントの既往によらず、強化療法の効果はなかった。
・追跡率が良いとは言えず、無作為化が維持できているとは言えない。

複合エンドポイントの中身をみてみると、どれも有意差がついておらず、なんとも煮え切らない結果。これでlegacy effectが確認されたとは言っていいのかわからない。低血糖が糖尿病の予後を悪くすることは確実であり、低血糖を起こさない程度に、十分な血糖コントロールを行った方がよいということだろう。

VADT試験 厳格に血糖コントロールをしても心血管イベント・死亡は減らない

Glucose control and vascular complications in veterans with type 2 diabetes.
N Engl J Med. 2009 Jan 8;360(2):129-39

《要約》
背景
2型糖尿病患者において、厳密な血糖コントロールの心血管イベントに対する効果は明らかではない。

方法
2型糖尿病の退役軍人1791例を、血糖コントロールの強化療法群と標準療法群に無作為に割り付けた。他の冠危険因子も同様に治療した。糖尿病の罹患年数は平均11.5年で、40%で心血管イベントをすでに起こしていた。強化療法群の目標は、標準療法群よりHbA1cを1.5%低下させることである。主要評価項目は心血管イベント(心筋梗塞、脳梗塞、心血管死、うっ血性心不全、血管疾患に対する手術、手術不能な冠動脈疾患、虚血性壊死による四肢切断)である。

結果
フォローアップ期間の中央値は5.6年。HbA1cの中央値は標準療法群で8.4%、強化療法群で6.9%であった。主要評価項目は、標準療法群で264例、強化療法群で235例であった(HR:0.88、95%CI:0.74−1.05)。主要評価項目と全死亡において、有意差はなかった(HR:1.07、95%CI:0.81−1.42)。微小血管障害にも有意差はなかった。有害事象(主に低血糖)は標準療法群で17.6%、強化療法群で24.1%であった。

結論
2型糖尿病患者において、強化療法はアルブミン尿の進行を覗いて重大な心血管イベント、死亡、微小血管障害の発生に、有意な効果は認められなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:2型糖尿病の退役軍人
I:厳格な血糖コントロール(強化療法群)
C:標準的な血糖コントロール(標準療法群)
O:心筋梗塞、脳梗塞、心血管死、うっ血性心不全、血管疾患に対する手術、手術不能な冠動脈疾患、虚血性壊死による四肢切断の複合エンドポイント

exclusion criteria:HbA1c<7.5%、6ヶ月以内の心血管イベント、高度のうっ血性心不全、重度の狭心症、7年以内の生命予後、BMI>40、Cr>1.6mg/dl、ALTが正常上限以上

治療プロトコール
BMI≧27ならビグアナイド+ロシグリタゾンで治療開始
BMI≦27ならグリメピリド+ロシグリタゾンで治療開始
強化療法群は最大量で、標準療法群は最大量の半量から治療開始
上記の治療で、強化療法群では6%未満、標準療法群では9%未満にならなければインスリンを導入する
治療目標は、強化療法群でHbA1cを1.5%低下させること

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢60歳、ほとんど男性、平均糖尿病罹患年数11.5年、60%強が高血圧合併、平均HbA1c:9.4%、血圧の平均値132/76mmHg、LDLコレステロール108mg/dl、HDLコレステロール36mg/dl

◯結果
地域:米国
登録期間:2000年12月1日〜2003年5月30日
観察期間:5.6年(中央値)、2008年5月30日で終了
無作為化:置換ブロック法、施設・微小血管イベント・インスリンの有無で層別化
盲検化:オープンラベル
必要症例数:1700例(標準治療群の心血管イベント40.0%、強化療法群により心血管イベント21%減少、power86%、αlevel0.05、ドロップアウト5%として算出)
症例数:1791例(強化療法群892例、標準療法群899例)
追跡率:強化療法群772例(86.5%)、標準療法群760例(84.5%)
解析:ITT解析
スポンサー:企業からの資金提供はあるが、解析への関与はない。

強化療法群vs標準療法群
主要評価項目:29.5% vs 33.5%(HR:0.88、95%CI:0.74−1.05)
result
(Supplementary appendixより引用)

低容量のコルヒチンは、安定狭心症患者の高感度CRPを低下させる

Effect of colchicine (0.5 mg twice daily) on high-sensitivity C-reactive protein independent of aspirin and atorvastatin in patients with stable coronary artery disease.
m J Cardiol. 2007 Mar 15;99(6):805-7

《要約》
安定狭心症患者において、高感度CRP(≧2.0mg/L)など炎症のバイオマーカーの上昇は、将来の血管イベントの予測因子である。長期間の低容量コルヒチンは炎症の抑制の安全で有効な方法である。アスピリンと高容量のアトルバスタチンを内服しているにもかかわらず高感度CRP≧2.0mg/Lの安定狭心症患者において、コルヒチンが高感度CRPを有意に低下させることができるか検証するため、オープンラベル試験を行った。

アスピリンとアトルバスタチンを内服している安定狭心症患者200例の血清高感度CRPを測定した。そのうち、64例は高感度CRPが2.0mg/L以上であった。20例は2週間後に再度、高感度CRPを測定した(対照群)。44例はコルヒチン0.5mgを1日2回内服し4週間後に再度、高感度CRPの測定を行った(コルヒチン群)。

無治療群では、平均高感度CRP値は初回4.28±2.03mg/L、再検査3.70±2.30mg/Lと有意な低下はなかった(平均変化率:11.0%、95%CI:−30% to +9%)。コルヒチン群では、平均高感度CRP値は初回4.58±2.05mg/L、再検査1.78±1.38mg/Lと、絶対値で2.80mg/L(95%CI:2.40−3.65)、変化率60%(95%CI:54%−67%)有意に低下した。コルヒチン群で28例に50%以上の高感度CRPの低下がみられ、31例は高感度CRPが2.0mg/L以下に低下した。重大な副作用の報告はなかった。

低容量コルヒチン(0.5mg、1日2回)は、アスピリンやアトルバスタチンの使用と無関係に上昇した安定狭心症の高感度CRPを、効果的に減少させた。進行した血管疾患を有する患者で低容量コルヒチンが臨床的なアウトカムを改善するか、さらなる試験が必要である。

◯論文のPECOはなにか
P:高感度CRPが2.0mg/L以上の安定狭心症
I:アスピリン、高容量アトルバスタチンに加え、コルヒチン0.5mg 1日2回の内服(コルヒチン群)
C:アスピリン、高容量アトルバスタチンの内服のみ(対照群)
O:高感度CRP

inclusion criteria:冠動脈造影による冠動脈疾患の証明、6ヶ月以上臨床的に安定した状態、高感度CRPに影響する併存疾患がないこと、アスピリンと高容量アトルバスタチン(80mg/日)を内服していること、非喫煙者

table
figure
(すべて本文より引用)

◯感想/批判的吟味
コルヒチンは低容量でも、体内に吸収されたあとは好中球内で濃縮し、抗炎症作用をもたらす。T細胞と血管内皮細胞の表面の細胞接着分子発現を抑制すること、単球の遊離を抑制すること、MMP−9の減少、TNF−αとIL−6の抑制などにより動脈硬化プラークに作用する。ということらしい。

家族性地中海熱(FMF)でより長期に使用したデータがあり、忍容性も確認されている様。

若年期の心肺持久力と心血管イベントとの関連 CARDIA試験

Association of Fitness in Young Adulthood With Survival and Cardiovascular Risk: The Coronary Artery Risk Development in Young Adults (CARDIA) Study.
JAMA Intern Med. 2016 Jan 1;176(1):87-95

《要約》
重要性
高齢者において心肺持久力は予後と関連があるが、若年期における心肺持久力が、長期の心血管の構造や予後に影響があるかは定かではない。

目標
若年期の心肺持久力と、長期の臨床的なアウトカムや潜在的な心血管疾患との関連を検証すること。

デザイン・セッティング・参加者
米国の18歳から30歳の成人4872例を対象とした前向き研究で、1985年3月25日〜1986年6月7日に初回のトレッドミル検査を行い、2472例については7年後に2回目のトレッドミル検査を行った。フォローアップ期間の中央値は26.9年で、肥満、左室重量と左室ストレイン、冠動脈石灰化、生存状況と心血管疾患の発生について評価した。フォローアップは2011年8月31日に終了し、登録からフォローアップの終了までのデータが解析された。

主要評価項目
冠動脈石灰化は15年目(2000−2001年)、20年目(2005−2006年)、25年目(2010-2011年)にCTで評価した。左室容量は5年目(1990−1991年)、25年目に評価した。心血管疾患と全死亡の発生は調整した。

結果
フォローアップ期間で、4832例のうち273例(5.6%)が死亡、193例(4.0%)が心血管イベントを起こした。広範囲の調整後、baselineからの運動量の増加は死亡のハザード比を15%低下させ(HR:0.85、95%CI:0.80−0.91)、心血管疾患のハザード比を12%低下させた(HR:0.88、95%CI:0.81−0.96)。baselineでの高い心肺持久力は、25年後のより低い左室容量係数とより良いglobal longitudinal strainと有意に関連があった。運動と冠動脈石灰化との関連はなかった。7年目に施行したトレッドミル検査で、1分間の減少は死亡のハザード比の21%(HR:1.21、95%CI:1.07-1.37)、心血管イベントのハザード比の20%の増加(HR:1.20、95%CI:1.06−1.37)と関連しており、またストレインも悪化していた(β=0.15、95%CI:0.08−0.23)。運動量の変化と冠動脈石灰化との関連はなかった。

結論
若年期で、baselineでの高い運動量と運動量の増加は、冠動脈疾患と死亡のより低いリスクとの関連がある。運動量と運動量の変化は、心筋肥大と機能不全と関連があったが、冠動脈石灰化との関連はなかった。

◯論文のPECOはなにか
P:若年成人
I/C:経過観察
O:全死亡、心血管イベント

inclusion criteria:18−30歳
exclusion criteria:安静時高血圧(収縮期血圧≧160mmHg、拡張期血圧≧100mmHg)、心筋梗塞の既往、狭心症、弁膜症、心血管治療薬の使用(降圧薬とサイアザイド系利尿薬は除く)、臨床的な心不全

心血管イベントの定義
非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞、狭心症・うっ血性心不全・TIAによる入院、頚動脈・末梢動脈の血行再建、致死的動脈硬化性の冠動脈疾患と脳梗塞、それ以外の致死的動脈硬化性疾患

◯結果
デザイン:前向き観察研究
登録期間:1985年3月25日〜1986年6月7日
フォローアップ期間:26.9年(中央値)
地域:米国
症例数:4872例
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:Cox比例ハザード回帰を用いた
脱落:baselineのトレッドミル検査やcharacteristicsなどのデータを喪失した症例(242例)、同意の撤回(1例)

baseline
baseline

result
1−minute reduction
1-minute increase

死亡273例のうち、200例(73.3%)が非心血管死で、非血管死のうち悪性腫瘍(45例、22.5%)が最多であった。

◯感想/批判的吟味
子どもが生まれてからトライアスロンをやめたので体力も落ちているし、この結果に当てはめると、死亡のハザード比が上がってんだろうな。

非心臓手術 リスクのない患者へのβ遮断薬投与は死亡率を悪化させる可能性

β-Blockade and Operative Mortality in Noncardiac Surgery: Harmful or Helpful?
JAMA Surg. 2015 Jul;150(7):658-63

《要約》
重要性
非心臓手術で心筋虚血イベントリスクが低い患者に対するβ遮断薬の投与は、脳梗塞や低血圧などの副作用もあり、議論が分かれる。報告されているデータでは、リスクの低い患者に対するβ遮断薬の有益性は、一貫しない。

目標
非心臓手術、特に虚血リスクの低い患者への周術期のβ遮断薬の効果を検証すること。

デザイン・セッティング・参加者
2008年10月1日〜2013年7月31日の間に退役軍人病院で施行された外科的手術の後ろ向き観察研究である。

方法
手術8時間前から術後24時間までにオーダーあるものをβ遮断薬の使用と定義する。退役軍人データベースからデータ収集を行った。それらのデータには、診断と治療コード、薬物療法、周術期検査データ値、死亡日時が含まれる。心血管リスクスコアは、腎不全、冠動脈疾患、糖尿病、大手術の有無で計算される。線形回帰モデルで死亡率とオッズ比の計算を行った。

主要評価項目
術後30日以内の死亡率

結果
このコホートでは326489例(非心臓手術314114例、心臓手術12375例)の手術が施行されていた。3−4つのリスクを有している患者では、非心臓手術の際のβ遮断薬は死亡のオッズ比を低下させた(OR:0.63、95%CI:0.43−0.93)。1−2つのリスクの有する患者では、その効果は見出せなかったが、リスクのない患者では死亡率は有意に高かった(OR:1.19、95%CI:1.06−1.35)。

結論
非心臓手術を行う心血管イベントリスクの高い患者へのβ遮断薬は有効である。しかし、心血管イベントリスクのない患者に対するβ遮断薬の投与は、死亡のリスクを増大させる。

◯論文のPECOはなにか
P:非心臓手術が施行された患者
E/C:β遮断薬の有無
O:術後30日以内の死亡

inclusion criteria:2008年10月1日〜2013年7月31日の間に退役軍人病院で行われた手術

◯結果
デザイン:後ろ向き観察研究
登録期間:2008年10月1日〜2013年7月31日
フォローアップ期間:術後30日間
地域:米国
症例数:314114例
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:ロジスティック回帰モデル

非心臓手術施行患者では、132614例(42.2%)でβ遮断薬が処方されていた。
result

◯感想/批判的吟味
・90%が男性と偏りがある。
・β遮断薬の開始時期が不明(手術直前か、以前からかわからない)

周術期のβ遮断薬は、心血管イベントリスクの高い患者に対しては有効であるが、リスクの低い患者ではむしろ有害である可能性。JAMA Intern Med. 2015 Dec 1;175(12):1923-31も同様に後ろ向きのデータではあるが、リスクのない患者へのβ遮断薬は周術期の死亡率を増加させる可能性がある。

非心臓手術 合併疾患のない高血圧患者に対するβ遮断薬は有害である可能性

β-Blocker-Associated Risks in Patients With Uncomplicated Hypertension Undergoing Noncardiac Surgery.
JAMA Intern Med. 2015 Dec 1;175(12):1923-31

《要約》
重要
周術期のβ遮断治療は有害事象を減らすために重要である。有効性と安全性は患者が有しているリスクによって異なるかもしれない。

目標
合併症のない高血圧患者の非心臓手術で、長期間のβ遮断薬の内服と主要な心血管イベント(MACEs)のリスクとの関連を検証すること。

デザイン・セッティング・参加者
院内の記録とデンマークの全国規模のコホートから調べた。2005年から2011年の間に行われた非心臓手術で、少なくとも2剤以上の降圧薬(β遮断薬、サイアザイド、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬/ARB)を内服している合併症のない高血圧患者が対象である。

介入
通常の降圧治療としての、様々なレジメン

主要評価項目
30日以内のMACEs(心血管死、非致死的虚血性脳梗塞、非致死的心筋梗塞)と全死亡を、多変量ロジスティック回帰モデルと調整後のnumbers needed to harm(NNH)を用いて評価した。

結果
14644例(女性65%、年齢66.1±12.0歳)がβ遮断薬を内服しており、他の降圧療法を受けている患者40676例(女性57%、年齢±11.8歳)とbaselineのcharacteristicsは似通っていた。30日以内のMACEsは、β遮断薬群では1.3%、非β遮断薬群では0.8%であった(P<0.001)。β遮断薬と他の薬剤との2剤併用は、RAS抑制薬(OR:2.16、95%CI:1.54−3.04)、カルシウム拮抗薬(OR:2.17、95%CI:1.48−3.17)、サイアザイド(OR:1.56、95%CI:1.10−2.22)いずれも場合も、RAS抑制薬とサイアザイドの2剤併用と比較しMACEsを増加させた。全死亡でも同様であった。β遮断薬のMACEsのリスクは、70歳以上(NNH:140、95%CI:86−364)、男性(NNH:142、95%CI:93−195)、緊急手術(NNH:97、95%CI:57−331)で特に高かった。

結論
β遮断薬を用いた降圧療法は、合併症のない高血圧患者の非心臓手術周術期のMACEsと全死亡を増加させる可能性がある。

◯論文のPECOはなにか
P:合併症のない高血圧患者
E/C:2剤以上の降圧薬(β遮断薬、サイアザイド、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬/ARB)の内服
O:30日以内のMACEs(心血管死、非致死的虚血性脳梗塞、非致死的心筋梗塞)と全死亡

inclusion criteria:20歳以上

◯結果
デザイン:後ろ向きコホート
登録期間:2005年〜2011年
フォローアップ期間:術後30日間
地域:デンマーク
症例数:55320例
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:多変量ロジスティック回帰モデル

result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
合併症のない高血圧患者に対するβ遮断薬の投与は現在では推奨されていないが、まだまだ見かける処方パターンではある。循環器内科に術前にコンサルトがある症例は割とリスクを抱えている人が多いので、合併疾患のない患者を診ることは少ないように思う。

β遮断薬の心血管イベント抑制効果があることは確かなことだと思われるが、どのような患者にどれくらいの量が適切かは明らかではない。リスクがない患者に対しては、むしろ有害である可能性がある。前向きの試験での検証が必要だし、β遮断薬を内服している患者でそれを中止することでMACE・死亡が減らせるかどうかは、さらなる検証が必要。この結果だけで、合併疾患のない高血圧患者の術前にβ遮断薬を切るというのは、ちょっと乱暴だけど、害を及ぼす可能性があるなら切りたくなってしまう。