DESと病理所見

Histopathology of vascular response to drug-eluting stents: an insight from human autopsy into daily practice.
Cardiovasc Interv Ther. 2015 Jan;30(1):1-11

《要約》
薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)は新生内膜の増殖を抑制することを主要な目的として開発された。DESはベアメタルステント(bare metal stent:BMS)と比べ再狭窄を著しく減少させたが、完全に克服できていない。遅発性ステント血栓症(late stent thrombosis:LST)は血管治癒の遅延やDESに対する異常な血管反応で、大きな安全性への懸念として浮かび上がってきた。より新しいDESやその他の新規のデバイスの成績が期待されるが、それらの問題は完全には解決できていない。このレビューでは、組織病理学の視点から、DESの現状と、今のDESと新規デパイスの強みとリミテーションについて議論する。

BMS
24−48時間以内に血小板とフィブリンの凝集が起こり、それは11日間に渡り見られ、ステント血栓症を避けるため抗血小板療法を必要とする。30日間を超えて血小板の凝集が見られることは稀である。一方、内皮損傷による組織因子遊離や、単球・マクロファージの活性化によりフィブリンは増殖し、活性化した血小板のブリッジを形成する。フィブリン血栓はステント留置後11日間ではすべての症例でみられ、30日以降でみられることは稀である。FDPが平滑筋と新生内膜の増殖に重要な役割を果たしていると推測されている。好中球を含む急性炎症細胞の浸潤がステント留置後3日以内に認められる。30日後以降でみられることは稀である。リンパ球やマクロファージなどの慢性炎症細胞があらゆる時期に見られるが、その程度は血管障害の程度とプラークの形態に依存する。ステントストラットによる中膜やプラークの障害、あるいは壊死性コアの崩壊がより大きな炎症反応を惹起する。これらの炎症細胞がサイトカインの増加を誘発し、より強く新生内膜増殖を引き起こす。

新生内膜内の平滑筋と細胞外マトリックス
新生内膜内の平滑筋増殖は11日後以降にみられ、30日以降ではすべての症例で確認される。中膜平滑筋細胞が主な起源であると考えられている。血管治癒のより遅い相では、内腔の下層は平滑筋細胞と細胞外マトリックスに富むが、次第にマトリックスは少なくなる。ストラット周囲ではプロテオグリカンが増加する。

ステント留置された冠動脈の内皮化
バルーン拡張やステント留置により内皮の剥離が起こる。BMSでは、新生内膜表面の被覆率は3−4ヶ月の時点で80−100%になる。その内皮の由来には議論があり、ステントの近位部・遠位部より内皮細胞が進展してくることや、循環するCD34陽性前駆細胞などが主張されている。新たな内皮細胞同士は密ではなく、脂質の浸透を防げない。その機能の改善はプラークの性質による。

DESでみられる血管治癒の遅延
DESの合併症として知られる遅発性ステント血栓症(LST)はBMSでは稀である。組織学的な比較(留置後約220日)では、新生内膜面積(2.8±1.1 vs 4.9±3.0mm2、P<0.0003)、フィブリンスコア(2.3±1.1 vs 0.9±0.8、P<0.0001)、内皮化(55.8±26.5 vs89.8±20.9%、P=0.0001)で、BMSと比較しDESで血管治癒の遅延がみられた。DESにおける比較では、血栓性病変に対するDESの留置は、非血栓性病変に対するDESの留置と比べ、内皮化の割合がより少なかった(40.5±29.8 vs 80.0±25.2%、P<0.0001)。カバーされていないステントストラットの割合(RUTSS)は非血栓性病変より血栓性病変で多かった(0.50±0.23 vs 0.19±0.25、P<0.0001)。多変量解析では、内皮化がLSTの予測因子であり、形態学的には内皮化はRUTSSと最もよい関連を示す。RUTSSが30%以上であれば、完全にカバーされたステントと比較し、血栓症のオッズ比は9.0になる。

新生内膜の増殖と治癒へのプーラク形態の影響
破裂したプラークや壊死性コアへのステントのめり込みは、BMSでの再狭窄の誘引となり、またDESでも血管治癒が遅延することが示されている。AMIの責任病変部位は非責任病変部位と比較し、血管治癒が遅れる(%strut with fibrin 63±28 vs 52±27%, P=0.04; %uncovered strut 49% vs 19%, P=0.02; neointimal thickness 0.04 vs 0.07mm, P=0.008)。

ステント内での新規のアテローム性動脈硬化:neoatherosclerosis
冠動脈の動脈硬化は、脂質の蓄積と泡沫細胞の侵入により10年単位で進行するが、neoatherosclerosisはステント内の新生内膜におけるアテローム性動脈硬化であり、数ヶ月から数年での進行する。neoatherosclerosisは、ステントストラット周囲にしばしばみられる脂質を含む泡沫細胞の蓄積である。泡沫細胞は最も早くて、パクリタキセル溶出性ステント(PES)では70日後、シロリムス溶出性ステント(SES)では120日後、BMSでは900日後に観察される。neoatherosclerosisは、BMSよりDESで多く見られる(31% vs 16%, P<0.001)。neoatheroslersisには、不完全な再内皮化、内皮機能の不完全な改善など様々な要因が影響する。DESでは細胞間結合が粗であり、脂質や単球/マクロファージなどの浸透の障壁として効果的に働かない。その他、細胞外マトリックスプロテオグリカンがBMSよりDESで多く、それがneoatherosclerosisに大きな役割を担っている可能性がある。また、DESの薬剤とポリマーに対する反応が、再内皮化の減少や細胞外マトリックスの相違と関連しているかもしれない。ただ、なぜBMSとDESの血管治癒にこのような差異が生じるかは不明である。 SESとPESの相違
ステント血栓症を起こした症例の剖検では、SESとPESに差異は見出せず、ステントの性質というより手技に関連したステント血栓症であることが示唆された。しかし、遠隔期の血管反応は、SESとPESで明らかな違いがあった。PESでフィブリンの蓄積が多いが、炎症スコアはSESで高かった。また、SESでは好酸球と巨細胞の浸潤を認めたが、PESでは好酸球浸潤はみられなかった。内皮化の遅延が、SES/PESの遅発性ステント血栓症の共通の特徴であるが、ステント血栓症の発生頻度に差異はない。SESの好中球浸潤はシロリムスに対する過敏性でであり、PESのフィブリンの堆積と中膜壊死は細胞毒性である。

第2世代DES
第2世代DESであるゾタロリムス溶出性ステント(ZES)、エベロリムス溶出性ステント(EES)はストラットが薄くなり、薬剤搭載量も少なく薬剤溶出も早くなった。ポリマーは生体適合性が高く、ポリマーの厚みも減少した。テント留置後1ヶ月から2年までのLSTは第2世代で低下した(5% vs 20%, P=0.034)。しかし、第1世代より低減はしたものの第2世代DESでも炎症反応の持続が認められ、CoCr−EESと第1世代DESでneoatherosclerosisで似通っていると報告がある。

FFRグレーゾーンの予後は良好

Seven-year clinical outcomes of patients with moderate coronary artery stenosis after deferral of revascularization based on gray-zone fractional flow reserve.
Cardiovasc Interv Ther. 2015 Jul;30(3):209-15

《要約》
FFR:0.75-0.80はグレーゾーンとして認知されている。現在、FFR:0.80は血行再建のカットオフとして用いられているが、冠動脈中等度狭窄(FFR:0.75−0.80)の長期の臨床転帰は不明である。FFRにより血行再建を延期した連続120症例をグループⅠ(FFR:0.75−0.80)とグループⅡ(FFR0.80−0.85)に分類し、それぞれ55例、65例を割り付けた。全死亡、心臓死、心筋梗塞、血行再建(FFR使用の有無)、うっ血性心不全、胸部症状による入院について、冠動脈造影後7年間フォローアップを行った。event-free ratesはグループⅠで73%、グループⅡで63%で(P=0.35)、FFRを測定した冠動脈に関連したevent-free ratesは94%と85%であった(P=0.08)。フォローアップ期間を通して、スタチンの内服率はグループⅡで著しく低かった(P=0.008)。FFRがグレーゾーンの患者の7年間の臨床転帰は良かった。なお、FFRを測定した冠動脈に関連したイベントはグレーゾーンの患者群で低く、FFRや冠動脈狭窄の程度に関わらず、至適薬物療法が必要とされる。

◯論文のPICOはなにか
P:冠動脈造影にて75%(51−75%)の狭窄を有する患者
I/C:FFR:0.75−0.80、FFR:0.80−0.85の2群に分け
O:全死亡、心臓死、心筋梗塞、血行再建(FFR使用の有無)、うっ血性心不全、胸部症状による入院の複合エンドポイントについて評価

exclusion criteria:急性冠症候群、重症弁膜症、透析患者、気管支喘息、アスピリン・パパベリン・アデノシンに対する禁忌

◯予後、病因、危険因子、害、予測ルールのいずれをみる研究か
予後をみる研究である。

◯追跡期間はどれくらいか
7年間と心血管イベントを評価するには十分な期間と考えられる。

◯結果に影響を及ぼすほどの脱落があるか
すべての患者が解析に含まれている。

◯outcomeの観察者が危険因子についてmaskingされているか
記載なし

◯交絡因子の調整が行なわれているか
characteristics
年齢、糖尿病の割合、喫煙者、LVEF、標的血管などに統計学的な差はなかったが、内服薬のうちスタチンで有意な群間差があった。

交絡因子の調整は行われていない。

◯結果
result
(tableはすべて本文より引用)

◯感想/批判的吟味
FFR:0.75−0.80がグレーゾーンとして捉えられているのは、おそらくFAME試験でFFR:0.80をカットオフとしたことに由来するではないか。虚血出現の閾値は、FFR:0.75と考えられており、FFR≧0.75の予後は良いとされる。それと合致する結果であった。

EPA AMIでの心室性不整脈の抑制

Early eicosapentaenoic acid treatment after percutaneous coronary intervention reduces acute inflammatory responses and ventricular arrhythmias in patients with acute myocardial infarction: a randomized, controlled study.
Int J Cardiol. 2014 Oct 20;176(3):577-82

《要約》
背景
急性心筋梗塞に対する早期のエイコサペント酸(EPA)のローディングが、CRPを減らすことに伴い、1ヶ月以内の臨床の有害事象を減らすかどうか検証した。急性心筋梗塞は炎症を惹起し、それは心筋障害を引き起こす。EPAは炎症反応を減弱させる可能性がある。

方法
急性心筋梗塞115例をこの前向き、オープンラベル、盲検化、無作為化試験に登録した。EPA群57例と対照群58例に無作為に割り付けた。PCI後24時間以内ににEPA1800mg/日の内服を開始した。主要評価項目は1ヶ月以内の心臓死、脳梗塞、再梗塞、心室性不整脈、発作性心房細動の複合エンドポイントである。

結果
EPAは1ヶ月以内の主要評価項目を著しく減少させ(10.5%vs29.3%, P=0.01)、特に心室性不整脈を減少させた(7.0%vs20.6%, P=0.03)。PCI後のピークCRPはEPA群で低かった(中央値[四分位範囲], 8.2[5.6-10.2]mg/dl vs 9.7[7.6-13.9]mg/dl, P<0.01)。ロジスティック回帰解析では、EPAの使用は1ヶ月以内の心室性不整脈の独立した因子である(オッズ比0.29[95%CI:0.09−0.96])。

結論
急性心筋梗塞に対するPCI後早期のEPA治療は、心室性不整脈とCRP値を減少させる。

◯この論文のPICOはなにか
P:急性心筋梗塞
I:EPA1800mg/日の内服(EPA群)
C:対照群
O:30日以内の心臓死、脳梗塞、再梗塞、心室性不整脈、発作性心房細動の複合エンドポイント

exclusion criteria:心原性ショック、腎不全、心肺停止、緊急CABG、PCIの失敗

手順:PCIの前にアスピリン200mgとクロピドグレル300mgをローディングする。大腿または橈骨動脈アプローチで通常のテクニックでPCIを行う。アクセスを確保した後、ヘパリン10000U投与し、PCI後48時間後まで持続投与する。抗血小板薬はアスピリン100mgとクロピドグレル75mg/日投与する。EPA投与はPCI後24時間以内に開始し、β遮断薬以外の抗不整脈薬の予防的投与は行わない。心室性不整脈や発作性心房細動は、PCI後5日間にわたりホルター心電図をつけ評価する。

定義
心室性不整脈:rate200/min以上で3連以上、またはrate120/min以上で5連以上の心室頻拍、心室細動

◯ランダム化されているか
コンピュータによるランダム化。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢70歳、2/3が男性、糖尿病40%、高血圧症70%、喫煙者40%、発症から再灌流までの時間:5時間、責任病変がLAD40%、Killip1/2と3が半々、β遮断薬10%、スタチン10%

◯症例数は十分か
EPAの内服によりprimary endpointの発生が30%から10%に低下すると仮定し、power80%、αlevel0.05として、必要症例数は98例と算出されている。EPA群57例、対照群58例、計115例が登録されている。

◯盲検化されているか
open-labelだが、outcome評価者も盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ランダム化されたすべての患者が解析されている(ITT解析)。

◯結果
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
・単施設
・心室性不整脈で主に差がついているわけだが、あくまでサロゲートエンドポイント。
・baselineは同等だが、β遮断薬がどの程度内服していたのか、あるいは血清K値はどの程度の推移だったのかなどはわからない。

GISSI-HF試験 ロスバスタチンは慢性心不全の生命予後には寄与しない

Effect of rosuvastatin in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
Lancet. 2008 Oct 4;372(9645):1231-9

《要約》
背景
大規模な観察研究、小規模の前向き試験、無作為化試験のpost−hoc解析で、慢性心不全に対するスタチンのベネフィットが示唆されている。しかしながら、以前の試験は方法論が不十分であったため、慢性心不全に対するロスバスタチンの有効性と安全性を検証した。

方法
イタリア国内の31施設で、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験を行った。18歳以上の、NYHAⅡ-Ⅲの慢性心不全患者を、ロスバスタチ投与(10mg/日)とプラセボ投与に無作為に割り付けた。心不全の原因やLVEFは問わない。割り付けは隠匿化され、コンピュータ化した電話無作為化システムを用いた。患者は中央値3.9年のフォローアップが行なわれた。主要評価項目は全死亡、全死亡と心血管イベントによる入院である。ITT解析を行った。

結果
無作為化されたすべての患者の解析を行った。ロスバスタチン群で657例(29%)、プラセボ群で644例(28%)が死亡した(adjusted HR:1.00[95%CI:0.898−1.122)。ロスバスタチン群で1305例(57%)、プラセボ群で1283例(56%)で全死亡と心血管イベントによる入院があった(adjusted HR:1.01[95%CI:0.908−1.112)。両群で、胃腸障害が最も高頻度な有害事象であった(ロスバスタチン群34例[1%], プラセボ群44例[2%])。

結論
慢性心不全に対するロスバスタチン10mg/日の投与は安全だが、臨床的なアウトカムには影響がない。

◯この論文のPICOはなにか
P:NYHAⅡ-Ⅲの慢性心不全
I:ロスバスタチン10mg/日の内服(ロスバスタチン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:死亡、死亡と心血管イベントによる入院のco-primary endpoint

inclusion criteria:18歳以上、LVEF<40%、LVEF>40%で過去に1回以上うっ血性心不全による入院歴がある事
exclusion criteria:使用する薬剤に対する禁忌、悪性腫瘍などの併存疾患、ランダム化1ヶ月以内の治験薬の投与、ACS、1ヶ月以内の血行再建、ランダム化後3ヶ月以内に予定された心臓手術、Cr>2.5mg/dl、AST/ALTが正常上限の1.5倍以上、妊婦、授乳婦、妊娠する可能性がある女性

◯ランダム化されているか
隠匿化されたcomputed telephone randomization systemによってランダム化を行う。

◯baselineは同等か
どこに群間差があるかわからない。tableにも本文にも記載なし。
characteristics

◯症例数は十分か
プラセボ群で3年間でイベント発生が25%あり、ロスバスタチンにより15%のリスク低下すると仮定し、power90%として、1252例のイベント発生が必要と算出されている。

◯盲検化されているか
患者、治療介入者、outcome評価者は盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
不適切なインフォームドコンセントなどがあった57/4631例を除き、ITT解析が行なわれている。

◯結果
フォローアップ期間は3.9年(中央値)。
試験終了時に割り付けられた治療を行っていなかった症例が、ロスバスタチン群で790例(35%)、プラセボ群で831例(36%)あった。
result

◯感想/批判的吟味
primary endpointで有意差がないが、必要なイベント発生数は超えているので、スタチンは心不全の生命予後に本当に寄与しないのだろう。

無作為化比較試験だが、baselineで群間差が生じてしまっており、多変量解析が行なわれている。

GISSI-HF試験 n−3PUFAの予後改善効果

Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
Lancet. 2008 Oct 4;372(9645):1223-30

《要約》
背景
いくつかの疫学的実験的試験では、n-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)がアテローム血栓性冠動脈疾患や不整脈に対し良い効果を与える事が示されている。n−3PUFAが症候性心不全患者の罹病率や死亡率を改善する事ができるか検証した。

方法
イタリア国内31施設で、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験を行った。原因やLVEFにかかわらず、NYHAⅡ-Ⅲの慢性心不全患者をn−3PUFA1g/日投与群(N=3439)とプラセボ投与群(N=3481)に無作為に割り付けた。割り付けは隠匿化され、コンピュータ化された電話無作為化システムによって行なわれた。患者は中央値3.9年までフォローアップされた。主要評価項目は全死亡、全死亡と心血管イベントによる入院である。ITT解析を行った。

結果
無作為化したすべての患者を解析した。n−3PUFA群で955例(27%)、プラセボ群で1014例(29%)が死亡した(adjusted HR:0.92[95%CI:0.849−0.998])。死亡に対するNNTは56、死亡と心血管イベントによる入院に対するNNTは44であった。両群で、胃腸障害が最も高頻度の有害事象であった(n−3PUFA群96例[3%]、プラセボ群92例[3%])。

結論
n-3脂肪酸による簡便で安全な治療が、慢性心不全の全死亡や心血管イベントによる入院をわずかに抑える。

◯この論文のPICOはなにか
P:NYHAⅡ−Ⅲの慢性心不全
I:n−3PUFA850−882mg(EPA:DHA=1:1.2)の投与(n−3PUFA群)
C:プラセボの投与(プラセボ群)
O:死亡、死亡と心血管イベントによる入院のco-primary endpoint

inclusion criteria:18歳以上、LVEF>40%なら過去に心不全の入院歴があること
exclusion criteria:n−3PUFAに対する禁忌、悪性腫瘍などの併存疾患、ランダム化1ヶ月以内の治験薬の投与、ACS、1ヶ月以内の血行再建、ランダム化後3ヶ月以内に予定された心臓手術、重大な肝疾患、妊婦、授乳婦、妊娠する可能性がある女性

◯ランダム化されているか
隠匿化されたcomputed telephone randomization systemによってランダム化を行う。

◯baselineは同等か
どこに統計学的な群間差があるかわからない。表にも本文にも記載がない。
characteristics

◯症例数は十分か
3年間のフォローアップで、プラセボ群で25%の死亡率であり、n−3PUFAにより3.75%の絶対リスク低下があると仮定。αlevel0.045、power90%として、サンプルサイズが算出されているが、いくつかは記載がない。

◯盲検化されているか
double blind。outcome評価者も盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
不適切なインフォームドコンセントなどのため71/7046例が除外されている。

◯結果
フォローアップ期間3.9年(中央値)。
n−3PUFA群で1004例(29%)、プラセボ群で1029例(30%)で割り付けられた治療を中断していた。
result
(table,figureはすべて本文から引用)

◯感想/批判的吟味
無作為化比較試験なのに群間差があり、Cox比例ハザードモデルを用いて多変量解析が行なわれている。これはコホート研究ではないか。

OMEGA試験 心臓突然死に対するω−3脂肪酸の効果

OMEGA, a randomized, placebo-controlled trial to test the effect of highly purified omega-3 fatty acids on top of modern guideline-adjusted therapy after myocardial infarction.
Circulation. 2010 Nov 23;122(21):2152-9

《要約》
背景
急性心筋梗塞に対する現在のガイドラインに基づいた治療に、ω-3脂肪酸を加える事の予後的効果を検証した無作為化二重盲検試験はない。

方法・結果
OMEGA試験は、ω3アシドエチルエステル90(1g/日、1年間)が急性心筋梗塞患者の心臓突然死を抑制するか検証した、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、多施設共同試験である。副次評価項目は全死亡率と非致死的臨床的イベントである。2003年10月から2007年6月の間で、ドイツ国内の108施設で、急性心筋梗塞発症3−14日後の患者3851例(平均年齢64歳、女性25.6%)を無作為化した。緊急冠動脈造影検査が93.8%に、PCIが77.8%に施行された。365日のフォローアップ期間で、心臓突然死1.5% vs 1.5%(P=0.84), 全死亡率4.6% vs 3.7%(P=0.18), 脳血管・心血管イベントは10.4% vs 8.8%(P=0.1), 血行再建27.6% vs 29.1%(P=0.34%)という結果であった(オメガ群 vs 対照群)。

結論
ガイドラインに基づいた急性心筋梗塞治療により、心臓突然死の発生率は低く、それにω−3脂肪酸を加える事での効果は見出せなかった

◯この論文のPICOはなにか
P:急性心筋梗塞発症早期の患者
I:ガイドラインに基づいた治療に加え、ω−3アシドエチルエステル90(EPA:460mg、DHA380mg含有)を内服する(オメガ群)
C:ガイドラインに基づいた治療のみ(対照群)
O:1年間の心臓突然死

inclusion criteria:18歳以上、STEMI、non-STEMI(ローリスクの患者が多く登録され予想よりイベント発生率が低かったため、2005年4月からは、以下の基準のひとつ以上を満たす者を登録した。再灌流療法を行っていない患者、LVEF<40%、糖尿病、70歳以上)

定義
心臓突然死:胸部症状出現から1時間以内の死亡、就寝中の死亡、再灌流療法成功後の入院3週間以内の死亡

◯ランダム化されているか
ブロックランダム化が行なわれている。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢64再、3/4が男性、責任病変(LMT0.9%、LAD38%、LCx19%、RCA33%)、50%以上の狭窄(LMT3%、LAD63%、LCx45%、RCA56%)、LVEF<45%:24%、糖尿病27%、Cr>2mg/dl:2%、β遮断薬94%、AEC阻害薬/ARB90%、スタチン94%、利尿薬36%、インスリン10%。

◯症例数は十分か
対照群での1年間の死亡率が3.5%、ω−3アシドエチルエステル90により45%のリスク減少があるとαlevel2.5%(1sided)、βerror20%として、必要症例数は各群1900例と算出され、オメガ群に1940例、対照群に1911例が割り付けられている。

◯盲検化されているか
double blind trial。outcome評価者も盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
同意の撤回、ロストフォローアップを除いたmodified ITT解析が行なわれている。追跡率98.8%。

◯結果
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
GISSI-Prevenzione試験では、虚血イベントはn−3PUFA投与の有無で群間差はなかったが、突然死が有意にn−3PUFAを投与した群で少なかった。それはn−3PUFAの抗不整脈作用によるものと考察されていた。ただ、GISSI-Prevenzione試験では抗血小板薬・スタチン・β遮断薬・ACE阻害薬の内服率が非常に悪く、現在の至適薬物療法とかけ離れている印象があった。GISSI-Prevenzione試験での薬剤の投与量は、n−3PUFA:1g/日、VitE:400mg/日の容量で、OMEGA試験とn-3脂肪酸の投与量はあまり変わらない。つまり、GISSI-Prevenzione試験では認められていた突然死の予防効果が、至適薬物療法を行うことで打ち消されたと言っていいかもしれない。

ただ、このOMEGA試験でサンプルサイズが小さかったためにprimary endpointに有意差がつかなかったという可能性がある。心臓突然死が対照群で3.5%と仮定されているのはあまりにも高いと思うし、実際1.5%と予想よりも低く、それを前提に必要症例数を算出すると20000例以上になる様。そこまでサンプルを増やせば異なる結果になっていた可能性はある。

あと、日本の現状とは少し異なり、primaryPCIが行なわれたのは80%弱と少ないように思う。これは心室性不整脈が増える方向に働くため、primaryPCIが高頻度で行われる日本では、ω−3脂肪酸の抗不整脈作用がより出にくいのではないか。

Alpha OMEGA試験 低容量EPA-DHAでは心血管イベント抑制効果はない

n-3 fatty acids and cardiovascular events after myocardial infarction.
N Engl J Med. 2010 Nov 18;363(21):2015-26

《要約》
背景
前向きコホート試験や無作為化対照試験で、n-3脂肪酸の心血管疾患予防効果が示されている。我々は、心筋梗塞の既往のある患者に対し、エイコサペント酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)、α−リノレン酸(ALA)の心血管イベントへの効果を検証した。

方法
多施設、二重盲検、プラセボ対照試験にて、60−80歳の心筋梗塞の既往があり至適薬物療法が行なわれている患者4837例を、EPA-DHA入りマーガリン、それにALAを加えたマーガリン、ALAのみのマーガリン、プラセボマーガリンの4群に無作為に割り付けた。DPA-DHAは400mg/日、ALAは2g/日摂取する。主要評価項目は、致死的・非致死的心血管イベントと心臓への治療介入(PCI/CABG)の複合エンドポイントである。データはITT解析され、またCox比例ハザードモデルが用いられている。

結果
マーガリンを平均18.8g/日消費し、それにはEPA:226mg、DHA:150mg、ALA:1.9gが含まれていた。フォローアップ期間中、主要な心血管イベントは671例(13.9%)に起こった。EPA-DHA、ALAはいずれも主要評価項目をを減少させなかった(DPA-DHAのハザード比1.01、95%CI:0.87−1.17、ALAのハザード比0.91、95%CI:0.78−1.05)。主要な心血管イベントにおいて、女性のサブグループではALAが、プラセボとEPA-DHAに比べ統計学的有意差に近かった(0.73、95%CI:0.51−1.03)。

結論
至適薬物療法が行なわれている心筋梗塞の患者では、低容量のEPA-DHA、またはALAは主要な心血管イベントを抑制しなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:心筋梗塞の既往がある患者
I/C:EPA-DHA(400mg)、ALA(2g)、DPA-DHAとALA、プラセボが含有されたマーガリンの摂取(EPA-DHA群、ALA群、n-3脂肪酸群、プラセボ群とする)
O:致死的・非致死的心血管疾患(心筋梗塞、心停止、脳梗塞)とPCI/CABGの複合エンドポイント

inclusion criteria:60−80歳、10年以内に心筋梗塞の既往があること。
exclusion criteria:マーガリンの1日の消費量が10g未満、n-3脂肪酸のサプリメントの使用、1年間で5kg以上の意図しない体重減少、生命予後1年未満の悪性腫瘍。

手順:ランダム化の後、4−6週間はプラセボマーガリンを摂取する。その後、割り付けられたマーガリンを40ヶ月にわたり摂取する。マーガリンは4種類で、EPA-DHA(400mg)、ALA(2g)、DPA-DHAとALA、プラセボが含有されたものである。EPAとDHAの比率は3:2である。マーガリンはユニリーバ社が提供する。マーガリンはなにが含有されたかわからない状態で、12週おきに8個(1個250g)渡され、消費しなかったものは返却する。

◯ランダム化されているか
方法についての記載なし。

◯baselineは同等か
4群間に差はなかった。以下、ざっくりと。
年齢69歳、心筋梗塞から試験登録までの期間4.2年、糖尿病21%、薬剤(抗血栓薬97%、降圧薬90%、脂質降下薬85%、抗不整脈薬3%)、LDLコレステロール96mg/dl、HDLコレステロール50mg/dl、BMI27、喫煙者16%。

◯症例数は十分か
プラセボ群でのイベント発生率や介入によるリスク減少、powerなどについて記載なし。

◯盲検化されているか
double−blind。outcome評価者も盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
すべての患者を解析に含めるITT解析が行なわれている。

◯結果
男性3783例(78.2%)、女性1054例(21.8%)の計4837例が登録された。
マーガリンは平均で18.8g/日消費した。
EPA-DHA群では1日あたり、EPA226mg、DHA150mg摂取した。
ALA群では1日あたり、1.9g摂取した。
フォローアップ期間の中央値は40.8ヶ月であった。

result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
心筋梗塞の既往がある患者でも低容量EPA-DHAでは、二次予防効果、抗不整脈作用、生命予後の改善はみられない。

JELIS試験 冠動脈疾患に対するEPAの効果

Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis.
Lancet. 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.

《要約》
背景
長鎖n-3脂肪酸が冠動脈疾患の死亡率を改善することが、疫学や臨床のエビデンスで示されている。多くの魚を消費している日本人の高コレステロール血症患者において、エイコサペント酸(EPA)の長期投与が冠動脈イベントの予防に有効か検証した。

方法
1996年から1999年の3年間、総コレステロールが6.5mmol/L(250mg/dl)以上の18645例が登録された。スタチンに加え1日1800mgのEPAを内服する群と、スタチンのみの群に無作為に割り付け、5年間フォローアップを行った。主要評価項目は、心臓突然死、致死的または非致死的心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈形成術、ステント留置、冠動脈バイパス術である。ITT解析を行った。

結果
平均フォローアップ期間は4.6年で、主要評価項目はEPA群で262例(2.8%)、対照群で324例(3.5%)で、19%のリスク低下を認めた(P=0.011)。治療後のLDLコレステロールは両群で25%低下し、4.7mmol/Lであった。血清LDLコレステロール値は、冠動脈イベント抑制に重要な要因ではなかった。不安定狭心症と非致死的冠動脈イベントもまたEPA群で有意な低下がみられた。心臓突然死と冠動脈死に群間差はなかった。心筋梗塞二次予防のサブグループで、EPA群で冠動脈イベントは19%減少していた(EPA群158例[8.7%] vs 対照群197例[10.7%]、P=0.048)。心筋梗塞一次予防のサブグループでは、EPA群で冠動脈イベントは18%減少していたが、統計学的有意差はなかった(EPA群104例[1.4%] vs 対照群127例[1.7%]、P=0.132)。

結論
EPAは高コレステロール血症の患者において、冠動脈イベント、特に非致死的冠動脈イベントの予防に有望な治療である。

◯この論文のPICOはなにか
P:総コレステロール6.5mmol/L(250mg/dl)以上、LDLコレステロール4.4mmol/L(170mg/dl)以上の高コレステロール血症の患者
I/C:EPA1800mg/日の内服の有無
O:5年間の心臓突然死、致死的または非致死的心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈形成術、ステント留置、冠動脈バイパス術

exclusion criteria:6ヶ月以内の急性心筋梗塞、不安定狭心症、重篤な不整脈・心不全・心筋症・弁膜症・先天性心疾患、6ヶ月以内の冠動脈血行再建、重篤な肝疾患・腎疾患、悪性疾患、コントロール不良の糖尿病、ステロイドなどの薬剤性の高コレステロール血症、出血性疾患。

◯ランダム化されているか
置換ブロック法によるランダム化。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢61歳、69%が女性、LDLコレステロール180mg/dl、HDLコレステロール58mg/dl、糖尿病6%、喫煙者6%、内服薬についての記載なし。

◯症例数は十分か
primary endpointは、対照群のうち一次予防のサブグループで0.58%/年、二次予防のサブグループで2.13%/年発生し、EPAによるリスク減少が25%と仮定し、一次予防と二次予防の比率は4:1とした。αlevel0.05、power80%として、必要症例数を算出しているが、いくつかは記載がない。

◯盲検化されているか
PROBE試験(open-label)である。outcome評価者は盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
割り付けられた症例すべてが解析に含めるITT解析が行なわれている。

◯結果
二次予防のサブグループは、OMI1050例、AP2903例、PTCA・PCI・CABGの既往895例。
平均観察期間4.6年。
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
・企業がスポンサー
・企業は解析には加わっていない
・primary endpointに、重要度が異なるものをハードなものからソフトなものまで詰め込みすぎではないか
・primary endpointで有意差がついているが、不安定狭心症で差がついている(PROBE試験でソフトエンドポイントによる有意差)

GISSI-Prevenzione試験 n-3多価不飽和脂肪酸の抗不整脈作用が突然死を予防する可能性がある

Early protection against sudden death by n-3 polyunsaturated fatty acids after myocardial infarction: time-course analysis of the results of the Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell’Infarto Miocardico (GISSI)-Prevenzione.
Circulation. 2002 Apr 23;105(16):1897-903.

《要約》
背景
GISSI-Prevensione試験で、3ヶ月以内に心筋梗塞の既往のある患者において、n-3多価不飽和脂肪酸(n−3PUFA)による生命予後改善効果を検証した。

方法・結果
11323例を、至適薬物療法(OMT)と生活習慣の改善に加え、n−3PUFAとビタミンEの内服を行う群と行わない群に無作為に割り付けた。ITT解析を行った。突然死、非致死的心筋梗塞、冠動脈疾患、脳血管イベントに対するn-3PUFAの早期の有効性を検証した。生存曲線は無作為化から早期に、n−3PUFA投与によって群間差が認められ、3ヶ月の時点でn−3PUFA群で有意な低下がみられた(RR:0.59、95%CI:0.36−0.97)。特に、突然死でも4ヶ月の時点でリスク減少が認められた(RR0.47、95%CI:0.219−0.995)。6−8ヶ月の時点で、心血管、心臓、冠動脈死でも同様の傾向を認めた

結論
死亡率や突然死に対する低容量n−3PUFAの早期の効果は、薬剤の抗不整脈作用の仮説を支持する。これの結果は、これまでの動物実験のデータや疫学・臨床試験のデータと一致している。

◯この論文のPICOはなにか
P:心筋梗塞を発症して3ヶ月以内の患者
I:OMTと生活習慣の改善に加え、n−3PUFA1g/日とビタミンE400mg/日の内服(n−3PUFA群)
C:OMTと生活習慣の改善のみ
O:1年間の全死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞の複合エンドポイント

◯ランダム化されているか
記載なし。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢59歳、高血圧35%、糖尿病15%、EF>40%:86%、VT1%、運動負荷試験陽性30%、抗血小板薬90%、ACE阻害薬47%、β遮断薬44%、コレステロール治療薬5%

◯症例数は十分か
記載なし。

◯盲検化されているか
open-label。outcome評価者は盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。

◯結果
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞には群間差はなく、死亡率のみ有意に改善している。

2002年の古い論文なので致し方ないが、両群でOMTを行うとされているがそもそも現在のOMTとは異なる(抗血小板薬、ACE阻害薬、β遮断薬、コレステロール治療薬の内服率が低い)。なので、この結果をそのまま、今も使えるかは定かではない。

n−3PUFAの抗不整脈作用によって突然死が減ったということが考察されている。しかし、β遮断薬の内服率は40%程度であり、この内服率を増やしたほうが明らかに生命予後に寄与すると思う。十分な量のβ遮断薬へn−3PUFAを上乗せすることでもこの抗不整脈作用が発揮され、有意な死亡率の低下に結びつくかはわからない。

n-3脂肪酸をハイリスクな患者に使用しても、死亡率や血管イベントは減らない

n-3 fatty acids in patients with multiple cardiovascular risk factors.
N Engl J Med. 2013 May 9;368(19):1800-8

《要約》
背景
臨床試験で、心筋梗塞や心不全の既往がある患者に対するn-3多価不飽和脂肪酸の有効性は示されている。冠危険因子を複数持った患者、または心筋梗塞以外の動脈硬化性疾患を有する患者に対するこれらの治療の有効性を検証した。

方法
二重盲検、プラセボ対照臨床試験で、イタリアの860の総合診療医でフォローされている患者を登録した。冠危険因子を複数有する患者、あるいは心筋梗塞以外の動脈硬化性疾患を有する患者を組み入れた。患者は、n-3脂肪酸1g/日とプラセボに無作為化された。当初示された主要評価項目は死亡率、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞であった。1年の時点で予想されたよりイベント発生率が低く、主要評価項目は心血管死までの時間または心血管イベントでの入院までの時間と変更した。

結果
12513例が登録され、6244例がn-3脂肪酸へ、6269例がプラセボへ割り付けられた。中央値5年までのフォローアップで、主要評価項目が1478/12505例(11.9%)に起こり、n-3脂肪酸群で733/6239例(11.7%)、プラセボ群で745/6266例(11.9%)であった(調整後のHR:0.97、95%CI:0.88−1.08)。副次評価項目でも有意差はなかった。

結論
冠危険因子を複数有する患者や心筋梗塞以外の動脈硬化性疾患を有する患者の集団において、n-3脂肪酸は心血管死亡率・罹病率を低下させない。

◯この論文のPICOはなにか
P:冠危険因子を複数有する患者や心筋梗塞以外の動脈硬化性疾患を有する患者
I:1日1gのn−3脂肪酸の内服(n-3脂肪酸群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:1年後の死亡率、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞
(イベント発生率が低かったため試験途中でプロトコールの変更があり、心血管死までの時間または心血管イベントでの入院までの時間となった)

inclusion criteria:冠危険因子を複数有する患者とは以下の要因のうち4つ以上、もしくは糖尿病と以下の要因を1つ以上有する患者である(65歳以上、男性、高血圧、高コレステロール血症、喫煙者、心血管疾患の家族歴)。心筋梗塞以外の動脈硬化性疾患とは、狭心症、末梢動脈疾患、脳梗塞やTIAの既往、動脈血行再建術の既往である。
exclusion criteria:心筋梗塞の既往、n-3脂肪酸へのアレルギー、妊娠、生命予後の短い併存疾患

◯ランダム化されているか
電話を用いたcomputer-generated randomizationで隠匿化されている。

◯baselineは同等か
男性とカルシウム拮抗薬の内服の割合が、n-3脂肪酸群で若干多いが、他は同等。以下、ざっくりと。
年齢64例、男性60%、狭心症12%、脳梗塞5%、末梢動脈疾患8%、高血圧84%、高高レステロール血症70%、糖尿病60%、喫煙者22%、ACEI/ARB65%、βblocker20%、インスリン6%、抗血小板薬22%。

◯症例数は十分か
当初のprimary endpointが1年で2%起こるという仮定だったが、実際には1.4%であり、プロトコールの変更を行っている。変更後のprimary endpointはプラセボ群で15%/5年、リスク減少は15%、脱落が10%と仮定し、power90%、αlevel0.05で必要症例数は11200例と算出されている。n-3脂肪酸群6244例、プラセボ群6269例の計12513例が登録されている。

◯盲検化されているか
double blind。
outcome評価者や解析者も盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
modified ITT解析。脱落は8例。

◯結果
n-3脂肪酸群では17.9%が、プラセボ群では19.4%で試験を中止している。

n-3脂肪酸群 vs プラセボ群、HR(95%CI)
primary endpoint:11.7% vs 11.9%, 0.97(0.88-1.08)
per protocol解析では
primary endpoint:10.3% vs 10.1%, 1.01(0.89-1.14)
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
・企業がスポンサー
・企業は解析に加わっていない
・プロトコール変更
・結局primary endpointで有意差がつかなかった

冠危険因子を複数有する患者、あるいはすでに動脈硬化性疾患を有する患者であっても、n−3脂肪酸には死亡率や血管イベントを改善する効果はない。