DECREASE-V試験 予防的血行再建の長期成績

Long-term outcome of prophylactic coronary revascularization in cardiac high-risk patients undergoing major vascular surgery (from the randomized DECREASE-V Pilot Study).
Am J Cardiol. 2009;103:897-901

これは、リスクの高い患者を対象に、大血管手術の前に血行再建を行うことで、周術期の心血管イベントが減るかどうかを検証したDECREASE-V試験の長期成績である。DECREASE-V試験の30日、1年でのoutcomeはこちらを参照。

◯この論文のPICOはなにか
P:腹部大動脈や下肢動脈の手術が予定されており、負荷試験にて広範囲の心筋虚血が証明された患者
I:術前に血行再建を行う(血行再建群)
C:薬物療法のみ(非血行再建群)
O:術後30日までの全死亡、非致死的心筋梗塞の複合エンドポイント

inclusion criteria:70歳以上、狭心症、陳旧性心筋梗塞(病歴、異常Q波)、代償性うっ血性心不全、糖尿病へ薬物療法、慢性腎臓病、脳血管障害の既往

手順:3つ以上のリスクファクターを持ち、負荷試験(ドブタミン負荷心エコー/ドブタミン負荷もしくはジピリダモール負荷心筋シンチグラム)によって広範囲の虚血が証明された患者を、血行再建群と非血行再建群に割り付ける。血行再建としてPCIとCABGのいずれを行うかは主治医が決定する。大血管手術後は1,3,7,30日後に血清トロポニンTの測定と心電図検査を行う。外来に3ヶ月おきに通院し、問診と心電図検査を行い1年間フォローアップする。

◯ランダム化されているか
computer algorithmによって割付を行う。封筒法を用いている。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢70歳、狭心症50%、心筋梗塞の既往100%、うっ血性心不全と脳血管障害が40%、β遮断薬70%、ACE阻害薬50%、スタチン60%、大腿-膝窩動脈手術が半分でもう半分はそれよりも近位部の手術、2枝疾患が1/4、3枝疾患が2/3、LM病変8%。

◯症例数は十分か
DECREASE-Ⅰ試験をもとにprimary endpoint33%、85%のリスク減少があると仮定し、power93%、αlevel5%として、必要症例数は100例と算出されている。血行再建群49例、非血行再建群52例の計101例が登録されている。

◯盲検化されているか
試験の性質上、open label。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。

◯結果
血行再建群49例、非血行再建群52例の計101例で、PCIが32例に施行されている。2例にBMSが、30例にDESが使用されている。

観察期間は2.8年。非血行再建群のうち、フォローアップ期間内に血行再建を行ったのは2例であった(1例はUAPのためにCABGが、もう1例は狭心症の症状増悪のためにPCIが行われている)。

血行再建群vs非血行再建群、HR(95%CI)
primary endpoint:49% vs 42%, 1.51(0.89-2.57)
生存率:64% vs 61%, 1.18(0.63-2.19)

周術期はステント血栓症や重大な出血があり、それが予後に影響を与えた可能性があった。しかし、30日後以降の解析を行っても、両群間に有意差はなかった。

◯感想/批判的吟味
大血管手術を行うハイリスクな患者に、術前に血行再建を行っても長期予後は変わらない。血行再建といっても2/3がPCIで、かつDESが使用されている。なので、これによる周術期の塞栓や出血が増え、悪影響を及ぼした可能性がある。

PCIでは心筋梗塞は予防できないので、血行再建をCABGに限ると異なる結果が出たかもしれない。また、DECREASE-V試験は死亡率が非常に高い。これは冠動脈疾患によるものだけではなく、併存疾患の重症度も関与しているだろう。

DECREASE-V試験 ハイリスク手術・ハイリスク患者での予防的血行再建

A clinical randomized trial to evaluate the safety of a noninvasive approach in high-risk patients undergoing major vascular surgery: the DECREASE-V Pilot Study.
J Am Coll Cardiol. 2007;49:1763-9

◯この論文のPICOはなにか
P:腹部大動脈や下肢動脈の手術が予定されており、負荷試験にて広範囲の心筋虚血が証明された患者
I:術前に血行再建を行う(血行再建群)
C:薬物療法のみ(非血行再建群)
O:術後30日までの全死亡、非致死的心筋梗塞の複合エンドポイント

inclusion criteria:70歳以上、狭心症、陳旧性心筋梗塞(病歴、異常Q波)、代償性うっ血性心不全、糖尿病へ薬物療法、慢性腎臓病、脳血管障害の既往

手順:3つ以上のリスクファクターを持ち、負荷試験(ドブタミン負荷心エコー/ドブタミン負荷もしくはジピリダモール負荷心筋シンチグラム)によって広範囲の虚血が証明された患者を、血行再建群と非血行再建群に割り付ける。血行再建としてPCIとCABGのいずれを行うかは主治医が決定する。大血管手術後は1,3,7,30日後に血清トロポニンTの測定と心電図検査を行う。外来に3ヶ月おきに通院し、問診と心電図検査を行い1年間フォローアップする。

◯ランダム化されているか
computer algorithmによって割付を行う。封筒法を用いている。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢70歳、狭心症50%、心筋梗塞の既往100%、うっ血性心不全と脳血管障害が40%、β遮断薬70%、ACE阻害薬50%、スタチン60%、大腿-膝窩動脈手術が半分でもう半分はそれよりも近位部の手術、2枝疾患が1/4、3枝疾患が2/3、LM病変8%。

◯症例数は十分か
DECREASE-Ⅰ試験をもとにprimary endpoint33%、85%のリスク減少があると仮定し、power93%、αlevel5%として、必要症例数は100例と算出されている。血行再建群49例、非血行再建群52例の計101例が登録されている。

◯盲検化されているか
試験の性質上、open label。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。

◯結果
result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
CARP試験で予防的血行再建群と非血行再建群とで差がつかなかった理由には3つあると思う。それは、PCIもCABGも一緒くたにしていること、1VD・2VDとcoronary riskの小さい患者を対象にしていること、そして内的妥当性の問題(必要症例数の92%しか集まらず、割り付けられた血行再建を行わなかったのも87%いた)。

このDECREASE-V試験では、CARP試験と異なり3VDとLM病変で3/4を占めており、心イベントリスクの高い患者が対象になっている。そして、RCRIは記載されていないがbaseline characteristicsをみるに、平均で2−3ぐらいはあるのではないかと思う。ハイリスク手術で中等度以上のリスクを持った患者に対する予防的血行再建の有効性は示されなかった。こちらの方が先に行われた臨床試験だが、この試験と同じような対象で異なった結果であった。

ハイリスクな非心臓手術 術前の血行再建の有効性

Systematic strategy of prophylactic coronary angiography improve long-term outcome after major vascular surgery in medium- to high-risk patients
J Am Coll Cardiol. 2009;54:989-96

◯この論文のPICOはなにか
P:中等度から高度の手術リスク(RCRI≧2)を有し、大血管手術(腹部大動脈瘤:AAA、大動脈腸骨動脈閉塞)を予定されている患者
術前の血行再建の適応を
I:術前のルーチンの冠動脈造影検査によって判断する(systematic群)
C:非侵襲的検査後の冠動脈造影検査によって判断する(selective群)
O:MACE(非致死的心筋梗塞、脳血管障害、うっ血性心不全、再血行再建)

虚血評価のための非侵襲的検査は、ジピリダモール-タリウム心筋シンチグラム(aTS)とドブタミン負荷心エコーで行う。

血行再建と大血管手術は段階的に行われた。腹部大動脈瘤が6cm以上の場合と切迫破裂の場合は同時手術が行われた。PCIをベアメタルステントを用いて行われ、アスピリン100mg/日の内服に加え、クロピドグレル75mg/日もしくはチクロピジン250mg/日を内服し、手術はPCI後30−60日以内に行われた。手術7日前にクロピドグレルとチクロピジンは中止され、ヘパリンの投与が行われた。

◯ランダム化されているか
computer-genarated randomized listによって2群に分ける。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢73歳、1/4がNYHAⅢ/Ⅳ、1/4がCCSⅢ/Ⅳ、AAAと大動脈腸骨動脈閉塞が2:3、DM40%、1/3が虚血性心疾患、CABGの既往15%、脳血管障害20%、1/3がCr1.7mg/dl以上、RCRI3.3、ASA1.7。
血行再建を行った患者の10%がLM病変、40%が3枝病変であった。

◯症例数は十分か
CARP試験では2.7年のフォローアップ期間で、死亡率が血行再建群、非血行再建群でそれぞれ22%と23%で、30日以内のMACEが20%であった。よって、長期・30日後のMACEのリスク減少が10%あると仮定し、power80%、αlevel0.05として、必要症例数200例と算出されている(ただ、MACEをどれくらいと仮定したかは記載なし)。

◯盲検化されているか
試験の性質上、open label。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析。

◯結果
result

◯感想/批判的吟味
CARP試験では、この試験と同様に大血管手術を対象し、術前の血行再建によって周術期の心血管イベントを抑制することはできなかった。しかし、対象となった患者は左室機能が正常の1枝疾患・2枝疾患であり、この試験よりリスクの低い患者群を対象としている。この試験では3枝疾患とLM病変で半分を占めている。Nは小さいものの、死亡率もsystematic群が少ない傾向にあり(1.9% vs 6.8%, P=0.08)、ルーチンの冠動脈造影によって血行再建の適応を考慮した方が予後が改善する可能性がある。

大手術でかつ、患者のリスクも高い場合には、ルーチンの冠動脈造影検査を考慮すべき。

慢性心不全に対するピモンベンダンの効果 EPOCH試験

Effects of pimobendan on adverse cardiac events and physical activities in patients with mild to moderate chronic heart failure: the effects of pimobendan on chronic heart failure study (EPOCH study).
Circ J. 2002 Feb;66(2):149-57.

◯この論文のPICOはなにか
P:安定しているNYHAⅡもしくはⅢの慢性心不全
I:ピモベンダン2.5mg分2(ピモベンダン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:52週での、死亡、心不全、心臓突然死/不整脈突然死、心不全増悪による入院の複合エンドポイント

inclusion criteria:20−85歳、十分な薬物療法でも症状を有する状態、LVEF≦45%
exclusion criteria:重症の心室もしくは心房性不整脈、高度房室ブロック、弁膜症性心疾患(狭窄症)、閉塞性心疾患、感染性心疾患、3ヶ月以内の心筋梗塞、3ヶ月以内の心臓手術、重症な脳血管障害・呼吸器疾患・肝疾患・腎疾患、妊産婦

◯ランダム化されているか
LVEF・心不全の原因・NYHA分類・登録施設の4変数によって調整されたdynamic balancing methodによって割付が行われてる。

◯baselineは同等か
同等かどうかの記載がない。以下、ざっくりと。
年齢62歳、60%がDCMで1/3が虚血性心疾患、NYHAⅡ:Ⅲ=2:1、LVEF33%、SBP120mmHg、HR73/min、薬物治療(ACE阻害薬:65%、β遮断薬20%、抗不整脈薬1/3、利尿薬90%、ジギダリス60%)

◯症例数は十分か
プラセボ群でprimary endpointの発生が27−29%、Hazard ratio0.4−0.5と仮定し、typeⅠ error5%, power80%として、必要症例数は各群130例と算出されている。ピモベンダン群147例、プラセボ群151例登録されている。

◯盲検化されているか
double blind

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
臨床状況の変化・同意の撤回・protocol違反などの症例を除いたmodified ITT解析。各群138例ずつ解析されている。

◯結果
primary endpointに有意差なし。
ピモベンダン群でNYHA分類が有意に改善(34% vs 20%), LVEFも有意に改善(32%→38% vs 32%→35%)。

◯感想/批判的吟味
・症例数は十分集まっているが、primary endpointに有意差がついていない。
・2002年の論文だからだろうか、慢性心不全に対する薬物療法が全くもって不十分。

BioFreedom / ポリマーフリー薬剤コーティングステントとBMSとの比較 LEADERS FREE試験

Polymer-free Drug-Coated Coronary Stents in Patients at High Bleeding Risk.
N Engl J Med. 2015 Oct 14. [Epub ahead of print]

◯この論文のPICOはなにか
P:出血リスクの高い冠動脈疾患患者
I:polymer-free drug-coated stent(BioFreedom群)
C:ベアメタルステント(BMS群)
O:primary safety endpointは、心臓死、心筋梗塞、ステント血栓症の複合エンドポイント。primary efficacy endpointは虚血による標的病変再血行再建。

inclusion/exclusion criteriaはSupplementary Appendixにしか記載がないので省略。

手順:割り付けられたステントを1本以上使用し治療を行う。DAPTはアスピリン75−250mg/日とクロピドグレル75−150mg/日が推奨されている。DAPT期間は1ヶ月。

◯ランダム化されているか
Web-based systemもしくはtelephone interactive voice-response systemを使用しランダム化を行う。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢75歳、1/3がDM、1/4がAMI、15%がUAPで残りが狭心症、20%が三枝疾患、1/3が心房細動合併、PCI後も抗凝固療法を行ったのは1/3、Hb11g/L未満もしくは4週間以内の輸血が15%、脳出血の既往1%、Ccr<40ml/minが20%、3年以内の悪性腫瘍10%。

◯症例数は十分か
safety endpointがBMS群で8%起こり、lost follow upが5%、非心臓死が3%で起こると仮定し、非劣勢マージンを3.2%、power80%、αlevel0.05として必要症例数は各群1228例と算出されている。BioFreedom群1239例、BMS群1227例登録されおり、BMS群で1例のみであるが必要症例数には達していない。

◯盲検化されているか
double blind。アウトカム評価者や解析者も盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
PCIを行わなかった症例は解析に含まれていない。modified ITT解析である。

◯結果
BioFreedom群 vs BMS群, HR(95%CI)

primary safety endpoint
9.4% vs 12.9%, 0.71(0.56-0.91)

efficacy endpoint
5.1% vs 9.8%, 0.50(0.37-0.69)

◯感想/批判的吟味
・企業がスポンサーの試験。
・実行委員会のメンバーにスポンサー企業の人間が入っているが、スポンサーはデータの収集や解析には加わっていない。
・primary safety endpointは心臓死、ステント血栓症では差がなく、心筋梗塞で差がついている。自然発生とステント内再狭窄に関連した心筋梗塞が多かった様。
・ステント血栓症は2ndDESより多い(出血リスクが高いと、塞栓リスクも高いためではないかとdiscussionされている)

multivessel PCIと血栓吸引 ACC/AHA STEMIガイドライン 2015年改訂

2015 ACC/AHA/SCAI Focused Update on Primary Percutaneous Coronary Intervention for Patients With ST-Elevation Myocardial Infarction: An Update of the 2011 ACCF/AHA/SCAI Guideline for Percutaneous Coronary Intervention and the 2013 ACCF/AHA Guideline for the Management of ST-Elevation Myocardial Infarction: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines and the Society for Cardiovascular Angiography and Interventions.
Circulation. 2015 Oct 21.[Epub ahead of print]

AHAのSTEMIのガイドラインが改訂された。
multivessel PCI(残存狭窄を有するSTEMI患者へのnoninfarct artery:非責任病変へのPCI)について。それと血栓吸引について。

まず、multivessel PCIについて。
改訂前のガイドラインでは、血行動態が安定したSTEMIに対するprimary PCIの際に、一期的にnoninfarct arteryへPCI(multivessel primary PCI)を行うことを禁じていた(classⅢ:Harm)。観察研究やメタ解析では、multivessel primary PCIは予後が悪いことが示されていたからだ。

4つのRCTから、multivessel PCI(primary/stagedともに)が有益かつ安全である可能性が示された。

PRAMI試験
症例数:465例
primary endpoint:心臓死、非致死的心筋梗塞、難治性狭心症
multivessel primary PCI群:9%、culprit artery-only PCI群:22%
HR:0.35(95%CI:0.21−0.58)

CvLPRIT試験
症例数:296例
観察期間:12ヶ月
primary endpont:全死亡、心筋梗塞再発、心不全、虚血による再血行再建
multivessel PCI群:10%、culprit artery-only PCI群:21%
HR0.49(95%CI:0.24−0.84)

DANAMI3 PRIMULTI試験
症例数:627例
観察期間:12ヶ月
非責任病変に対しFFR施行
primary endpoint:全死亡、非致死的心筋梗塞、非梗塞病変の虚血による再血行再建
multivessel PCI群:13%、culprit artery-only PCI群:22%
HR0.56(95%CI:0.38−0.83)

PRAGUE試験
症例数:214例
70%以上の残存狭窄に対しPCI施行
multivessel PCI vs culprit artery-only PCI
primary endpoint:全死亡、非致死的心筋梗塞、脳梗塞
38ヶ月の観察期間でprimary endpointに有意差なし

これらの試験の結果をもとに、multivessel primary PCIをclassⅢ:HarmからclassⅡbに変更した。また、staged PCIも考慮可。ただし、これはルーチンのmultivessel PCIを推奨するものではない。症状や非侵襲的検査を元に判断すべきである。

続いて、血栓吸引について。
2013年まではcalssⅡaでreasonableであるとされていたが、今回の改訂ではclassⅢ:no benefitと推奨を引き下げられた。以前のガイドラインは2つのRCTと1つのメタ解析(Nの多いTAPAS試験に引っ張られている)をもとに推奨レベルが決められた。

それ以降に行われた試験として、LADproximalとLADmidの病変を対象にしたINFUSE-AMI試験では血栓吸引により梗塞サイズは変わらず、7200例を対象にしたTASTE試験でも30日後、1年後の死亡・心筋梗塞再発・ステント血栓症・標的病変再血行再建の複合エンドポイントは、血栓吸引を行っても改善しなかった。

また、10000例を対象にしたTOTAL試験では、血栓吸引を行っても180日後の心血管イベント(心臓死、心筋梗塞再発、心原性ショック、NYHAⅣの心不全)は低下しなかった。そして、わずかではあるが血栓吸引群で脳梗塞が増加した。

この3試験を含んだ17試験でメタ解析を行った結果(20960例)では、死亡、心筋梗塞再発、ステント血栓症は、血栓吸引によって減少せず、脳梗塞を増加させるという結果であった。

いくつかのstudyでは、より大きい血栓でdistal embolism, no-reflow, 重大な心イベントのリスクであると報告されているが、TASTE試験やTOTAL試験ではそれは示されなかった。

以上のことから、primary PCIにおけるルーチンの血栓吸引の推奨レベルが、ⅡaからⅢ:no benefitに引きさげられた。ただし、bailoutのための血栓吸引はデータが不十分でありⅡbである。

コルヒチンはアブレーション後の心房細動の再発を抑制する 

Colchicine for prevention of early atrial fibrillation recurrence after pulmonary vein isolation: a randomized controlled study.
J Am Coll Cardiol. 2012;60:1790-6

◯この論文のPICOはなにか
P:発作性心房細動(Paf)
I:コルヒチン:1mg分2の内服(コルヒチン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:心房細動(AF)の再発

inclusion criteria:少なくとも12誘導心電図で2回以上Pafが確認されている、抗不整脈薬(1c群/Ⅲ群)の使用下でPafの再発が1回以上ある

exclusion criteria:80歳以上、活動性の炎症性疾患や感染症、悪性腫瘍、ステロイドなどの免疫抑制薬の使用、中等度から高度の肝機能障害(Child B/C)、高度腎機能障害(eGFR<30ml/min/1.73m2)、アドヒアランス不良

手順:2ヶ月間のrun-in periodあり。抗不整脈薬は中止し、その他の薬剤は継続。ラジオ波アブレーションカテーテルを用いて、肺静脈焼灼術(PV isolation)とleft atrial isthmusのアブレーションを行う。術後3ヶ月は抗凝固療法を行う。術後の抗不整脈薬の使用は禁止しており、ジヒドロピリジンも禁止だが、β遮断薬は心不全・冠動脈疾患などで以前から内服している場合に限り継続可。コルチヒン・プラセボの内服は手術当日から。

AF再発の定義:心房粗動やmacro-re-entrant trial tachycardia(MART)も再発に含める。症候性AF、受診時の心電図、30秒以上のAFが月2回以上認めること(3ヶ月間で48時間ホルター心電図を6回行う)

◯ランダム化されているか
randomized trialとの記載はあるが、方法についての記載なし。

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢62歳、喫煙・高血圧・糖尿病・冠動脈疾患も同等。1/4が心不全、LVEF55%、左房径43mm、手術時間は3時間ほど、PV isolation success99%、β遮断薬は35%が内服していた。

◯症例数は十分か
AF再発が50%でコルヒチンにより50%のリスク減少があると仮定し、power80%、αlevel0.05とし、必要症例数は160例と算出されている。コルヒチン群85例、プラセボ群85例、計170例が登録されており、症例数は十分である。

◯盲検化されているか
double blind study

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
1回以上受診しなかった場合や1回以上ホルター心電図を行わなかった場合は解析から除外する。コルヒチン群で4例、プラセボ群で5例が除外されており、追跡率は94%。

◯結果
コルヒチン群 vs プラセボ群、OR(95%CI)
primary endpoint:16% vs 33.5%、0.38(0.18-0.80)
result
論文より引用

高血圧や左房径が再発の予測因子であった。

また、この試験ではCRPやIL−6などの炎症マーカーも測定されており、コルチヒチンによってそれらの値が低下している症例ほどAF再発は抑えられていた。

予測因子
本文より引用

◯感想/批判的吟味
高血圧の有無、左房径、炎症マーカーがAF再発の予測因子。CRPやIL−6はコルヒチン投与によりday4では有意に抑制されている。コルヒチンの抗炎症作用がAF再発の抑制につながったと考えられる。心房細動ではアブレーション後早期の再発が、晩期の再発の予測因子としてあげられており、コルヒチンにより早期のAF再発が抑制されたことで、より長期のデータの改善が期待される。

STEMIに対するルーチンの血栓吸引は予後を改善しないばかりか、脳梗塞を増やす可能性がある TOTAL試験

Outcomes after thrombus aspiration for ST elevation myocardial infarction: 1-year follow-up of the prospective randomised TOTAL trial
Lancet 2015 Oct 12 [Epub ahead of print]

◯この論文のPICOはなにか
P:発症12時間以内のSTEMI
I:血栓吸引とPCIを行う(PCI+TA群)
C:PCIのみ行う(PCI群)
O:心血管死、心筋梗塞の再発、心原性ショック、NYHAclassⅣの心不全の複合エンドポイント

inclusion criteria:18歳以上、発症12時間以内のSTEMI
exclusion criteria:CABG後、血栓溶解療法

手技:血栓吸引は病変部を通過させる前に開始する。血栓吸引カテーテルをガイディング内に戻す時は、ガイディングカテーテルを冠動脈にエンゲージさせる。塞栓症を防ぐため最後にガイディングカテーテル内を吸引する。

◯ランダム化されているか
computerised central systemによるランダム割付。

◯baselineは同等か
ざっくりと。年齢60歳、KillipⅡ度以上が4%、LAD病変40%、糖尿病20%、TIMI thrombus grade(grade4=血管径の2倍以上のsizeの血栓:15%,grade5=完全閉塞:65%)、DES45%、BMS52%、1年後の薬物療法(アスピリン95%、クロピドグレル45%、β遮断薬80%、スタチン94%)

群間差があったのは、onset to hospital arrival timeとGPⅡa/Ⅲb阻害薬の使用率で、それぞれ128分 vs 120分、23% vs 25%であった(PCI+TA群 vs PCI群)。

◯症例数は十分か
primary outcomeが14%に起こると仮定し、必要症例数は4000例と算出していたが、中間解析でprimary outcomeが7%であったため、必要症例数を10700例に修正している。power80%、20%のリスク減少。

◯盲検化されているか
患者、治療介入者は盲検化されていないが、アウトカム評価者と解析者は盲検化されている。

◯すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
PCIを行った症例のみ解析に含めるmodified ITT解析。

◯結果
PCI+TA群の95%が血栓吸引を施行し、うち93%で血栓吸引カテーテルが病変を通過している。また、PCI群ではbailout目的で7%で血栓吸引を施行している。

PCI+TA群 vs PCI群、HR
primary endpoint:7.8% vs 7.8%, 1.00(0.87-1.15)
心血管死:3.6% vs 3.8%, 0.93(0.76-1.14)
心筋梗塞の再発:2.5% vs 2.3%, 1.05(0.82-1.36)
心原性ショック:1.9% vs 2.1%, 0.90(0.68-1.19)
心不全:2.1%vs 1.9%, 1.10(0.90-1.14)
明確なステント血栓症:1.3% vs 1.5%, 0.89(0.63-1.24)
脳梗塞:1.2% vs 0.9%, 1.66(1.10-2.40)

◯感想/批判的吟味
primary endpointでは有意差はなかった。

以前、6ヶ月でのデータがpublishされていて、PCI+TA群で脳梗塞が多いと話題になった。今回の12ヶ月でのデータでは、6ヶ月以降に発症数に差がなく、12ヶ月の時点でも有意差が付いている。しかも発症がPCI施行数日後ということで、下のKaplan-Meier曲線も1ヶ月以内で徐々に差がついている感じ。なので、手技に関連したものとは考え難い。
stroke
NEJM2015;372:1389−1398より引用

PCI+TA群では1.2%/年で脳梗塞を起こしており、実感としてはもう少し低いのではないかと思ってしまう。脳梗塞をprimary endpointに設定した試験ではないし、発症した症例数も多くないので偶然による誤差の可能性はある。ただ、メタアナリシスでは血栓吸引を行うと脳梗塞が有意に多くなるらしい。
meta-analysis
本文より引用

血栓吸引の予後をみた試験では、このTOTAL試験が最も症例数が多く、TASTE試験が7000例で、他の試験は1000例に満たない。なので、TOTAL試験の結果によって引っ張られてしまい、差がついている可能性がある。

心臓バイパス術後の二次予防 - AHA Scientific Statement –

Secondary prevention after coronary artery bypass graft surgery: a scientific statement from the American Heart Association.
Circulation. 2015;131:927-64

◯抗血小板療法
1.グラフト閉塞予防・心イベント抑制のため、術前からアスピリン(81−325mg/日)内服と、術後6時間以内の内服再開 -classⅠ-
2.off−Pump CABGでは、グラフト閉塞予防のため1年間のDAPT(アスピリン162mg/日、クロピドグレル75mg/日)の内服 -classⅠ-
3.アスピリンが内服できない場合に、クロピドグレル75mg/日の内服 -classⅡa-
4.ACS合併の場合にアスピリンに加えプラスグレルかチカグレロルの内服 -classⅡa-
5.アスピリン抵抗性予防のためアスピリン単剤投与の場合は、low dose(81mg)よりhigh dose(325mg)がよいかもしれないが、ベネフィットはよく知られていない -classⅡa-
6.ACS非合併のon-Pump CABGでのDAPT -classⅡb-

◯抗凝固療法
1.ワルファリンの長期投与が必要な患者(心房細動、静脈血栓塞栓症、機械弁)以外にルーチンでワルファリンを投与すべきではない -classⅢ-
2.安全性のデータが出ない限り、術後早期にNOACを使用しない -classⅢ-

◯資質管理
1.禁忌がない限り、術前からスタチンを使用 -classⅠ-
2.75歳未満では、高容量スタチン療法(アトルバスタチン40−80mg、ロスバスタチン20−40mg) -classⅠ-
3.高容量スタチン療法の不耐例や薬物相互作用のある患者への中容量スタチン療法 -classⅠ-
4.周術期のスタチンの中止 -classⅢ-

◯β遮断薬
1.禁忌がない限り、術後の心房細動(AF)予防のため、β遮断薬を内服すること -classⅠ-
2.陳旧性心筋梗塞(OMI)の既往がある患者へのβ遮断薬投与 -classⅠ-
3.左室機能低下例に対するβ遮断薬の投与 -classⅠ-
4.CABG後に降圧のためβ遮断薬を用いる -classⅡb-

◯高血圧
1.禁忌がない限り、AF予防目的・降圧目的にβ遮断薬を使用すること -classⅠ-
2.recentMI・左室機能不全・糖尿病(DM)・慢性腎臓病(CKD)のある患者へ、術後にACE阻害薬を投与すること -classⅠ-
3.140/85mmHg未満を目標にした降圧管理(理想的な降圧目標は明らかではない) -classⅡa-
4.β遮断薬やACE阻害薬の使用でも降圧目標を達成しない場合の、カルシウム拮抗薬や利尿薬の投与 -classⅡa-
5.OMIや左室機能不全がない患者に、慢性期の降圧管理としてβ遮断薬以外を考慮する -classⅡb-
6.OMI、左室機能不全、DM、CKDがない患者への、術後早期のACE阻害薬の開始 -classⅢ-

◯OMI、左室機能不全
1.禁忌がない限り、EF40%未満の患者へのβ遮断薬の投与 -classⅠ-
2.禁忌がない限り、EF40%未満もしくはOMIの患者へのACE阻害薬やARBの投与 -classⅠ-
3.禁忌がない限り、NYHAclassⅢorⅣの症状を有するEF35%未満の患者への抗アルドステロン薬の追加 -classⅡa-
4.EF35%で、術後3ヶ月までは心臓突然死予防目的にICDの植え込みを行わない -classⅢ-

◯DM
1.大血管あるいは小血管の糖尿病合併症を予防するため、HbA1c7%を目標にする -classⅠ-

◯喫煙
1.短期・長期のアウトカムの改善のために禁煙すること -classⅠ-
2.退院後にニコチン代替療法を行うこと -classⅡa-
3.入院中にニコチン代替療法を行うこと -classⅡb-

◯心臓リハビリテーション
1.術後早期の心臓リハビリテーションの開始 -classⅠ-

◯メンタルヘルスと認知機能低下
1.プライマリケア医とメンタルヘルス専門医がうつ病のスクリーニングを行うこと -classⅡa-
2.術後のうつ病に対する認知行動療法やケア -classⅡa-

◯肥満とメタボリックシンドローム
1.BMIが正常であっても、腹囲や臀囲の測定および腹囲殿囲比の計測 -classⅡa−
2.ライフスタイルへの介入なされているにもかかわらず有意な減量がdekiteinaiBMI35以上の患者に対する肥満手術 -classⅡb−

◯ビタミン/サプリメント
1.ビタミン欠乏がある患者へのビタミンの補充 -classⅡb−
2.術後のAF予防にオメガ3系脂肪酸や抗酸化ビタミンを投与すること -classⅡb−

◯ワクチン
1.禁忌がない限り、毎年インフルエンザワクチンを接種すること -classⅠ−

生体吸収性マグネシウムスキャフォールドの6ヶ月の臨床成績 BIOSOLVE-Ⅱ試験

Safety and performance of the second-generation drug-eluting absorbable metal scaffold in patients with de-novo coronary artery lesions (BIOSOLVE-II): 6 month results of a prospective, multicentre, non-randomised, first-in-man trial.
Lancet. 2015 Oct 9. [Epub ahead of print]

◯この論文のPICOはなにか
P:安定狭心症、不安定狭心症、無症候性心筋虚血
I:生体吸収性マグネシウムスキャフォールド(DREAM 2G)の留置
O:セグメント内の遠隔期損失径(LLL:late lumen loss)
セグメント内とは、スキャフォールドの前後5mmまでを含める。

inclusion criteria:18−70歳、reference2.2−3.7mm、病変長21mm以下、50−99%狭窄、
exclusion criteria:LVEF30%未満、血栓性病変、高度石灰化、三枝病変、入口部病変、2.0mm以上の側枝を有する病変、バイパスグラフト、前拡張に失敗した症例

◯baseline
ざっくりと。年齢65歳、男女比2:1、DM30%、喫煙歴50%、腎不全3%、安定狭心症70%、不安定狭心症と無症候性心筋虚血15%ずつ、病変長12mm、reference2.7mm

◯結果
123病変、フォローアップ率99%。
result

◯Discussion/感想
金属製スキャフォールドの方が、radial strengthが強く、recoilが少ない。そして、一回の拡張で留置することができる。薬物溶出性ではない生体吸収性マグネシウムスキャフォールドではLLLが大きく、薬剤溶出性にすることでLLLは縮小したが満足いく結果ではなかった。スキャフォールドのデザインなどを変更し、radial forceやflexibilityを改善したものがDREAM 2Gである。それにより、LLLを0.52mmから0.27mmに0.25mm縮小した(48%)。これはABSORBより若干よい結果であった(純粋な比較はできないが)。

MACEをoutcomeにしたDESとの比較、ひいては生体吸収性スキャフォールド間での比較に期待。