発熱+消化器症状 誰も教えてくれなかった風邪の診かた

外来診療をやっていて、消化器症状には苦労する。消化器症状を主訴にくる循環器疾患であれば見逃さないが、消化器疾患であれば悩むことが多い。なので、こういった本は非常に参考なる。

胃腸炎:ウイルス性、細菌性かの鑑別は困難
細菌性であっても多くはself-limited
1)38℃以上の発熱、2)下痢が6回以上、3)腹痛が強い場合
がその鑑別だが、脱水を来していないかがより重要である。

人工物など感染リスクがある人には抗生剤投与を考慮

カンピロバクター腸炎は先行する高熱がある。

ウイルス性腸炎のnatural coarceを知ること。
最初は痛みが心窩部で嘔気・嘔吐が中心で24時間以内にピークアウト。その後に頻回の水様便になる。それから逸脱するものは、ほかの疾患も念頭に置かないといけない。

誤診されやすいもの
・虫垂炎 右下腹部へ痛みが移動するなら受診を勧める
・心筋梗塞
・DKA 頻呼吸、頻回な嘔吐、口腔内乾燥著明 ⇒ 尿ケトンcheck
・下痢 本当に下痢? 消化管出血ということも
・小脳梗塞 突然発症の嘔吐

参考:誰も教えてくれなかった風邪の診かた 岸田直樹著

医学統計の基礎のキソ まとめ

”比較するグループ間に偶然の差しかない”という帰無仮説(null hypothesis)をたて、検証する方法を仮説検定という。

P値のPは、probabilityのP。P<0.05を有意差ありとしているのは常識的にみてそうだから。P値ではどれくらいの差があるかはわからない。差が知りたいなら信頼区間(confidence interval)をチェックする。P>0.05なら、グループ間に本当に差があるかどうかはわからない。

平均値(mean)=すべての値の総和を人数でわったもの
中央値(median)=大きい順に数えて、真ん中の人の値

データにばらつきがないなら、平均値と標準偏差(standard deviation;SD)でばらつきを表すことができる。平均値±2SDに全体の95%が存在する。データにばらつきがあるなら、中央値と四分位範囲(inter-quartile range)で表す。

相関:あるひとつのデータが変化することで、別のデータもそれに伴い変化するかどうか
相関関係:相関係数であらわすことができる。ピアソンのr。-1から1までで、-1と1に近づくと強い相関があるということ。相関があるなら、一方の値からもう一方の値を計算できる。その統計法を回帰(regression)という。

研究の質を評価する
・introductionに研究の目的が書かれているか。
・代理評価項目(surrogate endpoint)が用いられているなら、真の評価項目の代理になりうるエビデンスが示されているか。
・選択基準(inclusion criteria)と除外基準(exclusion criteria)
・脱落がどれくらいあるか。
・サンプルサイズをどのように決めたか記載がされており、十分な症例が集まっているかどうか。
・二重盲検化やランダム抽出がなされているか。
・”統計上の有意差”≠”臨床上の有意差”。臨床的な差があるか。
・パワー分析(power analysis)で算出された必要症例数が集まっている場合、”有意差がなし”=”差なし”と判断してよい(例えばpower=0.9なら、差があるのに差がないと誤った判定をする確率は10%未満と考えていいらしい)。

参考:医学統計の基礎のキソ 浅井隆著

左脚ブロックにおける急性心筋梗塞の鑑別ーSgarbossa Criteria-

急性心筋梗塞(AMI)が疑われる患者では、まず病歴および症状・心電図・心筋逸脱酵素・心エコー所見などの非侵襲的検査で、その可能性について検証する。そして、心電図は最も診断的価値が高く、ST上昇(2つ以上の隣接した誘導で1mm以上のST上昇)があれば、再灌流療法の適応となる。

左脚ブロックではST変化が認識しにくくなり、適切な再灌流療法が遅れる原因にもなる。日本循環器学会のガイドラインでは、胸部症状を伴う左脚ブロックもSTEMIに含まれている。

新規の左脚ブロックであれば、急性虚血によるものの可能性が高い(今まで2例経験があるが、1例はLMTだった)。以前から認められる左脚ブロックであれば、Sgarbossa Criteriaが役立つかもしれない。Sgarbossa・・・、読み方がわかりません。

・QRSが上向きの誘導(V5,V6、I、aVLまたはⅡ誘導)での1mm以上のST上昇
・QRSが下向きの誘導(V1、V2、V3またはV4誘導)での1mm以上のST低下(後壁梗塞である可能性が高い)
・QRSの向きと逆向きの5mm以上のST変化

参考:The ECG in Acute MI(Stephen W.Smith著)
急性心筋梗塞(ST上昇型)の診療に関するガイドライン(日本循環器学会)

たこつぼ型心筋症と急性心筋梗塞の心電図での鑑別

たこつぼ型心筋症(TC)と急性心筋梗塞(AMI)はいずれもST上昇を来す疾患であり、確定診断のためには冠動脈造影検査が必要である。冠動脈造影前にそれを鑑別にあげることは重要であるし、また冠動脈造影が必ずしもすべての患者に対して施行できるわけではないので、心電図で鑑別することももちろん重要である。

Simple and accurate electrocardiographic criteria to differentiate takotsubo cardiomyopathy from anterior acute myocardial infarction.
JACC 2010;55:2514

TCはAMIに比べて、-aVRでのST上昇(つまり、aVRでのST低下)がより認められ、対側性変化やV1でのST上昇がみられない。1)aVRのST低下と、2)V1でST上昇がみられないこと、この2つの所見が認められれば、感度91%、特異度96%でTCであると言える。

ワルファリンによる凝固能亢進及び投与開始早期の脳梗塞

血液凝固は内因系と外因系の2つの経路が存在する。血管内皮細胞の障害により組織因子が放出されると、凝固系が活性化されるわけだが、ワルファリンによる抗凝固療法はこの経路を抑制し(Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子)、血栓の生成を抑制する。

凝固カスケード
引用:一般社団法人日本血液製剤協会Hpより抜粋

ただ、ワルファリン投与開始早期には、逆に凝固能は亢進する。Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子のほかに、プロテインCやプロテインンSの生成を抑制するためである(プロテインCはⅤ、Ⅶ因子を抑制する)。

ワルファリン投与開始30日以内は脳梗塞が増加するというデータもある。
Initiation of warfarin in patients with atrial fibrillation: early effects on ischaemic strokes
EHJ 2014;35:1881

心臓の線維化とその治療

健常な心臓は間質成分はすくなく、ほとんどを平滑筋が占めている。心筋が肥大し、過剰な線維化が起こることで左室拡張機能障害が引き起こされると考えられている。

心不全は左室収縮機能が低下しているかどうかで、左室収縮機能が保たれた心不全をHFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)と、左室収縮機能が低下した心不全をHFrEF(heart failure with reduced ejection fraction)と分けられている。その定義は論文によりまちまちで、40-50%で区切られる。

心臓の線維化を引き起こす要因として、アンジオテンシンⅡ、エンドセリン、機械的伸展、TGFβ、炎症性サイトカインTNFαなどが考えられる。HFpEFの予後はHFrEFと同程度に不良であるが、エビデンスに基づく治療法が確立されていない。そのため、HFpEFに対してレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を抑制することで線維化を抑えることが大規模臨床試験が行われてきたが、良い結果は出ていない。

ACE阻害薬(ペリンドプリル;コバシル®)のPEP-CHF試験、ARB(イベルサルタン;アバプロ®)のI-PRESERVE試験、抗アルドステロン薬(スピロノラクトン;アルダクトン®)のTOP=CAT試験が、それである。

心筋の線維化を引き起こすTGFβなど、ほかの要因をターゲットに臨床試験が計画・開始されている。

参考:心臓の線維化とその治療 日本内科学会雑誌第103巻第9号P2188-2192

血管緊張性(トーヌス)調節因子と肺高血圧治療薬

血管拡張作用を持つ因子としては、NO(一酸化窒素)、PGI2(プロスタサイクリン)などがある。

NO:血管内皮細胞から放出され、血管平滑筋のGC(グアニル酸シクラーゼ)活性を高める。それによりcGMPが増加し、最終的にはCaの細胞内への流入が抑制され、血管平滑筋が弛緩する。GCはGTPからcGMPを合成する酵素。

PGI2:血管内皮細胞から放出され、血管平滑筋のアデニル酸シクラーゼの活性を高める。それによりcAMPが増加し、血管平滑筋が弛緩する。PGI2のその他の作用として、抗血小板作用や平滑筋増殖抑制作用がある。

また、血管収縮作用を持つ因子としては、ET(エンドセリン)、TXA2(トロンボキサンA2)、ATⅡ(アンギオテンシンⅡ)などがある。ETにはET-1、ET-2、ET-3とあるが、血管系に作用するのはET-1である。

ET-1:受容体には、ETA受容体・ETB1受容体・ETB2受容体があり、ETA受容体とETB1受容体は血管平滑筋に発現しており血管収縮に働く。ETB2受容体は血管内皮細胞に発現しており、NOやPGI2産生を増大させ、血管拡張に働く。

肺高血圧症の治療薬はそれぞれの経路をターゲットとし、3系統の薬剤がある。
PGI2誘導体:ベラプロスト(ケアロード®)、エポプロステノール(フローラン®)
ET受容体拮抗薬:ボセンタン(トラクリア®)、アンブリセンタン(ヴォリブリス®)
PDE(ホスホジエステラーゼ)5阻害薬:シルデナフィル(レバチオ®)、タダラフィル(アドシルカ®)
sGC刺激薬:リオシグアト(アデムパス®)

PGI2誘導体はその名の通りPGI2による血管拡張作用を有する。ET受容体拮抗薬は、ET受容体を阻害することで、ET-1の血管収縮作用を抑制する。アンブリセンタンはETA受容体への選択性が高い。NO系の薬剤としては、PDE5阻害薬とsGC刺激薬があり、PDE5阻害薬はcGMPからGMPへ代謝するPDE5を阻害し、cGMP濃度を上昇させることで、血管拡張作用を現す。sGC刺激薬はリオシグアトのみで、2014年12月時点では慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療薬として薬価収載されており、NOを介さず直接sCGを刺激する薬剤である。

参考:新たな肺高血圧治療薬としてのriociguat(循環器専門医第22巻第2号P177)
エンドセリンの産生調節と病態への関与(TAKUGAKU ZASSHI 2007;127:1319)

再発性偽膜性腸炎に対する糞便移植(fecal microbiota transplantation)

偽膜性腸炎に対しては、メトロニダゾールやバンコマイシンの投与が標準治療であるが、偽膜性腸炎が再発してしまう症例もある。

再発性の偽膜性腸炎に対し、健康な人の糞便(腸内細菌)を移植するという方法。

Oral, capsulized, frozen fecal microbiota transplantation for relapsing Clostridium difficile infection
JAMA. 2014;312:1772

再発性の偽膜性腸炎患者20例に対し、糞便移植(fecal microbiota transplantation)を行っている。生来健康な、A型B型C型肝炎などの感染症もない人の糞便を使用。糞便を生食で溶かして、濾して、濃縮させて、カプセルにつめる。30カプセル(糞便にすると平均48g)を2日にわたって投与する。

効果:8週間再発がないこと、安全性:有害事象を評価する。

20例中14例で初回投与で治療に成功。残りの6例には2回目の投与が行われ、4人に効果がみられた。

初回投与で治療に成功した群と不成功群を比較すると、性・年齢・以前の再発の回数・体重減少・以前のバンコマイシンの投与、胃酸抑制薬の使用など有意差なし。唯一overall health score(症状などの主観的なスコア)で有意差あり、成功群で自覚症状が軽い傾向にあった。

実際、バンコマイシンで治療がうまくいかない例もあるので、試してみたい方法ではあるが、48gというと結構な量になるけど、患者さんの家族にもってきてもらうとなると難しいか・・・。

虚血性の重症僧帽弁閉鎖不全症では、形成術がよいか弁置換術がよいか

Mitral-Valve Repair versus Replacement for Severe Ischemic Mitral Regurgitation
N Engl J Med 2014; 370:23

ガイドラインでは、虚血性の重症僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対して僧帽弁形成術もしくは弁置換術が推奨されているが、どちらがよいかエビデンスはない。周術期の死亡率は形成術で低いが、弁置換術ではMR再発のリスクが低いため、長期的にはその差は修正される。周術期死亡率と長期的な成績とはトレードオフである。

〇この論文のPICOはなにか
P:虚血性の重症MRにおいて
I/C:僧帽弁形成術を行うか、置換術を行うか
O:左室リバースリモデリングの程度(12ヶ月後のLVESVI)に影響があるか
 secondary endpointとして、MACCE(死亡、脳梗塞、再僧帽弁手術、心不全による入院、NYHA分類の悪化)が設定されている。

〇ランダム化されているか
We randomly assigned…と記載はあるが、その方法についての記載はない。

〇baselineは同等か
性、年齢、DM・腎不全などの併存疾患、以前のCABG/PCI、af、LVEF、LVESVI、NYHA分類、同時に行われた治療(CABG、三尖弁形成術、maze)などすべて同等

〇すべての患者の転帰がoutcomeに反映されているか
ITT解析が行われている。

〇盲検化(masking/blinding)されているか
治療介入者は盲検化していない
患者もおそらく盲検化していない
outcome評価者は独立した委員会
解析者については記載なし

〇症例数は十分か
baselineのLVESVI100ml/m2に対し形成術群では20ml/m2の改善、弁置換術群では35ml/m2の改善がみられ、検出力0.9、αlevel0.05として、必要症例数は250例と算出されている。

〇結果の評価
形成術群:126例、弁置換術群:125例
形成術が予定されていた11例に弁置換術が、弁置換術がよていされていた1例に形成術が施行されている。
baselineのLVESVIはそれぞれ61.1±26.2、65.7±27.4
12ヶ月後のLVESVIはそれぞれ54.6±25.0、60.7±31.5
平均変化量は、-6.6と-6.8であり有意差なし。
中等度から高度のMRの残存は形成術群で32.6%(中等度:28.4%、高度:4.2%)で、弁置換術群で2.3%(すべて中等度)であった。死亡はそれぞれ14.3%、17.6%(hazard ratio with repair, 0.79; 95% CI, 0.42 to 1.47; P = 0.45)と、12ヶ月の時点では有意差がついていないものの弁置換術群で多い傾向があった。ちなみに、30日間の死亡率でも1.6%(2death)、4.0%(5death)と弁置換術群で多く見られた。

〇この論文を読んで
12ヶ月の時点では、リバースリモデリングの程度(≒LVESVI)や死亡率に有意差はないが、形成術群で良い傾向があった。しかし、中等度・高度のMRが残存している割合は有意に多く、MRがあれば予後は悪くなるため、その影響はより長期でみないと判断できないだろう。

中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対する外科的治療

Surgical Treatment of Moderate Ischemic Mitral Regurgitation
NEJM 2014;371:2178

〇この論文のPICOはなにか
P:中等度の虚血性僧帽弁閉鎖不全症に対し
I:冠動脈バイパス術(CABG)に加えて、僧帽弁形成術を行うと(CABG+MV repair群)
C:CABGのみの場合と比較し(CABG群)
O:12ヶ月後の左室収縮末期容積係数(LVESVI)が改善するか

secondary endpointとして、MACCE(死亡、脳梗塞、僧帽弁の再手術、心不全による入院、NYHAクラスの悪化)が設定されている。

〇ランダム化について
中央割付方式

〇baselineは同等か
群間差があったのは心房細動で、CABG群:23.3%、CABG+MV repair群:12.8%でCABG群で多かった。術前のLVESVIは、CABG群:54.8±24.9ml/m2、CABG+MV repair群:59.6±25.7ml/m2であった。そのほか、年齢、性別、DM、腎不全、心筋梗塞の既往、ERO(effective regurgitant orifice area)、グラフト数、虚血性心疾患や心不全に対する薬物療法などすべて同等。

〇すべての患者の転帰が結果に反映されているか
ITT解析がなされている。

〇盲検化(masking/blinding)はされているか
患者、治療介入者、評価者に関してはされていない。
解析者については記載がない。

〇症例数は十分か
術前のLVWSVI:80ml/m2、標準偏差:35ml/m2と想定しCABG群で4ml/m2の改善が、CABG+MV repair群で16ml/m2の改善が見込めると想定。また、power:0.9、αlevel:0.05として、症例数は300例と算出されており、計301例ランダマイズされている。

〇結果の評価
CABG群:151人、CABG+MV repair群:150人
CABG群で8人がMV repairを行っており、CABG+MV repiar群では3人にMV repiarが行われず、CABGのみが行われている。

結果は、CABG群:46.1±22.4ml/m2、CABG+MV repair群:49.6±31.5ml/m2で、baselineからの変化は-9.4と-9.3ml/m2であった。両群間に有意差はない。CABG群でも約7割がMRがmild以下になっている(CABG+repair群では約9割)。CABG+MV repair群で、有意に手術時間が長く、入院日数が長かった。

primary endpointで有意差がついていないが、計算されたサンプルサイズを超えており症例数は十分と考えられる。仮説よりCABG群のリバースリモデリングが認められたということか。