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ステント留置後の非心臓手術 周術期のアスピリン内服は有益

AHAのガイドラインでは、非心臓手術の周術期の抗血小板療法については、こう記載してある。
classI
・DESもしくはBMSを留置後4−6週間以内に手術する場合は、出血リスクがステント血栓症リスクを上回らない限りDAPT継続。
・ステント留置後の患者で、P2Y12阻害薬を中止しなければならない場合は、アスピリンのみ継続し、術後早期にP2Y12阻害薬を再開。

classIIb
・ステント留置していない患者に非緊急手術を行う場合、出血リスクより心血管イベントリスクが高いなら、アスピリン継続は妥当かも。

classIII:No Benefit
・待機的非心臓手術で頸動脈手術でない場合で、かつステントが留置されていない患者では、アスピリンの開始・継続は有益ではない。

非心臓手術の抗血小板療法では、ステント留置後か否かに分けて考える。ステント留置後であれば、それがBMSでもDESでも留置後早期 (4-6週) だと、周術期にステント血栓症を起こしやすいため、基本的にはDAPT継続。

DESは6ヶ月までには安定するとされている。しかし、アスピリンもしくはDAPTを継続するかどうかのデータは十分ではないため、ステント留置から多少時間が経っていても、ステント血栓症を含めた心血管イベントと出血リスクを考慮し、周術期抗血小板療法どうするか決めなければならない。

ステントを留置していない患者では、アスピリンの有効性を検証した2つの大規模RCTがある。股関節手術13356例をアスピリン160mgとプラセボに無作為割付したPEP試験と、心血管疾患ハイリスク患者10010例をアスピリン200mgとプラセボに無作為割付したPOISE-2試験で、いずれもアスピリンのメリットは示されなかった。POISE-2試験では、BMS留置6週間以内、DES留置1年以内の症例は除外されており、冠動脈疾患を有する症例は23%しか含まれておらず、また頸動脈手術は除かれていたため、そのような患者群ではDAPT継続が妥当かもしれない。

というようなことが書かれてあった。

ざくっとまとめると、ステント留置早期は基本DAPT継続で、ステントを留置していない患者ではアスピリンは不要。ステント留置から多少時間が経った症例は、心血管イベントリスクと出血リスクを個々に判断って感じ。

個々に判断って、それが難しいんだけど・・・。

これはPOISE-2試験のサブ解析。

Aspirin in Patients With Previous Percutaneous Coronary Intervention Undergoing Noncardiac Surgery.
Ann Intern Med. 2018;168(4):237-244.

【PICO】
P:PCI後で非心臓手術を受ける患者
I:周術期のアスピリンの内服
C:周術期のプラセボの内服
O:30日後の死亡・非致死的心筋梗塞

secondary endpoint:出血

exclusion criteria:6週間以内のBMS留置、1年以内のDES留置

【デザイン、セッティング】
・POISE-2試験は、非心臓手術におけるアスピリンとクロニジンの単剤、あるいは併用の効果を比較した多施設RCT。
・そのPOISE-2試験のサブグループ解析 (post hoc)
・470例 (アスピリン群234例、プラセボ群236例)
・COX比例ハザードモデル

【結果】
アスピリン群 vs プラセボ群
全死亡と心筋梗塞 (primary endpoint)
6.0% vs 11.5% 絶対リスク差:5.5 (0.4 to 10.5)

全死亡
0.9% vs 1.3% 絶対リスク差:0.4 (-1.4 to 2.3)

非致死的心筋梗塞
5.1% vs 11.0% 絶対リスク差:5.9 (1.0 to 10.8)

大出血と生命を脅かす出血
5.6% vs 4.2% 絶対リスク差:-1.3 (-5.2 to 2.6)

【まとめと感想】
BMS留置から6週間以上、DES留置から1年以上経過している患者では、非心臓手術の周術期にアスピリンを内服すると、出血は少し増える傾向があるが、心筋梗塞は有意に抑制される。ステント留置後やそれに準ずる冠動脈疾患がある場合には、非心臓手術周術期にアスピリンを内服させることは有益だろう。

非心臓手術の周術期でのスタチン使用と死亡率

Association of Perioperative Statin Use With Mortality and Morbidity After Major Noncardiac Surgery
JAMA Intern Med. 2017;177(2):231-242

◇論文の概要
<重要性>
非心臓手術において、スタチンの使用が周術期の心血管や他の臓器の合併症を減少させるかどうかは議論がある。RCTが少ないため、データベースの解析は、新たな仮説や試験デザインを促進するかもしれない。

<目的>
非心臓手術を行った退役軍人のコホートで、周術期早期のスタチンの使用とアウトカムに関連があるか評価すること。

<デザイン、セッティング、患者>
待機的または緊急非心臓手術を行った180478例の後ろ向き観察研究である。手術の7日以内に入院した患者を、Veterans Affairs Surgical Quality Improvement Program(VASQIP)から抽出した。患者は退役軍人病院に入院し、術後30日間フォローアップした。2005年10月1日〜2010年9月30日のデータを収集し、2013年11月28日〜2016年10月31日に解析した。

<暴露>
手術日と手術後にスタチン使用

<アウトカムと測定>
30日死亡率(主要評価項目)と、標準化した30日心血管アウトカムと非心血管アウトカムである。スタチンの使用とその他の周術期心血管治療薬は、Vaterans Affairs Pharmacy Benefits Management research databaseを確認した。

<結果>
180478例(男性95.6%、女性4.4%、平均年齢63.8±11.6歳)を解析した。96486例でプロペンシティスコアがマッチした(男性96.3%、女性3.7%、平均年齢65.9±10.6歳)。入院時に、37.8%が外来でもともとスタチンの処方を受けており、その80.8%でシンバスタチンが処方されており、59.5%が中等量から高容量使用されていた。手術日と術後にスタチンが処方されていたのは31.5%である。プロペンシティスコアがマッチした48243ペアで、30日死亡率はスタチン使用群で有意に減少した(相対リスク0.82、95%CI:0.75−0.89、NNT:244)。副次評価項目である、合併症も有意に減少した(相対リスク0.82、95%CI:0.79−0.86,NNT67)。中枢神経と血栓症カテゴリを除いた全てで、心臓合併症が有意に減少した(相対リスク0.73、95%CI:0.64−0.83)。

<結論>
周術期早期のスタチン使用は、全死亡といくつかの心血管・非心血管合併症の有意な減少と関連があった。しかし、選択バイアスは考慮しなければならない。

◇感想
非心臓手術でのスタチンの効果に対する見解は一致していない。この後ろ向き観察研究では、スタチンにより30日死亡率は低下したがNNT244であり、これが費用対効果に見合ったものなのか議論の余地がある。また、高容量のスタチンは腎障害のリスクにもなるため、その点も考慮する必要がある。

非心臓手術 リスクのない患者へのβ遮断薬投与は死亡率を悪化させる可能性

β-Blockade and Operative Mortality in Noncardiac Surgery: Harmful or Helpful?
JAMA Surg. 2015 Jul;150(7):658-63

《要約》
重要性
非心臓手術で心筋虚血イベントリスクが低い患者に対するβ遮断薬の投与は、脳梗塞や低血圧などの副作用もあり、議論が分かれる。報告されているデータでは、リスクの低い患者に対するβ遮断薬の有益性は、一貫しない。

目標
非心臓手術、特に虚血リスクの低い患者への周術期のβ遮断薬の効果を検証すること。

デザイン・セッティング・参加者
2008年10月1日〜2013年7月31日の間に退役軍人病院で施行された外科的手術の後ろ向き観察研究である。

方法
手術8時間前から術後24時間までにオーダーあるものをβ遮断薬の使用と定義する。退役軍人データベースからデータ収集を行った。それらのデータには、診断と治療コード、薬物療法、周術期検査データ値、死亡日時が含まれる。心血管リスクスコアは、腎不全、冠動脈疾患、糖尿病、大手術の有無で計算される。線形回帰モデルで死亡率とオッズ比の計算を行った。

主要評価項目
術後30日以内の死亡率

結果
このコホートでは326489例(非心臓手術314114例、心臓手術12375例)の手術が施行されていた。3−4つのリスクを有している患者では、非心臓手術の際のβ遮断薬は死亡のオッズ比を低下させた(OR:0.63、95%CI:0.43−0.93)。1−2つのリスクの有する患者では、その効果は見出せなかったが、リスクのない患者では死亡率は有意に高かった(OR:1.19、95%CI:1.06−1.35)。

結論
非心臓手術を行う心血管イベントリスクの高い患者へのβ遮断薬は有効である。しかし、心血管イベントリスクのない患者に対するβ遮断薬の投与は、死亡のリスクを増大させる。

◯論文のPECOはなにか
P:非心臓手術が施行された患者
E/C:β遮断薬の有無
O:術後30日以内の死亡

inclusion criteria:2008年10月1日〜2013年7月31日の間に退役軍人病院で行われた手術

◯結果
デザイン:後ろ向き観察研究
登録期間:2008年10月1日〜2013年7月31日
フォローアップ期間:術後30日間
地域:米国
症例数:314114例
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:ロジスティック回帰モデル

非心臓手術施行患者では、132614例(42.2%)でβ遮断薬が処方されていた。
result

◯感想/批判的吟味
・90%が男性と偏りがある。
・β遮断薬の開始時期が不明(手術直前か、以前からかわからない)

周術期のβ遮断薬は、心血管イベントリスクの高い患者に対しては有効であるが、リスクの低い患者ではむしろ有害である可能性。JAMA Intern Med. 2015 Dec 1;175(12):1923-31も同様に後ろ向きのデータではあるが、リスクのない患者へのβ遮断薬は周術期の死亡率を増加させる可能性がある。

非心臓手術 合併疾患のない高血圧患者に対するβ遮断薬は有害である可能性

β-Blocker-Associated Risks in Patients With Uncomplicated Hypertension Undergoing Noncardiac Surgery.
JAMA Intern Med. 2015 Dec 1;175(12):1923-31

《要約》
重要
周術期のβ遮断治療は有害事象を減らすために重要である。有効性と安全性は患者が有しているリスクによって異なるかもしれない。

目標
合併症のない高血圧患者の非心臓手術で、長期間のβ遮断薬の内服と主要な心血管イベント(MACEs)のリスクとの関連を検証すること。

デザイン・セッティング・参加者
院内の記録とデンマークの全国規模のコホートから調べた。2005年から2011年の間に行われた非心臓手術で、少なくとも2剤以上の降圧薬(β遮断薬、サイアザイド、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬/ARB)を内服している合併症のない高血圧患者が対象である。

介入
通常の降圧治療としての、様々なレジメン

主要評価項目
30日以内のMACEs(心血管死、非致死的虚血性脳梗塞、非致死的心筋梗塞)と全死亡を、多変量ロジスティック回帰モデルと調整後のnumbers needed to harm(NNH)を用いて評価した。

結果
14644例(女性65%、年齢66.1±12.0歳)がβ遮断薬を内服しており、他の降圧療法を受けている患者40676例(女性57%、年齢±11.8歳)とbaselineのcharacteristicsは似通っていた。30日以内のMACEsは、β遮断薬群では1.3%、非β遮断薬群では0.8%であった(P<0.001)。β遮断薬と他の薬剤との2剤併用は、RAS抑制薬(OR:2.16、95%CI:1.54−3.04)、カルシウム拮抗薬(OR:2.17、95%CI:1.48−3.17)、サイアザイド(OR:1.56、95%CI:1.10−2.22)いずれも場合も、RAS抑制薬とサイアザイドの2剤併用と比較しMACEsを増加させた。全死亡でも同様であった。β遮断薬のMACEsのリスクは、70歳以上(NNH:140、95%CI:86−364)、男性(NNH:142、95%CI:93−195)、緊急手術(NNH:97、95%CI:57−331)で特に高かった。

結論
β遮断薬を用いた降圧療法は、合併症のない高血圧患者の非心臓手術周術期のMACEsと全死亡を増加させる可能性がある。

◯論文のPECOはなにか
P:合併症のない高血圧患者
E/C:2剤以上の降圧薬(β遮断薬、サイアザイド、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬/ARB)の内服
O:30日以内のMACEs(心血管死、非致死的虚血性脳梗塞、非致死的心筋梗塞)と全死亡

inclusion criteria:20歳以上

◯結果
デザイン:後ろ向きコホート
登録期間:2005年〜2011年
フォローアップ期間:術後30日間
地域:デンマーク
症例数:55320例
outcome観察者のmasking:影響なし
交絡因子の調整:多変量ロジスティック回帰モデル

result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
合併症のない高血圧患者に対するβ遮断薬の投与は現在では推奨されていないが、まだまだ見かける処方パターンではある。循環器内科に術前にコンサルトがある症例は割とリスクを抱えている人が多いので、合併疾患のない患者を診ることは少ないように思う。

β遮断薬の心血管イベント抑制効果があることは確かなことだと思われるが、どのような患者にどれくらいの量が適切かは明らかではない。リスクがない患者に対しては、むしろ有害である可能性がある。前向きの試験での検証が必要だし、β遮断薬を内服している患者でそれを中止することでMACE・死亡が減らせるかどうかは、さらなる検証が必要。この結果だけで、合併疾患のない高血圧患者の術前にβ遮断薬を切るというのは、ちょっと乱暴だけど、害を及ぼす可能性があるなら切りたくなってしまう。

非心臓手術1年後の死亡率とフレイルティ

Association of Frailty and 1-Year Postoperative Mortality Following Major Elective Noncardiac Surgery: A Population-Based Cohort Study.
JAMA Surg. 2016 Jan 20. [Epub ahead of print]

《要約》
重要性
単施設研究でフレイルティは術後30日以内の死亡率のリスク因子であると確認された。フレイルティの術後死亡率への、長期間あるいは集団レベルの影響については明らかではない。

目標
術後1年以内の死亡率に対する、フレイルティの影響とその関連を測定すること。

デザイン・セッティング・参加者
オンタリオ(カナダ)の後ろ向き、集団ベースのコホート研究である。2002年4月1日から2012年3月31日までのデータを収集した。2014年12月から2015年3月に解析を行った。対象は、待機的な非心臓手術の大手術を行った65歳以上の地域住民である。

暴露
the Johns Hopkins Adjusted Clinical Group(ACG) frailty-defining diagnoses indicatorによって定義されたフレイルティ。

主要評価項目
手術後1年以内の死亡率。

結果
202811例のうち6289例(3.1%)がフレイルであった(平均年齢77±7歳)。術後1年以内にフレイル群では13.6%が、ノンフレイル群では4.8%が死亡した。社会人口統計学的交絡因子と外科的な交絡因子の調整後は、ハザード比2.23(95%CI:2.08−2.40)であった。フレイルティは術後3日の死亡率を増加させた(HR35.58, 95%CI:29.78-40.19)。フレイルティと死亡リスクの関連は、高齢になると薄まる(60歳=HR:2.66, 95%CI:2.28-3.10, 90歳=HR:1.63、95%CI:1.36−1.95)。フレイル群では死亡率は外科手術の種類によって異なり、関節形成術で最も死亡リスクが高かった(股関節置換術=HR:3.79、95%CI:3.21−4.47、膝関節置換術=HR2.68、95%CI:2.10−3.42)。

結論
集団レベルでは、術前のフレイルティは手術後1年以内の死亡率と関連していた。特に、術後早期、若年、関節形成術で顕著であった。

◯論文のPECOはなにか
P:65歳以上の待機的非心臓手術
E:フレイルな患者(フレイル群)
C:フレイルでない患者(ノンフレイル群)
O:術後1年以内の死亡率

inclusion criteria:以下の手術(頸動脈内膜剥離術、末梢動脈バイパス術、股関節置換術、膝関節置換術、大腸手術、肝部分切除、膵十二指腸切除、胃切除術、食道切除術、腎摘出術、膀胱摘出術)

フレイルティの定義
frailty
(The Johns Hopkins ACG® System Technical Reference Guide version9.0より引用)
フレイルティの診断のゴールドスタンダードはないらしく、よく用いられるのはVulnerable Elderly Survey(VES)というものらしい。このACG frailty-defining diagnoses indicatorはVESスコアとよく相関するらしい。

◯結果
デザイン:後ろ向きコホート研究
登録期間:2002年4月1日〜2012年3月31日
フォローアップ期間:術後1年間
地域:カナダ、オンタリオ
症例数:6289例
交絡因子の調整:Cox比例ハザードモデル

術後1年以内の死亡率 adjusted HR:2.23(95%CI:2.08−2.40)

◯感想/批判的吟味
フレイルであれば、術後の死亡率が高くなるのは感覚的にわかる。ただ、フレイルという様々な社会的・身体的・精神敵な要因が絡んだものと死亡率との関連をみたもので、かつ後ろ向きでもあるので、交絡因子の調整はかなり難しいのではないかと思う。

フレイルティの診断基準が明確ではないが、Friedらの診断基準がよく用いられている。それは以下の5つのうち、3つ以上を満たす場合、フレイルと診断される。①体重減少(過去1年間に予期しない4.5kg以上の体重減少)、②主観的疲労感、③日常生活活動量の減少、④身体能力(歩行速度)の減弱、⑤筋力(握力)の低下

体重減少はよいが、ほかの項目をチェックするのは煩雑で、実臨床での応用には難しいように思う。

BRIDGE試験のCORRESPONDENCE 心房細動に対する周術期のヘパリンブリッジ

Bridging Anticoagulation in Patients with Atrial Fibrillation
N Engl J Med 2016; 374:90-94

TO THE EDITOR
・無症候性脳梗塞については評価しておらず、それらは認知機能低下や精神障害につながる可能性がある。

・BRIDGE試験の対象は、CHADS2スコアの平均値は2.3と低かった。また、CHADS2スコア5と6の塞栓症のハイリスク患者は3%しかおらず、それらの患者の塞栓症の発症率は12−18%と出血リスクを上回っているため、ヘパリンブリッジが有益かもしれない。

・BRIDGE試験で行なわれている処置/手術は上部消化管内視鏡など出血リスクが低いもので、それらの処置はワルファリンを継続して行うことでコンセンサスが得られている。CHADS2スコアが高く、出血リスクも高い患者のデータが不足している。

・スクリーニングの過程で、主治医の判断によって544例が除外されている。それについてのさらなる情報が必要である。

・実臨床では、HAS−BLEDなどの出血予測スコアと実際の出血イベントの関連について情報が役立つだろう。

・非劣性マージンを相対リスクではなく、絶対リスクで1%と設定している。ブリッジ群での主要評価項目の発生は0.3%だったので、4.3倍(1.3%)の出血リスクを許容することになる。

THE AUTHORS REPLY
・無症候性脳梗塞を診断するためには、コストがかかり試験デザインの複雑性が増す。さらに、周術期の無症候性脳梗塞の発生率や臨床的意義については明らかではない。

・CHADS2スコアが5−6のもの3%しか含まれていないが、それらの塞栓症のハイリスク患者は実臨床でもまれである。

・主治医の判断によって除外された544例は、除外された症例の12%に過ぎない。

・周術期の出血イベントの予測因子や、HAS−BLEDなどの出血予測スコアの有効性について、現在検証中である。

・稀なイベントに対し相対リスクを使用することは、潜在的に問題がある。

◯感想
BRIDGE試験の対象となった症例には、CHADS2スコアが高い症例は多く含まれていない点には、やはり注意すべきだろう。むしろ、塞栓リスクが低い症例を対象としていたため、非劣性を証明できたのかもしれない。

CHADS2スコアが高い患者に関しては、ヘパリンブリッジが不要とは言えないし、有益(塞栓症リスクが出血リスクを上回る)である可能性もある。しかし、ヘパリンは出血を増やしてしまう可能性があるので(未分画ヘパリンならなおさら)、ヘパリンブリッジを行うかどうかは、出血リスクも考慮しなければならない。

そして、周術期の出血イベントの予測には、どのようなスコアを用いることが適切なのか現時点では明らかでなく、今後の検証が待たれる。

術前の冠動脈CTは、周術期の心血管イベントのリスクの低い患者の同定に役立つ Coronary CTA VISION試験

Prognostic capabilities of coronary computed tomographic angiography before non-cardiac surgery: prospective cohort study.
BMJ. 2015 Apr 22;350:h1907

《要約》
目標
非心臓手術前の冠動脈CTが周術期のリスクの予測に寄与するか検証することと、非心臓手術術後に心筋梗塞を発症した患者の術前の冠動脈形態を評価すること。

デザイン
前向きコホート研究

セッティング
8カ国、12センター

参加者
動脈硬化性疾患、または動脈硬化性疾患のリスクを有し、非心臓手術を行う患者955例。

介入
術前に冠動脈CTを行う。左主幹部病変でない限り臨床医は盲検化されている。結果は、normal, non-obstructive(50%未満の狭窄), obstructive(1枝または2枝に50%以上の狭窄), extensive obstructive(LAD近位部病変を含む2枝病変、3枝病変、左冠動脈主幹部病変)に分類される。

主要評価項目
術後30日以内の心血管死と非致死的心筋梗塞の複合エンドポイント。

結果
心血管イベント(主要評価項目)は74例(8%)に起きた。the Revised Cardiac Risk Index(RCRI)と冠動脈CTの両方を含めたモデルは、独立した予後予測因子だった(P=0.014:C index=0.66)。調整後のハザード比は、non-obstructiveで1.51(95%CI:0.45−5.10)、obstructiveで2.05(95%CI:0.62−6.74)、extensive obstructiveで3.76(95%CI:1.12−12.62)であった。1000例のサンプルにおいて冠動脈CTモデルはRCRI単独モデルよりも、心血管イベントを起こした77例の中で17例多くhigher riskに分類できていた(P<0.001)。しかし、冠動脈CTモデルでは心血管イベントを起こしていない923例のうち、RCRI単独モデルより98例多く不適切にhigher riskに分類していた(P<0.001)。周術期心筋梗塞を発症した患者は、31%(22/71例)がextensive obstructive disease、41%(29/71例)がobstructive disease、24%(17/71例)がnon-obstructive disease、4%(3/71例)がnormalであった。

結論
冠動脈CTは、周術期の心血管死や心筋梗塞のリスク評価の向上には有効だが、心血管イベントを起こさない患者のリスクを5倍以上過大評価してしまう。

◯論文のPICOはなにか
P:非心臓手術
I/C:術前の冠動脈CT
O:心血管死と非致死的心筋梗塞

inclusion criteria:45歳以上、待機的血管・整形・胸部・腹部手術、術前に冠動脈CTを行うに十分な時間があること、動脈硬化性疾患やうっ血性心不全の既往やリスクを持っていること
exclusion criteria:術前に侵襲的冠動脈造影が予定されている患者、冠動脈ステントが留置されている患者、CCr<35ml/min、造影剤アレルギー、妊婦、持続性心房細動または頻繁な期外収縮、HR≧70/分(single source scanners)またはHR≧90/分(dual source scanners)、体重136kg以上、評価不能なセグメントが4つ以上あること、CT施行後6ヶ月以内に手術が行われない場合、日帰り手術、左冠動脈主幹部病変の疑いがあり盲検化されず術前に血行再建が行われた場合

手順
冠動脈CTは盲検化された評価者が読影し、normal, non-obstructive(50%未満の狭窄), obstructive(1枝または2枝に50%以上の狭窄), extensive obstructive(LAD近位部病変を含む2枝病変、3枝病変、左冠動脈主幹部病変)に分類する。冠動脈バイパス術が施行された患者では、保護されていない冠動脈領域(グラフトとnative coronary arteryに50%以上の狭窄を有する)を評価した。トロポニンの測定は術後6時間後、12時間後、1日後、2日後、3日後に行った。トロポニンの上昇が認められた場合、速やかに心電図検査を行った。

◯結果
観察期間:2008年7月から2013年10月
症例数:955例。1067例に冠動脈CTが施行され、112例が除外された(左冠動脈主幹部病変疑い:14例、非心臓手術中止:5例、6ヶ月以内に手術が施行されなかった:71例、術前の血行再建が施行された:33例、画像の評価不能・日帰り手術・非心臓手術と同時に血行再建を行った:33例)。
characteristics
result

◯感想/批判的吟味
・心筋梗塞の定義は、universal definition(トロポニンの上昇と以下のうち1つ以上を満たすもの。虚血症状、心電図の虚血性変化、心筋梗塞を示唆するイメージングの異常)で、トロポニンの測定する経時的に測定することになっている。

・RCRIで評価された心血管イベントの発生率は、以前の報告(Circlation1999:1043−1049)より高い。

・冠動脈CTは、よりリスクが低い患者の同定には役立つが、陽性的中率は下がる。

・冠動脈CTやRCRIにより心血管イベントのリスクが高いと判断された患者に、どのタイミングでどのような介入をすべきかはわからない。

非心臓手術での血管イベントの発生はRCRIの約6倍 Vision pilot試験

An international prospective cohort study evaluating major vascular complications among patients undergoing noncardiac surgery: the VISION Pilot Study.
Open Med. 2011;5(4):e193-200.

《要約》
目標
我々の目標は、非心臓手術を受ける患者で、1)大規模な国際的コホート試験を行えるか決定すること、2)周術期の主要な血管イベントの発生率を推定すること、3)観察されるイベント発生率とRevised Cardiac Risk Index(RCRI)の比較、4)トロポニンを測定しなければ見逃される可能性がある無症候性心筋梗塞の割合を推定すること、である。

デザイン
国際的前向きコホートパイロット試験

参加者
45歳以上の非心臓手術を受ける患者

方法
術後6時間後、12時間後、1日後、2日後、3日後にトロポニンTを測定する。主要評価項目は、術後30日後までの主要な血管イベント(血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的心停止、非致死的脳梗塞)である。周術期心筋梗塞の定義は、トロポニンTの上昇と以下の項目のうち少なくともひとつを満たすものである。虚血症状、Q波の出現、心電図の虚血性変化、冠動脈血行再建、心筋梗塞の画像的な証拠、解剖による心筋梗塞所見。

結果
カナダ、中国、イタリア、コロンビア、ブラジルの5つの病院で432例を登録した。術後30日間で、6.3%(99%CI:3.9−10.0)で主要な血管イベントが起こった。10例が血管死、16例が非致死的心筋梗塞、1例が非致死的脳梗塞であった。観察されたイベント発生率はRCRIから予想されるものの6倍であった。18例の心筋梗塞のうち、12例で無症候であった。

結論
周術期の血管イベントはよくあることで、RCRIはリスクを過小評価し、トロポニンTのモニタリングにより心筋梗塞の見逃しを防ぐことができる。大規模な国際的前向きコホート試験が必要である。

◯論文のPICOはなにか
P:非心臓手術
I/C:経時的なトロポニンTの測定
O:主要な血管イベント(血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的心停止、非致死的脳梗塞)

inclusion criteria:45歳以上、全身または局所麻酔(神経叢ブロック、腰椎麻酔、硬膜外麻酔)を要する、入院を要する、待機的・準緊急・緊急手術

手順
トロポニンTを術後6時間後、12時間後、1日後、2日後、3日後に測定する。トロポニンTは0.04μg/L以上を有意な上昇とする。術後12−24時間の間に患者の登録を行う。トロポニンTの上昇が認められた場合、12誘導心電図を施行する。トロポニンTが上昇したにも関わらず、無症候で心電図変化もなく周術期心筋梗塞の定義を満たさない場合には、心エコーを行う。

◯結果
登録期間:2005年3月から2009年5月
症例数:432例
追跡率:99.3%
characteristics
血管手術は2%で、1/3が低リスク手術。その他が中等度リスクの手術である。

result
(tableはすべて本文から引用)
RCRIと比較し、周術期の血管イベントは6倍(99%CI:3.5−9.7)と高い。

◯感想/批判的吟味
心筋梗塞の2/3が無症候であるため、日常的にこのような症例は見逃されている可能性がある。わずかなトロポニンの上昇で周術期心筋梗塞を拾い上げると、これだけ多いということか。ただ、このわずなかトロポニン上昇により拾い上げられた心筋梗塞のすべてが、転移不良というわけではなく、どれくらい臨床的に意味があるかより大規模な試験での検証が待たれる。

POISE-2試験 非心臓手術におけるアスピリン

Aspirin in patients undergoing noncardiac surgery.
N Engl J Med. 2014 Apr 17;370(16):1494-503

《要約》
背景
アスピリンを内服している場合でもそうでない場合でも、非心臓手術の周術期にアスピリンを内服するかどうかは一定しない。

方法
2×2要因デザインで、非心臓手術を行う予定の血管合併症のリスクを有する症例10010例を、アスピリンとプラセボ、クロニジンとプラセボに無作為に割り付けた。試験以前からアスピリンを内服しているかで層別化した(導入群5628例、継続例4382例)。導入群では、手術前にアスピリン200mgもしくはプラセボをローディングし、それを30日間継続する(アスピリン:100mg/日)。継続群では7日間継続し、それ以降はもとの用法用量に戻す。主要評価項目は、死亡と非致死的心筋梗塞である。

結果
主要評価項目は、アスピリン群で351/4998例(7.0%)、プラセボ群で355/5012例(7.1%)であった(HR:0.99、95%CI:0.86−1.15)。大出血はアスピリン群で多く認めた(4.6% vs 3.8%, HR1.23, 95%CI:1.01-1.49)。

結論
術前のアスピリンの投与は、死亡と非致死的心筋梗塞を減少させず、大出血を増加させる。

◯この論文のPICOはなにか
P:非心臓手術の術前の患者
I:アスピリンの内服(アスピリン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:無作為化から30日間の死亡と非致死的心筋梗塞の複合エンドポイント

inclusion/exclusion criteriaは本文に記載なし。

手順
2×2要因デザイン。アスピリン+クロニジン、アスピリンプラセボ+クロニジン、アスピリン+クロニジンプラセボ、アスピリンプラセボ+クロニジンプラセボの4群に、1:1:1:1に割り付け。もともとアスピリンを内服していない導入群では、200mgをローディングし、100mg/日で30日間継続する。もともとアスピリンを内服している継続群では、100mg/日を7日間継続し、それ以降はもとの内服量に戻す。

◯baselineは同等か
characteristics1
characteristics2

◯結果
登録期間:2010年7月-2013年12月
result
(tableはすべて本文から引用)

◯感想/批判的吟味
・computerized internet systemによりランダム化。
・バイエル、ベーリンガーインゲルハイムがスポンサーだが、解析には加わっていない。
・primary endpointで有意差がついていないが、事前に定められた症例数(10000例)には達している(power84%、αlevel0.05、アスピリン群のHR0.75、プラセボ群のprimary endpointの発生6.1%)。
・ITT解析
・追跡率99.9%

10000例で有意差がつかないのであれば、周術期にアスピリンを内服させることの意義はないと考えていいだろう。AHAのガイドラインでも、冠動脈にステント留置を行っていない患者の非心臓手術でのアスピリンの導入や継続はclassⅢとなっている。

非心臓手術周術期の心臓合併症の発生率は、RCRIより高い

The Revised Cardiac Risk Index in the new millennium: a single-centre prospective cohort re-evaluation of the original variables in 9,519 consecutive elective surgical patients.
Can J Anaesth. 2013 Sep;60(9):855-63

《要約》
目的
非心臓手術において心臓合併症は死亡の主要な原因である。the Revised Cardiac Risk Index(RCRI)は術後の心臓合併症の標準的な予測方法となった。現代のデータベースでも、その6つの要素に妥当性があるか検証した。

方法
RCRIの定義も用いて、50歳以上の非心臓手術を受けた9519例を解析した。2項ロジスティック回帰モデル、ROC解析、net reclassification indexを用いてRCRIの妥当性を評価した。

結果
主要な心臓合併症はRCRIが0、1、2、≧3で、それぞれ0.5%、2.6%、7.2%、14.4%であった。RCRIのオリジナルの集団では、それぞれ0.4%、1.1%、4.6%、9.7%であった。2項ロジスティック回帰分析では、インスリンの使用(OR:1.4, 95%CI:0.7-2.6)とCr>2.0mg/dl(OR:1.7, 95%CI:0.8-3.6)は予測力を改善しなかった。残りの4つの因子の解析では、6つの因子のRCRIとAUCは一致していた(AUC=0.79)。eGFR<30ml/minの方が、Cr>2.0mg/dlよりもより良い予測因子であった。eGFRと残りの4つの因子の5因子モデルでは、AUC0.79、スコア0、1、2、≧3でそれぞれ0.5%、2.9%、7.4%、17.0%であった。

結論
RCRIと比べ、5因子モデル(ハイリスク手術、虚血性心疾患、うっ血性心不全、脳血管障害、eGFR<30ml/min)は、非心臓手術において主要な心臓合併症の予測方法として優れている。

カナダのClinical Anesthesia Information System(CAIS)からデータ収集した、50歳以上の非心臓手術を受けた症例が対象。連続症例で9519例である。

comparison
(本文より引用)

RCRIのもとデータは1999年に出たもので、少し古い。高齢化が進み、非心臓手術を受ける患者のリスクが高くなってきている。それを反映したデータである。このコホートでは、ハイリスク手術、虚血性心疾患、うっ血性心不全、脳血管障害、eGFR<30ml/minの5つの因子を用いた方が、RCRIよりも予後の予測に優れていた。