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着用型除細動器 (WCD) は心筋梗塞発症早期の心臓突然死を予防できるか

植込型除細動器(ICD)は、心機能が悪い虚血性心疾患の心臓突然死の予防に有効です。MADIT試験ではEF≦35%の虚血性心疾患で心室性不整脈がある症例を対象として、ICDにより生命予後が改善しました。また、MADITⅡ試験では心室性不整脈は問わず、EF≦30%の虚血性心疾患を対象としましたが、これでもICDよる生命予後改善を認めています(観察期間20ヶ月、ハザード比0.69)(1-2)

MADITⅡ試験はAMI発症1ヶ月以内の症例は含んでいません。

DINAMIT試験やIRIS試験は、AMI発症早期で心機能が悪い症例で、ICDで生命予後が改善するか検証したRCTです。どちらも心臓突然死は半分ぐらいに有意に減っていますが、全死亡は非ICD群とほとんど変わりません(つまり非心臓死が多い)(3-4)

なので、AHAのガイドラインでも心臓突然死一次予防の場合は、”AMI発症から40日以上もしくは血行再建から90日以上経過”していて、心機能が悪い症例がICD適応になっています。心機能は悪いけど、AMI発症から時間が経ってないような症例は、至適薬物療法を行って再評価することになります。でもまあ、虚血だと薬物療法でも心機能の改善はあまり見込めませんが。

AMI発症早期にICDを植え込んでも生命予後は改善しませんが、やはり心臓突然死のリスクが高いというのは事実です。AHAガイドラインでは、AMI発症40日以内の場合は、着用型除細動器(WCD)を着てもらってもいいかもね(classⅡb)となっています。

そして、そのAMI発症早期で心機能が悪い症例で、WCDが本当に有効なのでしょうか。

Wearable Cardioverter–Defibrillator after Myocardial Infarction
N Engl J Med 2018; 379:1205-1215

【PICO】
P:EF35%以下のAMI
I:標準治療+WCDの着用
C:標準治療のみ
O:90日以内の突然死+心室頻拍による非突然死

EFの評価は、PCI後なら8時間以上経ったあとに、CABG後なら48時間以上経ったあとに行う。

exclusion criteria:すでにICD留置、ユニポーラーペースメーカ、重度の弁膜症、長期の血液透析、WCDを着られないぐらい胸囲が小さいor大きい

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:アメリカ・ポーランド・ドイツ・ハンガリー
登録期間:2008年7月〜2017年4月
観察期間:90日
症例数:2348例(うち46例は規約違反のため除外)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(ZOLL社)

【患者背景】
両群の患者背景に差はない。EFの中央値は28%、PCI84%、血栓溶解療法8%、CABG1%、心停止・心室細動10%。内服薬にも差はない(βblocker92%、ACE阻害薬/ARB87%、アスピリンとそれ以外の抗血小板薬がそれぞれ87%、アミオダロン7%)

【結果】
primary outcomeは60日以内の全死亡だったが、登録が進まなかったため、90日以内の突然死+心室頻拍による非突然死、に途中で変更。

WCD群:1524例 vs 標準治療群:778例

標準治療群でWCD導入が2.6%。
ICD植込みはWCD群で4.4%、標準治療群で5.7%。だいたい2ヶ月ぐらいのときに植込まれている。

【まとめと感想】
AMI発症早期で心機能が悪い症例にWCDを導入すると、不整脈死が少なくなるけど、統計学的には有意な差ではありませんでした。discussionでパワー不足(不整脈死58%減少と推定)だと書かれていましたが、まあ確かに侵襲の大きな介入ではありませんし、適切に使用すれば突然死を予防できるという理屈はわかります。

不適切作動がありますので、理解力や操作能力に乏しい患者さんには導入しないなどの配慮は必要ですし、夏場は蒸れるということや、使えば使うほど病院の赤字になるという課題はあります。

AMI発症早期の心機能が悪い方でも、まず薬物療法をしっかりやるということですね。

1)N Engl J Med.1996;335:1933-1940
2)N Engl J Med 2004;351:2481-2488
3)N Engl J Med.2004;351:2481–2488
4)N Engl J Med.2009;361:1427−1436
5)Circulation.2018;138:e210–e271

Fushimiレジストリ 抗凝固薬と抗血小板薬の傾向と予後

Current Status, Time Trends and Outcomes of Combination Therapy With Oral Anticoagulant and Antiplatelet Drug in Patients With Atrial Fibrillation ― The Fushimi AF Registry ―
Circ J. 2018 Nov 24;82(12):2983-2991.

抗凝固薬単剤と抗凝固薬+抗血小板薬併用の現状と予後を比較。

【デザイン、セッティング】
・Fushimiレジストリ
・後向きコホート研究
・2378例(抗凝固薬単剤78%、抗凝固薬+抗血小板薬併用22%)
・交絡因子の調整:COX比例ハザードモデル

【結果】
2011年→2017年で、抗凝固薬+抗血小板薬併用は26%→14%に経時的に減少。

併用群の30%で、動脈硬化疾患の合併なし。

動脈硬化疾患ありの集団で
抗凝固薬単剤 vs 抗凝固薬+抗血小板薬併用

【まとめと感想】
抗凝固薬に抗血小板薬を加えることで、出血も塞栓症も増える傾向にあるけど、統計学的には有意な差ではない。

J-RHYTHMレジストリでは、ワルファリンにアスピリンを加えることで、ワルファリン単剤と比較して、塞栓症は変わらなかったけど、大出血(相対リスク1.6)と、全死亡(相対リスク1.5)は、有意に増加した(1)

結果は微妙に違うけど、それはそのレジストリに含まれている患者がもともと持っているリスクによっての違いもあるでしょう。まあ、出血が増えるというのはある意味当然で、それを上回るベネフィットがあるかどうかが問題で、CHA2DS2-VAScスコア≧2+HAS-BLED≧3だとワルファリンとアスピリンの併用の方が、net clinical benefitが高いという話もありますが(1)、AF+冠動脈疾患患者の慢性期の抗血栓療法は基本的には抗凝固薬単剤でいい気がします。

1)Int J Cardiol 2016;212:311-317

抗凝固療法にPPI併用は必要か

抗凝固薬にPPIの併用・・・
よくやられているパターンだと思います。

Association of Oral Anticoagulants and Proton Pump Inhibitor Cotherapy With Hospitalization for Upper Gastrointestinal Tract Bleeding.
JAMA. 2018 Dec 4;320(21):2221-2230.

【PECO】
P:抗凝固療法を新規で開始された患者
E:PPIあり
C:PPIなし
O:上部消化管出血による入院

抗凝固療法:アピキサバン、ダビガトラン、リバロキサバン、ワルファリン(エドキサバンは試験期間中の処方が少なかったため含まない)

inclusion criteria:30歳以上

【デザイン、セッティング】
・後向きコホート研究
・メディケア
・1643123例
・2011年1月1日〜2015年9月30日に抗凝固薬を開始された患者
・ポアソン回帰分析

【結果】

単位は調整後発生率/10000人年 (95%CI)

【まとめと感想】
PPIの内服により総じて40%ぐらい、消化管出血による入院が減っています。40/10000人年ぐらいなので、絶対値としてはそれほどインパクトは強くありません。数字だけ見ると、ダビガトランはワルファリンより消化管出血が少ないようですが、より消化管出血リスクの低い患者が選ばれているのだろうと思います。

DOAC内服時のPPIの併用について、ガイドラインではどうなっているのでしょうか。

Novel Oral Anticoagulants for Atrial Fibrillation(ESC)

DOAC投与時は、消化管出血の既往がある場合や抗血小板薬併用時は”考慮しても良い”、骨髄抑制が起こり得る化学療法や放射線療法が計画されている場合には”考慮すべき”ということになっています。それと、ダビガトランは臨床的な効果には差は長い、PPIやH2Bを併用すると10−30%吸収が低下します。アピキサバン、エドキサバン、リバロキサバンには影響はありません。

心房細動で抗凝固療法の適応になる時点で、他の併存疾患があり、それなりに薬を飲んでいる人が多いので、ポリファーマシーの観点からもルーチンにPPIを併用するのは望ましくないと思っています。

80代の高齢心房細動患者では、痩せが出血の危険因子

Fushimiレジストリでは、85歳以上だとそれ以下と比べて脳梗塞/全身性塞栓症が多くなるけど(HR:2.57、95%CI:1.77-3.65)、出血は多いわけではない(HR:1.40、95%CI:0.78-2.36)ということが以前報告されていました。

で、これは、高齢者の心房細動で出血にスポットを当てた論文です。高齢の心房細動患者で出血の危険因子はなにかということが調べられています。

Assessment of the bleeding risk of anticoagulant treatment in non-severe frail octogenarians with atrial fibrillation.
J Cardiol. 2019 Jan;73(1):7-13.

【PECO】
P:重度のフレイルでない80代の心房細動患者
E:暴露因子あり
C:暴露因子なし
O:出血

暴露因子:BMI(<18.5)、BW(&lt:50kg)、85歳以上、HAS-BLED3点以上、CKD、Hb<10g/dl、ワルファリン内服、抗血小板薬内服

フレイルティについては、臨床フレイルスケール(clinical frailty scale)で評価。
DOACは添付文書に準じた投与量調整がなされているか評価。
ワルファリンは、PT-INR1.6−2.6を至適範囲とし、TTR65%以上あれば適切な容量調整がなされていると判断した。

出血は3カテゴリに分類。
1)大出血:入院、または2単位以上の輸血が必要となる出血。生命に関わる出血。
2)臨床的に重大な出血:医学的介入、予約外受診、OACの一時的な中断が必要、または日常生活での支障をきたすような出血
3)小出血:上記以外

exclusion criteria:出血の既往、活動性の出血、重度腎障害、患者のコンディションが悪い場合

【デザイン、セッティング】
・症例対照研究
・単施設
・346例(ダビガトラン64例、リバロキサバン80例、アピキサバン95例、エドキサバン27例、ワルファリン80例)
・2011年1月〜2017年1月までにOACの処方が開始された患者
・観察期間:32.7ヶ月(14.0−51.0ヶ月)
・適切な容量調整がされていたのは、DOAC群では76%、ワルファリン群では65%。
・出血、抗凝固療法中止、抗凝固薬の変更、死亡、観察期間終了(2018年1月)のいずれかが起こるまでフォローアップ。
・COX比例ハザードモデル

【結果】
大出血は12例(消化管出血10例、喀血1例、肝出血1例)、臨床的に重大な出血4例(消化管出血4例)、小出血43例であった。

適切な容量調整がされている集団では、BMI<18.5が出血の最も重大な因子だった。
HR:2.17(95%CI:1.01−4.70)

一方、ワルファリンの使用(HR:0.57 [95%CI:0.26−1.27])や、抗血小板薬内服(HR:1.07 [95%CI:0.48−2.39])は有意差はなかった。

【まとめと感想】
80歳以上のAF患者では、やせ(BMI<18.5)が出血の危険因子のようです。

リアルワールドのデータでは、DOACはワルファリンと比べ出血が少ないと言われていますが、75歳以上のAF/VTEを対象としたメタ解析では出血に差はなく、このレジストリでもワルファリンの使用の有無では有意差はなかったようです。また、抗血小板薬併用下でも差はなかったということですが、ここらへんはNが大きくないので差が出なかったのかもしれません。

まあ、やせてる高齢者の抗凝固療法は要注意です。

今後ますます高齢の心房細動が増えてくると思いますが、エドキサバンのRCT(ELDERCARE-AF試験)やすべてのOACを含んだ前向きコホート研究(ANAFIEレジストリ)が走っているところのようなので、その結果が出てくると、高齢心房細動患者の治療も確立されてくるのではないでしょうか。

植込み型心臓電気デバイス(CIED)手術での感染予防 抗菌薬の追加延長投与は有効か

Prevention of Arrhythmia Device Infection Trial: The PADIT Trial.
J Am Coll Cardiol. 2018 Dec 18;72(24):3098-3109.

【PICO】
P:デバイス植込みで感染症リスクの高い症例
I:抗菌薬追加延長投与
C:従来の抗菌薬予防投与
O:1年以内のデバイスもしくはポケット感染による入院

感染症リスクの高い症例:ジェネレーター交換、リード追加、CRTの植込み

従来の抗菌薬予防投与:皮膚切開60分前のセファゾリン1−2g投与。ペニシリンアレルギーの場合には、皮膚切開120分前にバンコマイシン1−1.5gを投与。

抗菌薬追加投与:術前のセファゾリン+バンコマイシン投与に加え、閉創前にバクトラシン50000万単位+生食/50mlでポケット内を洗浄し、術後はセファレキシン500mgを1日4回、2日間内服。もしくは、セファトドキシル1000mgを1日2回投与。ペニシリンアレルギーの場合は、クリンダマイシン150−300mgを1日3回内服。オランダの全施設とカナダの1施設ではバクトラシンが入手できなかったので、生食もしくはセファゾリンでポケット内を洗浄した。

【試験の概要】
デザイン:RCT(cluster randomized crossover trial)
地域:カナダ24施設、オランダ4施設
登録期間:2012年12月〜2016年7月
観察期間:12ヶ月
症例数:12826例(従来治療群6285例、追加延長群6541例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
施設:術者5.5人、手術室25%・その他はカテ室かその両方、PMジェネレータ交換86件/年、ICDジェネレータ交換34件/年、CRTジェネレータ交換14.5件/年、消毒はクロルヘキシジン93%

従来治療群と追加延長群では、性別、腎機能障害、CRT新規植込み、ポケット手技で有意差あり。

ざっくりと。年齢72歳、女性(従来治療群33%、追加延長群31%で差あり)、糖尿病1/4、腎機能低下(従来治療群16%、追加延長群18%で差あり)、ペニシリンアレルギー10%、ジェネレータ交換38%・ICDジェネレータ交換16%・CRTジェネレータ交換6%・CRT/ICD新規植込み18%、手技時間<1時間 2/3

【結果】
従来治療群 vs 追加延長群
▶︎デバイス感染による(primary endpoint)
1.23% vs 1.01% OR:0.82(95%CI:0.59−1.15)

▶︎血流感染・感染性心内膜炎
0.45% vs 0.32% OR:0.72(95%CI:0.41−1.28)

▶︎ポケット感染・びらん
0.78% vs 0.69% OR:0.89(95%CI:0.58-1.37)

【まとめと感想】
デバイスの手術で、感染は1番嫌な合併症だと思いますが、抗生剤を追加・延長しても感染症の減少には結びつかないようです。

心房細動への房室結節アブレーションとCRT

narrowQRSの心房細動では、ジャン切り(房室結節アブレーション)して普通のペースメーカを入れると、薬物療法単独よりも症状はよくなるけど、心不全入院とか生存率は改善しない。50%の患者で右室ペーシングによる左室非同期が起こるためと思われる。

では、ジャン切りしてCRTに乗せちゃうとどうなのか。

A randomized controlled trial of atrioventricular junction ablation and cardiac resynchronization therapy in patients with permanent atrial fibrillation and narrow QRS
Eur Heart J. 2018 Dec 1;39(45):3999-4008.

【PICO】
P:症候性慢性心房細動+narrowQRSで1年以内に心不全入院歴あり
I:房室結節アブレーション(ABL)+CRT
C:薬物療法
O:心不全死+心不全入院+心不全の悪化

CRTの設定は主治医に一任。
薬物療法では安静時心拍数110/min未満が目標。

exclusion criteria:NYHAⅣ度、SBP≦80mmHgなど

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:ヨーロッパ 10施設
登録期間:2014年10月〜
観察期間:16ヶ月(中央値)
症例数:102例
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Boston Scientific社)

【患者背景】
ジゴキシンのみABL+CRT群36%、薬物療法群58%と差あり。
ざっくりと。年齢71歳、男女半々、AFの期間1−1.5年、2/3がHYNAⅢ度、HR100/min、QRS97ms、LVDd59mm、LVDs44mm、EF40%、冠動脈疾患30%、β遮断薬84%、ACE阻害薬・ARB60%、抗アルドステロン薬50%。

【結果】
ABL+CRT群 vs 薬物療法群
▶︎心不全死+心不全入院+心不全の悪化
20% vs 38% HR:0.38(95%CI:0.18−0.81)

▶︎心不全死
1例 vs 2例

▶︎全死亡
4%(2例)vs 12%(6例)HR:0.30(95%CI:0.06−1.50)

▶︎心不全入院
10% vs 25% HR:0.30(95%CI:0.11−0.84)

▶︎心不全の悪化
10% vs 15% HR:0.55(95%CI:0.18−1.68)

サブグループ解析では、EF35%以下、SP120mmHg未満、SSSスコア(自覚症状のスコア)32以上で有意差あり。

【まとめと感想】
ジャン切り+CRTは薬物療法より心不全入院を減らす。EF35%以下だとなお良し。もしかしたら、生命予後も変わってくるかもしれないという期待はあります。でかい規模のRCTが進行中のようです。

お高い治療ですが、これで心不全入院が防げて、結果的に医療費の削減になればいいのですが。

ダビガトランvsワルファリン 日本のレセプトデータベースより

Comparative effectiveness and safety of warfarin and dabigatran in patients with non-valvular atrial fibrillation in Japan: A claims database analysis
J Cardiol. 2018 Nov 23. pii: S0914-5087(18)30293-4. doi: 10.1016/j.jjcc.2018.09.004. [Epub ahead of print]

【PECO】
P:新規で抗凝固薬を開始した非弁膜症性心房細動
E:ダビガトラン
C:ワルファリン
O:脳梗塞+全身性塞栓症+頭蓋内出血
secondary endpoint:大出血

【デザイン、セッティング】
・後向き
・日本のレセプトデータベース(Medical Data Vision)
・2011年3月14日〜2016年6月30日
・22490例(プロペンシティスコアマッチ後は両群4606例ずつ)
・交絡因子の調整:プロペンシティスコアマッチ

【結果】
プロペンシティスコアマッチ後の患者背景。
平均74歳、女性34%、心不全35%、糖尿病27%、心筋梗塞1%、脳梗塞/TIA13%、PPI40%、H2blocker17%、CHADS2スコア2.0点、HAS-BLEDスコア1.0点。

ワルファリン vs ダビガトラン
脳梗塞+全身性塞栓症+頭蓋内出血(primary endpoint)
35.6 vs 29.0%/1000人年 HR:0.72(95%CI:0.53-0.97)

大出血(secondary endpoint)
11.3 vs 6.4%/1000人年 HR:0.55(95%CI:0.30−0.99)

消化管出血
6.4 vs 1.6%/1000人年 HR:0.24(95%CI:0.28−0.80)

【まとめと感想】
後向きのデータではありますが、ダビガトランの方が消化管出血が少なかったみたいです。

DOAC・ワルファリンを開始したAF患者の心筋梗塞発症率と死亡率

Risk of Myocardial Infarction in Anticoagulated Patients With Atrial Fibrillation
J Am Coll Cardiol. 2018 Jul 3;72(1):17-26.

RE-LY試験では、ダビガトランで心筋梗塞の増加を認めた。ARISTOTLE試験やROCKET-AF試験では、アピキサンバンやリバロキサバンに心筋梗塞の増加は認めなかった。これらの試験では、高齢者・フレイルは除かれており、また心筋梗塞をアウトカムにしたDOAC間の比較データはない。

【PECO】
P:AFと診断され初めて抗凝固療薬を内服する患者
E:DOAC(アピキサバン、ダビガトラン、リバロキサバン)
C:VKA(ワルファリン)
O:抗凝固療法開始後1年以内の心筋梗塞による入院
secondary outcome:抗凝固療法開始後1年以内の心筋梗塞による入院+全死亡

exclusion criteria:弁膜症性心房細動、DOACが禁忌となる腎障害

【デザイン、セッティング】
・the Civil Registration System(デンマーク)
・2013年1月1日〜2016年6月30日
・後向き
・31739例(ワルファリン8913例、アピキサバン8611例、ダビガトラン7377例、リバロキサバン6838例)
 うち1年間の脱落が8905例(28%)
・観察期間:1年
・COX比例ハザードモデル

【結果】
1年間の絶対リスク(95%CI)とワルファリンとのリスク差

心筋梗塞(primary endpoint)
ワルファリン 1.56%(1.33-1.80%) 
アピキサバン 1.16%(0.94-1.39%)リスク差-0.40% (−0.72to-0.07%)
ダビガトラン 1.20%(0.95-1.47%)リスク差−0.36%(−0.71to-0.03%)
リバロキサバン 1.07%(0.83-1.32%)リスク差-0.49%(−0.82to−0.16%)

DOAC間では、リスク差に有意差はない。

心筋梗塞+全死亡(secondary endpoint)
ワルファリン 12.2%(11.5-12.9%) 
アピキサバン 10.9%(10.3-11.5%)リスク差-0.40% (−0.72to-0.07%)
ダビガトラン 9.3%(8.6-10.0%)リスク差-0.36% (−0.71to-0.03%)
リバロキサバン 12.0%(11.3-12.7%)リスク差-0.49% (−0.82to-0.16%)

【まとめと感想】
DOACはワルファリンと比べ、低い心筋梗塞発症率と関連あり。心筋梗塞発症率は1.1%-1.2%程度で、ワルファリンとの差も有意とはいえ、年間0.4%程度。

システマティックレビューでは、ダビガトランはワルファリンと比べ心筋梗塞が増えることが報告されているが、このコホート研究ではその傾向は認めなかった。

それよりなにより、全死亡がその10倍起きている。平均年齢70歳ちょっとなので、10%/年の死亡率はインパクトがある。

抗血小板薬併用下でのDOACとワルファリンの比較

Combining Oral Anticoagulants With Platelet Inhibitors in Patients With Atrial Fibrillation and Coronary Disease
J Am Coll Cardiol. 2018 Oct 9;72(15):1790-1800.

【PECO】
P:OMI+AF、もしくはPCI施行後+AF
E:DOAC+抗血小板薬
C:VKA+抗血小板薬
O:出血、虚血性脳卒中、心筋梗塞、全死亡

【デザイン、セッティング】
・Danish nationwide administrative registries
・後向き
・3222例
(VKA+SAPT 875例、DOAC+SAPT 595例、DAPT 1074例、DOAC+DAPT 678例)
・2011年8月〜2017年7月
・観察期間:12ヶ月
・PT-INR、血圧、腎機能のデータは含んでいない
・COX比例ハザードモデル
・著者には、DOAC企業とのCOIあり

【結果】
DOACは、リバロキサバン、ダビガトラン、アピキサバンが1/3ずつぐらい。2/3は減量投与。

VKA+DAPTを基準として、DOAC+DAPTのハザード比は・・・
出血:0.51(95%CI:0.33-0.78)

脳卒中:1.44(95%CI:0.78-2.67)

心筋梗塞:0.92(95%CI:0.58-1.45)

全死亡:0.83(95%CI:0.59-1.17)

VKA+SAPTを基準として、DOAC+SAPTのハザード比は・・・

出血:0.90(95%CI:0.60-1.53)

脳卒中:0.64(95%CI:0.30-1.36)

心筋梗塞:0.63(95%CI:0.40-1.00)

全死亡:1.08(95%CI:0.80-1.44)

【まとめと感想】
VKA+DAPTは、DOAC+DAPTと比較すると心筋梗塞・脳梗塞・全死亡には差はないが、約2倍の出血と関連あり。

VKA+SAPTは、DOAC+SAPTと比較すると出血・脳梗塞・全死亡には差がないが、約2/3倍の心筋梗塞と関連あり。

DOAC betterな結果でした。PT-INR、血圧、腎機能などイベントに関連がありそうな因子は、解析には含まれてないというのはlimitation。

ステント留置から1年以上たった心房細動患者の抗血栓療法 OAC-ALONE試験

An Open-Label Randomized Trial Comparing Oral Anticoagulation with and without Single Antiplatelet Therapy in Patients with Atrial Fibrillation and Stable Coronary Artery Disease Beyond One Year after Coronary Stent Implantation: The OAC-ALONE Study

冠動脈疾患があり、カテーテル治療されている患者さんで心房細動も合併している場合、ESCのガイドラインでは、ステント留置から1年たったら抗凝固薬単剤を推奨。AHAでは、ステント留置から1年たって、塞栓リスクが低くて出血リスクが高いなら抗凝固薬単剤を推奨している。ただ、RCTはやられていなかったので、本当にそれでいいかはわからない。これが、冠動脈疾患+心房細動で抗凝固療法単剤で良いか検証した初めてのRCT。

【PICO】
P:ステント留置から1年以上経過した冠動脈疾患+心房細動
I:抗凝固薬単剤
C:抗凝固薬+抗血小板薬
O:全死亡+心筋梗塞+脳梗塞+全身性塞栓症

抗凝固薬はワルファリンかDOAC。ワルファリンは70歳未満はINR:2.0−3.0を、70歳以上はINR:1.6-.26を目標とし、少なくとも3ヶ月おきに測定。DOACは基本的には減量基準に従うことを推奨するが、自由裁量による減量もあり。

【試験の概要】
デザイン:RCT (オープンラベル、非劣性試験)
地域:日本 111施設
登録期間:2013年11月5日〜2016年12月28日
観察期間:2.5年
予定症例数:2000例(event rate:8.0%/1.5年、非劣勢マージン4.0%)
症例数:690例(OAC単剤群344例、併用療法群346例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(第一三共)

【患者背景】
ざっくりと。
年齢75歳、発作性と持続性+慢性は半々ぐらい、CHADS2:2.5±1.2、CHA2DS2-VASc:4.6±1.4、HAS-BLED:3以上 44%、抗凝固薬はワルファリン:3/4、DOAC:1/4、ワルファリンのTTR75%
両群で差があったのは、eGFR<30(10%vs5%)、PPI(53%vs62%)で、いずれもOAC単剤群で少し不利。

【結果】
OAC単剤群 vs 併用療法群
以下はいずれも年率。
全死亡+心筋梗塞+脳梗塞+全身性塞栓症 (primary endpoint)
6.4% vs 5.5%, HR:1.16(95%CI:0.79-1.72)

全死亡
4.6% vs 3.5%, HR:1.30(95%CI:0.82-2.10)

心血管死
2.3% vs 1.9%, HR:1.18(95%CI:0.62-2.28)

心筋梗塞
0.93% vs 0.46%, HR:2.03(95%CI:0.64-7.59)

脳梗塞+全身性塞栓症
1.5% vs 2.2%, HR:0.69(95%CI:0.33-1.38)

TIMI大出血
1.9% vs 3.4%, HR:0.57(95%CI:0.31-1.03)

【まとめと感想】
日本でやられたRCTだし、みんなが知りたい疑問だし、結果が出るのが楽しみでしたが、著者がabstractで述べている通り、パワー不足で結論めいたことは言えないのが残念です。日本でのRCTでは多くの症例を集めるのは本当に大変そうです。

心房細動患者の死因の多くは非心原性ですが、心房細動+冠動脈疾患であってでも心臓死は半分ぐらいで、もう半分は心臓以外の原因で亡くなられるということは頭に入れておく必要があるでしょう。それと、心筋梗塞の再発は1%/年ととても低いことも。