カテゴリー別アーカイブ: 虚血性心疾患

PCSK9阻害薬エボロクマブの費用対効果

Updated Cost-effectiveness Analysis of PCSK9 Inhibitors Based on the Results of the FOURIER Trial
JAMA. 2017 Aug 22;318(8):748-750

2005−2012年のNational Health and Nutrition Examination Surveys(NHANES)で、FOURIER試験のクライテリア(動脈硬化性冠動脈疾患を有する米国の成人40-80歳、スタチン内服下でLDL-C ≥70 mg/dL)を満たす症例に、PCSK9阻害薬エボロクマブを使用すると仮定して、その費用対効果について検証。

890万人がFOURIER試験のクライテリアを満たし、平均年齢は66歳、平均LDLコレステロール104mg/dl、33%で糖尿病あり。

スタチンへのPCSK9阻害薬の追加はエゼチミブの追加より、MACEを289万3500減少させる。ICERは45万ドル。

ICERとは、Wikipediaによると・・・

1QALYを伸ばすために要するコストを incremental cost-effectiveness ratio(ICER)と呼び、多くの場合、この値が医療行為の是非の基準となる。

ということらしい。

QALY(quality adjusted life years)は質調整生存年で、クオーリーと読むらしい。

経済評価を行う際に、評価するプログラムの結果の指標として用いられる。単純に生存期間の延長を論じるのではなく、生活の質(QOL)を表す効用値で重み付けしたものである。QALYを評価指標とすれば、生存期間(量的利益)と生活の質(質的利益)の両方を同時に評価できる。効用値(utility)は完全な健康を1、死亡を0とした上で種々の健康状態をその間の値として計測される。たとえばAという治療をうけた場合、5年間生存期間が延長すると仮定し、その後の効用値0.8とすると、QALYは5(年)×0.8=4(QALY)となる。
http://canscreen.ncc.go.jp/yougo/08.htmlより引用


(本文から引用)

FOURIER試験では、エボロクマブにより心筋梗塞が有意に減少した。それにより、1094億7800万ドルの医療費削減が見込めるが、それは非心血管ケアによって相殺され、かつ、2兆4856億8400万ドルという莫大な薬剤費がかかることになる。

薬価を71%下げないと、費用に見合った効果がないと結論づけている。

日本だと最低でも薬価の70%は税金で賄う必要があるわけだから、まあこれを使って一番恩恵を受けるのはメーカーだろうな。

ROOBY試験 OPCABの5年生存率はon-pump CABGに劣る

CABGの方法としては、心拍動下で行うoff-pumpCABG(OPCAB)と人工心肺を用いたon-pumpCABGがある。周術期の脳梗塞はoff-pumpで少なくなることが期待できるが、グラフト開存率はon-pumpの方が良いと言われている。

off-pumpとon-pumpのCABGを比較したRCTはいくつかある。ドイツの75際以上の高齢者を対象としたGOPCABE試験では、早期の血行再建はoff-pump群で多いものの、1年後の死亡率に差はなく、CORONARY試験でも同様に早期の血行再建はoff-pumpで多かったが、5年生存率に差はなかった(1−2)。

このROOBY試験では、1年後のMACEはoff-pump群で有意に多く(9.9%vs7.4%)、グラフト開存率も悪いことが以前報告されていた(3)。これは、その5年のフォローアップ。

Five-Year Outcomes after On-Pump and Off-Pump Coronary-Artery Bypass.
N Engl J Med. 2017;377(7):623-632

◇この論文のPICOはなにか
P:冠動脈疾患
I:心拍動下冠動脈バイパス術(off-pump群)
C:心停止下冠動脈バイパス術(on-pump群)
O:全死亡とMACE(全死亡、再血行再建、非致死的心筋梗塞)

inclusion criteria:緊急もしくは待機的なCABG、CABGのみ行う症例
exclusion criteria:臨床的に有意な弁膜症

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:アメリカ
登録期間:2002年2月〜2007年6月
観察期間:5年
盲検化:患者のみ
必要症例数:2200例(詳細不明。死亡率はoff-pump15%, on-pump群10%?)
症例数:2203例(off-pump群1104例、on-pump群1099例)
解析:ITT解析とPP解析
スポンサー:企業の関与なし

◇患者背景

(本文から引用)

両群に差はない。
婚姻状況も調べられている。

◇結果
外科医のoff-pumpCABG経験数は、平均120例(中央値50例)。


(本文から引用)

全死亡もMACEもoff-pump群で有意に多い。


(本文から引用)

conversionした症例を除外した感度分析(PP解析)。off-pump群で137例、on-pump群で40例がconversion。両群ともにconversionした症例でのイベントの発現が多いため、有意差がなくなる。

◇批判的吟味
・独身男性だと予後は悪くなるが、characteristicsで婚姻状況も調べられている試験はあまり見かけない。
・off-pump群でon-pumpへのconversionが多く、5年後の死亡率は27.0%(37/137例)と高い。術中のconversionが多かったのだろうか。
・off-pumpCABGの経験数は、CORONARY試験やGOPCABE試験と比べると少ない。

◇感想
このROOBY試験では、5年死亡率率はoff-pumpで有意に高く、それはconversion(on-pumpへの切り替え)が多いことが影響していそう。conversionした症例の5年死亡率は27.0%と高く、おそらく術中のconversionが多かったと考えられる。

一方、CORONARY試験では、conversionは両群で6−7%程度であり、5年生存率には差がなかった(年齢、心機能、糖尿病など患者背景は、ROOBY試験の方が軽い印象)。

つまり、術者の経験が十分であれば、off-pumpでもon-pumpでも5年生存率に差はないと考えていいかもしれない。ただ、より長期のアウトカムについてはまだわからず、今後検証されるだろう。

(1)N Engl J Med 2013;368:1189-1198
(2)N Engl J Med 2016;375:2359-2368
(3)N Engl J Med 2009;361:1827-1837

日本人、急性冠症候群二次予防でのゼチーア併用の効果

Low-density lipoprotein cholesterol targeting with pitavastatin + ezetimibe for patients with acute coronary syndrome and dyslipidaemia: the HIJ-PROPER study, a prospective, open-label, randomized trial.
Eur Heart J. 2017 Apr 18.[Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:ACS
I:ピタバスタチン2mg+エゼチミブ10mg(エゼチミブ併用群)
C:ピタバスタチン2mg(プラバスタチン単独群)
O:全死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞、不安定狭心症、PCIまたはCABGによる血行再建

inclusion criteria:LDLコレステロール100mg/dl以上、中性脂肪400mg/dl以上など
exclusion criteria:ショック、心不全、僧帽弁閉鎖不全症などを合併したACSなど

LDLコレステロールの目標値は、エゼチミブ併用群では70mg/dl、ピタバスタチン単独群では90−100mg/dlとする。

登録時とランダム化後12週時点で、シトステロール・カンペステロール・ラトステロールを用いて、コレステロール吸収について評価する。

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:日本
登録期間:2010年1月〜2013年4月
観察期間:3.86年(中央値)
盲検化:オープンラベル
必要症例数:3000例(ピタバスタチン単独群で10%のイベント発生、エゼチミブ併用群で20%の相対リスクリ減少)
症例数:1734例
追跡率:99.3%(ロストフォローアップ13例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし(Japan Research Promotion Society for Cardiovascular Diseases)

◇患者背景


(本文から引用)

両群に差はない。半分がSTEMIで、ほとんどの患者でPCIがやられていて、心機能はそこそこ保たれている。

◇結果
【LDLコレステロール】
ピタバスタチン単独群vsエゼチミブ併用群

○登録時
135.6±30.0mg/dl vs 134.8±29.3mg/dl

○3ヶ月後
85.7±23.0mg/dl vs 66.1±22.2mg/dl(P<0.001)

○36ヶ月後
88.5±21.6mg/dl vs 71.3±24.8mg/dl(P<0.001)

LDLコレステロールは、3ヶ月時点で有意に下がる。
その後も、両群とも36ヶ月までほぼ維持。


(本文から引用)

primary endpointに有意差はなく、大きなウエイトを占めるのは血行再建。心筋梗塞と脳梗塞では全く差がない。なぜか、全死亡は有意ではないものの結構差がついている。

◇感想
日本人では、心筋梗塞二次予防というハイリスクな患者を対象としても、ゼチーア(エゼチミブ)の効果は示せなかった。IMPROVE-IT試験でも、18000例というサンプルサイズでも観察期間を7年に延長して、やっと統計学的有意差が示せたのだから、日本人を対象としてこのサンプルサイズだと統計学的な差が出ないのは当然だろう。

そもそもだが、介入群と対照群でLDLコレステロールの目標値が異なるのは、おかしいのではないか。純粋にゼチーアの上乗せ効果を見るのであれば、LDLコレステロールの目標値は同じにすべきで、例えばピタバスタチン単独群でその目標値を達成できないなら、ピタバスタチンの増量をするようにすべきじゃないか。

対照群に手加減させておいて、ゼチーアを勝とうとしているとしか思えない。しかし、LDLコレステロール低下の恩恵を強く受けるであろう心筋梗塞を含め、ゼチーア併用でイベントは抑えられていない。

サブグループ解析では、コレステロールの吸収が亢進しているグループで、ゼチーア併用で効果があったとしている。ゼチーアの作用機序を考えると、理屈にあってそうな感じはするが、それが実臨床で安価で簡便にわらかなければ、ちょっと使えない。

まあ、これを検証するには、コレステロールの吸収が亢進している症例を対象にゼチーアの効果をみなければ結論は出せない。

ピタバスタチン2mgでLDLコレステロールが下がらない、あるいはハイリスクのためより下げたい場合には、ゼチーアを追加するより、ピタバスタチンを4mgに増量する方が、エビデンスとしても価格としてもリーズナブルだと思うが。

家族性高コレステロール血症の診断基準

家族性高コレステロール血症(成人)の診断基準はいろいろ。

以下の3つが知られている。
・Simon Broome(1)
・Dutch Lipid Clinic(2)
・American Heart Association(3)

・Simon Broome

a+b、またはc → 確定
a+d、またはa+e → ほぼ確定

・Dutch Lipid Clinic

>8点 → 確定
6−8点 → ほぼ確定
3−5点 → 可能性あり

・American Heart Association
LDLコレステロール190mg/dl以上で、一親等の者がLDLコレステロール190mg/dl以上または早発の冠動脈疾患(男性<55歳、女性<60歳)

角膜輪は、角膜の周りの灰色のリング。

黄色腫は、アキレス腱にもっとも起こりやすい。日本動脈硬化学会は、アキレス腱の肥厚(>9mm)も診断基準に組み入れている。黄色腫は、柔らかく、通常は痛みはない。手掌や足底にできることがあり、しばしば痛みがある。



(4)より引用

関節の伸側にできやすい。

FHと疑うのは、LDLコレステロール190mg/dl以上、FHの家族歴、腱黄色腫、早発の冠動脈疾患を診たとき。早発の冠動脈疾患(男性<55歳、女性<60歳)では、Dutch lipid clinicのアルゴリズムを用いると4.8%がFHという報告があり、意外と多い(5)。ちなみに、一般人口ではホモ接合体は30−40万人に1人、ヘテロ接合体は日本では500人に1人、ヨーロッパでは300人に1人、アメリカでは200−250人に1人と言われている。

治療としては、LDLコレステロールを少なくとも100mg/dl未満を目標に、最大耐用量のスタチン(リスクが高いなら70mg/dl未満)。ダメならゼチーアを加える。それでもダメなら、PCSK9抗体の使用を考慮。

(1)Atherosclerosis. 1999 Jan;142(1):105-12.
(2)Atherosclerosis. 2016 Oct;253:281-344.
(3)Circulation. 2014 Jun 24;129(25 Suppl 2):S1-45.
(4)N Engl J Med 2017; 377:e7
(5)Eur Heart J. 2015 Sep 21;36(36):2438-45.

糖尿病とグラフト開存率

Influence of Diabetes on Long-Term Coronary Artery Bypass Graft Patency.
J Am Coll Cardiol. 2017 Aug 1;70(5):515-524.

◇この論文のPECOは?
P:CABG
E:糖尿病あり
C:糖尿病なし
O:グラフト開存率

inclusion criteria:糖尿病の治療内容、術前の冠動脈所見、再血行再建前の冠動脈造影所見、グラフトの狭窄の程度がわかる症例のみ組み入れ

<デザイン、セッティング>
・1972年1月1日〜2011年1月1日
・米国
・単施設(Cleveland Clinic)
・retrospective
・糖尿病あり:1372例(ITA:1132、SV:2512、その他:152)
 糖尿病なし:11519例(ITA:6771、SV:17554、その他:339)
・CABG後の冠動脈造影
 1回:8387例、2回:2267例、3回:623例、>4回:242例
・プロペンシティスコアマッチ

<結果>

(本文から引用)

・ITA
糖尿病ありでは、85%は狭窄なし。閉塞は4.6%。
糖尿病なしでは、86%が狭窄なし。閉塞は6.7%。
調整前のデータだが、差はない。

・SV
これも調整前で、差はない。
1/3は狭窄ゼロ。半分は閉塞する。


(本文から引用)


(本文から引用)

調整後。
糖尿病ありで、早期の開存率が有意に高い。
遠隔期では、差がない。
SVでは有意差なし。

propensity matched cohort
5年、10年、15年、20年生存率はそれぞれ
糖尿病あり 93%、73%、51%、35%
糖尿病なし 96%、83%、69%、58%
(P<0.0001)

◇感想
CABG後のグラフト開存率は、ITAもSVも糖尿病の有無で差がない。冠動脈造影自体が定期的にルーチンで行われているわけではないため、そのタイミングや回数にバイアスが入ってしまうが、BARI試験など以前の報告との一貫性はある。

糖尿病がある方が、冠動脈自体の動脈硬化が進みやすいため、内胸動脈はより閉塞しにくいのかもしれない。でも、そうだとすれば、なぜSVでも開存率に差がないのかはわからない。

CABG後でも糖尿病がある方が予後は悪い。グラフト開存率に差がないなら、それは非冠動脈死を反映しているのかと思ったが、この研究では心臓死、非心臓死に、両群で差はなかった(BARI試験では、5年間の心臓死に差はないが、非心臓死は糖尿病で有意に多い)。

生体吸収性スキャフォールド システマティックレビュー

2-year outcomes with the Absorb bioresorbable sca old for treatment of coronary artery disease: a systematic review and meta-analysis of seven randomised trials with an individual patient data substudy
Lancet. 2017 Jul 18. [Epub ahead of print]

◇論文のPICOはなにか
P:冠動脈疾患
I:Absorb(生体吸収性スキャフォールド)
C:金属製薬剤溶出性ステント
O:心臓死、標的血管心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建の複合エンドポイント

安全性エンドポイントとして、デバイス関連血栓症を評価。

<データ収集>
・文献データベース:MEDLINE、Cochrane database、TCTMD、ClinicalTrials.gov、Clinical Trial Results、CardioSource
・検索語:“randomized trial”, “drug-eluting stent”, “everolimus- eluting stent”, “Xience”, “bioabsorbable scaold”,
“bioresorbable scaold”, “bioabsorbable stent”, “bioresorbable stent”, “BVS”, “BRS”
・期間:〜2017年4月1日
・研究の種類:RCTのみ
・除外基準:nonRCT、観察期間2年以内、Absorb以外のBVS
・重複した研究:除外

<データの統合>
・Cochrane toolで、各研究の質の評価
・7試験(ABSORB Ⅱ試験、ABSORB Japan試験、ABSORB China試験、ABSORB Ⅲ試験、EVERBIO Ⅱ試験、TROFI Ⅱ試験、AIDA試験)をメタ解析。
・fixed effect model

◇結果

(本文から引用)
どのアウトカムもheterogeneityは低い。
心臓死に差はないが、デバイス関連血栓症、標的血管心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建はBVSで有意に増える。

◇感想
施設は限られているが、日本でも使用可能になったBVS。生体吸収性なので溶けてなくなって内皮機能も改善するはずなのに、実際は・・・。

2年のシステマティックレビューがでた。7試験を組み入れ一貫性があるデータで、デバイス関連血栓症、標的血管心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建が有意に増加。

デバイスがもっと改良されないと、普及は難しそう。

NSTE-ACSへの早期侵襲的治療にベネフィットはあるのか

Early Invasive Versus Selective Strategy for Non-ST-Segment Elevation Acute Coronary Syndrome: The ICTUS Trial.
J Am Coll Cardiol. 2017 Apr 18;69(15):1883-1893

◇この論文のPICOはなにか
P:非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)
I:early invasive strategy
C:selective invasive strategy
O:10年間での全死亡、心筋梗塞

early invasive strategy
ランダム化から24−48時間以内に冠動脈造影を行い、血行再建を行う。

selective invasive strategy
退院前の検査で誘発虚血がある、もしくは難治性狭心症であれば、血行再建を行う。

inclusion criteria:次の3つすべてを満たす:20分以上続く胸痛、トロポニンT上昇(≧0.03g/l)、心電図での虚血性変化(ST低下、一時的なST上昇、陰性T波)または冠動脈疾患の既往(OMI、PCIまたはCABGの既往)

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:オランダ
登録期間:2001年7月〜2003年8月
観察期間:10年
盲検化:open-label
症例数:1200例(early invasive strategy:604例、selective invasive strategy:596例)
追跡率:両群とも約94%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Eli Lilly, Sanofi/Synthelabo, Sanofi, Pfizer, Medtronic)

◇患者背景

(本文から引用)

平均年齢62歳、75%が男性。

入院中のCAG試行率、血行再建率はそれぞれ
early invasive strategy 98%、76%
selective invasive strategy 53%、40%

◇結果

(本文から引用)

PCIに関連したMIだけが、early invasive strategyで有意に多いが、自然発生のMI、心臓死、全死亡に差はない。

◇感想
日本の現状であれば、この試験の対象になっているようなNSTE-ACS(20分以上胸痛が続いて、トロポニン陽性で、心電図変化あり)だと、即CAG・PCIという感じになるだろう。生命予後が短いとか、大きな手術の直後とか、高齢・寝たきりみたいな場合には、カテをやらないこともある。

この試験同様、NSTE-ACSを対象にearly invasive strategyとselective invasive strategyを比較した試験に、FRISC Ⅱ試験、RITA-3試験がある。この3つの試験で結果が一致しているわけではないが、early invasive strategyに長期的なbenefitがないというICTUS試験の結果は、ちょっと考えさせられる。

ただ、低分子ヘパリンやGPⅡb/Ⅲaなど、日本では使用できない薬剤も使われているので、そこらへんで違いはあるかもしれない。

妊娠関連冠動脈解離

Spontaneous Coronary Artery Dissection Associated With Pregnancy
J Am Coll Cardiol. 2017;70(4):426–435.

<デザイン、セッティング>
・Mayo Clinicの多施設レジストリ
・323例(P-SCAD:54例、NP-SCAD:269例)
  P-SCAD:妊娠関連冠動脈解離
  NP-SCAD:妊娠非関連冠動脈解離
・観察期間:P-SCAD:4.3年、NP-SCAD:2.0年(中央値)

<発症時期>

(本文から引用)

54例中・・・
4例:妊娠中
48例:出産後12週以内(生存可能な新生児)
1例:妊娠初期の流産
1例:36週で死産のあとに

48例のうち、29例が経膣分娩(自然分娩22例、誘発分娩7例)、10例が帝王切開、9例は詳細不明。

70%が出産・死産から1ヶ月以内に、50%が1週間以内にSCADを発症。

<患者背景>
平均年齢35歳。MarfanやEhlers-Danlosなどの結合組織疾患はない。


(本文から引用)

経産婦がほとんどで、2人以上産んでいる。妊娠高血圧やpreeclampsiaの割合が多いというわけではない。30%で不妊治療が行われていた。初産の年齢が比較的高め。

<clinical presentation>

(本文から引用)

LM病変、多枝病変、STEMIが多い。そのためか、LVEFは悪い。薬物療法が選択されることが多いが、60%で血行再建が試みられている。しかし、PCI不成功が30%と多い。

◇まとめ・感想
P-SCADは、LM病変、多枝病変、STEMIが多く、NP-SCADより重症。不妊治療や妊娠高血圧腎症(preeclampsia)を伴う多胎で多く、発症のタイミングは妊娠中・出産後いつでもありえるが、出産後1ヶ月以内がほとんどで、特に1週間以内が多い。

褥婦の胸痛では、念頭に置いておかないといけない。

5年間の再発率は10%で、全例で別の部位に解離が生じていた。NP-SCADと有意差はないが少なめ。

SCADはPCIを行なっても解離の進展しやすく、PCIは難渋することが多いと言われている。そのためか、40%は薬物療法が選択されている。

このレジストリーでは、PCIの30%が不成功に終わっている。若年であるため、ステント留置のデメリットは考えなければならない。LM病変、多枝病変、太い血管径、長い病変長などでは、CABGまでもっていくことができる状況なら、それも考えないといけないだろう。

糖尿病合併冠動脈多枝病変へのCABG 抗血小板療法はアスピリン単剤で

Dual Antiplatelet Therapy Versus Aspirin Monotherapy in Diabetics With Multivessel Disease Undergoing CABG: FREEDOM Insights.
J Am Coll Cardiol. 2017 Jan 17;69(2):119-127.

◇この論文のPECOは?
P:糖尿病を有する冠動脈多枝病変でCABGを行なった患者
E:DAPT(アスピリン+クロピドグレル)
C:アスピリン単剤療法(ASA)
O:5年間の全死亡、心筋梗塞、脳梗塞

exclusion criteria:CABG後30日以内の死亡、アスピリンを内服していない、ワーファリンの内服

<デザイン、セッティング>
・FREEDOM試験(糖尿病を有する冠動脈多枝病変を対象に、PCIとCABGを比較したRCT)のpost hoc解析
・795例(DAPT群544例、ASA群251例)
・DAPT期間は0.98年(中央値)
・観察期間:平均5年
・COX比例ハザードモデル

<結果>

(本文から引用)

◇批判的吟味と感想
AHAのガイドラインでは、off-pump CABG(OPCAG)後の1年間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)はclassⅠで推奨されており、on-pump CABGでは、DAPTを支持するデータが乏しく、classⅡbとなっている(1)。

糖尿病では、グラフト開存率の低下や死亡率上昇と関連があるが、糖尿病合併症例でもCABG後の1年間のDAPTは、5年での死亡率、心筋梗塞、脳梗塞を減少させなかった。

AHAのガイドラインではCABG後にDAPTが推奨されているとは言え、DAPT処方率は2/3と過去の観察研究よりも多かった。FREEDOM試験では、割付に関わらずクロピドグレルが提供されていたためかもしれない。1年間のDAPTでもASA単剤と出血に差はなかったが、この研究では、30日以内の死亡は解析から除外されているため、DAPTの出血リスクを過小評価するかもしれない。

post hoc解析なので結論めいたことは言えないが、DAPTがon-pumpCABGのアウトカムを改善しないという過去の報告と矛盾しない結果だった。

(1)Circulation. 2015;131:927-64

カナグリフロジン 心血管アウトカム

Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2017 Jun 12. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患ハイリスクの2型糖尿病
I:カナグリフロジン100mg or 300mg
C:プラセボ
O:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞

inclusion criteria:HbA1c7.0−10.5%、心血管疾患の既往あり、ない場合はそれ相応のリスクがあること(糖尿病罹患歴10年以上、コントロール不良の高血圧、喫煙者、低HDL血症など)など

◇試験の概要
デザイン:RCT 非劣勢試験(非劣勢マージン1.3)
地域:30ヶ国、667施設
観察期間:126.1週(中央値)
盲検化:二重盲検
必要症例数:記載なし 688イベント発生するまで
症例数:10142例(カナグリフロジン5795例、プラセボ4347例)
追跡率:99.6%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Janssen社)

◇患者背景

(本文から引用)

両群に差はない。
内服薬は不明。

◇結果

(本文から引用)

primary endpointとしては差がついてるが、心臓死、心筋梗塞、脳梗塞のぞれぞれでみるとどれも有意差はついていない。

アルブミン尿の抑制だとか、腎機能保護効果については、EMPA-REG試験と同じような感じ。


(本文から引用)

足趾と足の切断、骨折、男性器感染症、女性器真菌感染症は、カナグルで有意に多い。あと、光線過敏症が多い傾向。

◇感想
動脈硬化性の心血管疾患の既往、またはそれ相応のリスクがある2型糖尿病患者を対象とし、カナグリフロジンの心血管イベント抑制効果を検証したRCT。

結果としては、primary endpointである心臓死+心筋梗塞+脳梗塞は有意に減少したが、それぞれで見てみると、どれも有意な減少は認められなかった。EMPA-REG試験では、プラセボと比べエンパグリフロジンで脳梗塞が増加傾向にあったが、カナグリフロジンではその傾向は認められなかった。

primary endpointに対するNNT(1年)は218になる。今の薬価は205円なので、1630万円で1件イベントが減るが、下肢切断や感染症は増える。それをどう捉えるか。

自分は真菌感染とか診たことがないので、そもそもSGLT2阻害薬を使ってそういう副作用を起こされても困る。自分が対処しきれないことが起こりうる薬剤は処方しにくい。

RCTで有害事象まで調べることはできないので(primary endpointより発生率が低いからパワーが足りない)、これからコホート研究やメタ解析で明らかになっていくだろう。