カテゴリー別アーカイブ: 虚血性心疾患

FFRガイドPCIは心血管イベントを減らすのか FAME2試験 (5年のフォローアップ)

冠動脈に50%以上の狭窄があり、FFRが0.80以下の安定狭心症・無症候性心筋虚血の患者を対象にして、PCIを行うことで、薬物療法のみで治療よりも、その後の心血管イベントを抑えられるか検証したFAME2試験。

2年間のフォローアップでは、緊急血行再建は有意にPCI施行群で少なかった。ただ、心筋梗塞や死亡の減少といったところまでは至っておらず、また、より長期的にみてFFRガイドPCIが薬物療法より優れるか否かについてのデータはない。

これはFAME2試験の5年のフォローアップの結果である。

Five-Year Outcomes with PCI Guided by Fractional Flow Reserve
N Engl J Med. 2018 May 22. doi: 10.1056/NEJMoa1803538. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:安定狭心症・無症候性心筋虚血で冠動脈に50%以上の狭窄+FFR≦0.80
I:PCI+至適薬物療法
C:至適薬物療法のみ
O:全死亡、心筋梗塞、緊急血行再建の複合エンドポイント

緊急血行再建:持続する、あるいは悪化する胸部症状 (心電図変化・バイオマーカの上昇の有無を問わない) のため予定外に入院し、その入院期間中に血行再建を行うこと

inclusion criteria:冠動脈造影にて1-3枝病変がある患者
exclusion criteria:CABG術後、左室駆出率(EF)<30%、左冠動脈主幹部病変(LMT)

【試験の概要】
デザイン:open label RCT
地域:ヨーロッポ・北米の28施設
登録期間:2010年5月15日〜2012年1月15日
観察期間:5年
症例数:888例 (PCI群:447例、薬物療法群:441例)
解析:ITT解析
スポンサー:St.Jude Medical社 (最初の3年にのみ関与。それ以上のフォローは試験の結果に変化をもたらさないこと、薬物療法群のクロスオーバーが多いことを理由にスポンサーを下りた)

【患者背景】
LVEF<50%の割合のみ、FFR群18%、薬物療法群12%で有意に群間差があった。それ以外は同等。年齢63歳、男性が3/4、喫煙者20%、糖尿病30%弱、腎不全2%。

【結果】
28施設のうち、9施設は3年でフォローアップを中止している。症例数は全体の12%で、追跡率は85%程度。5年間フォローアップした19施設の症例数は88%で、追跡率は93%ほど。

薬物療法群のクロスオーバーは255例 (51.0%)。このクロスオーバーはエンドポイントに含まれている緊急血行再建とは別のもの。

PCI群 vs 薬物療法群
全死亡+心筋梗塞+緊急血行再建 (primary endpoint)
13.9% vs 27.0% HR:0.46 (95%CI:0.34-0.63)

全死亡
5.1% vs 5.2% HR:0.98 (95%CI:0.55-1.75)

心筋梗塞
8.1% vs 12.0% HR:0.66 (95%CI:0.43-1.00)

緊急血行再建
6.3% vs 21.1% HR:0.27 (95%CI:0.18-0.41)

【批判的吟味】
・試験の早期中止 (early determination for benefit) による過大評価
・十分とは言えない追跡率
・少なくないクロスオーバー (薬物療法群で51.0%)
・オープンラベルというデザインで、ソフトエンドポイント (緊急血行再建) のウエイトが大きい

【まとめと感想】
FFRガイドPCIを行えば、薬物療法のみで治療するより心筋梗塞・緊急血行再建を有意に少なかった。2年では差がなかった心筋梗塞も、5年間のより長期のフォローで薬物療法よりも優れるという結果だった。

上にあげたような問題点もあるので、解釈は慎重に。インターベンション医を後押しする解釈としては、これだけクロスオーバーが多いにも関わらず、心筋梗塞が2/3になっているということは、実際の効果はより大きいはずということで、薬物療法を支持する解釈としては、この試験の内的妥当性は相当微妙であてにならないということ (予定した観察期間が2年だから仕方ないけど)。

正直、血行再建というソフトエンドポイントは入れずに、心筋梗塞・死亡といったより重要でハードなアウトカムでのみ検証してもらいたいなあと思う。患者さんが心配なのは、FFRガイドPCIでそれらが本当に防げるのかということだと思うし、血行動態を評価するFFRを用いたPCIが、狭窄が軽度な部位に起こることが多い心筋梗塞を本当に減らせるのかということについても、答えが出ると思われる。

LVEF>40%以上のSTEMIでも、抗アルドステロン薬は有効なのか

アルドステロンは心筋の線維化を促進し、心筋リモデリングを引き起こすと言われている。心不全では血清レニン活性や血中アルドステロン濃度は上昇しており、それが予後の悪化に繋がる。

STEMI発症後、LVEFが40%を下回る場合には、標準治療に抗アルドステロン薬を加えることで生命予後改善効果が示されている (EPHESUS試験)(1)。LEVF>40%のSTEMIで抗アルドステロン薬の有効性を検証したRCTでは、死亡率の低下を認めたものは1つしかなく、その効果は決定的と言えなさそう (ALBATROSS試験)(2)

Aldosterone Antagonist Therapy and Mortality in Patients With ST-Segment Elevation Myocardial Infarction Without Heart Failure
A Systematic Review and Meta-analysis

JAMA Intern Med. Published online May 21, 2018. doi:10.1001/jamainternmed.2018.0850

【概要】
心不全のない、あるいはLVEF>40%のSTEMIに対する抗アルドステロン薬の有効性を検証したSR。
RCTのみ統合 (臨床的なアウトカムや生化学データがないものは除外)。
統合した試験の観察期間は、6ヶ月〜1年。
random effect model。

P:心不全のない、またはLVEF>40%のSTEMI
I:標準治療 + 抗アルドステロン薬の内服 (スピロノラクトン・エプレレノン・カンレノ酸カリウム)
C:標準治療 ± プラセボ
O:死亡、心筋梗塞、新規のうっ血性心不全、心室性不整脈、LVEFの変化、血清Cr値、血清K値

出版バイアスは、funnel plotを視覚的に判断。死亡というアウトカムのみ評価し、出版バイアスは認めなかった。他のアウトカムに関しては、統合した試験の数が少なかった (<10試験) ので評価していない。

【結果】
抗アルドステロン薬 vs 対照
死亡
I2=0%
2.4% vs 3.9% HR:0.62 (95%CI:0.42-0.91)

心筋梗塞
I2=0%
1.6% vs 1.5% OR:1.03 (95%CI:0.57-1.86)

うっ血性心不全
I2=0%
4.3% vs 5.4% OR:0.82 (95%CI:0.56-1.20)

心室性不整脈
I2=13%
4.1% vs 5.1% OR:0.76 (95%CI:0.45-1.31)

死亡は有意に減少。ひとつひとつのRCTのサンプルサイズ・イベント数が少なく、2つの試験で全体に占めるウエイトが67%あり、それに引っ張られている可能性はあるが、I2=0%で視覚的に見ても一貫性はありそう。ちなみに上述のALBATROSS試験のウエイトは9%。

他の心筋梗塞・うっ血性心不全・心室性不整脈といったアウトカムに有意な差はなかった。

LVEFは1.8%とわずかではあるが有意に改善しており、血清Cr値や血清K値には差はなかった。

【まとめ】
LVEF<40%のSTEMIでは、抗アルドステロン薬の有益性が示されていたが、LVEF>40%でも生命予後改善効果が示された。

ただし、この結果は鵜呑みにはできない。

対照 (標準治療) の死亡率が高いようで、一番ウエイトを占しめていたRCT (45%) では、標準治療群での6ヶ月死亡率が10%近くあり、日本の実臨床からとは違い過ぎる。I2=0%で視覚的にも一貫性はありそうなんだけど・・・。

あと、死亡のハザード比が0.62と効果が高いが、LVEF<40%を対象としたEPHESUS試験での全死亡のハザード比が0.85ということを考えると、そこまでの効果があるのか。

また、LVEF>45%のHFpEFを対象としスピロノラクトンの効果を検証したTOPCAT試験では、3400例も症例数を集めたが、全死亡・心血管死に有意差がなかった。なのに、STEMIに限れば死亡率が改善するのか、という疑問はある (TOPCAT試験にもOMIが25%含まれている)(3)。もしこの効果が真実なら、心筋梗塞発症早期から抗アルドステロン薬を使用することが良い結果をもたらしたのかもしれない。

死亡の他に有意差があったものはLVEFの改善だが、これは1.8%と小さく誤差範囲と言っていい。統合されたRCTの観察期間はすべて1年未満だったので、長期のデータが必要になるが、長期的に見れば抗アルドステロン薬により心筋リモデリングが抑制され、LVEFやうっ血性心不全などのアウトカムが、臨床的にも意味のある改善を示す可能性はある。

CrやKには差がなかったようだが、標準治療としてACE阻害薬やARBを使用しているなら、抗アルドステロン薬の併用はCrやKは上昇を招くので、より注意して見る必要がある。

(1) N Engl J Med. 2003;348(14):1309-21.
(2) J Am Coll Cardiol. 2016;67(16):1917-27.
(3) Engl J Med. 2014;370(15):1383-92.

SVGに対するPCIにおいて、第1世代DESのBMSに対する優位性は5年で消失

大伏在静脈 (SVG) に対するPCIにおいて、DESとBMSの有効性を比較したISAR-CABG試験では、1年の心血管イベント (全死亡、心筋梗塞、TLR) は有意にDESで少なかった (15.0% vs 22.1%, HR:0.64 [95%CI:0.44-0.94])。この差は、DESによってTLRが抑えられたためだった。

このISAR-CABG試験は、2011年にLancetに掲載されており、SVGへのPCIでDESとBMSを比較した最も大きなサンプルサイズの試験だったらしい。これは、その5年のフォローアップの結果である。

Efficacy Over Time With Drug-Eluting Stents in Saphenous Vein Graft Lesions
J Am Coll Cardiol 2018;71;1973-1982.

【PICO】
P:SVGに新規の50%以上の狭窄を有する狭心症
I:DES留置 (Taxus, Cypher, Yukon)
C:BMS留置
O:5年間の全死亡、心筋梗塞、TLR

secondary endpoint:全死亡、心筋梗塞、TLR、ステント血栓症

inclusion criteria:症状もしくは客観的な心筋虚血があること
exclusion criteria:心原性ショック

【試験の概要】
デザイン:RCT (オープンラベル、評価者のみブラインド)
地域:ドイツ
登録期間:2007年11月〜2010年2月
観察期間:5年
症例数:610例 (DES群303例、BMS群307例)
解析:ITT解析
スポンサー:記載なし

【患者背景】
ざっくりと。年齢71歳、DM35%、そのうち1/3がIDDM、UAP40%、13年物のSVG、EF49%、LADとLCxとRCAが1/3ずつ、reference3.3mm、病変長15mm。

【結果】
すべてのアウトカムで有意差なし。

DES vs BMS
全死亡
27.5% vs 28.9% HR:0.94 (95%CI:0.69-1.28)

心筋梗塞
8.2% vs 9.9% HR:0.76 (95%CI:0.44-1.36)

TLR
33.1% vs 25.5% HR:1.20 (95%CI:0.87-1.64)

ステント血栓症
2.0% vs 0.4% HR:5.11 (95%CI:0.60-44.72)

【まとめと感想】
1年時点で有意差があったprimary endpoint (全死亡、心筋梗塞、TLR) は、その後徐々に差が縮まり、Kaplan-Meier曲線は5年でほぼ重なった。両群の差になっていたのはTLRで、1年時点でDES群はBMS群の半分だったが (HR:0.49, 95%CI:0.28-0.86)、1−5年のランドマーク解析では倍発生しており、DES・BMSともに曲線の傾きはほぼ一定で差は開く一方である (HR:2.02, 95%CI:1.32-3.08)。

最初の1年では第1世代DESに軍配が上がったが、その差は5年間で消失してしまった。Cypher (SES) はすでに市場から消え、Taxus (PES) は第2世代・第3世代DESに劣る。第2世代・第3世代DESではlate catch upは抑えられ、BMSよりTLRは少ないとされているため、今のDESではここまで極端な結果にはならないだろう。

オメガ3系脂肪酸はHDL・TGの改善に役立つが、心血管イベントの予防には役立たない

米国のAgency for Healthcare Research and Qualityは、オメガ3系脂肪酸について次のように結論づけている(1)

・魚油サプリメントは、HDLコレステロールとLDLコレステロールをちょっと (≦2mg/dl) 上昇させる。

・容量依存的に中性脂肪を下げるし、もともと中性脂肪が高めの人は下がりやすい。

・心血管疾患を減らさない (RCTより)。

・魚油サプリメントを高容量とれば、動脈硬化性脳梗塞については減るかもしれない (観察研究より)。

・心血管死、致死的・非致死的脳卒中 (虚血性・出血性) への効果はRCTと観察研究で結果が異なっていて、RCTではベネフィットは示されていないが、観察研究ではベネフィットがありそう。

まとめると、HDLコレステロール上がったり、中性脂肪下がったり、なんかいい効果がありそうだけど、死亡とか心筋梗塞とかを予防するまでの効果はほぼ期待できないってことでしょうか。

さらに、別のシステマティックレビューでは、心筋梗塞二次予防、糖尿病、低HDL血症、高TG血症、スタチンの有無などのいずれのサブグループでも心血管イベント (非致死的心筋梗塞、心血管死、非致死的・致死的脳梗塞、血行再建) は減らないことが示された。ただ、投与量別のサブグループ解析はされていなかったので、残念ながら魚油の高容量投与ではどうなのかってところまではわからない(2)

とはいえ、心血管イベント予防としてのオメガ3系脂肪酸の出番はなさそう。

(1) Omega-3 Fatty Acids and Cardiovascular Disease: An Updated Systematic Review (https://effectivehealthcare.ahrq.gov/topics/fatty-acids-cardiovascular-disease/research)
(2) JAMA Cardiol. 2018 Mar 1;3(3):225-234.

ACSではDAPT期間は6ヶ月より12ヶ月がベター

6-month versus 12-month or longer dual antiplatelet therapy after percutaneous coronary intervention in patients with acute coronary syndrome (SMART-DATE): a randomised, open-label, non-inferiority trial.
Lancet. 2018 Mar 31;391(10127):1274-1284.

ACSのDAPT期間を短くできるか検証したRCT。

【PICO】
P:UAP、NSTEMI、STEMI
I:6ヶ月DAPT
C:12ヶ月DAPT
O:全死亡、心筋梗塞、脳梗塞の複合エンドポイント

inclusion criteria:血管径2.25−4.25mm
exclusion criteria:3ヶ月以内の大出血の既往、2ヶ月以内の大出血、手術予定

procedure:すべての患者で、アスピリン300mgとクロピドグレル300−600mgのローディングを行う。維持量は、アスピリン100mg、クロピドグレル75mg。試験の途中でプラスグレルとチカグレロルが使えるようになった。プラスグレルはローディング60mg、維持量10mg、チカグレロルはローディング180mg、維持量90mg。PCIの手技については、術者に一任。

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験)
地域:韓国
登録期間:2012年9月5日〜2015年12月31日
観察期間:18ヶ月
症例数:2712例(6ヶ月群1357例、12ヶ月群1355例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Abbott Vascular、Medtronic Vascular, Biosensors Inc, Dong-A ST)

【患者背景】
平均年齢62歳、男性75%、糖尿病28%、喫煙者40%、慢性腎不全1%、平均LVEF10%、UAPとNSTEMIとSTEMIは1/3ずつ。多枝病変45%、分岐部病変9%、ステント長26mm。両群にbaselineの差はない。

【結果】
6ヶ月群 vs 12ヶ月群
全死亡+心筋梗塞+脳梗塞
4.7% vs 4.2% HR:1.13(95%CI:0.79−1.62)

全死亡
2.6% vs 2.9% HR:0.90(95%CI:0.57−1.42)

心筋梗塞
1.8% vs 0.8% HR:2.41(95%CI:1.15−5.05)

BARC2−5
2.7% vs 3.9% HR:0.69(95%CI:0.45−1.05)

大出血
0.5% vs 0.8% HR:0.60(95%CI:0.22−1.65)

【まとめと感想】
全死亡+心筋梗塞+脳梗塞という複合エンドポイントにしてみると、6ヶ月DAPTは12ヶ月DAPTに対し非劣性だが、心筋梗塞だけを見ると有意に増えている。標的血管も非標的血管も両方とも。

出血に関しては、BARCtype2−5で6ヶ月DAPTで少ない傾向にあるが、有意ではなく、かつBARCtype2は軽めの出血も含まれる。大出血に限ると差はない。プラスグレルの投与量は日本と異なるが、韓国のRCTで同じアジア人なので、日本人にも十分当てはめることができるデータだと思う。

心筋梗塞は増やすが、大出血は変わらないとなると、あえて6ヶ月DAPTにする理由はない。

COPDに対するLABAやLAMAの導入早期には、心血管リスクは増大する

COPDと冠動脈疾患を合併している場合、必要があればいずれの疾患に対しても治療を行うことになる。冠動脈疾患に対しては、カルベジロールよりβ1選択性が高いビソプロロールが望ましい。COPDに対しては、LABAやLAMAを用いる。

LABAやLAMAの心血管に対する悪影響ははっきりと結論が出ていないが、開始早期には注意が必要かもしれない。

Association of Cardiovascular Risk With Inhaled Long-Acting Bronchodilators in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Nested Case-Control Study.
JAMA Intern Med. 2018;178(2):229-238.

台湾の保険データベースを利用して、LABAとLAMAの処方の開始が心血管リスクを上昇させるのか調べた研究。

【PECO】
P:40歳以上のCOPD
E/C:LABA、またはLAMAの新規の処方
O:心血管イベント(冠動脈疾患、心不全、不整脈、虚血性脳卒中)

LABA=サルメテロール(セレベント)、ホルモテロール(オーキシス)
LAMA=チオトロピウム(スピリーバ)
イプラトロピウム(アトロベント)

【デザイン、セッティング】
・台湾の保険データベース(the Taiwan National Health Insurance Research Database)
・ケースコントロールスタディ
・期間:2007年1月1日〜2011年12月31日
・新規でLABA・LAMAを処方された284220例のうち、ケース37719例とそれにマッチさせたコントロール146139例
・観察期間:2.0年(中央値)

【結果】
primary endpoint
調整オッズ比(95%CI)
LABA
・サルメテロール 1.49(1.31−1.69)
・ホルモテロール 1.52(1.25−1.85)
・LABA+ICS 1.51(1.36−1.68)
・LABA+イプラトロピウム 1.42(1.19−1.70)

LAMA
・LAMAonly 1.58(1.19−2.11)
・LAMA+SABA 1.39(1.04−1.87)
・LAMA+イプラトロピウム 1.47(1.16−1.86)

感度分析では、心血管疾患やCOPD増悪の既往によらず、リスクは増大していた。

【まとめと感想】
LABAでもLAMAでも、処方開始して30日以内の心血管疾患発症リスクは1.5倍ぐらい高くなる。循環器内科医としては、冠動脈疾患や心不全の治療をしっかりやってからと思うが、心血管疾患の有無によらず同じようにリスクが増えるなら、予防の仕様がないのかも。

ACSでの血行再建前のスタチンローディング

Effect of Loading Dose of Atorvastatin Prior to Planned Percutaneous Coronary Intervention on Major Adverse Cardiovascular Events in Acute Coronary Syndrome: The SECURE-PCI Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2018 Apr 3;319(13):1331-1340.

【PICO】
P:1週間以内に冠血行再建が予定されているACS
I:アトルバスタチン80mgのローディング
C:ローディングなし
O:全死亡、心筋梗塞、脳梗塞、計画していない冠血行再建

exclusion criteria:ローディングの24時間以内にフィブラートを内服している症例、ローディングの24時間以内にスタチンを最大量内服している症例

【試験の概要】
デザイン:RCT(多施設、二重盲検)
地域:ブラジル
登録期間:2012年4月18日〜2017年10月6日
観察期間:30日間
症例数:4191例(アトルバスタチン群2087例、ローディングなし群2104例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
平均年齢61歳、男性が3/4、STEMI25%・NSTEMI60%・UAP15%、30%がもともとスタチン内服、実際にPCIを行った65%・CABGを行ったのは8%。
(実際にPCIを行ったのは、アトルバスタチン群1351/2087例、ローディングなし群1359/2104例と、両群ともに65%ぐらい。ブラジルではad hoc PCIが多いらしく、造影の前にrandomizationを行うという試験デザインにしないといけないようで、事前の予測では70%がPCIを行うと想定されていたので、だいたい予想通り。)

【結果】
アトルバスタチン群 vs ローディングなし群
primary endpoint
6.2% vs 7.1% 絶対リスク差0.85%(95%CI:-0.70to2.41%)

PCI施行例でのMACE
MACE=全死亡、心筋梗塞、脳梗塞、計画していない冠血行再建
6.0% vs 8.2% HR:0.72(95%CI:0.54-0.96)

PCIを施行したSTEMIでのMACE(post hoc analysis)
7.2% vs 12.9% HR:0.54(95%CI:0.35−0.84)

【まとめと感想】
ACS患者において、冠血行再建前のアトルバスタチンをローディングしても、MACEは減らないという結果。ただ、PCIを行った症例に限れば、効果があるかもしれない。特にUAPだといいだろうなと思います。

PCSK9阻害薬の効果、適応、安全性

動脈硬化性心血管疾患があり、高容量スタチンを使用してもLDLコレステロールが70mg/dl以上の患者27564例を対象とし、PCSK9阻害薬エボロクマブとプラセボに無作為に割り付けた二重盲検比較試験であるFOURIER試験では、エボロクマブ群で有意に心血管イベントの低下を認めた(9.8%vs11.3%、フォローアップ2.2年)。心血管イベントは、心血管死・心筋梗塞・脳梗塞・不安定狭心症による入院・血行再建の複合エンドポイントで、有意差があった主なものは、心筋梗塞(3.4%vs4.6%)と血行再建(5.5%vs7.0%)だった(1)。

心血管イベントの絶対リスク減少は1.5%/2.2年。日本人では欧米人に比べ心筋梗塞の発症率が低いので、その効果はさらに小さいものになると考えるとちょっと微妙。FOURIER試験で対象とした患者群はもともと心血管リスクが高い集団だが、その中でもより効果が高い集団が事前にわかるといいかもしれない。

サブグループ解析では、達成したLDLコレステロール値により5群(<0.5, 0.5-1.3, 1.3-1.8, 1.8-2.6, >2.6mmol/L)に分け、最小値群は最高値群より有意に心血管イベントが減少することを報告され(HR:0.76)、PCSK9阻害薬でもthe lower, the betterであることが証明された(2)。ただ、これは使用開始4週間時点でのLDLコレステロール値なので、エボロクマブを使用する患者を選別するという目的には使えない。

別のサブ解析では、baselineの高感度CRPが高くなると、心血管イベントの絶対リスク減少が大きかった(<1mg/L:1.6%, 1-3mg/L:1.8%, >3mg/L:2.6%)。もしかしたら、高感度CRPは参考になるのかもしれないが、低いから使わなくていいということではなさそう(3)。

ESCでは、FHの心血管疾患一次予防の場合は最大量スタチン±エゼチミブ使用下でLDLコレステロール>100mg/dlならPCSK9阻害薬考慮。FHもしくは高リスク患者の二次予防の場合は、同様の条件で>70mg/dlなら考慮としている(4)。動脈硬化学会も似たような見解を表明してる(5)。なので、やっぱりこの条件を満たす場合には、患者さんと要相談って感じです。

あとは、adoverse eventについてだが、FOURIER試験のデータでは、肝機能障害、CK上昇、神経認知機能、悪性腫瘍、糖尿病発症、脳出血などの発生は、達成したLDLこれステロール値に関わらず発生率に差はなかったとしている(2)。だが、それぞれのadverse eventの発生率はprimary endpointより1ケタ小さいわけだから、その差を検出するパワーは全然足りていない。なので、1つのRCTのデータだけで、PCSK9阻害薬がadverse eventを増やさないとはとてもじゃないが言えない。

今後、特許が切れるまでは、そういうデータが出てくることはあまり期待できないが、エボロクマブを使用するか否かについてはそういうことも含めて患者さんには説明した方が良いだろう。

(1)N Engl J Med. 2017 May 4;376(18):1713-1722.
(2)Lancet. 2017 Oct 28;390(10106):1962-1971.
(3)Circulation. 2018 Mar 12. pii: CIRCULATIONAHA.118.034032. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.118.034032. [Epub ahead of print]
(4)Eur Heart J. 2017 Aug 1;38(29):2245-2255.
(5)http://www.j-athero.org/topics/pdf/seimei_20180302.pdf

75歳以上の高齢者でも、ステントはDESが良い

Drug-eluting stents in elderly patients with coronary artery disease (SENIOR): a randomised single-blind trial.
Lancet. 2017 Oct 31. pii: S0140-6736(17)32713-7. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32713-7. [Epub ahead of print]

◇リサーチクエスチョン
短期間のDAPT下で、DESがBMSより心血管イベントを減少させるのか。

◇PICO
P:75歳以上のAP・ACS
I:DES(Synergyステント)
C:BMS
O:PCI後1年での全死亡、心筋梗塞、脳梗塞、虚血による標的血管血行再建(TLR)

inclusion criteria:70%以上の狭窄(LMは50%以上)、無症候性狭心症の場合は10%以上の血流欠損もしくはFFR<0.80

◇試験の概要
デザイン:RCT(single blined)
地域:9ヶ国44施設
登録期間:2014年3月21日〜2016年4月14日
観察期間:1年
症例数:1200例(DES群596例、BMS群604例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Bostron Scientific社)

◇結果

(本文から引用)
両群で、DAPT期間は変わらなかった。


(本文から引用)
primary endpointで有意差があり、メインはTLR。

◇まとめと感想
75歳以上の高齢者のAP・ACSを対象とし、DESの安全性を検証したRCT。DESはBMSに比べ、TVRを有意に減少させ、primary endpointで差がついた。ステント血栓症はDESで少ない傾向で、1例を除きすべてDAPT継続中だった。

心血管死はDESで少ない傾向にあるが、ステント血栓症や自然発生の心筋梗塞については差がないので、これは無視していいだろう。

TVRは減るので、高齢者でもDESを選択した方が良い。

AMI+多枝病変+心原性ショック PCIは責任病変のみにするべき

PCI Strategies in Patients with Acute Myocardial Infarction and Cardiogenic Shock
N Engl J Med. 2017 Oct 30. doi: 10.1056/NEJMoa1710261. [Epub ahead of print]

◇リサーチクエスチョン
AMIで多枝病変を有する心原性ショックでは、完全血行再建より、責任病変にのみPCIを行った方が、臨床的なアウトカムを改善するのではないか。

◇PICO
P:STEMIもしくはNSTEMIで、多枝病変を有する心原性ショック
I:責任病変にのみPCI(culprit only群)
C:責任病変に加え非責任病変にもPCI(multivessel PCI群)
O:全死亡、腎代替療法を必要とする腎不全

inclusion criteria:多枝病変(70%以上の狭窄が2血管以上にあること)、心原性ショック(カテコラミンを使用しても30分以上SBP<90mmHgが遷延すること、肺うっ血、乳酸>2mmol/Lなど)

exclusion criteria:ショック発症から12時間以上経過、30分以上CPRされている、瞳孔散大・対光反射なしなど

◇試験の概要
デザイン:多施設RCT(オープンラベル)
地域:ヨーロッパ
登録期間:2013年4月〜2017年4月
観察期間:30日
症例数:1075例
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

◇結果
culprit only群 vs multivessel PCI群

▶︎全死亡+RRTを要する腎不全
=ITT解析=
  45.9% vs 55.4%
  相対リスク:0.83(95%CI:0.71−0.96)

=Per-Protocol解析=
  44.8% vs 55.1%
  相対リスク:0.81(95%CI:0.69-0.96)

これらの結果は、性別、年齢、DMやHTの有無、STEMIかNSTEMIか、責任病変がLADかどうか、CTOの有無や病変数など、どのサブグループでも一貫していた。

▶︎全死亡
  43.3% vs 51.6%
  相対リスク:0.84(95%CI:0.72-0.98)

primary endpointでついた有意差は、全死亡によるもの。RRTを要する腎不全では、両群に差はなかった。また、心筋梗塞再発、うっ血性心不全、血行動態安定までの時間、ICU滞在日数、人工呼吸器装着日数にも、差はなかった。

◇まとめと感想
心原性ショックを伴うAMI+多枝病変で、責任病変も非責任病変もPCIを行う治療戦略より、責任病変のみPCIを行い、必要に応じてstagedで非責任病猿のPCIを行った方が、死亡率が低いという結果であった。

これはちょっと衝撃的。ESCガイドラインでは、AMI+多枝病変+心原性ショックの場合、完全血行再建はclassⅡbの推奨。AHAガイドラインでは、責任病変のPCIを行った後も心原性ショックが遷延しているなら、非責任病変へのPCIを推奨している。

このCULPRIT-SHOCK試験は、これらの推奨とは逆の結果を示した。AMI+多枝病変+心原性ショックの場合、完全血行再建を行った方が死亡率が高かった。

AMI+多枝病変+心原性ショックを十把一絡げにして、完全血行再建の効果がなくても、やはり有益な患者がいるのではないか。たとえば、責任病変や非責任病変の部位によっては完全血行再建が有効な場合もあるのではないか。そう思って、サブグループ解析をみても、どのサブグループでも一貫して、culprit only PCIのアウトカムがよいという結果である。

交互作用のPのカットオフがいくつが適切なのかわからないが、仮にP<0.1にすると、糖尿病、LADのSTEMIかどうかの、2つのサブグループで交互作用を認める。しかし、そうはいっても決してmultivessel PCIが有効ということではない。せいぜいeven。

こういった試験では、クロスオーバーはつきものであり、両群で10%程度クロスオーバーしている。またmultivessel PCI群で完全血行再建できたのは81%であった。であれば、PP解析ならITT解析よりmultivessel PCIの効果をみれるはず。しかし、PP解析でも結果は変わらない。

AMI+多枝病変+心原性ショックであっても、ルーチンで非責任病変まで手を出してはいけない。この結果でガイドラインも変わるのか。

ただし、どのような場合ならprimary PCIで完全血行再建すべきか、staged PCIを行うのはどのような病変かについては、この試験からはわからない。