カテゴリー別アーカイブ: 虚血性心疾患

AMI+多枝病変+心原性ショック PCIは責任病変のみにするべき

PCI Strategies in Patients with Acute Myocardial Infarction and Cardiogenic Shock
N Engl J Med. 2017 Oct 30. doi: 10.1056/NEJMoa1710261. [Epub ahead of print]

◇リサーチクエスチョン
AMIで多枝病変を有する心原性ショックでは、完全血行再建より、責任病変にのみPCIを行った方が、臨床的なアウトカムを改善するのではないか。

◇PICO
P:STEMIもしくはNSTEMIで、多枝病変を有する心原性ショック
I:責任病変にのみPCI(culprit only群)
C:責任病変に加え非責任病変にもPCI(multivessel PCI群)
O:全死亡、腎代替療法を必要とする腎不全

inclusion criteria:多枝病変(70%以上の狭窄が2血管以上にあること)、心原性ショック(カテコラミンを使用しても30分以上SBP<90mmHgが遷延すること、肺うっ血、乳酸>2mmol/Lなど)

exclusion criteria:ショック発症から12時間以上経過、30分以上CPRされている、瞳孔散大・対光反射なしなど

◇試験の概要
デザイン:多施設RCT(オープンラベル)
地域:ヨーロッパ
登録期間:2013年4月〜2017年4月
観察期間:30日
症例数:1075例
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

◇結果
culprit only群 vs multivessel PCI群

▶︎全死亡+RRTを要する腎不全
=ITT解析=
  45.9% vs 55.4%
  相対リスク:0.83(95%CI:0.71−0.96)

=Per-Protocol解析=
  44.8% vs 55.1%
  相対リスク:0.81(95%CI:0.69-0.96)

これらの結果は、性別、年齢、DMやHTの有無、STEMIかNSTEMIか、責任病変がLADかどうか、CTOの有無や病変数など、どのサブグループでも一貫していた。

▶︎全死亡
  43.3% vs 51.6%
  相対リスク:0.84(95%CI:0.72-0.98)

primary endpointでついた有意差は、全死亡によるもの。RRTを要する腎不全では、両群に差はなかった。また、心筋梗塞再発、うっ血性心不全、血行動態安定までの時間、ICU滞在日数、人工呼吸器装着日数にも、差はなかった。

◇まとめと感想
心原性ショックを伴うAMI+多枝病変で、責任病変も非責任病変もPCIを行う治療戦略より、責任病変のみPCIを行い、必要に応じてstagedで非責任病猿のPCIを行った方が、死亡率が低いという結果であった。

これはちょっと衝撃的。ESCガイドラインでは、AMI+多枝病変+心原性ショックの場合、完全血行再建はclassⅡbの推奨。AHAガイドラインでは、責任病変のPCIを行った後も心原性ショックが遷延しているなら、非責任病変へのPCIを推奨している。

このCULPRIT-SHOCK試験は、これらの推奨とは逆の結果を示した。AMI+多枝病変+心原性ショックの場合、完全血行再建を行った方が死亡率が高かった。

AMI+多枝病変+心原性ショックを十把一絡げにして、完全血行再建の効果がなくても、やはり有益な患者がいるのではないか。たとえば、責任病変や非責任病変の部位によっては完全血行再建が有効な場合もあるのではないか。そう思って、サブグループ解析をみても、どのサブグループでも一貫して、culprit only PCIのアウトカムがよいという結果である。

交互作用のPのカットオフがいくつが適切なのかわからないが、仮にP<0.1にすると、糖尿病、LADのSTEMIかどうかの、2つのサブグループで交互作用を認める。しかし、そうはいっても決してmultivessel PCIが有効ということではない。せいぜいeven。

こういった試験では、クロスオーバーはつきものであり、両群で10%程度クロスオーバーしている。またmultivessel PCI群で完全血行再建できたのは81%であった。であれば、PP解析ならITT解析よりmultivessel PCIの効果をみれるはず。しかし、PP解析でも結果は変わらない。

AMI+多枝病変+心原性ショックであっても、ルーチンで非責任病変まで手を出してはいけない。この結果でガイドラインも変わるのか。

ただし、どのような場合ならprimary PCIで完全血行再建すべきか、staged PCIを行うのはどのような病変かについては、この試験からはわからない。

安定狭心症に対するPCI 運動時間への効果

Percutaneous coronary intervention in stable angina (ORBITA): a double-blind, randomised controlled trial.
Lancet. 2017 Nov 1. pii: S0140-6736(17)32714-9. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32714-9. [Epub ahead of print]

◇リサーチクエスチョン
安定狭心症に対して、世界中で年間50万件以上のPCIが行われているが、COURAGE試験ではPCIは死亡も心筋梗塞を減少させず、メタアナリシスでも同様の結果が報告されている。PCIと薬物療法の症状改善効果を比較したプラセボ治療を対照とした臨床試験は存在しない。症状の変化は主観的であり、真の治療効果とプラセボ効果の影響があるため、プラセボ対象試験によりプラセボ効果を排除し、PCIの真の治療効果を検証する。

◇PICO
P:安定狭心症(70%以上の狭窄の1枝病変)
I:薬物療法+PCI
C:薬物療法+プラセボ治療
O:トレッドミル運動時間

exclusion criteria:非標的血管に50%以上の狭窄、ACS、CABG後、LMT病変、DESが禁忌、CTO、重症弁膜症、重症低左心機能など

◇試験の概要
デザイン:double-blind RCT
地域:英国
登録期間:2014年1月6日〜2017年8月11日
観察期間:6週間
症例数:200例(PCI群105例、プラセボ治療群95例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

◇結果
LAD病変69%
治療前のFFR:0.72(IQR:0.57-0.81)
治療後のFFR:0.90(IQR:0.87–0.94)

◇まとめと感想
安定狭心症に対する治療は、薬物療法が基本になる。PCIは狭心症の症状を取るのに有効な方法だが、症状は主観的であるため、PCIの治療効果は真の治療効果にプラセボ効果が上乗せされたものになる。このORBITA試験では、プラセボ治療を行うことでプラセボ効果を排除し、PCIの真の治療効果について検証したものである。

結果としては、primary endpointのトレッドミル運動時間の増加は、プラセボ治療群よりPCI群の方が16秒長かったが、有意なものではなかった。また、Seattle Angina QuestionnaireやEQ-5D-5L questionnaireなどの質問票による症状の変化も、両群で有意な差はなかった。

PCIでは、生命予後を改善することや心筋梗塞を抑制することはできない。そして、この試験で示されたように運動耐容能や症状に対する効果も循環器内科医が期待する程でないなら、PCIの適応は極めて限定的なものになるだろう。

もちろん薬物療法では症状が取れない症例はあるので、熟練したInterventionistは不可欠である。そして、日本のほとんどの地域でAMIに対するPCIができる施設にアクセスできるという環境も素晴らしいが、安定狭心症に対するPCIは、おそらくやられ過ぎている。それができる施設と術者を制限した方が良いと思うが、今の日本ではPCIの数を抑制する方向にはなりにくい。米国ではCOURAGE試験以降、安定狭心症に対するPCI件数は減少しており、このORBITA試験を受けて、さらにPCI適応の適正化が進むかもしれない。

FOURIER試験二次解析 LDLコレステロール値と心血管イベント

Clinical efficacy and safety of achieving very low LDL-cholesterol concentrations with the PCSK9 inhibitor evolocumab: a prespecified secondary analysis of the FOURIER trial.
Lancet. 2017 Aug 25. pii: S0140-6736(17)32290-0. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32290-0. [Epub ahead of print]

◇PECO
P:家族性高コレステロール血症
E/C:治療開始4週後のLDLコレステロール値
O:心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、冠動脈血行再建、不安定狭心症

<デザイン、セッティング>
・FOURIER試験のprespecified secondary analysis
・25982例(27564例のうち、4週時点のLDLを測定していない症例、4週以内にprimary ednpointの発生を除外)
・観察期間:2.2年(IQR:1.8−2.5年)

4週後のLDLコレステロール値で5つのグループに分ける
・<0.5 mmol/L
・0.5−1.3 mmol/L
・1.3-1.8 mmol/L
・1.8−2.6 mmol/L
・>2.6 mmol/L
(LDLコレステロール1mmol/L=38.67mg/dl)

<結果>
▶︎4週間後のLDLコレステロール値
エボロクマブ群:0.8mmol/L(IQR:0.5−1.2)
プラセボ群:2.2mmol/L(IQR:1.9−2.7)

各グループで、LDLコレステロールの中央値の推移は、4週以降横ばい。

▶︎心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、冠動脈血行再建、不安定狭心症)
>2.6mmol/Lと比較すると各グループのハザード比は
・<0.5 mmol/L:0.76(95%CI:0.64-0.90)
・0.5−1.3 mmol/L:0.85(95%CI:0.76-0.96)
・1.3-1.8 mmol/L:0.94(95%CI:0.82-1.09)
・1.8−2.6 mmol/L:0.97(95%CI:0.86-1.09)

▶︎有害事象
AST/ALT上昇、Cr上昇、神経認知機能イベント、新規の糖尿病の発症、悪性腫瘍、出血性脳卒中、非心血管死など評価。どれも1−2%の発生率で、いずれのグループでも差はなかったが、唯一、白内障に関連した有害事象は、<0.5 mmol/Lのグループでオッズ比:1.54(1.03−2.31)と有意に高かった。

◇まとめと感想
FOURIER試験の二次解析で、到達したLDLコレステロール値と心血管イベントの関連は比例関係にあり、到達したLDLコレステロール値が低いほど、心血管イベントは低かった。ただし、LDLコレステロール値が1.3−1.8mmol/Lと1.8-2.6mmol/Lのグループでは、>2.6mmol/Lのグループよりハザード比は低いものの、統計学的には有意ではなかった。

エボロクマブを使っても、LDLコレステロールが思いの外下がらない方はいるので、その場合には費用対効果を考え、中止するという選択もありかもしれない。

JUPITER試験では、ロスバスタチンを投与しLDLコレステロール値<30mg/dlに低下した症例では神経認知機能の有害事象が有意に多かったが(HR:1.10、95%CI:1.01−1.21)、FOURIER試験ではLDLコレステロール値と神経認知機能の有害事象に関連はなかった。

生体吸収性ポリマーOrsiroステントと耐久性ポリマーXienceステントの比較 BIOFLOW V試験

Ultrathin, bioresorbable polymer sirolimus-eluting stents versus thin, durable polymer everolimus-eluting stents in patients undergoing coronary revascularisation (BIOFLOW V): a randomised trial.
Lancet. 2017 Aug 26. pii: S0140-6736(17)32249-3. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32249-3. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:狭心症、急性冠症候群
I:生体吸収性ポリマーシロリムス溶出性ステント(Orsiro)
C:耐久性ポリマーシロリムス溶出性ステント(Xience)
O:12ヶ月までのTLF(心血管死、標的病変心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建)

exclusion criteria:CTO、2.0mm以上の分枝がある分岐部病変、グラフト、DESの再狭窄

◇試験の概要
デザイン:RCT(非劣性試験)
地域:13ヶ国(アジア、ヨーロッパ、イスラエル、北米)
登録期間:2015年5月8日〜2016年3月31日
観察期間:12ヶ月
必要症例数:1334例(イベント数は両群7.0%、非劣性マージン3.85%)
症例数:4772例(Orsiro群、Xience群)
追跡率:94.5%
解析:ITT解析とPP解析
スポンサー:BIOTRONIC社

◇患者背景

(本文から引用)

ISRの要因になる糖尿病、腎不全、ACSを含め、両群に差はない。

病変は、1/4で石灰化あり。typeB2・Cが3/4を占める。

◇結果

(本文から引用)

primary endpointで有意差あり。

Orsiro群 6% vs Xience群 10%

標的血管心筋梗塞によるものと考えられる。


(本文から引用)

Kaplan-Meier曲線をみると、最初イベントが起き、あとはほぼ平行線。


(本文から引用)

30日以内の心筋梗塞、TLF、TVRがXience群で有意に多い。

心筋梗塞は、ほぼ入院中に起きている。
Orsiro群 34例 4% vs Xience群 30例 7%

心筋梗塞を正常上限の3倍以上のCK上昇と定義すると、
Orsiro群 2% vs Xience群 4%(postーhoc解析)

◇まとめと感想
OrsiroステントはXienceステントと比較し、12ヶ月後のTLF(心血管死、標的病変心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建)を有意に減少した。ただ、その差はPCI直後に生じた差であり、ステントの差というよりは、手技に関連したものと思われる。比較的複雑性の高い病変を対象としていたためかもしれない。

GLP-1受容体作動薬エキセナチド 心筋梗塞・脳梗塞・心血管死の抑制効果なし

Effects of Once-Weekly Exenatide on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2017 Sep 28;377(13):1228-1239

◇この論文のPICOはなにか
P:HbA1c6.5−10.0%の2型糖尿病
I:週1回のエキセナチド2mg皮下注
C:週1回のプラセボ皮下注
O:心血管死、心筋梗塞、脳梗塞

inclusion criteria:3剤までの経口血糖降下薬、2剤までの経口血糖降下薬とインスリンの併用
exclusion criteria:12ヶ月以内に2回以上の重症低血糖の既往、eGFR<30ml/min/1.73m2、甲状腺癌、MEN2

◇試験の概要
デザイン:DB-RCT(非劣性試験)
地域:35ヶ国、687施設
登録期間:2010年6月18日〜2015年9月16日
観察期間:3.2年(IQR2.2−4.4年)
必要症例数:記載なし、1360イベント必要(非劣性マージン1.3)
症例数:14752例(エキセナチド群7356例、プラセボ群7396例)
追跡率:98.8%
解析:ITT解析とPP解析
スポンサー:AstraZenecaの子会社のAmylin Pharmaceuticals

◇患者背景
characteristicsの表がない。

糖尿病罹患期間 12.0年(IQR7.0−18.0年)
HbA1c 8.0%(IQR7.3−8.9%)
心不全あり 16.2%

脂質治療薬とSGLT2阻害薬のみ群間差がある様。

◇結果

(本文から引用)

HbA1cは低下し・・・


(本文から引用)

体重は減少〜横ばいだが・・・


(本文から引用)

心血管イベントに対しては効果なし(非劣性)。

全死亡は減っている(ハザード比:0.86、95%CI:0.77−0.97)

primary endpointに差はないが、一応subgroupも確認。年齢のみでP for interaction<0.1。罹患期間・二次予防・CKDステージなどでは差がない。

◇感想
GLP-1受容体作動薬は、GLP-1を介した血管内皮機能改善効果、抗動脈硬化作用があるとされている。

残念ながら、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化疾患や、心血管死を抑制するまでの作用はないらしい。

左冠動脈主幹部病変 3−5年のフォローアップではPCIとCABGでアウトカムに差はない

Percutaneous Coronary Intervention vs Coronary Artery Bypass Grafting in Patients With Left Main Coronary Artery Stenosis: A Systematic Review and Meta-analysis.
JAMA Cardiol. 2017 Sep 13. doi: 10.1001/jamacardio.2017.2895. [Epub ahead of print]

◇論文のPICOはなにか
P:左冠動脈主幹部病変
I:DESを用いたPCI
C:CABG
O:全死亡、心筋梗塞、脳梗塞

<研究の選択>
・LMT病変に対し、DESを使用したPCIとCABGを比較した試験で、3年以上フォローアップしている研究を組み入れた。
・文献データベース:PubMed、Scopus、EMBASE、Web of Knowledge、Science Direct database
・期間:2001年11月18日〜2017年1月1月
・研究の種類:RCT
・Fixed-effect and random-effects models

◇結果
SYNTAX試験、PRECOMBAT試験、EXCEL試験、NOBLE試験の4試験を統合。いずれも非劣性試験で、EXCEL試験のサンプルサイズが一番大きい。

フォローアップ期間はEXCEL試験のみ3年で、他は5年。


(本文から引用)

3年まではPCIでイベントが少ないが、3年でクロスし、その後はCABGでイベントが少ないものの有意差はない。random effects modelでは、ハザード比:1.06(95%CI:0.85-1.32)。


(本文から引用)

primary endpointのフォレストプロット。NOBLE試験のみCABG betterで、統合すると有意差はない。


(本文から引用)

それぞれの試験を除外した場合の感度分析も行われている。結果の方向性が異なったNOBLE試験を除いたとしても、有意差はない。


(本文から引用)

DESの世代、Syntax scoreで見ても、有意差なし。


(本文から引用)

強いて言えば、心筋梗塞はCABGで良い傾向。
脳梗塞には差がない。

PCI群で再血行再建のハザード比は、第1世代DESで1.8、第2世代DESで1.7だった。

◇まとめと感想
LMT病変の安定冠動脈疾患において、3−5年のフォローアップでは、PCIとCABGによるアウトカム(全死亡、心筋梗塞、脳梗塞)の差はなかった。再血行再建は、第2世代DESを使用したとしても、CABGと比べ有意に多かった(ハザード比1.7)。

より長期のフォローアップだと、このカプランマイヤー曲線が開いていくのか、糖尿病合併だと結果は違ってくるのか、など気になります。


(2014 ESC/EACTS guidelines on myocardial revascularizationより引用)

基本的には、ESCのガイドラインの推奨通り。

糖尿病、高血圧、高脂血症がなくても、肥満自体が心血管疾患のリスクになる

Metabolically Healthy Obese and Incident Cardiovascular Disease Events Among 3.5 Million Men and Women
J Am Coll Cardiol. 2017;70(12):1429-37

◇この論文のPECOは?
P:心疾患を持たない18歳以上の男女
E/C:BMIと代謝疾患(糖尿病、高血圧、高脂血症)
O:心血管疾患、脳血管疾患、心不全、末梢血管疾患

<デザイン、セッティング>
・前向きコホート研究
・イギリス
・The Health Improvement Network(THIN)のデータベース(プライマリケアの記録)を使用
・3,495,777例
・観察期間:平均5.4年
・COX比例ハザードモデル

<結果>
underweight:<18.5kg/m2
normal weight:18.5-25.0kg/m2
overweight:25.0-30.0kg/m2
obese:≧30kg/m2


(本文から引用)

normal weightと比較すると、obese+no metabolic abnormalityのハザード比は、
心血管疾患 1.49(95%CI:1.45−1.54)
脳血管疾患 1.07(1.04−1.11)
心不全 1.96(95%CI:1.86−2.06)

◇まとめと感想
心血管疾患と心不全は、脳血管疾患や末梢血管疾患と比べて、肥満の程度とハザード比がわりときれいな正比例になる。

日本人では体重の分類やハザード比はそのまま適応できないかもしれないが、高血圧・糖尿病・高脂血症がなくても肥満自体が動脈硬化性疾患・死亡のリスクになるという考えは、日本人にも当てはまると考えていいだろう。

果実・野菜・豆の摂取量と、心血管死・全死亡の関係

Fruit, vegetable, and legume intake, and cardiovascular disease and deaths in 18 countries (PURE): a prospective cohort study.
Lancet. 2017 Aug 28. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32253-5. [Epub ahead of print]

◇この論文のPECOは?
P:35-70歳
E/C:果物、野菜、豆の摂取量
O:全死亡、非心血管死、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、心不全

食事内容は食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いて調査。その他、社会経済的要因(教育、収入、雇用)、ライフスタイル(喫煙、飲酒、身体活動)、既往歴、内服薬、身長、体重、腹囲、血圧なども調査。

調査は3,6,9年後に繰り返し行う。

1servingは、果物と野菜なら125g、豆なら150g。

<デザイン、セッティング>
・前向き観察研究
・135335例 
・5大陸18ヶ国(高所得国:カナダ・スウェーデン・アメリカ、中所得国:アルゼンチン・ブラジル・チリ・中国・カンボジア・イラン・マレーシア・パレスチナ・ポーランド・南アフリカ・トルコ、低所得国:バングラディシュ・インド・パキスタン・ジンバブエ)
・登録期間:2003年1月1日〜2013年5月31日
・観察期間:7.4年(中央値、IQR5.3-9.3年)
・multivariable Cox frailty model

<結果>
平均年齢50歳ぐらいで、男性40%。

Aは年齢、性別で調整。
Bは、年齢、性別、摂取カロリー、喫煙、糖尿病、都市/地方、身体活動、教育レベル、鶏の胸肉・子牛・豚などの肉、牛肉、パン、穀物で調整。

まず、フルーツ。

(本文から引用)

1日125g以上のフルーツの摂取で、非心血管死・全死亡が低下。

続いて、豆。

(本文から引用)

豆も、非心血管死・全死亡の低下と関連あり。
150g/週で、いい感じ。

野菜は。

(本文から引用)

年齢・性別で調整すると、125g/日以上で摂取量に応じて心血管死も非心血管死も減っている。ただ、いろいろ調整すると摂取量に応じたリスクの減少にはつながっていない。

◇まとめと感想
果物・野菜・豆の摂取が多いと非心血管死・全死亡が低下する可能性があり、動脈硬化性疾患も抑えられるかもしれないという結果。

果物125gは、
みかん・・・1個
りんご・・・半分ぐらい
バナナ・・・1本
ぶどう(巨峰)・・・8粒ぐらい

豆125gは、
納豆・・・2−3パック

なので、摂るのはそんにむずかしくないかも。

疫学研究はいろいろ調整できない交絡があるだろうし、そもそも交絡因子としてなにを含めるべきかよくわかりませんが、まあ、果物・野菜・豆は積極的にとりましょう、ということで。

総エネルギー量に占める炭水化物の割合と全死亡の増加

Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study.
Lancet. 2017 Aug 28. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32252-3. [Epub ahead of print]

◇この論文のPECOは?
P:35−70歳
E/C:炭水化物、脂肪、蛋白質の摂取割合
O:死亡と心血管イベント(心血管疾患死、心筋梗塞、脳梗塞、心不全)

食事内容は食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いて調査。その他、社会経済的要因(教育、収入、雇用)、ライフスタイル(喫煙、飲酒、身体活動)、既往歴、内服薬、身長、体重、腹囲、血圧なども調査。

調査は3,6,9年後に繰り返し行う。

<デザイン、セッティング>
・前向き観察研究
・135335例 
・5大陸18ヶ国(高所得国:カナダ・スウェーデン・アメリカ、中所得国:アルゼンチン・ブラジル・チリ・中国・カンボジア・イラン・マレーシア・パレスチナ・ポーランド・南アフリカ・トルコ、低所得国:バングラディシュ・インド・パキスタン・ジンバブエ)
・登録期間:2003年1月1日〜2013年5月31日
・観察期間:7.4年(中央値、IQR5.3-9.3年)
・multivariable Cox frailty model

<結果>
平均年齢50歳ぐらいで、男性40%。


(本文から引用)

炭水化物の摂取割合が大きいと、死亡率も高くなる。それは、非心血管死の増加であり、心血管疾患・心筋梗塞・脳梗塞との関連は見出せず、心血管疾患死も増加しない。


(本文から引用)

飽和脂肪酸の摂取量の増加は、脳梗塞の減少と関連があるが、心筋梗塞との関連はない。一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸の摂取量も、心筋梗塞・脳梗塞・心血管疾患死との関連なし。

◇まとめと感想
飽和脂肪酸はLDLコレステロールを増加させ、それを多価あるいは一価不飽和脂肪酸に置き換えることはLDLコレステロールを減少させる。飽和脂肪酸を含む脂肪の摂取を抑え、多価あるいは一価不飽和脂肪酸へ置き換えることで心血管疾患と全死亡の減少が報告されている。

そのため、AHAのガイドラインでは乳製品や肉から摂取する飽和脂肪酸を、植物油(主にリノール酸)から摂取する多価不飽和脂肪酸へ置き換えることを推奨している(1)。

この疫学研究では、総エネルギーのうち炭水化物の割合が増えると全死亡が増加したが、脂肪、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸と心血管疾患や死亡との関連は明らかではなかった。

(1)Circulation. 2017;136:e1-e23

DAPT 血小板機能測定とクロピドグレル/プラスグレルの選択

VerifyNowを用いて血小板活性を評価し、それに応じてクロピドグレルあるいはプラスグレルの容量調整・薬剤変更を行う方法は、臨床的アウトカムに差がないことが以前報告されている(1−2)。

これは、Roche Diagnostics社の測定器を用いて血小板機能検査を行い、その結果に応じてクロピドグレルかプラスグレルのいずれかのDAPTへの割り付けを行い、臨床的アウトカムについて検証したRCTである。

Guided de-escalation of antiplatelet treatment in patients with acute coronary syndrome undergoing percutaneous coronary intervention (TROPICAL-ACS): a randomised, open-label, multicentre trial.
Lancet. 2017 Aug 25. pii: S0140-6736(17)32155-4.[Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:バイオマーカ陽性のACS
I:クロピドグレルまたはプラスグレルのDAPTへ割り付けを、血小板活性を評価し行う
C:プラスグレルのDAPT
O:12ヶ月後のnet clinical benefit(心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、BARCgrade2以上の出血)

procedure:

(本文から引用)

対照群は12ヶ月のプラスグレルを用いたDAPT。介入群はprimay PCIを施行し退院7日後までプラスグレルのDAPTを継続。その後、プラスグレルからクロピドグレルへ切り替え7日後に血小板活性を評価。血小板活性が高くなければクロピグレルを継続し、血小板活性が高い場合にはプラスグレルへ戻す。

血小板機能はRoche Diagnostics社の測定器を使用。

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験)
地域:オーストリア、ドイツ、ハンガリー、ポーランドの33施設
登録期間:2013年12月2日〜2016年5月20日
観察期間:12ヶ月
必要症例数:secondary endpointに対し2600例(primary endpointだけなら2344例)
症例数:2610例(介入群1304例、対照群1306例)
解析:PP解析
スポンサー:企業の関与あり(Roche Diagnostics、イーライリリー、第一三共など4社)

◇患者背景

(本文から引用)

平均年齢60歳と若め、男性20%、糖尿病20%、腎不全3%。


(本文から引用)

1枝病変と多枝が半分ずつ、LAD lesionが多い、lesion classificationは様々、DESが80%。

◇結果

(本文から引用)

◇まとめと感想
理屈では、CYP2C19のPMであれば、血栓症予防にはクロピドグレルよりもプラスグレルの方がいい。PMでなければ、プラスグレルよりクロピドグレルの方が出血リスクは抑えられるだろう。クロピドグレルの効果が表れているか検査により判断できれば、効果を示していないPMに対してはプラスグレルを継続することは理にかなっている。

この試験デザインなら、出血が抑えられることが期待できたが、有意なイベントの低下は認めなかった(塞栓症と出血の複合エンドポイントで非劣性が証明されただけ)。

しかし、このTROPICAL-ACS試験で使用されたRoche Diagnostics社の測定器でも、またARCTIC試験やTRRIGER-PCI試験で用いられたVerifyNowでもそうだけど、血小板機能を評価して、それに応じて薬剤を変更したり調整したりする方法は、臨床的アウトカムを改善しないみたい。

理屈としては正しいけど、血小板機能をみるその方法がまずいのか。体内での血小板機能と検査での血小板機能の乖離みたいなものがあるのかも。

CYP2C19のPMの頻度、日本人では約20%、白人では3%程度と言われており、この試験では白人が99%でありPMの絶対数が少なかったから、結果に差が出なかった可能性はある。日本人なら、結果が違っていたかもしれない。

(1)J Am Coll Cardiol. 2012;59(24):2159-64.
(2)N Engl J Med. 2012;367(22):2100-9.