カテゴリー別アーカイブ: 虚血性心疾患

着用型除細動器 (WCD) は心筋梗塞発症早期の心臓突然死を予防できるか

植込型除細動器(ICD)は、心機能が悪い虚血性心疾患の心臓突然死の予防に有効です。MADIT試験ではEF≦35%の虚血性心疾患で心室性不整脈がある症例を対象として、ICDにより生命予後が改善しました。また、MADITⅡ試験では心室性不整脈は問わず、EF≦30%の虚血性心疾患を対象としましたが、これでもICDよる生命予後改善を認めています(観察期間20ヶ月、ハザード比0.69)(1-2)

MADITⅡ試験はAMI発症1ヶ月以内の症例は含んでいません。

DINAMIT試験やIRIS試験は、AMI発症早期で心機能が悪い症例で、ICDで生命予後が改善するか検証したRCTです。どちらも心臓突然死は半分ぐらいに有意に減っていますが、全死亡は非ICD群とほとんど変わりません(つまり非心臓死が多い)(3-4)

なので、AHAのガイドラインでも心臓突然死一次予防の場合は、”AMI発症から40日以上もしくは血行再建から90日以上経過”していて、心機能が悪い症例がICD適応になっています。心機能は悪いけど、AMI発症から時間が経ってないような症例は、至適薬物療法を行って再評価することになります。でもまあ、虚血だと薬物療法でも心機能の改善はあまり見込めませんが。

AMI発症早期にICDを植え込んでも生命予後は改善しませんが、やはり心臓突然死のリスクが高いというのは事実です。AHAガイドラインでは、AMI発症40日以内の場合は、着用型除細動器(WCD)を着てもらってもいいかもね(classⅡb)となっています。

そして、そのAMI発症早期で心機能が悪い症例で、WCDが本当に有効なのでしょうか。

Wearable Cardioverter–Defibrillator after Myocardial Infarction
N Engl J Med 2018; 379:1205-1215

【PICO】
P:EF35%以下のAMI
I:標準治療+WCDの着用
C:標準治療のみ
O:90日以内の突然死+心室頻拍による非突然死

EFの評価は、PCI後なら8時間以上経ったあとに、CABG後なら48時間以上経ったあとに行う。

exclusion criteria:すでにICD留置、ユニポーラーペースメーカ、重度の弁膜症、長期の血液透析、WCDを着られないぐらい胸囲が小さいor大きい

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:アメリカ・ポーランド・ドイツ・ハンガリー
登録期間:2008年7月〜2017年4月
観察期間:90日
症例数:2348例(うち46例は規約違反のため除外)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(ZOLL社)

【患者背景】
両群の患者背景に差はない。EFの中央値は28%、PCI84%、血栓溶解療法8%、CABG1%、心停止・心室細動10%。内服薬にも差はない(βblocker92%、ACE阻害薬/ARB87%、アスピリンとそれ以外の抗血小板薬がそれぞれ87%、アミオダロン7%)

【結果】
primary outcomeは60日以内の全死亡だったが、登録が進まなかったため、90日以内の突然死+心室頻拍による非突然死、に途中で変更。

WCD群:1524例 vs 標準治療群:778例

標準治療群でWCD導入が2.6%。
ICD植込みはWCD群で4.4%、標準治療群で5.7%。だいたい2ヶ月ぐらいのときに植込まれている。

【まとめと感想】
AMI発症早期で心機能が悪い症例にWCDを導入すると、不整脈死が少なくなるけど、統計学的には有意な差ではありませんでした。discussionでパワー不足(不整脈死58%減少と推定)だと書かれていましたが、まあ確かに侵襲の大きな介入ではありませんし、適切に使用すれば突然死を予防できるという理屈はわかります。

不適切作動がありますので、理解力や操作能力に乏しい患者さんには導入しないなどの配慮は必要ですし、夏場は蒸れるということや、使えば使うほど病院の赤字になるという課題はあります。

AMI発症早期の心機能が悪い方でも、まず薬物療法をしっかりやるということですね。

1)N Engl J Med.1996;335:1933-1940
2)N Engl J Med 2004;351:2481-2488
3)N Engl J Med.2004;351:2481–2488
4)N Engl J Med.2009;361:1427−1436
5)Circulation.2018;138:e210–e271

スタチンは75歳以上の高齢者でも心血管イベント抑制に有効

ベースのLDLコレステロール値とか、患者さんの状態にもよりますが、心筋梗塞二次予防だったら基本的にスタチンは出しています。

Efficacy and safety of statin therapy in older people: a meta-analysis of individual participant data from 28 randomised controlled trials.
Lancet. 2019 Feb 2;393(10170):407-415.

【PICO】
P:高齢者
I/C:スタチンvsコントロール、高容量vs低容量スタチン
O:大血管イベント(冠動脈イベント・脳梗塞・冠動脈血行再建)、死因別死亡率、悪性腫瘍

<研究の選択>
症例数1000以上、観察期間2年以上のRCTを組み入れ
文献データベース:MEDLINE、EMBASE、Pubmed
検索語: “statins OR HMG CoA Reductase Inhibitors” “Elderly OR Aged”
期間:1996年1月1日〜2017年12月31日
28のRCT
出版バイアス:low

◇まとめと感想
観察期間の中央値4.9年。心不全と透析を対象としたRCTでは高齢者でのスタチンは有効性が見出せなかったけど、高齢者でもスタチン療法・高容量スタチン療法により、1mmol/LのLDLコレステロール低下で21%(RR:0.79 [0.77-0.81])の冠動脈イベント減少を認めました。心不全と透析を除くと、どの年齢のサブグループでも冠動脈イベントが減少していますが、高齢になるほど減少率は小さくなっています(≦55歳:RR0.75 [0.69-0.81]、≧75歳:RR0.87 [0.77-0.99])。

相対リスクにすると20%前後のイベント減少ですが、絶対リスクにすると1%/年にも満たないです。75歳以上だと絶対リスク減少0.5%で、NNT200になります。75歳以上の患者さん200人に1年間スタチンを処方し、LDLコレステロールを1mmol/L(=39mg/dl)下げると、冠動脈イベントがひとり減る感じです。

日本人ならもっと絶対リスク減少は小さいのかも。そうなると、スタチンを処方すべきかどうかは患者さんの状況によりけりなんでしょうね。

CABGで使用する内胸動脈は片側で良いか、両側が良いか

冠動脈多枝病変では、PCIよりCABGの方が予後が良いです。それはCABGに心筋梗塞予防効果があるためですが、CABGでは左内胸動脈(LITA)が使われるのが一般的です。

観察研究では、内胸動脈を片側のみ用いたCABGより、左右の内胸動脈を用いたCABGの方が、死亡率を低下させることが報告されています。

このART試験は、両側内胸動脈を用いることで、LITAのみの場合と比べ生命予後を改善させるか検証したRCTで、5年の時点では死亡率に差はありませんでした。10年ではどうなのでしょうか。

Bilateral versus Single Internal-Thoracic-Artery Grafts at 10 Years
N Engl J Med 2019; 380:437-446

【PICO】
P:冠動脈多枝病変
I:両側の内胸動脈を用いたCABG
C:片側の内胸動脈を用いたCABG
O:全死亡
secondary endpoint:全死亡、心筋梗塞、脳梗塞、再血行再建、出血、創部合併症

exclusion criteria:冠動脈1枝病変、同時の弁膜症手術、CABGの既往

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験など)
地域:オーストラリア、オーストリア、ブラジル、インド、イタリア、ポーランド、イギリス
登録期間:2004年6月〜2007年12月
観察期間:10年
症例数:3102例(両側群1548例、片側群1554例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
群間差なし。
ざっくりと。年齢63歳、男性85%、白人90%、インスリン依存性糖尿病6%、陳旧性脳梗塞3%、OMI40%、

【結果】
片側内胸動脈群で内胸動脈を使用したのは96.1%、両側内胸動脈群で両側とも内胸動脈を使用できたのは83.6%。両群とも約40%でoff-pumpで行われている。

橈骨動脈は、両側群で19.4%、片側群で21.8%使用されている。

10年時点での薬剤に群間差なし。
アスピリン81%、β遮断薬74%、スタチン90%、AEC阻害薬/ARB72%。

サブグループ
糖尿病、70歳未満、off pumpかon pumpか、橈骨動脈の有無、グラフト本数、EF<50%などすべてのサブグループでも有意差なく、一貫した結果。

【まとめと感想】
両側群で想定よりクロスオーバーが多かったり、片側群で橈骨動脈使用率がちょっと多かったり、両群の差を薄める要因はあるかもしれませんが、CABGで内胸動脈を両側使おうが、LITAだけにしようが、生命予後に変わりないという結果でした。

急性心筋梗塞に合併した心原性ショックの循環動態維持には、ノルアドレリンを使用し、アドレナリンは避ける

普段、循環動態維持のために使っている薬剤はノルアドレナリンとドブタミンで、アドレナリンというものは正直使ったことがありません。

心臓に頑張ってもらいたいときはドブタミンを、血管を締めたいときにはノルアドレナリンを使います。

アドレナリンは蘇生のときにしか使ったことがないです。そのアドレナリンもPARAMEDIC2試験で、院外心停止でプラセボに比べて病院到着までの生存率は改善したものの、退院時の重度神経障害の患者の割合は増えるという結果でした。

あまり良い印象は持たれていない薬剤かもしれません。

急性心筋梗塞に合併した心原性ショックに、アドレナリンを使うか、ノルアドレナリンを使うか。ここでもアドレナリンは良い結果は出せませんでした。

Epinephrine Versus Norepinephrine for Cardiogenic Shock After Acute Myocardial Infarction.
J Am Coll Cardiol. 2018 Jul 10;72(2):173-182.

【PICO】
P:心原性ショックを合併したAMI
I:アドレナリン(AD)の投与
C:ノルアドレナリン(NAD)の投与
O:cardiac indexの変化(有効性評価項目)、難治性心原性ショック(安全性評価項目)

難治性心原性ショック:①エコーで評価した重大な心機能不全、②乳酸値上昇、③適切な血管内ボリュームを保っているにも関わらず低血圧(SAP<90mmHg or MAP<65mmHg)が持続し、1γ以上のADまたはNAD、もしくは10γ以上のドブタミンを投与しているにも関わらず臓器機能の急激な悪化(無尿、肝不全)を認めること。

inclusion criteria:
①PCIによる再灌流に成功していること
②血管収縮薬なしでSAP<90mmHg or MAP<65mmHg
③低血圧に対し血管収縮薬が必要
④cadiac index<2.2l/min/m2
⑤肺動脈楔入圧(PCWP)>15mmHg
⑥EF<40%
⑦臓器低灌流(mottled skin、無尿、乳酸値上昇、意識の変容)
⑧肺動脈カテーテル挿入

exclusion criteria:体外生命維持装置、他の原因でのショックなど

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:フランス
登録期間:2011年9月〜2016年8月
症例数:57例(AD群27例、NAD群30例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
AD群 vs NAD群
性別のみ群間差あり(男性:50% vs 80%)。他は同等。
ざっくりと。BMI25、心拍数(100 vs 88)、MAP72、高血圧(30% vs 20%)、組み入れ前の蘇生術(41% vs 60%)、SOFA10、ランダム化前のショック持続時間6時間、組み入れ前の薬剤(アドレナリン 30% v 17%、ノルアドレナリン 70% vs 80%)、STEMI96%、乳酸値(5.0mmol/L vs 2.9mmol/L)、LVEF34%
群間差は性別のみだけど、Nが小さいから有意にならないだけで、多少の差はある

【結果】
難治性ショックがAD群で多かったため、試験は早期中止されています。

MAP70mmHgを保つのに必要な投与量は、AD:0.7±0.5γ、NAD:0.6±0.7γ。最大投与量に有意差なし。

DOBを併用したのは両群とも67%で、投与量も有意差なし。

投与開始3日までの血圧(SAP、DAP、MAP)の推移に有意差なし。

図しか示されていないので、正確にはわかりませんが、有効性評価項目であるCIはbaselineが2.0ぐらいで、72時間後には両群とも2.7ぐらいにあがっていますが、有意差はありません(P=0.43)。

AD群で、2時間後・4時間後のCIが2.4ぐらいに上がっていて、NAD群と比較し有意に高かったようです。

安全性評価項目は

【まとめと感想】
アドレナリンでもノルアドレナリンでも、血圧やCIは同じような変化をたどっており、差はありませんでした。しかし、アドレナリンで投与早期に(2−6時間)有意に心拍数が高くなり、心筋酸素消費量のサロゲートマーカーであるダブルプロダクトが有意に上昇しています。つまり、同じ血圧を維持するのに酸素を余計に消費しないといけないということで、アドレナリンは心臓の燃費を悪くさせているとも言えます。

かつ、乳酸値は投与開始2−4時間で有意に上昇(ノルアドレナリンでは投与開始後より低下)しています。CIは両群で似たようなもの(むしろ開始早期はアドレナリンの方がCIが高い)ということは、酸素供給ではなく末梢循環の問題で乳酸が上がっているのだと思います。

アドレナリンにはα受容体刺激作用もβ受容体刺激作用もありますが、ノルアドレナリンのβ受容体刺激作用は弱いです。もしかしたら、β2受容体刺激作用により末梢循環不全をきたしているのかもしれません。

不整脈、死亡が多めなのも気になります。

心筋梗塞+心原性ショックには、ドブタミンとノルアドレナリンで対処するということでよさそうです。

心機能が保たれた心筋梗塞ではβblockerは必要か

AMI再灌流後の薬物療法はどうするか。

抗血小板薬2剤(ステント留置した場合)、スタチン、ACE阻害薬・ARB。ここらへんは異論がないと思います。

では、βblockerは必要なのでしょうか。

答えは、YESもNOもどちらも正解かもしれません。ACS後のβblockerの有効性を示したデータの多くは、今のようにPCIが標準治療になる前のものではありますが、PCIが標準療法になってからもβblockerにより、生命予後の改善(観察期間1-2.1年)を認めています。それは、βblockerの容量には依存しないようです(1−2)

つまり、ACS発症後にβblockerを内服することは、ACS全体で見ると正解です。ただ、心機能が保たれた、いわゆるHFpEF(EF≧50%)の場合はどうでしょうか。私の知る限りでは、ACS後のHFpEFのみを対象にしてβblockerの有効性を検証した研究はありません。

非虚血を含んだデータですが、あるシステマティックレビューでは、洞調律のHFrEFやHFmrEFでは、βblockerによる死亡率低下が示されていますが、HFpEFではβblockerの有無で死亡率に差はありませんでした(3)。そして、そのHFpEFの85%が虚血ですので、虚血のHFpEFではβblockerの効果が示されていないと言い換えても間違いではないと思います。

また、冠動脈疾患の既往はないけど冠動脈疾患のリスクがある患者では、βblockerにより心血管死・心筋梗塞・脳梗塞が増える可能性もあります(ハザード比1.18 [10.2-1.36])(4)。それは糖尿病や脂質異常症などの代謝への悪影響と考えられます。

なので、冠動脈疾患リスクとして糖尿病や脂質異常症などがある場合には、より長期でみた場合にβblockerを内服することで予後の悪化に繋がる可能性があるということです。

冒頭のACS後にβblockerが必要かどうかに対する答えですが、心機能が低下している場合(EF<50%)にはYESで、心機能が保たれている場合(EF≧50%)ではNO、というのが私の意見です。そもそも、虚血であれ非虚血であれHFpEFの予後を改善させる薬剤はネプリライシン阻害薬以外にないので、上記の話は非虚血の場合でも同じなんですけどね。

一応、ACS発症後のβblockerについて、ガイドライン的にはどうなっているかというと、ECSでは・・・

・LVEF≦40%:classⅠ
・すべての患者でルーチンで入院中から開始し継続する:classⅡa

となっているので、HFpEFでもβblockerはclassⅡaということになります(5)。これからすると、私の意見はちょっと偏ってるのかもしれません。

1)J Am Coll Cardiol. 2015;66(13):1431-41.
2)Circ J. 2019;83:410-417.
3)Eur Heart J. 2018;39(1):26-35.
4))JAMA. 2012;308(13):1340-1349
5))Eur Heart J. 2018;39(2):119-177.

日本人でのPCSK9阻害薬の費用対効果

Cost-Effectiveness of PCSK9 Inhibitor Plus Statin in Patients With Triple-Vessel Coronary Artery Disease in Japan.
Circ J. 2018 Sep 25;82(10):2602-2608.

欧米の冠動脈疾患患者で家族性高コレステロール血症(FH)と思われる患者を対象としても、PCSK9阻害薬の費用対効果はよくないです。薬価を71%下げないと費用に見合った効果が見出せないとする報告もあります(1)

欧米人でもそうなので、日本人のFHでも費用対効果が低いということは想像に難くありません。

この論文をかいつまむと・・・
・PCSK9阻害薬+スタチンにかかる費用は標準療法を比較すると、1350万円/QALY。
※生存期間とその質をかけた値。健康に1年生きる=1QALY、死ぬ=ゼロQALY
・ACS+DM+3枝病変(3VD)であっても、費用対効果が低い。
・LDL高値(≧200mg/dl)のFHで3VD=340万円/QALYで、費用対効果が高い。
・この論文では調べられてないけど、PCSK9阻害薬+スタチンよりもエゼチミブ+スタチンの方が費用対効果が高い。

という感じです。LDL≧200mg/dl+3VDだと良いようですが、スタチンを投与していてそこまでLDLが高いFHは今まで見たことはありません。確かにそこまで高ければ、下げねば!という気にさせられます。

1)JAMA. 2017 Aug 22;318(8):748-750

心原性ショックを合併した急性心筋梗塞にIABPは不要なのか

IABPについてのRCTは多くありません。観察研究では、心原性ショックに対するIABPはbetterな結果でしたが、その後に行われたIABP-SHOCKⅡ試験では心原性ショック合併急性心筋梗塞の死亡率は、30日後も1年後もIABPなしの薬物療法と変わりありませんでした(1)

IABP-SHOCKⅡ試験は心原性ショックが対象ですが、非心原性ショックを対象にしたRCTはいくつかあります。200−400例程度のRCTは3つほどあり、どれもIABPの有効性は見いだせていません。

そのうちのひとつに、The Balloon Pump–Assisted Coronary Intervention Studyというのがあります。EF<30%で虚血範囲が大きい冠動脈狭窄に対するPCIで、IABPのサポートが予後を改善するか検証されていますが、6ヶ月後、5年後の死亡率に差はありませんでした(2)

心原性ショックを合併した急性心筋梗塞では、本当にIABPは意味がないのでしょうか。IABP-SHOCKⅡ試験のサブグループ解析では、年齢、性別、糖尿病、STEMI、LADのAMI、OMIの既往、SBP<80mmHgのサブグループでは有意差はありませんでした。唯一、高血圧症の既往がないグループでIABP betterな結果でしたが、それが実臨床でIABPを使用するかどうかの判断材料にはならないように思います。

メタ解析でも、心原性ショック・非心原性ショックともに、IABPは死亡率低下には繋がっていません(3)

さらに、日本のデータ(Japan Cardiovascular Database-Keio Interhospital Cardiovascular Studies)では、IABPの院内死亡のオッズ比が3.87(95%CI:2.71−5.52)と増加していることが報告されています(4)。もちろん、IABPを導入すべき症例はより重症であるため、バイアスを含んだものだと思いますが、RCTで一貫したネガティブな結果がでているので、無視できません。

IABPを導入するかどうかは、循環動態が不安定で命に関わる状況の中で判断しなければならないため、なかなか難しいところです。

これは、IABP-SHOCKⅡ試験の6年のデータです。

ntraaortic Balloon Pump in Cardiogenic Shock Complicating Acute Myocardial Infarction: Long-Term 6-Year Outcome of the Randomized IABP-SHOCK II Trial.
Circulation. 2018;139:395–403

【PICO】
P:緊急血行再建が予定された心原性ショック合併急性心筋梗塞
I:AMI急性期のIABP導入
C:IABP導入なし
O:全死亡、心筋梗塞の再発、冠動脈血行再建、脳梗塞、ICD植込み

exclusion criteria:30分以上のCRP、重大な脳梗塞、機械的合併症による心原性ショック、12以上持続するショック、重度のPAD、grade2以上のAR、90歳以上

【試験の概要】
デザイン:RCT(open-label)
地域:ドイツ
登録期間:2009年6月〜2012月3月
観察期間:6.2年(5.6−6.7年)
症例数:600例(IABP群301例、薬物療法群299例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Maquet社)

【患者背景】
両群に有意差なし。
ざっくりと。年齢70歳、男性70%、ランダム化前のCRP施行45%、多枝病変77%、カテコラミンの使用90%、EF35%、ショックから発症まで2.17時間、IABP留置期間3日。

クロスオーバー:IABP群4.3%、薬物療法群10.0%

【結果】
フォローアップ率98.5%(591/600例)。

【まとめと感想】
心原性ショックを合併した急性心筋梗塞で、IABPは長期予後も長期予後(6年)も改善しませんでした。心原性ショックを合併していない症例を対象としたRCTとも一貫した結果です。

6年のフォローアップでも、高血圧なしのサブグループはIABP betterな結果でした。高血圧がない方が、IABP下での拡張期血圧を高めに維持でき、それが冠血流維持に繋がる・・・、なんて無理やりですね。discussionではサブグループについては、ほぼ言及なしです。ただの多重検定によるαエラーのような気がします。

1)Lancet 2013; 382: 1638–45
2)JAMA. 2010;304(8):867-874
3)JAMA Intern Med. 2015;175(6):931-939.
4)JAMA Intern Med. 2015;175(12):1980-2.

ビタミンDと心血管疾患・悪性腫瘍

前回記事にしたn-3脂肪酸の心血管イベント・悪性腫瘍への効果を検証したRCTは、2×2 factorial designで、ビタミンD製剤についても同様にその効果が調べられています。

N-3脂肪酸と心血管疾患・悪性腫瘍

日照時間が長い地域は短い地域より、心血管疾患や悪性腫瘍が少ないという報告だとか、血清25ヒドロキシビタミンDの低値と、心血管疾患・悪性腫瘍の増加に関連があるといった報告があるようです。

ただ、ビタミンDを補充することが、心血管疾患や悪性腫瘍の抑制に繋がるかどうかは定かではありません。

【PICO】
P:心血管疾患・癌の既往のない患者
I:コレカルシフェロール2000IU内服
C:プラセボ内服
O:心筋梗塞+脳梗塞+心血管死+浸潤性悪性腫瘍

【結果】

年齢、性別、血清25ヒドロキシビタミンD濃度などすべてのサブグループで有意差はありませんでした。

【まとめと感想】
ビタミンDの内服は、心血管疾患や悪性腫瘍の抑制には繋がりませんでした。

ビタミンDと心血管疾患・悪性腫瘍についてはよく知りませんが、こういうことはよくあると思います。たとえば、高尿酸血症は心血管疾患のリスクになりますが、フェブキソスタットで尿酸を抑えても、心血管疾患の抑制には繋がりませんし、潜在性甲状腺機能低下症も心血管疾患のリスクになりますが、チラーヂン®︎を内服しても心血管疾患の抑制には繋がりません。

血清25ヒドロキシビタミンD濃度の低値と心血管疾患の増加には関連があるようですが、ビタミンDを補ってもイベントは減らない。理屈としては正しそうに見えますが、話はそう簡単ではないようです。

n-3脂肪酸と心血管疾患・悪性腫瘍

昨日に引き続いて、n-3脂肪酸の論文。心血管イベントと悪性腫瘍がアウトカム。

結論から言うと、やはり高容量のEPAでないと効果はないようです。著者もdiscussionの中でコクランなどのメタ解析を引用して、n-3脂肪酸のサプリメントには心血管疾患一次予防・二次予防に効果はほとんどないと言っています。

では、なぜNEJMに載ったのでしょう。よくわかりません。

Marine n−3 Fatty Acids and Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer
N Engl J Med. 2019 Jan 3;380(1):23-32.

【PICO】
P:心血管疾患・癌の既往のない患者
I:n−3脂肪酸(EPA460mg+DHA380mg)内服
C:プラセボ内服
O:心筋梗塞+脳梗塞+心血管死+浸潤性悪性腫瘍

inclusion criteria:男性50歳以上、女性55歳以上

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:アメリカ
登録期間:2011年11月〜2014年3月
観察期間:5.3年(3.8−6.1年)
症例数:25871例(n-3脂肪酸群12933例、プラセボ群12938例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
同等。
ざっくりと。平均年齢67歳、男女半々、白人70%、黒人20%、アジア人1%、アドヒアランス81%。糖尿病13%。

【結果】

primary endpoint:心筋梗塞+脳梗塞+心血管死+浸潤性悪性腫瘍

年齢、性別、人種、糖尿病や高血圧の有無、アスピリンやスタチンの有無など、どのサブグループでも有意差なく、一貫してn-3脂肪酸の効果は見られない。

【感想・まとめ】
心筋梗塞で有意差が付いている。145例と200例。確かに差は大きく見えますが、パーセンテージで表すと1.12%と1.55%。

とても有意差とは思えない、少なくとも臨床的には。

高容量EPAにより心血管死・心筋梗塞・脳梗塞が減少する REDUCE-IT試験 

青魚を多く摂取することで冠動脈疾患が減ることは、観察研究で明らかになっています。

それは、Hugh Sinclairが1944年に最初に発見しています。当時イヌイットは魚介から14g/日のn-3脂肪酸を摂取しており、それが冠動脈疾患の少なさと関連していると考えられました。

その後に、80年代に行われたDART試験やGISSI-Prevenzion試験で、心血管イベントの減少や死亡率の改善などが報告されました。ただ、80年代の臨床試験なので、β遮断薬・ACE阻害薬・スタチンなどの内服率は低く、今の至適薬物療法とは異なるものでした。

その後も、EPAにより動脈硬化イベント・致死的不整脈・心不全などが抑制されるだろうという仮定のもと、多くのRCTが行われました。しかし、多くはネガティブな結果でした。

そして、コクランのメタ解析では、EPAのサプリメントは心血管イベントの抑制にはほとんど効果がないと結論づけられています。

ただ、RCTの多くはEPAの量はそれほど多くありません。数百mgなので、魚から摂ろうと思えば取れる量です(毎日魚だと辛いかもしれませんが)。JELIS試験でもEPA1800mg/日です。イヌイットのn-3脂肪酸摂取量が14g/日であることを考えると、かなり少ない量ですので、高容量のEPA(あるいはn-3脂肪酸)を摂取することで心血管イベントが抑えられる可能性は残っていました。

今回の論文ではEPAは4g/日と、今までのRCTの中でも最も高い容量のEPAが用いられ、心血管イベントが抑制されるか検証されています。

Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia.
N Engl J Med. 2019 Jan 3;380(1):11-22

【PICO】
P:空腹時中性脂肪150−499mg/dlの冠動脈疾患ハイリスク患者
I:EPA(イコサペント酸エチル)4g分2内服
C:プラセボ(ミネラルオイル)の内服
O:心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+冠動脈血行再建+不安定狭心症

ハイリスク患者:45歳以上の冠動脈疾患 or 50歳以上で糖尿病とそれ以外に1つ以上冠危険因子を有する患者

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:11ヶ国(アメリカ、カナダ、オランダ、オーストラリア、ニュージランド、西欧、アジアなど)
登録期間:2011年11月28日〜2016年8月4日
観察期間:4.9年(中央値)
症例数:8179例(EPA群4089例、プラセボ群4090例) 脱落は730例(9%)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Amarin Pharma社)

【患者背景】
LDL値のみ有意差あり(EPA群vsプラセボ群:74vs76mg/dl)。その他は同等。
ざっくりと。年齢64歳、男性70%、白人90%、二次予防70%、エゼチミブの内服6%、糖尿病60%、TG216mg/dl、HDL40mg/dl

【結果】

primary endpoint:心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+冠動脈血行再建+不安定狭心症

サブグループ解析でも一貫性が見られますが、65歳以上・TG<200mg/dl or HDL>35mg/dl・高感度CRP>2mg/LのサブグループではP for interaction < 0.10を下回っています。


約5年でのNNT。

【まとめと感想】
高容量のEPAにより心血管イベントが抑制されるという結果でした。どのアウトカムも20−30%リスク減少していますが、絶対値はそれほど大きくはありません。かつ観察期間は約5年です。でも、この結果は驚きました。

残念なことに、日本の保険診療ではこの量のEPAを処方することはできません(サプリメントはありますが)。エパデール®︎は1800mgまでですし、ロトリガ®︎は4gまで処方できますがn-3脂肪酸(EPA+DHA)として4gなので、その中にEPAがどれくらい含まれているか添付文書からわかりません。

メタ解析で明らかにされている通り、日本で処方できる容量では心血管イベントに対する効果は期待できません。EPAを内服して足りない分を魚を食べることで補うのはアリかもしれませんが・・・。

あと、脳梗塞も28%リスク減少している点にも注目すべきです。脳梗塞は脂質よりも血圧の関与が大きいので、これはTGを下げた効果というより、やはりEPAの作用によるものだと思います。

EPA1800mg/日程度では心血管イベントは抑えられませんので、エパデール®︎やロトリガ®︎を処方しようと思ったことはないですが、日本でも高容量EPAが処方できるようになれば、リスクの高い患者では出していいなと思いました。観察研究との一貫性もあると思います。