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FOURIER試験 PCSK9抗体エボロクマグは心筋梗塞と脳梗塞を減少させる

Evolocumab and Clinical Outcomes in Patients with Cardiovascular Disease
N Engl J Med. 2017 Mar 17. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
エボロクマブはPCSK9を阻害するモノクローナル抗体で、LDLコレステロールを約60%低下させる。これが、心血管イベントを抑制するかはわかっていない。

方法
無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験を行なった。動脈硬化性心血管疾患があり、スタチンを内服しているにも関わらずLDLコレステロール70mg/dl以上の患者27564例を組み入れた。患者は、エボロクマブ皮下注(140mgを2週に1回、または420mgを月に1回)か、プラセボ皮下注に割り付けた。主要評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建の複合エンドポイントである。副次評価項目は、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞である。フォローアップの中央値は2.2年である。

結果
48週時点で、エボロクマブ群のLDLコレステロールは、ベースラインの92mg/dlから30mgmg/dlと59%低下していた。プラセボに対しエボロクマブは主要評価項目を有意に減少させた(9.8%vs11.3%、HR:0.85、95%CI:0.79−0.92)。副次評価項目も有意に減少させた(5.9%vs7.4%、HR:0.80、95%CI:0.73−0.88)。結果は、もっともLDLコレステロール値が低かったサブグループ(中央値74mg/dl)を含め、主要なサブグループでも一貫していた。注射部位の反応はエボロクマブ群で多く見られたが(2.1%vs1.6%)、新規の糖尿病の発症や神経認知的なイベントを含め有害事象に有意差はなかった。

結論
この試験では、スタチンにエボロクマブを加えることで、LDLコレステロールが30mg/dl(中央値)になり、心血管イベントリスクを減少させた。これの結果は、動脈硬化性心血管疾患ではLDLコレステロールを現在の目標値からさらに低下させることが有効であることを示している。

◇この論文のPICOはなにか
P:動脈硬化性心血管疾患
I:エボロクマブ皮下注(140mgを2週に1回、または420mgを月に1回)
C:プラセボ皮下注
O:心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建

inclusion criteria:40−85歳、動脈硬化性心血管疾患(陳旧性心筋梗塞、陳旧性脳梗塞、症候性末梢動脈疾患、心血管疾患リスクが高い患者)、至適資質低下療法(アトルバスタチン20mg以上相当の高強度スタチン±エゼチミブ)にも関わらずLDLコレステロール70mg/dl以上またはnonHDL100mg/dl以上、
exclusion criteria:記載なし

◇baselineは同等か

(本文から引用)
エボロクマブ群で、わずかに体重が軽くて抗血小板薬の内服が多い。

アジア人は13%、80%がOMI、70%が高強度のスタチンを、5%でエゼチミブを内服。

◇試験の概要
地域:49ヶ国、1242施設
登録期間:2013年2月〜2015年6月
観察期間:26ヶ月(中央値、四分位範囲:22−30ヶ月)
無作為化:中央コンピュータシステム、LDL(85mg/dl)と地域で層別化
盲検化:二重盲検
必要症例数:副次評価項目に対し必要症例数を設定。power90%、15%の相対リスク低下を検出するために1630イベントが必要。
症例数:27564例(エボロクマグ群13784例、プラセボ群13780例)
追跡率:99.6%(早期の試験中止は12.5%)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Amgen社)

◇結果

主要評価項目のうち、血行再建によるリスク低下が最も大きい。心血管死、心筋梗塞、脳梗塞の複合エンドポイント(副次評価項目)だと、リスク減少は全体で1.5%と絶対値としては小さい。心血管死は減らず、減る傾向もない。

◇批判的吟味
二重盲検試験だが、エボルクマブ投与によりLDLが著しく下がるので(中央値で92→30mg/dl)、どちらの群に割り付けられたかはある程度わかる。そのため、盲検化の維持が難しく、主要評価項目に含まれている「血行再建」については、バイアスがかかる可能性がある。

そして、主要評価項目のうち、絶対リスク減少が最も大きいのが血行再建である。普通の薬なら複合エンドポイントに含めるのは妥当かもしれないが、これほど高価な薬剤なので治療効果の判定には血行再建は含めず、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞だけ(副次評価項目)をみる方がいいだろう。

副次評価項目では、エボロクマブの投与による絶対リスク減少は、心血管死では全く差がない。心筋梗塞では1.2%、脳梗塞では0.4%とそれぞれ有意に低下しているが、絶対値としては小さく、これはサンプルサイズがかなり大きいために統計学的有意差がついたと考えられる。

NNTは74であり、日本での薬価は22948円なので、約8830万円かけて1件の心筋梗塞または脳梗塞を減らすという計算になる。それだけの大金をかけても、心筋梗塞か脳梗塞が1件減るだけで、死亡率を減少させることはできない。PCSK9抗体の適応がある家族性高コレステロール血症と早発性心血管疾患の患者すべてにPCSK9抗体を使用すると、5年間で心血管治療費が290億ドル削減できるが、薬剤費は5920億ドルに増加するというデータもあり、決して費用対効果に見合ったものではない(JAMA.2016;316(7):743-53)。

心血管イベントを抑制する効果が高い薬剤であるということは理解できるが、問題は誰に用いるべきかということだと思う。この試験では、当初最大耐用量のスタチン内服下の患者が対象となっていたが、試験途中でプロトコールの変更があり、アトルバスタチン20mg以上の至適薬物治療という条件に変更されている。もし、心血管イベントの発生がLDLの値に比例して低下するなら(the lower,the betterなら)、まずはスタチンを最大耐用量内服させるべきだろう。

スタチンを開始・増量する上で、肝障害と筋症状がでてくる場合があるが、それが原因でスタチンが内服できないことは多くない。

スタチンによる肝酵素上昇は0.5−2.0%で認められ、容量依存的で、スタチンの減量・中止で良くなる。そして、薬剤の再開や他のスタチンに変更しても、再発することはあまりない。肝酵素の正常上限の3倍までの上昇は、フォローは必要だが薬剤を中止する必要はない。なお、肝不全は非常にまれ。正常上限の10倍以上のCK上昇が起こる頻度は、約0.09%。その場合は、スタチンを中止する。正常上限の3−10倍の上昇なら、CKのフォローとスタチンの減量・一時的な中断を考慮する(Circulation.2002;106(8):1024-8)。

心血管リスクが高い患者ならなおさら、肝酵素上昇やCKが上昇したからといって、安易に中止すべきではない。

IMPROVE-IT試験でもスタチンにエゼチミブを併用することで、LDLは50mg/dl台に低下し、心血管イベントは減少しているため、最大耐用量のスタチンで十分LDLが低下しなければ、費用対効果を考えるとエボロクマブを使うより、まずエゼチミブの併用を考慮すべきだろう(本試験では5%しか併用されていなかった)。

家族性高コレステロール血症、早発性心血管疾患のうち、費用対効果の高い集団(より心血管リスクが高い患者)がわかれば、その集団に限って使用するというのはreasonableだと思う。サブグループ解析などのデータが役立つかもしれない。

◇感想
心血管疾患二次予防において、PCSK9抗体であるエボロクマブにより、心筋梗塞及び脳梗塞が有意に低下した。最大耐用量のスタチンとエゼチミブを内服しているがLDLコレステロールが十分低下しない患者に対しては、エボロクマグを考慮してもいいかもしれない。

STEMI+多枝病変 完全血行再建は緊急血行再建のみ減少させる

Complete or Culprit-Only Revascularization for Patients With Multivessel Coronary Artery Disease Undergoing Percutaneous Coronary Intervention: A Pairwise and Network Meta-Analysis of Randomized Trials.
JACC Cardiovasc Interv. 2017 Feb 27;10(4):315-324

多枝病変を有するSTEMI患者の予後が悪いことは知られているが、primary PCIを行なった後に残存した狭窄に対しどのような治療戦略(薬物療法のみか、PCIも行うか、PCIを行うならそのタイミングはいつが良いか)が最適かどうかはわかっていない。

◇論文の概要
多枝病変を有するSTEMIを対象としたメタ解析である。

10個のRCT(2285例)を組み入れ、残存狭窄に対する治療を、薬物療法のみと完全血行再建(primary PCTと同時、入院中、退院後)に分けている。


(本文から引用)
責任病変のみと完全血行再建を比較。完全血行再建を行なっても、死亡率や再梗塞率はかわらない。死亡のI2統計量は1.8%と異質性は低く、信頼性が高いデータ。減少するのは、緊急血行再建のみ。いずれの試験もオープンラベルなので、緊急血行再建はバイアスが入る余地がある。

ちなみに、心筋梗塞を減らしているPRAMI試験では、primary PCI時に残存病変の治療も行なっているため、手技に関連した心筋梗塞はマスクされる可能性がある。


(本文から引用)
PCIのタイミングについて、責任病変のみ、primary PCIと同時、入院中、退院後の4つのストラテジーでの比較。死亡率は責任病変のみでも完全血行再建でも変わらない。緊急血行再建は、完全血行再建を行なった群で有意に少ないが、完全血行再建の中では、primary PCIと同時、入院中、退院後のいずれのタイミングでも、差はない。

◇感想
STEMIの残存病変に対する完全血行再建は、緊急血行再建は減らすが、死亡率、再梗塞率は減らさない。治療の性質上オープンラベルなので、血行再建というソフトエンドポイントはバイアスが入る余地がある。

以前publishされているメタ解析(J Am Coll Cardiol 2011;58:692–703)では、責任病変のみ、primary PCIと同時、staged PCIを比較し、staged PCIが短期予後と長期予後を改善させたと報告している。ただ、このメタ解析には観察研究を含んでいて、primary PCIと同時に残存狭窄の治療を行なった群に、Killip Ⅳやショックが多く含まれているので、選択バイアスや無イベント時間バイアスが入っている可能性がある。

STEMIの残存狭窄の治療対象となるのは、安定狭心症と同様、angiographicalではなくFFR guideが良いと、DANAMI3-PRIMULTI試験で決着が付いている。では、PCIのタイミングはというと、このメタ解析が示すように、primary PCIと同時でも、入院中でも、退院後でも、いつでも変わらない。

そして、残存狭窄に対するPCIのベネフィットは、緊急血行再建の減少のみ。死亡率や再梗塞率の減少という恩恵を受けている患者もいるかもしれないが、集団でみた場合にはその有効性は示されていない。

ReACT試験 フォローアップ冠動脈造影はルーチンで行う必要がない

The ReACT Trial: Randomized Evaluation of Routine Follow-up Coronary Angiography After Percutaneous Coronary Intervention Trial.
JACC Cardiovasc Interv. 2017 Jan 23;10(2):109-117

《要約》
目的
この試験の目的は、日本で一般的である、カテーテル治療(PCI)後にルーチンで行われるフォローアップの冠動脈造影(FUCAG)の長期的な臨床上のインパクトを調べることである。

背景
PCI後にルーチンで行われるFUCAGの、長期的な臨床上のインパクトは十分調べられていない。

方法
前向き、他施設、オープンラベル、無作為化試験である。PCIに成功した患者を、冠動脈造影をルーチンで行う群(AF群)と、行わない群(CF群)の2群に無作為に割り付け、AF群ではPCIから8−12ヶ月後にFUCAGを行った。主要評価項目は、最短で1.5年の観察期間での、死亡、心筋梗塞、脳梗塞、急性冠症候群(ACS)による緊急血行再建、心不全による入院の複合エンドポイントである。

結果
2010年3月から2014年7月の間で、22施設からAF群349例、CF群351例の計700例を登録した。中央値4.6年(四分位範囲3.1−5.2年)の観察期間で、主要評価項目の5年間の累積発生率はAF群で22.4%、CF群で24.7%であった(HR:0.94、95%CI:0.67-1.31)。最初の1年に行われる血行再建は、AF群で有意に多かったが(12.8%vs3.8%、log-rank p<0.001)、5年間の観察期間ではその差は薄れた(19.6%vs18.1%, log-rank p=0.92)。

結論
PCI後にルーチンで行われるFUCAGは臨床的ベネフィットがなく、早期の血行再建はFUCAGを行なった患者群で有意に増加した。

◇この論文のPICOはなにか
P:PCIに成功した冠動脈疾患患者
I:PCIから8−12ヶ月後にルーチンでの冠動脈造影を行う(AF群)
C:ルーチンでの冠動脈造影を行わない(CF群)
O:死亡、心筋梗塞、脳梗塞、急性冠症候群(ACS)による緊急血行再建、心不全による入院

inclusion criteria:staged PCIが予定されていない患者
exclusion criteria:なし

◇baselineは同等か

同等。たぶんAPがメインで、病変とステント数は1コか2コ。CTOは少ない。2stentで治療されていた患者の割合は不明。スタチンやβblockerの内服率は高くない。

◇試験の概要
地域:日本
登録期間:2010年3月〜2014年7月
観察期間:中央値4.6年(四分位範囲3.1−5.2年)
無作為化:施設、BMS使用で層別化した上で、退院前に登録し無作為化する。
盲検化:オープンラベル
必要症例数:当初は、3年間のCF群でのイベント発生率25%、介入により15%の相対的リスク減少、power80%で、必要症例数3300例と算出されていたが、登録が進まないために2014年に700例に修正されている(5年間の観察期間で、CF群のイベント発生率が47.7%、介入により25%の相対的リスク減少、クロスオーバーやロストフォローアップが25%と仮定)。
症例数:AF群349例、CF群351例の計700例
追跡率:不明
クロスオーバー:AF群14.6%、CF群12.0%
解析:ITT解析
スポンサー:記載なし

◇結果

TLRや血行再建はAF群で増えているが、その結果ACSが減っているかというと、そうではなさそう。

◇批判的吟味
・PCIは、病変としてはシンプルな患者がメインっぽい。
・糖尿病の患者が半分近くいて、高血圧・脂質異常・冠動脈疾患の既往など、リスクは高め。
・症例が集まらず、途中でサンプルサイズ変更しているが、変更後のサンプルサイズには達している。
・観察期間は5年なので、設定されたアウトカムを評価するには十分な期間だと思う。
・APに対するPCIに心筋梗塞予防効果や生命予後改善効果がないことを考えると、ルーチンのフォローアップCAGに意味があるとは考えにくい。パワー不足の可能性はあるが、結果については異論がない。
・AF群で早期の血行再建が多いが、その後CF群も増えている。血行再建をいつやるかというタイミングの問題かもしれない。ただ、フォローアップCAGをルーチンでやった方が、医療費はかさむ。

◇感想
PCI後のフォローアップCAGは、臨床的なアウトカムは改善しないという結果。費用対効果を考えれば、多くの患者でルーチンでのフォローアップCAGは不要で、症状の再燃や客観的な虚血が証明された場合に限った方がいいだろう。

この試験に組み入れらた患者は、スタチンはそこそこ処方されているが、βblockerの処方率は低い。冠動脈疾患者に対する実臨床を反映していると思うが、自分が患者だったら、症状の有無に関わらず、とりあえずスタチンとβblockerは最大耐用量まで増やしてもらって、その後PCIをどうするか考えるなぁ。

PCSK9阻害薬アリロクマブのLDL低下効果

《要約》
背景
PCSK9阻害薬であるアリロクマブは、スタチンで治療されている患者のLDLレコステロール値を低下させることが示されている。安全性と有効性を証明するために、より大規模で長期の試験が必要である。

方法
心血管イベントリスクが高く、スタチンを最大耐用量を内服しているにもかかわらずLDLコレステロール≧70mg/dの患者l2341例を組み入れた無作為試験を行なった。患者を、アロリクマブ(150mg)またはプラセボを2週に1回皮下注を行う2群に、2:1に無作為に割り付けた。有効性主要評価項目は、ベースラインから24週時点でのLDLコレステロールの変化率である。

結果
アロリクマブ群とプラセボ群のLDLコレステロールの変化率の差は、−62パーセンテージポイントであった(P<0.001)。治療効果は78週にわたり一貫していた。アロリクマブ群はプラセボ群に比べ、注射部位の反応(5.9%vs4.2%)、筋肉痛(5.4%vs2.9%)、神経認知イベント(1.2%vs0.5%)、眼科的なイベント(2.9%vs1.9%)が多かった。事後解析では、心血管イベント(冠動脈死、非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳梗塞、入院を要する不安定狭心症)はアロリクマブ群で少なかった(1.7%vs3.3%、HR:0.52、95%CI:0.31−0.90)。

結論
最大耐用量のスタチンにアロリクマブを加えることで、LDLコレステロールを有意に低下させた。事後解析では、アロリクマブの心血管イベントの減少が認められた。

◇この論文のPICOはなにか
P:スタチンを最大耐用量内服している冠動脈リスクが高い患者
I:アロリクマブ150mg皮下注
C:プラセボ皮下注
O:24週でのLDLコレステロールの変化率

inclusion criteria:LDLコレステロール70mg/dl以上、18歳以上、家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体、冠動脈疾患、またはそれと同等のリスクを有する患者(末梢動脈疾患、虚血性脳梗塞、中等度の慢性腎臓病[eGFR30−60]、糖尿病とそれ以外の2つリスク[高血圧、ABI≦0.9、微量アルブミン尿、早発の冠動脈疾患の家族歴など])、少なくとも登録の4週前からスタチンを最大耐用量内服していること
exclusion criteria:本文には記載なし

◇baselineは同等か
同等。
ざっくりいうと、年齢60歳、ほとんど白人、BMI30と太っていて、70%が冠動脈疾患患者、1/3が糖尿病、ほぼ100%スタチンを内服している。LDLは120ぐらいで、HDL50ぐらい。

◇試験の概要
地域:アフリカ・ヨーロッパ・北米・南米の27カ国
登録期間:記載なし
観察期間:記載なし
無作為化:記載なし
盲検化:患者、治療実施者は盲検化されている。
必要症例数:LDLがどれくらい下がるかは記載がないが、12・18ヶ月時点でのドロップアウトがそれぞれ25%.35%で、2100例(アリロクマブ群1400例、プラセボ群700例)とされている。
症例数:2341例(アリロクマブ群1553例、プラセボ群788例)
追跡率:アリロクマブ群89.2%、プラセボ群89.8%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Sanofi社、Regeneron Pharmaceuticals社)

◇結果

LDLはすごく下がって、HDLもちょっと上がる。約80%で、LDL<70mg/dlを達成。

◇批判的吟味
・このLDL低下が、心血管イベントの抑制につながるかは、現時点では明らかではない。今後、PCSK9阻害薬でも、the lower the betterが証明されるのか。
・HDLもちょっと上がっており、この上昇が心血管イベントの抑制に働く可能性。

◇感想
心血管イベントをアウトカムにしたFOURIER試験(エボロクマブ)が行われていて、ポジティブな結果が出たそうで、今月のACCで発表されると。FOURIER試験では27000例も組み入れられているが、それだけの症例が必要になったのは、対照群のイベント率が低いからなのか、それともエボロクマブによる効果が小さいからなのか。

対照群で4.5%/年のイベント率、エボロクマブにより15%の相対リスク減少という仮説で試験が組まれている様。心血管死、心筋梗塞などのハードエンドポイントを減らすのか、あるいはUAPによる入院や血行再建などのソフトエンドポイントの抑制が影響が大きいのか(上のようにPCSK9阻害薬でこれだけLDLが下がると、盲検化を維持するのが難しそうなので、これがソフトエンドポイントに影響を与える可能性はありそう)。結果が楽しみです。

PCSK9阻害薬エボロクマブ 第Ⅱ-Ⅲ相臨床試験のデータから

Efficacy and Safety of Evolocumab in Reducing Lipids and Cardiovascular Events
N Engl J Med 2015; 372:1500-1509

《要約》
背景
エボロクマブは、PCSK9を阻害するモノクローナル抗体で、短期的な試験において、LDLコレステロールを著しく低下させた。我々は、より長期のデータを得るため、2つの試験を延長した。

方法
2つのオープンラベル、無作為化試験で、第Ⅱ相または第Ⅲ相試験(parent trials)を終えた4465例を登録した。parent trailsの割り付けに関係なく、エボロクマブ+標準治療の群(140mgを2週ごとに投与、または420mgを月に1回投与)と標準治療のみの群に、2:1に割り付けた。11.1ヶ月(中央値)フォローアップされ、脂質レベル、安全性、心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建、脳梗塞、TIA、心不全)について評価した。2つの試験のデータを複合した。

結果
標準治療群に比べ、エボロクマブ群ではLDLコレステロールが61%減少した(中央値で120mg/dlから48mg/dl、P<0.001)。神経認知機能のイベントはエボロクマブで起こりやすいことが報告されていたが、ほとんどの有害事象に有意差はなかった。神経認知機能のイベントも含め、有害事象のリスクと治療後のLDLコレステロール値に相関はなかった。1年間の心血管イベントは標準治療群では2.18%、エボロクマブ群では0.95%であった(ハザード比:0.47、95%CI:0.28−0.78)。

結論
標準治療にエボロクマブを加えることで、LDLコレステロール値と心血管イベントが有意に低下する。

◇この論文のPICOはなにか
P:高脂血症※
I:標準治療に加え、エボロクマブ投与(エボロクマブ群)
C:標準治療のみ(標準治療群)
O:有害事象の発生(重大な有害事象、エボロクマブの中止につながる有害事象、CKと肝機能の異常値、エボロクマブに対する中和抗体の産生)

secondary endpoint:LDLコレステロール値、心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建、脳梗塞、TIA、心不全)

※今までに行われた第Ⅱ相、または第Ⅲ相の12試験に登録された患者を対象にしている。12試験の患者は様々で、スタチンなしでLDL<100mg/dl、スタチン投与下でLDL<85、ヘテロ家族性高コレステロール血症でスタチン投与下でLDL<100mg/dlなど。

nclusion criteria:parent trialが終了していること、parent trialで有害事象が起きていないこと、病態が安定していること

◇baselineは同等か
同等。心血管疾患、脳血管疾患の既往がある人は多くなく、一次予防がメイン。スタチンは70%しか入っていない。

◇試験の概要
地域:北米、欧州、アジア、南アフリカ
登録期間:2011年10月〜2014年6月
観察期間:11.1ヶ月(中央値)
無作為化:interactive voice-responseまたはweb-response systemを用いて中央割り付けを行う。
盲検化:オープンラベル
必要症例数:記載なし
症例数:4465例(エボロクマブ群2976例、標準治療群1489例)
追跡率:不明
解析:ITT解析
スポンサー:Amgen社による資金提供あり。試験デザイン、データ収集、解析もAmgen社が行う。

◇結果
エボロクマブ群で、投与中止が7.2%。

○脂質
・LDL(エボロクマブ群、ベースライン→12週後)
120mg/dl → 48mg/dl
(100mg/dlを切ったのは、約90%)
・HDLは7.0%上昇

○心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建、脳梗塞、TIA、心不全)
エボロクマブ群 vs 標準治療群
0.95% vs 2.18%, HR:0.47(95%CI:0.28−0.78)

◇批判的吟味
・LDL低下効果は高い
・スタチンが70%しか内服していない
・心血管イベントに差があるが、ソフトエンドポイントも含まれており、オープンラベルなので要注意。
・心血管イベントを評価するには11ヶ月は短い。
・スポンサー企業が、試験デザイン・データ収集・解析も行なっている。
・有害事象は、それほど発生頻度が高くないので、検出力が十分あるかわからない。
・parent trialで有害事象が発生した患者は除外されているため、有害事象の発生はもっと多いはず。

◇感想
一次予防がメインの集団で、スタチン内服率は70%と高くないが、エボロクマブを投与することにより、LDLは著しく低下し、有害事象は増えなかった。心血管イベントがエボロクマブ投与により減っているが、エンドポイントの設定が適切でない可能性があり、今後のデータが待たれる。

JPAD2試験 アスピリンに心血管疾患一次予防効果はない

Low-Dose Aspirin for Primary Prevention of Cardiovascular Events in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus10-Year Follow-Up of a Randomized Controlled Trial
Circulation. 2017;135:659-670.

《要約》
背景
2型糖尿病での心血管イベント一次予防に対する低容量アスピリンの長期の安全性・有効性に関しては、結論が出ていない。

方法
JPAD試験(Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis
With Aspirin for Diabetes)は、無作為化、オープンラベル、標準治療を対照群においた試験である。2539例の2型糖尿病の日本人を対象に、低容量アスピリンの有効性・安全性を評価した。アスピリン群(81mgまたは100mg)とアスピリン非投与群に無作為に割り付けた。2008年の試験終了後、2015年までフォローアップし割り付けられた治療は継続した。主要評価項目は、心臓突然死、致死性・非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳梗塞、末梢動脈疾患である。安全性については、消化管出血、頭蓋内出血、その他の出血を解析した。主要評価項目はper-protocol解析を行い、出血イベントと感度分析はITT解析を行った。

結果
フォローアップ期間の中央値は10.3年で、1621例(64%)が試験を通してフォローアップされた。2160例(85%)で、割り付けられた治療を維持した。per-protocol解析では、アスピリン群とアスピリン非投与群で、心血管イベントに差はなかった(HR:1.14、95%CI:0.91-1.42)。年齢、性別、血糖コントロール、腎機能、喫煙の有無、高血圧、高脂血症で調整した多変量COX比例ハザードモデルでも似たような結果で(HR1.04、95%CI:0.83-1.30)、サブグループ解析でも結果の異質性はなかった(interaction P<0.05)。感度分析の結果も一貫していた(HR:1.01、95%CI:0.82-1.25)。消化管出血はアスピリン投与群で25例(2%)、非投与群で12例(0.9%)と差があり(P=0.03)、出血性脳卒中に群間差はなかった。

結論
心血管疾患のない2型糖尿病では、低容量アスピリンは心血管イベントのリスクに影響がなく、消化管出血は増大させる。

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患のない2型糖尿病の日本人
I:アスピリン81mgまたは100mgの内服
C:アスピリンの内服なし
O:心臓突然死、致死性・非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳梗塞、末梢動脈疾患

nclusion criteria:30−85歳
exclusion criteria:心電図の虚血性変化(ST変化、Q波など)、心血管疾患の既往(冠動脈造影で診断されている、TIA・脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の既往、薬物療法を要するPAD)、心房細動、妊娠、抗血小板薬・抗凝固薬の内服

◇baselineは同等か

(本文から引用)
年齢、血圧、喫煙率、HbA1c、Cr、Hbでいずれもわずかであるが、有意な群間差がある。

◇試験の概要
地域:日本
登録期間:2002年〜2005年
観察期間:10.3年(中央値)
無作為化:乱数表を用いる。層別化はされていない。
盲検化:密封された封筒法
必要症例数:1年あたり主要評価項目が52/1000例発生し、低容量アスピリンにより30%の相対リスク低下があると仮定。αlevel0.05、power0.95、フォローアップ期間は3年間として、必要症例数は2450例と算出されている。
症例数:2539例(アスピリン群1262例、アスピリン非投与群1277例)
追跡率:試験早期中止と追跡不能が、アスピリン群480/1262例(38.0%)、アスピリン非投与群438/1277例(34.2%)と多いのは、10年のフォローアップのデータなので致し方ないか。クロスオーバーはアスピリン群270/1262例(21.3%)、アスピリン非投与群109/1277例(8.5%)であった。
解析:Per-Protocol解析
スポンサー:企業の関与なし

◇結果
解析はper-protocol。

(本文から引用)

・出血イベント(アスピリン群vsアスピリン非投与群)
全出血  6% vs 5%、P=0.2
消化管出血 2% vs 0.9%、P=0.03
出血性脳卒中 0.9% vs 1.2%、P=0.4

◇批判的吟味
・数少ない日本人でのアスピリンによる心血管疾患一次予防の長期データ。
・追跡率は低い。
・クロスオーバーを除いたper-protocol解析で、アスピリンの効果を強め、有害事象は減らす方向に働くと思われる(アスピリン群では低リスクなら投与中止され、非投与群ではリスクが高い症例ならアスピリンが処方されている可能性がある)が、それでもprimary endpointで有意差なし。
・アスピリンにより、消化管出血は有意に増える。

◇感想
このJPAD2試験では、2型糖尿病で罹病期間が7年ぐらい、高血圧・高脂血症の人がそれぞれ50%以上いて、喫煙者が20%と、結構リスクがある人が対象になっている。それでもアスピリンの心血管疾患一次予防の効果は示せなかった。

欧米人でもアスピリンの心血管一次予防効果は限定的なので、欧米人に比べ心血管イベントリスクは低い日本人なら、なおさらだろう。JPPPの結果と合わせて考えると、日本人ではアスピリンを心血管疾患一次予防目的で使用することのnet clinical benefitはないと考えていいだろう。

女性の急性冠症候群は男性より予後が悪い

Outcomes of Women and Men With Acute Coronary Syndrome Treated With and Without Percutaneous Coronary Revascularization.
Am Heart Assoc. 2017 Jan 20;6:e004319

◇論文の概要
<背景>
非ST上昇型急性冠症候群(ACS)で入院した女性は、男性に比べ臨床的アウトカムが悪い。急性期の冠動脈血行再建による侵襲的治療が、アウトカムの性差を軽減する可能性がある。しかし、早期に侵襲的治療戦略をとった場合の臨床的アウトカムの性差について評価した研究はほとんどない。

<方法と結果>
人口ベースの観察研究である。2008−2011年にカナダのオンタリオで、早期のカテーテル治療を受けたACS患者を最長2年間フォローアップした。臨床的なアウトカムは、カテーテル治療の有無で層別化し、男女間で比較した。プロペンシティスコアを用いたIPW法で調整した。入院中にカテーテル治療を行った23473例のACSを解析した。


(本文より引用)

同一入院中にカテーテル治療を行なったのは、男性では66.1%、女性では51.8%であった。傾向で重み付けされたカテーテル治療が行った集団では、1年間の死亡とACSの再発は、カテーテル治療を行なった男性では10.6%、女性では13.1%であった(HR:1.24、95%CI:1.16−1.33)。対照的に、カテーテル治療を行わなかった男女間では、有意差はなかった(17.8%vs16.9%、HR:1.06、95%CI:0.99−1.14)。


(本文より引用)

<結論>
ACSにおいて早期の侵襲的な治療戦略をとった場合、男性と比べ女性では臨床的なアウトカムは悪かった。

◇この論文のPECOは?
P:非ST上昇型急性冠症候群
E/C:性別
O:死亡とACSの再発

◇批判的吟味
男女間で死亡率は同程度。ACSの再発が女性で多い。baselineでは、二枝・三枝疾患の割合は男女で差はないが、ACSの再発はほとんどの症例で試験登録時ACSの非責任病変以外で起こっているはずなので、女性は男性より不安定病変(壊死性プラーク、TCFA、びらん)、びまん性病変が多いのか。

また、出血は同程度だが、輸血は女性で多いので、30日までのアウトカムならそれも影響があるかもしれない(12.8%vs7.3%)。

◇感想
非ST上昇型急性冠症候群では、PCIやっても女性は男性よりACSの再発が多い。女性では、遠隔期の薬物療法がより重要ということかもしれない。

EMPA-REG OUTCOME試験 アジア人(サブグループ解析)

Empagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Asian Patients With Type 2 Diabetes and Established Cardiovascular Disease - Results From EMPA-REG OUTCOME®.
Circ J. 2017 Jan 25;81(2):227-234.

《要約》
背景
EMPA-REG OUTCOME®︎試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者に対し、標準的治療にエンパグリフロジンを追加することで、3-point MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞)を14%、心血管死を38%、心不全入院を35%、全死亡を32%低下させた。我々は、アジア人におけるエンパグリフロジンの効果を調べた。

方法と結果
患者は、エンパグリフロジン10mg、エンパグリフロジン25mg、プラセボに無作為に割り付けられた。全体7020例のうち、1517例(21.6%)がアジア人であった。3-point MACEはエンパグリフロジン群で79/1006例(7.9%)、プラセボ群で58/511例(11.4%)、ハザード比0.68(95%CI:0.48−0.95)、人種による交互作用P=0.0872であり、アジア人での3-point MACEの減少は、試験全体と一貫していた。エンパグリフロジンのアジア人に対する効果は、MACE、全死亡、心不全アウトカムで、試験全体と一貫していた(人種による交互作用のP>0.05)。有害事象のプロファイルは、アジア人と全患者で似通っていた。

結論
心血管疾患を有するアジア人の2型糖尿病患者では、エンパグリフロジンの心血管アウトカムと死亡率に対する効果は、EMPA-REG OUTCOME試験全体の患者と一貫性があった。

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患を有する2型糖尿病のアジア人
I:エンパグリフロジン10mgもしくは25mgの内服(エンパグリフロジン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:心臓死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞(3-point MACE)

◇患者背景


EMPA-REG OUTCOME試験全体との患者背景の違いは、糖尿病罹患期間が短く、インスリン使用が少ない、体重が軽い、多枝疾患が多い、利尿薬の使用が少ないという感じ。

エンパグリフロジン群とプラセボ群で群間差はない。

◇結果
エンパグリフロジン群 vs プラセボ群
・3-point MACE
7.9% vs 11.4% HR:0.68(95%CI:0.48−0.95)

・4-point MACE(3-point MACE+不安定狭心症による入院)
10.0% vs 13.5% HR:0.73(95%CI:0.54−1.00)

・心血管死
2.2% vs 4.9% HR:0.44(95%CI:0.25−0.78)

・致死的/非致死的脳梗塞
3.8% vs 3.9% HR:0.95(95%CI:0.55-1.64)

・致死的/非致死的心筋梗塞
2.9% vs 4.5% HR:0.62(95%CI:0.36−1.08)

・心不全入院
2.2% vs 3.1% HR:0.70(95%CI:0.37−1.33)

◇批判的吟味
・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、Hb<8.5%、BMI<30で良いのではないかということが言われていた。しかし、アジア人のサブグループ解析ではサンプルサイズが小さいため、サブグープ解析による一貫性については調べられておらず、同様の傾向を示すかどうかはわからない。

・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、3-point MACEのうち心血管死が有意に減少しており、それは心不全入院を減らした結果であった。アジア人でのサブグループ解析でも3−point MACEのうち心血管死が有意に減少しており、心不全入院を抑制する傾向があったため、心不全死を減らしているものと推測する(心不全入院で有意差が付いていないのはパワー不足と思われる)。

・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、エンパグリフロジンで脳梗塞が増える傾向にあったが、アジア人ではその傾向は見られなかった。

・3-point MACEのNNTは29、心血管死のNNTは38。

◇感想
EMPA-REG OUTCOME試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者で、エンパグリフロジンを投与することにより3-point MACEを有意に減少させた。エンパグリフロジンにより心不全入院、心不全死が抑えられたためと考えら、アジア人でのサブグループ解析でも同様の傾向が認められた。

他のSGLT2阻害薬でも心血管イベントをアウトカムとした試験が進行中のようで、この効果がドラッグエフェクトなのかクラスエフェクトなのか、はたまた違う方向に議論が進んでいくのか、期待して待ちたいと思います。

ていうか、EMPA-REG OUTCOMEって商標登録されていたんですね。悪用されるのを防ぐためなのでしょうか。

非スタチン療法のガイドライン(ACC)要約

Role of Nonstatin Therapies for Low-Density Lipoprotein Cholesterol Lowering in Management of Atherosclerotic Cardiovascular Disease Risk
JAMA Cardiol. 2016 Nov 30. [Epub ahead of print]

これは、ACCの動脈硬化性心血管疾患に対する非スタチン療法のレコメンデーションです。以下の4つのグループでは、もちろん最大量のスタチンの投与が推奨されており、以下の非スタチン療法を考慮する前に、スタチンのアドヒアランスを向上させたり、生活習慣に介入したり、他のリスクを是正したり、ということが推奨されています。

それにしても、エゼチミブのエビデンスといえばIMPROVE-IT試験しかなく、それなのにエゼチミブが推されすぎている感があります。

IMPROVE-IT試験の結果は微妙で、一番大きな疑問は対照に普通のスタチンを使用していることで、有意に心血管イベント(心血管死から不安定狭心症までいろんなエンドポイントの複合)を減らしたといっても、34%から32%に約2%低下させたにすぎず、Nが大きいために出た結果だと思います。

日本人だと、スタチンを使ってLDLコレステロールが下がらない人はそういないと思うので、このガイドラインが推奨するようにエゼチミブが必要になる人は多くないでしょう。家族性高コレステロール血症ではエゼチミブやPCSK9阻害薬の出番はあるかもしれませんが、スタチンの最大量投与が前提で、適応は慎重に考えたいものです。

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1.安定した動脈硬化性心血管疾患(二次予防)
スタチン使用下でLDLコレステロールの少なくとも50%の減少が達成できていなければ、まずエゼチミブを考慮すべきである。それでも目標を達成できない場合には、エゼチミブにPCSK9阻害薬を変更、または追加することは妥当である。動脈硬化性心血管疾患で、かつハイリスクの患者は、上記の治療でLDLコレステロールを少なくとも50%減少させ、70mg/dl未満にすべきである。

2.LDLコレステロールが190mg/dl以上(一次予防)
LDLコレステロールを50%減少(LDLコレステロール100mg/dl未満)させることが推奨され、付加的なLDLコレステロール低下には、まずエゼチミブまたはPCSK9阻害薬を考慮する。脂質の専門医と栄養士に紹介することが望ましく、特に家族性高コレステロール血症のホモ接合体またはベースラインのLDLコレステロールが250mg/dl以上の場合で推奨される。

3.40−75歳の糖尿病(一次予防)
LDLコレステロールの50%の減少(LDLコレステロール100mg/dl未満、またはnonHDLコレステロール130mg/dl未満)が推奨される。この患者群では、PCSK9阻害薬の使用は推奨されず、エゼチミブが第一選択である。中性脂肪が300mg/dl未満のエゼチミブ禁忌症例ではレジンが推奨される。

4.40−75歳で、10年間のCVDイベントが7.5%以下(一次予防、糖尿病なし)
LDLコレステロール100mg/dl以上、あるいはハイリスク症例で、中等度の強度のスタチンで治療しているなら、スタチンの強度を上げることが推奨される。目標が達成できないなら、エゼチミブを考慮する。PCSK9阻害薬は推奨されない。

左冠動脈主幹部の急性心筋梗塞 心電図診断

Prediction of acute left main coronary artery obstruction by 12-lead electrocardiography. ST segment elevation in lead aVR with less ST segment elevation in lead V(1).
J Am Coll Cardiol. 2001 Nov 1;38(5):1348-54.

《要約》
目的
左冠動脈主幹部閉塞の心電図的特徴を特定すること。

背景
左冠動脈主幹部閉塞は重大な血行動態の悪化を招き、予後不良である。そのため、左冠動脈主幹部閉塞の予測は適切な治療戦略を選択する上で重要である。

方法
左冠動脈主幹部の急性閉塞の連続16例(LMCA群)、左冠動脈前下行枝の急性閉塞46例(LAD群)、右冠動脈の急性閉塞24例(RCA群)の入院時心電図を調べた。

結果
aVR誘導でのST上昇(>0.05mV)は、LAD群やRCA群よりLMCA群で有意に多かった(LMCA88%、LAD43%、RCA8%)。aVR誘導でのST上昇は、LAD群よりLMCA群で有意に高かった(LMCA群0.16±0.13mV、LAD群0.04±0.10mV)。V1誘導でのST上昇は、LAD群よりLMCA群で有意に低かった(LMCA群0.00±0.21mV、LAD群0.14±0.11mV)。aVR誘導のST上昇がV1誘導のST上昇より大きい、もしくは同等の場合、感度81%、特異度80%でLMCA群と診断できる。aVR誘導と家壁誘導のST変化でLMCA群とRCA群を区別できる。左冠動脈主幹部の急性閉塞では、aVR誘導でのST上昇が高い群では、ST上昇が高くない群と比較し、死亡率が高い。

結論
V1誘導のST上昇が小さく、aVR誘導でST上昇していることは、左冠動脈主幹部閉塞である重要な予測因子である。左冠動脈主幹部の急性閉塞では、aVR誘導のST上昇は臨床的なアウトカムの予測因子でもある。

AがLMCA、BがLAD、CがRCA
ecg
aVRでST上昇があって、V1では上がっていない。

figure
V1だけではわからないので、aVRのST上昇と合わせて判断する。