カテゴリー別アーカイブ: 虚血性心疾患

PCSK9阻害薬エボロクマブ 第Ⅱ-Ⅲ相臨床試験のデータから

Efficacy and Safety of Evolocumab in Reducing Lipids and Cardiovascular Events
N Engl J Med 2015; 372:1500-1509

《要約》
背景
エボロクマブは、PCSK9を阻害するモノクローナル抗体で、短期的な試験において、LDLコレステロールを著しく低下させた。我々は、より長期のデータを得るため、2つの試験を延長した。

方法
2つのオープンラベル、無作為化試験で、第Ⅱ相または第Ⅲ相試験(parent trials)を終えた4465例を登録した。parent trailsの割り付けに関係なく、エボロクマブ+標準治療の群(140mgを2週ごとに投与、または420mgを月に1回投与)と標準治療のみの群に、2:1に割り付けた。11.1ヶ月(中央値)フォローアップされ、脂質レベル、安全性、心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建、脳梗塞、TIA、心不全)について評価した。2つの試験のデータを複合した。

結果
標準治療群に比べ、エボロクマブ群ではLDLコレステロールが61%減少した(中央値で120mg/dlから48mg/dl、P<0.001)。神経認知機能のイベントはエボロクマブで起こりやすいことが報告されていたが、ほとんどの有害事象に有意差はなかった。神経認知機能のイベントも含め、有害事象のリスクと治療後のLDLコレステロール値に相関はなかった。1年間の心血管イベントは標準治療群では2.18%、エボロクマブ群では0.95%であった(ハザード比:0.47、95%CI:0.28−0.78)。

結論
標準治療にエボロクマブを加えることで、LDLコレステロール値と心血管イベントが有意に低下する。

◇この論文のPICOはなにか
P:高脂血症※
I:標準治療に加え、エボロクマブ投与(エボロクマブ群)
C:標準治療のみ(標準治療群)
O:有害事象の発生(重大な有害事象、エボロクマブの中止につながる有害事象、CKと肝機能の異常値、エボロクマブに対する中和抗体の産生)

secondary endpoint:LDLコレステロール値、心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建、脳梗塞、TIA、心不全)

※今までに行われた第Ⅱ相、または第Ⅲ相の12試験に登録された患者を対象にしている。12試験の患者は様々で、スタチンなしでLDL<100mg/dl、スタチン投与下でLDL<85、ヘテロ家族性高コレステロール血症でスタチン投与下でLDL<100mg/dlなど。

nclusion criteria:parent trialが終了していること、parent trialで有害事象が起きていないこと、病態が安定していること

◇baselineは同等か
同等。心血管疾患、脳血管疾患の既往がある人は多くなく、一次予防がメイン。スタチンは70%しか入っていない。

◇試験の概要
地域:北米、欧州、アジア、南アフリカ
登録期間:2011年10月〜2014年6月
観察期間:11.1ヶ月(中央値)
無作為化:interactive voice-responseまたはweb-response systemを用いて中央割り付けを行う。
盲検化:オープンラベル
必要症例数:記載なし
症例数:4465例(エボロクマブ群2976例、標準治療群1489例)
追跡率:不明
解析:ITT解析
スポンサー:Amgen社による資金提供あり。試験デザイン、データ収集、解析もAmgen社が行う。

◇結果
エボロクマブ群で、投与中止が7.2%。

○脂質
・LDL(エボロクマブ群、ベースライン→12週後)
120mg/dl → 48mg/dl
(100mg/dlを切ったのは、約90%)
・HDLは7.0%上昇

○心血管イベント(死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、冠動脈血行再建、脳梗塞、TIA、心不全)
エボロクマブ群 vs 標準治療群
0.95% vs 2.18%, HR:0.47(95%CI:0.28−0.78)

◇批判的吟味
・LDL低下効果は高い
・スタチンが70%しか内服していない
・心血管イベントに差があるが、ソフトエンドポイントも含まれており、オープンラベルなので要注意。
・心血管イベントを評価するには11ヶ月は短い。
・スポンサー企業が、試験デザイン・データ収集・解析も行なっている。
・有害事象は、それほど発生頻度が高くないので、検出力が十分あるかわからない。
・parent trialで有害事象が発生した患者は除外されているため、有害事象の発生はもっと多いはず。

◇感想
一次予防がメインの集団で、スタチン内服率は70%と高くないが、エボロクマブを投与することにより、LDLは著しく低下し、有害事象は増えなかった。心血管イベントがエボロクマブ投与により減っているが、エンドポイントの設定が適切でない可能性があり、今後のデータが待たれる。

JPAD2試験 アスピリンに心血管疾患一次予防効果はない

Low-Dose Aspirin for Primary Prevention of Cardiovascular Events in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus10-Year Follow-Up of a Randomized Controlled Trial
Circulation. 2017;135:659-670.

《要約》
背景
2型糖尿病での心血管イベント一次予防に対する低容量アスピリンの長期の安全性・有効性に関しては、結論が出ていない。

方法
JPAD試験(Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis
With Aspirin for Diabetes)は、無作為化、オープンラベル、標準治療を対照群においた試験である。2539例の2型糖尿病の日本人を対象に、低容量アスピリンの有効性・安全性を評価した。アスピリン群(81mgまたは100mg)とアスピリン非投与群に無作為に割り付けた。2008年の試験終了後、2015年までフォローアップし割り付けられた治療は継続した。主要評価項目は、心臓突然死、致死性・非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳梗塞、末梢動脈疾患である。安全性については、消化管出血、頭蓋内出血、その他の出血を解析した。主要評価項目はper-protocol解析を行い、出血イベントと感度分析はITT解析を行った。

結果
フォローアップ期間の中央値は10.3年で、1621例(64%)が試験を通してフォローアップされた。2160例(85%)で、割り付けられた治療を維持した。per-protocol解析では、アスピリン群とアスピリン非投与群で、心血管イベントに差はなかった(HR:1.14、95%CI:0.91-1.42)。年齢、性別、血糖コントロール、腎機能、喫煙の有無、高血圧、高脂血症で調整した多変量COX比例ハザードモデルでも似たような結果で(HR1.04、95%CI:0.83-1.30)、サブグループ解析でも結果の異質性はなかった(interaction P<0.05)。感度分析の結果も一貫していた(HR:1.01、95%CI:0.82-1.25)。消化管出血はアスピリン投与群で25例(2%)、非投与群で12例(0.9%)と差があり(P=0.03)、出血性脳卒中に群間差はなかった。

結論
心血管疾患のない2型糖尿病では、低容量アスピリンは心血管イベントのリスクに影響がなく、消化管出血は増大させる。

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患のない2型糖尿病の日本人
I:アスピリン81mgまたは100mgの内服
C:アスピリンの内服なし
O:心臓突然死、致死性・非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳梗塞、末梢動脈疾患

nclusion criteria:30−85歳
exclusion criteria:心電図の虚血性変化(ST変化、Q波など)、心血管疾患の既往(冠動脈造影で診断されている、TIA・脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の既往、薬物療法を要するPAD)、心房細動、妊娠、抗血小板薬・抗凝固薬の内服

◇baselineは同等か

(本文から引用)
年齢、血圧、喫煙率、HbA1c、Cr、Hbでいずれもわずかであるが、有意な群間差がある。

◇試験の概要
地域:日本
登録期間:2002年〜2005年
観察期間:10.3年(中央値)
無作為化:乱数表を用いる。層別化はされていない。
盲検化:密封された封筒法
必要症例数:1年あたり主要評価項目が52/1000例発生し、低容量アスピリンにより30%の相対リスク低下があると仮定。αlevel0.05、power0.95、フォローアップ期間は3年間として、必要症例数は2450例と算出されている。
症例数:2539例(アスピリン群1262例、アスピリン非投与群1277例)
追跡率:試験早期中止と追跡不能が、アスピリン群480/1262例(38.0%)、アスピリン非投与群438/1277例(34.2%)と多いのは、10年のフォローアップのデータなので致し方ないか。クロスオーバーはアスピリン群270/1262例(21.3%)、アスピリン非投与群109/1277例(8.5%)であった。
解析:Per-Protocol解析
スポンサー:企業の関与なし

◇結果
解析はper-protocol。

(本文から引用)

・出血イベント(アスピリン群vsアスピリン非投与群)
全出血  6% vs 5%、P=0.2
消化管出血 2% vs 0.9%、P=0.03
出血性脳卒中 0.9% vs 1.2%、P=0.4

◇批判的吟味
・数少ない日本人でのアスピリンによる心血管疾患一次予防の長期データ。
・追跡率は低い。
・クロスオーバーを除いたper-protocol解析で、アスピリンの効果を強め、有害事象は減らす方向に働くと思われる(アスピリン群では低リスクなら投与中止され、非投与群ではリスクが高い症例ならアスピリンが処方されている可能性がある)が、それでもprimary endpointで有意差なし。
・アスピリンにより、消化管出血は有意に増える。

◇感想
このJPAD2試験では、2型糖尿病で罹病期間が7年ぐらい、高血圧・高脂血症の人がそれぞれ50%以上いて、喫煙者が20%と、結構リスクがある人が対象になっている。それでもアスピリンの心血管疾患一次予防の効果は示せなかった。

欧米人でもアスピリンの心血管一次予防効果は限定的なので、欧米人に比べ心血管イベントリスクは低い日本人なら、なおさらだろう。JPPPの結果と合わせて考えると、日本人ではアスピリンを心血管疾患一次予防目的で使用することのnet clinical benefitはないと考えていいだろう。

女性の急性冠症候群は男性より予後が悪い

Outcomes of Women and Men With Acute Coronary Syndrome Treated With and Without Percutaneous Coronary Revascularization.
Am Heart Assoc. 2017 Jan 20;6:e004319

◇論文の概要
<背景>
非ST上昇型急性冠症候群(ACS)で入院した女性は、男性に比べ臨床的アウトカムが悪い。急性期の冠動脈血行再建による侵襲的治療が、アウトカムの性差を軽減する可能性がある。しかし、早期に侵襲的治療戦略をとった場合の臨床的アウトカムの性差について評価した研究はほとんどない。

<方法と結果>
人口ベースの観察研究である。2008−2011年にカナダのオンタリオで、早期のカテーテル治療を受けたACS患者を最長2年間フォローアップした。臨床的なアウトカムは、カテーテル治療の有無で層別化し、男女間で比較した。プロペンシティスコアを用いたIPW法で調整した。入院中にカテーテル治療を行った23473例のACSを解析した。


(本文より引用)

同一入院中にカテーテル治療を行なったのは、男性では66.1%、女性では51.8%であった。傾向で重み付けされたカテーテル治療が行った集団では、1年間の死亡とACSの再発は、カテーテル治療を行なった男性では10.6%、女性では13.1%であった(HR:1.24、95%CI:1.16−1.33)。対照的に、カテーテル治療を行わなかった男女間では、有意差はなかった(17.8%vs16.9%、HR:1.06、95%CI:0.99−1.14)。


(本文より引用)

<結論>
ACSにおいて早期の侵襲的な治療戦略をとった場合、男性と比べ女性では臨床的なアウトカムは悪かった。

◇この論文のPECOは?
P:非ST上昇型急性冠症候群
E/C:性別
O:死亡とACSの再発

◇批判的吟味
男女間で死亡率は同程度。ACSの再発が女性で多い。baselineでは、二枝・三枝疾患の割合は男女で差はないが、ACSの再発はほとんどの症例で試験登録時ACSの非責任病変以外で起こっているはずなので、女性は男性より不安定病変(壊死性プラーク、TCFA、びらん)、びまん性病変が多いのか。

また、出血は同程度だが、輸血は女性で多いので、30日までのアウトカムならそれも影響があるかもしれない(12.8%vs7.3%)。

◇感想
非ST上昇型急性冠症候群では、PCIやっても女性は男性よりACSの再発が多い。女性では、遠隔期の薬物療法がより重要ということかもしれない。

EMPA-REG OUTCOME試験 アジア人(サブグループ解析)

Empagliflozin and Cardiovascular Outcomes in Asian Patients With Type 2 Diabetes and Established Cardiovascular Disease - Results From EMPA-REG OUTCOME®.
Circ J. 2017 Jan 25;81(2):227-234.

《要約》
背景
EMPA-REG OUTCOME®︎試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者に対し、標準的治療にエンパグリフロジンを追加することで、3-point MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞)を14%、心血管死を38%、心不全入院を35%、全死亡を32%低下させた。我々は、アジア人におけるエンパグリフロジンの効果を調べた。

方法と結果
患者は、エンパグリフロジン10mg、エンパグリフロジン25mg、プラセボに無作為に割り付けられた。全体7020例のうち、1517例(21.6%)がアジア人であった。3-point MACEはエンパグリフロジン群で79/1006例(7.9%)、プラセボ群で58/511例(11.4%)、ハザード比0.68(95%CI:0.48−0.95)、人種による交互作用P=0.0872であり、アジア人での3-point MACEの減少は、試験全体と一貫していた。エンパグリフロジンのアジア人に対する効果は、MACE、全死亡、心不全アウトカムで、試験全体と一貫していた(人種による交互作用のP>0.05)。有害事象のプロファイルは、アジア人と全患者で似通っていた。

結論
心血管疾患を有するアジア人の2型糖尿病患者では、エンパグリフロジンの心血管アウトカムと死亡率に対する効果は、EMPA-REG OUTCOME試験全体の患者と一貫性があった。

◇この論文のPICOはなにか
P:心血管疾患を有する2型糖尿病のアジア人
I:エンパグリフロジン10mgもしくは25mgの内服(エンパグリフロジン群)
C:プラセボの内服(プラセボ群)
O:心臓死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞(3-point MACE)

◇患者背景


EMPA-REG OUTCOME試験全体との患者背景の違いは、糖尿病罹患期間が短く、インスリン使用が少ない、体重が軽い、多枝疾患が多い、利尿薬の使用が少ないという感じ。

エンパグリフロジン群とプラセボ群で群間差はない。

◇結果
エンパグリフロジン群 vs プラセボ群
・3-point MACE
7.9% vs 11.4% HR:0.68(95%CI:0.48−0.95)

・4-point MACE(3-point MACE+不安定狭心症による入院)
10.0% vs 13.5% HR:0.73(95%CI:0.54−1.00)

・心血管死
2.2% vs 4.9% HR:0.44(95%CI:0.25−0.78)

・致死的/非致死的脳梗塞
3.8% vs 3.9% HR:0.95(95%CI:0.55-1.64)

・致死的/非致死的心筋梗塞
2.9% vs 4.5% HR:0.62(95%CI:0.36−1.08)

・心不全入院
2.2% vs 3.1% HR:0.70(95%CI:0.37−1.33)

◇批判的吟味
・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、Hb<8.5%、BMI<30で良いのではないかということが言われていた。しかし、アジア人のサブグループ解析ではサンプルサイズが小さいため、サブグープ解析による一貫性については調べられておらず、同様の傾向を示すかどうかはわからない。

・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、3-point MACEのうち心血管死が有意に減少しており、それは心不全入院を減らした結果であった。アジア人でのサブグループ解析でも3−point MACEのうち心血管死が有意に減少しており、心不全入院を抑制する傾向があったため、心不全死を減らしているものと推測する(心不全入院で有意差が付いていないのはパワー不足と思われる)。

・EMPA-REG OUTCOME試験全体では、エンパグリフロジンで脳梗塞が増える傾向にあったが、アジア人ではその傾向は見られなかった。

・3-point MACEのNNTは29、心血管死のNNTは38。

◇感想
EMPA-REG OUTCOME試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者で、エンパグリフロジンを投与することにより3-point MACEを有意に減少させた。エンパグリフロジンにより心不全入院、心不全死が抑えられたためと考えら、アジア人でのサブグループ解析でも同様の傾向が認められた。

他のSGLT2阻害薬でも心血管イベントをアウトカムとした試験が進行中のようで、この効果がドラッグエフェクトなのかクラスエフェクトなのか、はたまた違う方向に議論が進んでいくのか、期待して待ちたいと思います。

ていうか、EMPA-REG OUTCOMEって商標登録されていたんですね。悪用されるのを防ぐためなのでしょうか。

非スタチン療法のガイドライン(ACC)要約

Role of Nonstatin Therapies for Low-Density Lipoprotein Cholesterol Lowering in Management of Atherosclerotic Cardiovascular Disease Risk
JAMA Cardiol. 2016 Nov 30. [Epub ahead of print]

これは、ACCの動脈硬化性心血管疾患に対する非スタチン療法のレコメンデーションです。以下の4つのグループでは、もちろん最大量のスタチンの投与が推奨されており、以下の非スタチン療法を考慮する前に、スタチンのアドヒアランスを向上させたり、生活習慣に介入したり、他のリスクを是正したり、ということが推奨されています。

それにしても、エゼチミブのエビデンスといえばIMPROVE-IT試験しかなく、それなのにエゼチミブが推されすぎている感があります。

IMPROVE-IT試験の結果は微妙で、一番大きな疑問は対照に普通のスタチンを使用していることで、有意に心血管イベント(心血管死から不安定狭心症までいろんなエンドポイントの複合)を減らしたといっても、34%から32%に約2%低下させたにすぎず、Nが大きいために出た結果だと思います。

日本人だと、スタチンを使ってLDLコレステロールが下がらない人はそういないと思うので、このガイドラインが推奨するようにエゼチミブが必要になる人は多くないでしょう。家族性高コレステロール血症ではエゼチミブやPCSK9阻害薬の出番はあるかもしれませんが、スタチンの最大量投与が前提で、適応は慎重に考えたいものです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1.安定した動脈硬化性心血管疾患(二次予防)
スタチン使用下でLDLコレステロールの少なくとも50%の減少が達成できていなければ、まずエゼチミブを考慮すべきである。それでも目標を達成できない場合には、エゼチミブにPCSK9阻害薬を変更、または追加することは妥当である。動脈硬化性心血管疾患で、かつハイリスクの患者は、上記の治療でLDLコレステロールを少なくとも50%減少させ、70mg/dl未満にすべきである。

2.LDLコレステロールが190mg/dl以上(一次予防)
LDLコレステロールを50%減少(LDLコレステロール100mg/dl未満)させることが推奨され、付加的なLDLコレステロール低下には、まずエゼチミブまたはPCSK9阻害薬を考慮する。脂質の専門医と栄養士に紹介することが望ましく、特に家族性高コレステロール血症のホモ接合体またはベースラインのLDLコレステロールが250mg/dl以上の場合で推奨される。

3.40−75歳の糖尿病(一次予防)
LDLコレステロールの50%の減少(LDLコレステロール100mg/dl未満、またはnonHDLコレステロール130mg/dl未満)が推奨される。この患者群では、PCSK9阻害薬の使用は推奨されず、エゼチミブが第一選択である。中性脂肪が300mg/dl未満のエゼチミブ禁忌症例ではレジンが推奨される。

4.40−75歳で、10年間のCVDイベントが7.5%以下(一次予防、糖尿病なし)
LDLコレステロール100mg/dl以上、あるいはハイリスク症例で、中等度の強度のスタチンで治療しているなら、スタチンの強度を上げることが推奨される。目標が達成できないなら、エゼチミブを考慮する。PCSK9阻害薬は推奨されない。

左冠動脈主幹部の急性心筋梗塞 心電図診断

Prediction of acute left main coronary artery obstruction by 12-lead electrocardiography. ST segment elevation in lead aVR with less ST segment elevation in lead V(1).
J Am Coll Cardiol. 2001 Nov 1;38(5):1348-54.

《要約》
目的
左冠動脈主幹部閉塞の心電図的特徴を特定すること。

背景
左冠動脈主幹部閉塞は重大な血行動態の悪化を招き、予後不良である。そのため、左冠動脈主幹部閉塞の予測は適切な治療戦略を選択する上で重要である。

方法
左冠動脈主幹部の急性閉塞の連続16例(LMCA群)、左冠動脈前下行枝の急性閉塞46例(LAD群)、右冠動脈の急性閉塞24例(RCA群)の入院時心電図を調べた。

結果
aVR誘導でのST上昇(>0.05mV)は、LAD群やRCA群よりLMCA群で有意に多かった(LMCA88%、LAD43%、RCA8%)。aVR誘導でのST上昇は、LAD群よりLMCA群で有意に高かった(LMCA群0.16±0.13mV、LAD群0.04±0.10mV)。V1誘導でのST上昇は、LAD群よりLMCA群で有意に低かった(LMCA群0.00±0.21mV、LAD群0.14±0.11mV)。aVR誘導のST上昇がV1誘導のST上昇より大きい、もしくは同等の場合、感度81%、特異度80%でLMCA群と診断できる。aVR誘導と家壁誘導のST変化でLMCA群とRCA群を区別できる。左冠動脈主幹部の急性閉塞では、aVR誘導でのST上昇が高い群では、ST上昇が高くない群と比較し、死亡率が高い。

結論
V1誘導のST上昇が小さく、aVR誘導でST上昇していることは、左冠動脈主幹部閉塞である重要な予測因子である。左冠動脈主幹部の急性閉塞では、aVR誘導のST上昇は臨床的なアウトカムの予測因子でもある。

AがLMCA、BがLAD、CがRCA
ecg
aVRでST上昇があって、V1では上がっていない。

figure
V1だけではわからないので、aVRのST上昇と合わせて判断する。

プラスグレルとチカグレロルの直接比較 PRAGUE-18試験

Prasugrel Versus Ticagrelor in Patients With Acute Myocardial Infarction Treated With Primary Percutaneous Coronary InterventionMulticenter Randomized PRAGUE-18 Study
Circulation. 2016;134:1603-1612

《要約》
背景
プラスグレルとチカグレロルはクロピドグレルに対し高い有効性が示されているが、プラスグレルとチカグレロルの安全性と有効性の直接比較は行われていない。

方法
急性心筋梗塞(AMI)で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が施行された患者を対象に、プラスグレルとチカグレロルの安全性と有効性を比較した。14施設で、AMI1230例をPCI開始前にプラスグレルとチカグレロルに無作為に割り付けた。4%弱が心原性ショック、5.2%で人工呼吸器管理を行った。主要評価項目は、7日間での死亡、再梗塞、緊急標的血管血行再建、脳梗塞、輸血や入院期間の延長を要する出血の複合エンドポイントである。全フォローアップ期間は1年で、2017年に終了する。

結果
試験は、早期中止となった。プラスグレルとチカグレロルで、主要評価項目に有意差はなかった(4.0%vs4.1%、OR:0.98、95%CI:0.55−1.73)。主要評価項目の中で、どれも有意差はなかった。30日以内の副次評価項目(心血管死、非致死性心筋梗塞、脳梗塞)でも、プラスグレルとチカグレロルに有意差はなかった(2.7%vs2.5%、OR:1.06、95%CI:0.53-2.15)。

結論
こののプラスグレルとチカグレロルの比較試験は、PCIを施行したAMI急性期での梗塞イベントと出血イベントの予防において、一方の抗血小板薬はもう一方より、より有効もしくはより安全であるという仮説を支持しなかった。主要なアウトカムの発生率は似通っていたが、信頼区間は広かった。

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心筋梗塞(STEMI、NSTEMI)
I/C:アスピリンに加え、プラスグレルまたはチカグレロルの内服
O:7日以内の全死亡、心筋梗塞の再発、脳梗塞、輸血や入院延長を要するような重大な出血、緊急標的血管再血行再建

プラスグレルは60mgでローディングして、維持容量は10mgを1日1回。76歳以上または60kg未満の場合は維持容量を5mgに減量する。

チカグレロルは180mgでローディングして、維持容量は90mgを1日2回。

inclusion criteria:緊急CAGの適応である症例

exclusion criteria:脳梗塞の既往、6ヶ月以内の重大な出血、長期の抗凝固療法を必要とする症例、クロピドグレル300mg以上の内服をしている症例、その他の抗血小板薬の内服(アスピリンと低容量クロピドグレルを除く)、76歳以上で体重60kg未満、中等度〜高度の肝障害、強力なCYP3A4阻害薬の使用、プラスグレルまたはチカグレロルに対するアレルギー

◇baselineは同等か
characteristics1
平均61歳で、3/4が男性。STEMIが90%で、他は脚ブロックとNSTEMI。他の抗血小板薬の使用率にも差がなく、PCIのアプローチも橈骨動脈が2/3とこれも差がない。

characteristics2
BMSとDESの使用率に差はないが、生体吸収性スキャフォールドはプラスグレル群で多い。PCI後のTIMIグレードは同じ。

◇結果
地域:チェコ共和国
登録期間:2013年4月〜2016年3月
観察期間:30日
無作為化:GraphPad scientific softwareを使用。封筒法。
盲検化:オープンラベル。解析者は盲検化されている。
必要症例数:各群1250例で、1130例が登録された時点で中間解析を行い、試験の早期中止を判断することになっている。
症例数:1230例
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:資金源はチャールズ大学のリサーチプログラムで直接の資金提供はないが、複数のauthorにCOIあり(アストラゼネカ、第一三共)。

result

◇批判的吟味
抗血小板作用による梗塞イベントの抑制と出血イベントの増加はトレードオフである。強力な抗血小板作用により、PCI後の梗塞イベント(ステント血栓症など)を抑えられたとしても、それにより重大な出血が増えてしまえば、そのメリットは相殺されてしまう。なので、梗塞イベントと出血イベントを複合して主要評価項目に設定することは妥当だし、いずれのイベントも急性期に多いので観察期間が1週間というのも妥当だろう。

ただ、この試験はfutilityで早期中止になっている。イベント数が少ないにもかかわらず。もともと2500例で予定されていて、3年間で半分以下しか集まっていないので、しょうがないのかもしれないけど、これだとどちらがいいとも言えない。

◇感想
プラスグレルとチカグレロルの有効性と安全性を直接比較したPRAGUE-18試験。主要評価項目(全死亡、心筋梗塞の再発、脳梗塞、輸血や入院延長を要するような重大な出血、緊急標的血管再血行再建)はどちらも4%程度だったが、イベント数が少なく、”両群とも同等に安全で有効”とは言えない結果だった。

ちなみにチカグレロルはPCI後の抗血小板薬として、2016年9月に日本でも承認されたが、PHILO試験でクロピドグレルと比較し出血を増やしたため、「アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板剤の投与が困難な場合に限る」という文言が付いてしまっているようだ。

院外心停止でVT/VFなら、CAG/PCIを行った方が生命予後が良くなるかもしれない

Trends and Outcomes of Coronary Angiography and Percutaneous Coronary Intervention After Out-of-Hospital Cardiac Arrest Associated With Ventricular Fibrillation or Pulseless Ventricular Tachycardia
JAMA Cardiol. 2016;1(8):890-899.

《要約》
重要性
The 2015 cardiopulmonary resuscitation and emergency cardiovascular care guidelinesでは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)と非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)の院外心停止に対し冠動脈造影検査(CAG)を行うことを推奨している。

目的
初期波形が心室頻拍(VT)/心室細動(VF)である院外心停止において、CAGと経皮的冠動脈インターべんション(PCI)の傾向、予測因子、アウトカムを評価すること。

デザイン、セッティング、患者
VT/VFによる院外心停止を対象とした、CAGとPCIに関する観察研究である。2001年1月1日から2012年12月31日までのNationwide Inpatient Sample databeseからデータを抽出した。CAGとPCIを試行することに関連した因子を評価するため多変量解析を行った。データは2015年12月12日から2016年1月5日に解析された。

アウトカム
CAG、PCI、退院時生存率の傾向

結果
407974例がVT/VFによる院外心停止で入院し、143688例(35.2%)にCAGが行われた。全体の平均年齢は65.7±14.9歳で、37.9%が女性であった。74.1%が白人、13.4%が黒人、6.8%がヒスパニック、5.7%が他の人種であった。2000年よりも2012年では、CAGは増加し(27.2%vs43.9%, OR2.47, 95%CI2.25-2.71)、PCIも増加した(9.5%vs24.1%, OR4.80, 95%CI4.21-5.66)。2000年から2012年まで、STEMIの院外心停止ではCAGとPCIは増加し(それぞれ、53.7%vs87.2%, 29.7%vs77.3%)、NSTEMIでも増加した(それぞれ、19.3%vs33.9%, 3.5%vs11.8%)。生存退院は、全体、STEMI、NSTEMIのいずれでも増加した(46.9%vs60.1%, 59.2%vs74.3%, 43.3%vs56.8%)。

結論
VT/VFの院外心停止におけるCAG、PCI、生存退院は増加傾向にある。しかし、VT/VFの院外心停止、特にNSTEMIでのCAG/PCIの施行率は高くない。前向き研究によって、このリミテーションに生存利益があるかどうか検証する必要がある。

◇この論文のPECOは?
P:18歳以上のVT/VFの院外心停止
O:CAG/PCIの施行率、その傾向、生存退院と関連する因子

心拍再開しなかった症例、年齢・性別・退院時生存の有無などの情報が欠落している症例は除外している。

◇デザイン、対象、観察期間
・地域:米国
・後ろ向き
・hierarchical mixed-effects model
・407974例

characteristics
CAG/PCIをやるかどうかは、重大な併存疾患があるとか、activeな悪性腫瘍があるとかでしょうか。悪性腫瘍の割合はCAG未施行群で多い様。意外と収入は関係ないのか。

◇結果
trend
STEMIだと、PCIをやる症例が2000年から倍増して、3/4の症例でやられている。NSTEMIでも増加傾向ではあるが、11%と高くはない。

survival-to-discharge
STEMIでもNSTEMIでもCAGを行った集団では生存退院の割合は多く、年代が進むにつれ生存率は高くなっている。

adjusted-or
PCIをやった方がいいし、若い方がいい。非白人や保険に入っていないと生存退院のオッズ比は低くなるのはアメリカだからなのか。

◇感想
当院だと、VT/VFの院外心停止では、ROSCしたSTEMIやVT/VFが止まらずにPCPSを入れた症例では、ほぼルーチンでCAG/PCIを行っていて、NSTEMIではwitness/bystanderCPRの有無とか、悪そうな併存疾患がないかとかはチェックしてカテをやるようにしている。

院外心停止の症例はもちろん生存退院ができるかどうかは大切なことだけど、神経学的予後も結構重要で、蘇生後脳症のために意識が戻らず気切して転院というケースは少なくない。搬送された時点で神経学的予後についてもわかればいいけど、明確な指標がないので、神経学的に厳しいと予想できる症例であっても、CAG/PCIをやらざるを得ない。

カテをやってみて意外と亜急性期に意識レベル良くなってカテやってよかったと思うこともあれば、予想通り全然戻らなくてカテやった意味があったのかなと思うこともある(むしろ後者の方が多い)。まあ、この研究では、トレンドとしては院外心停止でVT/VFならCAG/PCIをやる傾向になっているし、やった方が生命予後が良くなりそうです。

ステント留置後の心房細動 NOAC+SAPTでいいのか? PIONEER AF-PCI試験

Prevention of Bleeding in Patients with Atrial Fibrillation Undergoing PCI
N Engl J Med. 2016 Nov 14 [Epub ahead of print]

《要約》
背景
PCIを行いステントを留置した心房細動合併患者では、ワーファリン+DAPTの標準的抗血栓療法によって血栓症と脳梗塞のリスクは減少するが、出血のリスクは増大する。リバーロキサバン+SAPTもしくはリバーロキサバン+DAPTの有効性と安全性は明らかではない。

方法
PCIを行った非弁膜症性心房細動の患者2124例を、以下の3群に1:1:1に無作為に割り付けた。
グループ1)低容量リバーロキサバン(15mg/日)+P2Y12阻害薬を12ヶ月内服
グループ2)超低容量リバーロキサバン(2.5mg/日)+DAPTを1・6・12ヶ月内服
グループ3)ワルファリン+DAPTを1・6・12ヶ月内服。
主要安全性評価項目は臨床的に重大な出血(TIMI出血基準で大出血、小出血、治療を要する出血)である。

結果
臨床的に重大な出血の発症率は、リバーロキサバンを内服している2群で、標準的抗血栓療法より低かった(グループ1:16.8%、グループ2:18.0%、グループ3:26.7%、グループ1vs3のハザード比0.59:95%CI0.47−0.76、グループ2vs3のハザード比0.63;95%CI0.50−0.80)。心血管死、心筋梗塞、脳梗塞の発症率は3群で似通っていた(グループ1:6.5%、グループ2:5.6%、グループ3:6.0%、いずれの群間比較でもP値は有意ではなかった)。

結論
PCIでステントを留置した心房細動患者では、12ヶ月の低容量リバーロキサバン+P2Y12阻害薬の内服、1・6・12ヶ月の超低容量リバーロキサバン+DAPTは、1・6・12ヶ月のワルファリン+DAPTの標準的抗血栓療法と比較し、臨床的に重大な出血が少なかった。3群の有効性に差はなかったが、信頼区間の幅は広い。

◇この論文のPICOはなにか
P:PCIを行なった非弁膜症性心房細動患者
I/C:以下の3群に1:1:1に割り付け
グループ1)低容量リバーロキサバン(15mg/日)+P2Y12阻害薬を12ヶ月内服
グループ2)超低容量リバーロキサバン(2.5mg/日)+DAPTを1・6・12ヶ月内服
グループ3)ワルファリン+DAPTを1・6・12ヶ月内服。
O:TIMI出血基準での臨床的に重大な出血(大出血+小出血+治療を要する出血)

inclusion criteria:18歳以上、発作性・持続性・慢性の非弁膜症性心房細動、1年以内に心房細動がドキュメントされていること、1年以内に心房細動がドキュメントされていなくてもPCIの3ヶ月前から抗凝固療法を行なっている場合

exclusion criteria:脳梗塞/TIAの既往、12ヶ月以内の重大な消化管出血、CCr<30ml/min、原因不明の貧血(Hb<10g/dl)、その他出血リスクがある患者

手順:PCIのシースを抜去72時間後にPT-INR2.5未満であれば無作為化を行う。無作為化の前にDAPT期間と使用するP2Y12阻害薬(クロピドグレル/プラスグレル/チカグレロル)を決めておき、それに応じて層別化を行う。

◇baselineは同等か
characteristics
同等。平均70歳で、1/4が女性。ほとんどが白人。CCrは平均だと80ml/minぐらいで良いが、30−60ml/minも30%弱いる。ACSが半分。P2Y12阻害薬はほぼクロピドグレル。ステントは2/3がDESで、1/3がBMS。ワーファリンのTTRは65.0%とちょっと低め(治療域は2.0−3.0と設定)。CHA2DS2-VAScは平均で3−4ぐらい?

◇結果
地域:北米、南米、欧州など
登録期間:2013年3月〜2015年7月
観察期間:12ヶ月
無作為化:記載なし。
盲検化:オープンラベル。アウトカム評価者は盲検化されている。
必要症例数:記載なし。
症例数:2124例
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Janssen Scientific Affairs社、バイエル社)。リバーロキサバンは無料で提供。

kaplan-meier
DAPT+ワルファリンが有意に出血が多い。
secondary efficacy endpointは心血管死、心筋梗塞、脳梗塞の複合エンドポイントで、有意な差はなかった。

result
治療を要する出血(bleeding requiring medical attention)の定義がいまいちわからないけど、TIMI出血基準の小出血より軽度な出血のことらしい。大出血と小出血は、ワルファリン+DAPTが多い傾向だけど有意差はなくて、有意差がついているのは治療を要する出血という部分だけ。

result2
primary endpointの出血うんぬんより、個人的にはこっちの方が気になる。どれもイベント数が少なくて、有意な差はない。

◇批判的吟味
・primary endpointで有意差がついているが、その内訳をみると治療を要する出血(bleeding requiring medical attention)で有意差がついている。もちろん感覚的には納得できるが、これはソフトなエンドポイントであり、かつオープンラベルなので、バイアスが入るかもしれない。
・なぜ出血をprimary endpointにしているんだろう。梗塞+塞栓イベントをprimary endpointに設定して欲しかった。
・梗塞+塞栓イベントがsecondary outcomeに設定されているが、イベントの発生が少なくて本当に差があるのかどうかはわからない(3群とも同等と解釈してはいけない)。
・可能であれば、3−5年ぐらいの観察期間でsecondary outcomeがどうなっているか見てみたい。
・超低容量リバーロキサバン併用で塞栓イベントは増えないのか?
・日本だと低容量は10mg?、超低容量はどうすれば?
・ロストフォローアップはないが、どの群も20−30%で治療中断あり。

◇感想
PCIを行なった心房細動患者の抗血栓療法について結論はでていないが、WOEST試験の結果を踏まえて、抗血小板薬は単剤にしていることが多い(ACSなら最初は3剤)。それでもステント血栓症は経験してないので、抗血小板薬と抗凝固薬の2剤でいいんだろうなあという感触は持っています。

抗凝固薬はワルファリンじゃなくてNOACでいいのかわからないが、多くの場合にNOACを使っていると思われるし、自分もそうしている。このPIONEER AF-PCI試験は、NOAC+抗血小板薬でもいいのか検証した試験で、結果としてはワルファリン+DAPTよりも出血は有意に少なく、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞は増えなかった。

それにしても、なんで出血がprimary endpointになっているんでしょうか。個人的には、むしろNOAC+抗血小板薬の2剤にすることで、梗塞や塞栓が増えないかが知りたかったので、secondary endpointに設定されている心血管死、心筋梗塞、脳梗塞を、primary endpointでやってほしかった。それだと、Nがでかくなりすぎるので難しいのでしょう。

あと、グループ2でATLAS ACS 2-TIMI51試験のレジメンを持ってきているが、この超低容量で塞栓イベントが増えないのかも気になる。

secondary endpointの心血管死、心筋梗塞、脳梗塞はイベント数が少なく、本当に差があるかどうかがわからない。これはもっと長い期間観察しないとわからないと思うので、3−5年のデータがでてくるといいなあと思いますが、1年以降の抗血栓療法をどのようにするかにもよるでしょう。

まあとりあえず、ルーチンで3剤飲まないといけないということはなさそうなので、今の感じの抗血栓療法(NOAC+P2Y12阻害薬の2剤で、ときどき3剤)でよさそうです。

CABGで内胸動脈を両側使用した方がいいのか:ART試験

Randomized Trial of Bilateral versus Single Internal-Thoracic-Artery Grafts
N Engl J Med. 2016 Nov 14 [Epub ahead of print]

《要約》
背景
冠動脈バイパス術(CABG)で、両側内胸動脈のグラフトは、片側内胸動脈と静脈グラフトを使用するより、長期的なアウトカムを改善させるかもしれない。

方法
7ヶ国28施設で、CABGが予定されている患者を、片側内胸動脈を用いたCABGと両側内胸動脈を用いたCABGに無作為に割り付けた。主要評価項目は10年間の全死亡である。全死亡、心筋梗塞、脳梗塞の複合エンドポイントを副次評価項目とした。中間解析は5年時に行うこととした。

結果
3102例を登録し、1554例を片側内胸動脈を用いたCABGに、1548例を両側内胸動脈を用いたCABGに無作為に割り付けた。5年間のフォローアップで全死亡は両側内胸動脈群で8.7%、片側内胸動脈群で8.4%で(HR:1.04、95%CI:0.81−1.32)、全死亡・心筋梗塞・脳梗塞の複合エンドポイントは12.2%vs12.7%であった(HR:0.96、95%CI:0.79-1.17)。胸骨創部に関連した合併症は、両側内胸動脈群で3.5%、片側内胸動脈群で1.9%(P=0.005)、胸骨再建は両側内胸動脈群で1.9%、片側内胸動脈群で0.6%であった(P=0.002)。

結論
CABGで内胸動脈を片側だけ使用するか、あるいは両側使用するかで、5年間の死亡あるいは心血管複合イベントに有意差はなかった。胸骨の創部に関連した合併症は、片側内胸動脈群より両側内胸動脈群で多かった。10年間のフォローアップは現在進行中である。

◇この論文のPICOはなにか
P:CABGを予定されている患者
I:両側内胸動脈を用いたCABG
C:片側内胸動脈を用いたCABG
O:10年間の全死亡(secondary endpoint:全死亡+心筋梗塞+脳梗塞)

inclusion criteria:多枝病変
exclusion criteria:一枝疾患、弁膜症の手術も行う患者、再手術例

◇baselineは同等か
characteristics
同等。EF、僧帽弁閉鎖不全症(MR)の合併の有無とその程度についての記載はない。

◇結果
地域:7ヶ国
登録期間:2004年6月〜2007年12月
観察期間:5年間
無作為化:施設ごとの層別化を伴う置換ブロック法。コーディネーティングセンターへ電話して無作為化を行う。
盲検化:オープンラベルだがアウトカムへの影響はない
必要症例数:3000例(10年間の全死亡は両側内胸動脈群で20%、片側内胸動脈群で25%、power90%、αlevel0.05で2928例と算出され、たぶんロストフォローアップを加味してか、必要症例数を3000例としている)
症例数:3102例(両側内胸動脈群:1548例、片側内胸動脈群:1554例)
追跡率:両側内胸動脈群:1477/1548例(95.4%)、片側内胸動脈群:1492/1554例(96.0%)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

片側内胸動脈群で内胸動脈を使用したのは96.1%、両側内胸動脈群で両側とも内胸動脈を使用したのは予想より高かったらしく83.6%であった。40.6%でoff-pump CABGが行われたようだが、群間差があるのか記載なし。

5年の時点での内服薬には群間差なし。
アスピリン:88.9%
β遮断薬:76.2%
スタチン:89.0%
ACE阻害薬/ARB:73.4%

result

◇批判的吟味
・両側内胸動脈が使用されたのは83%と予想より低く、差を薄める方向に働くかも。
・off-pump CABGの割合に群間差があるかわからない(脳梗塞への影響)。
・生命予後に影響を与える因子として、baselineのLVEFとMRの有無と程度についての記載がない。
・薬剤(アスピリン、スタチンなど)の使用率に群間差はないが、少し低い。
・一般的に静脈グラフトは動脈グラフトより開存率が劣るが、その使用率がわからない。
・追跡率は高い。

◇感想
CABGで両側の内胸動脈を使用しても片側でも、5年の時点での生存率に差はないという結果。5年で差がつかないなら、70歳を超えるような高齢者では、片側の内胸動脈だけで十分かもしれいない。

静脈グラフトとin-situの内胸動脈の差が出てくるのはこれからと思われるので、10年間のフォローアップで有意な差が出てくるかどうか(Kaplan-Meierをみるとあまり変わらない雰囲気)。もし、10年のスパンで差がでてくるなら、若年でCABGをする人には両側内胸動脈で、ということになるかもしれない。