カテゴリー別アーカイブ: 虚血性心疾患

生体吸収性ポリマーOrsiroステントと耐久性ポリマーXienceステントの比較 BIOFLOW V試験

Ultrathin, bioresorbable polymer sirolimus-eluting stents versus thin, durable polymer everolimus-eluting stents in patients undergoing coronary revascularisation (BIOFLOW V): a randomised trial.
Lancet. 2017 Aug 26. pii: S0140-6736(17)32249-3. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32249-3. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:狭心症、急性冠症候群
I:生体吸収性ポリマーシロリムス溶出性ステント(Orsiro)
C:耐久性ポリマーシロリムス溶出性ステント(Xience)
O:12ヶ月までのTLF(心血管死、標的病変心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建)

exclusion criteria:CTO、2.0mm以上の分枝がある分岐部病変、グラフト、DESの再狭窄

◇試験の概要
デザイン:RCT(非劣性試験)
地域:13ヶ国(アジア、ヨーロッパ、イスラエル、北米)
登録期間:2015年5月8日〜2016年3月31日
観察期間:12ヶ月
必要症例数:1334例(イベント数は両群7.0%、非劣性マージン3.85%)
症例数:4772例(Orsiro群、Xience群)
追跡率:94.5%
解析:ITT解析とPP解析
スポンサー:BIOTRONIC社

◇患者背景

(本文から引用)

ISRの要因になる糖尿病、腎不全、ACSを含め、両群に差はない。

病変は、1/4で石灰化あり。typeB2・Cが3/4を占める。

◇結果

(本文から引用)

primary endpointで有意差あり。

Orsiro群 6% vs Xience群 10%

標的血管心筋梗塞によるものと考えられる。


(本文から引用)

Kaplan-Meier曲線をみると、最初イベントが起き、あとはほぼ平行線。


(本文から引用)

30日以内の心筋梗塞、TLF、TVRがXience群で有意に多い。

心筋梗塞は、ほぼ入院中に起きている。
Orsiro群 34例 4% vs Xience群 30例 7%

心筋梗塞を正常上限の3倍以上のCK上昇と定義すると、
Orsiro群 2% vs Xience群 4%(postーhoc解析)

◇まとめと感想
OrsiroステントはXienceステントと比較し、12ヶ月後のTLF(心血管死、標的病変心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建)を有意に減少した。ただ、その差はPCI直後に生じた差であり、ステントの差というよりは、手技に関連したものと思われる。比較的複雑性の高い病変を対象としていたためかもしれない。

GLP-1受容体作動薬エキセナチド 心筋梗塞・脳梗塞・心血管死の抑制効果なし

Effects of Once-Weekly Exenatide on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes.
N Engl J Med. 2017 Sep 28;377(13):1228-1239

◇この論文のPICOはなにか
P:HbA1c6.5−10.0%の2型糖尿病
I:週1回のエキセナチド2mg皮下注
C:週1回のプラセボ皮下注
O:心血管死、心筋梗塞、脳梗塞

inclusion criteria:3剤までの経口血糖降下薬、2剤までの経口血糖降下薬とインスリンの併用
exclusion criteria:12ヶ月以内に2回以上の重症低血糖の既往、eGFR<30ml/min/1.73m2、甲状腺癌、MEN2

◇試験の概要
デザイン:DB-RCT(非劣性試験)
地域:35ヶ国、687施設
登録期間:2010年6月18日〜2015年9月16日
観察期間:3.2年(IQR2.2−4.4年)
必要症例数:記載なし、1360イベント必要(非劣性マージン1.3)
症例数:14752例(エキセナチド群7356例、プラセボ群7396例)
追跡率:98.8%
解析:ITT解析とPP解析
スポンサー:AstraZenecaの子会社のAmylin Pharmaceuticals

◇患者背景
characteristicsの表がない。

糖尿病罹患期間 12.0年(IQR7.0−18.0年)
HbA1c 8.0%(IQR7.3−8.9%)
心不全あり 16.2%

脂質治療薬とSGLT2阻害薬のみ群間差がある様。

◇結果

(本文から引用)

HbA1cは低下し・・・


(本文から引用)

体重は減少〜横ばいだが・・・


(本文から引用)

心血管イベントに対しては効果なし(非劣性)。

全死亡は減っている(ハザード比:0.86、95%CI:0.77−0.97)

primary endpointに差はないが、一応subgroupも確認。年齢のみでP for interaction<0.1。罹患期間・二次予防・CKDステージなどでは差がない。

◇感想
GLP-1受容体作動薬は、GLP-1を介した血管内皮機能改善効果、抗動脈硬化作用があるとされている。

残念ながら、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化疾患や、心血管死を抑制するまでの作用はないらしい。

左冠動脈主幹部病変 3−5年のフォローアップではPCIとCABGでアウトカムに差はない

Percutaneous Coronary Intervention vs Coronary Artery Bypass Grafting in Patients With Left Main Coronary Artery Stenosis: A Systematic Review and Meta-analysis.
JAMA Cardiol. 2017 Sep 13. doi: 10.1001/jamacardio.2017.2895. [Epub ahead of print]

◇論文のPICOはなにか
P:左冠動脈主幹部病変
I:DESを用いたPCI
C:CABG
O:全死亡、心筋梗塞、脳梗塞

<研究の選択>
・LMT病変に対し、DESを使用したPCIとCABGを比較した試験で、3年以上フォローアップしている研究を組み入れた。
・文献データベース:PubMed、Scopus、EMBASE、Web of Knowledge、Science Direct database
・期間:2001年11月18日〜2017年1月1月
・研究の種類:RCT
・Fixed-effect and random-effects models

◇結果
SYNTAX試験、PRECOMBAT試験、EXCEL試験、NOBLE試験の4試験を統合。いずれも非劣性試験で、EXCEL試験のサンプルサイズが一番大きい。

フォローアップ期間はEXCEL試験のみ3年で、他は5年。


(本文から引用)

3年まではPCIでイベントが少ないが、3年でクロスし、その後はCABGでイベントが少ないものの有意差はない。random effects modelでは、ハザード比:1.06(95%CI:0.85-1.32)。


(本文から引用)

primary endpointのフォレストプロット。NOBLE試験のみCABG betterで、統合すると有意差はない。


(本文から引用)

それぞれの試験を除外した場合の感度分析も行われている。結果の方向性が異なったNOBLE試験を除いたとしても、有意差はない。


(本文から引用)

DESの世代、Syntax scoreで見ても、有意差なし。


(本文から引用)

強いて言えば、心筋梗塞はCABGで良い傾向。
脳梗塞には差がない。

PCI群で再血行再建のハザード比は、第1世代DESで1.8、第2世代DESで1.7だった。

◇まとめと感想
LMT病変の安定冠動脈疾患において、3−5年のフォローアップでは、PCIとCABGによるアウトカム(全死亡、心筋梗塞、脳梗塞)の差はなかった。再血行再建は、第2世代DESを使用したとしても、CABGと比べ有意に多かった(ハザード比1.7)。

より長期のフォローアップだと、このカプランマイヤー曲線が開いていくのか、糖尿病合併だと結果は違ってくるのか、など気になります。


(2014 ESC/EACTS guidelines on myocardial revascularizationより引用)

基本的には、ESCのガイドラインの推奨通り。

糖尿病、高血圧、高脂血症がなくても、肥満自体が心血管疾患のリスクになる

Metabolically Healthy Obese and Incident Cardiovascular Disease Events Among 3.5 Million Men and Women
J Am Coll Cardiol. 2017;70(12):1429-37

◇この論文のPECOは?
P:心疾患を持たない18歳以上の男女
E/C:BMIと代謝疾患(糖尿病、高血圧、高脂血症)
O:心血管疾患、脳血管疾患、心不全、末梢血管疾患

<デザイン、セッティング>
・前向きコホート研究
・イギリス
・The Health Improvement Network(THIN)のデータベース(プライマリケアの記録)を使用
・3,495,777例
・観察期間:平均5.4年
・COX比例ハザードモデル

<結果>
underweight:<18.5kg/m2
normal weight:18.5-25.0kg/m2
overweight:25.0-30.0kg/m2
obese:≧30kg/m2


(本文から引用)

normal weightと比較すると、obese+no metabolic abnormalityのハザード比は、
心血管疾患 1.49(95%CI:1.45−1.54)
脳血管疾患 1.07(1.04−1.11)
心不全 1.96(95%CI:1.86−2.06)

◇まとめと感想
心血管疾患と心不全は、脳血管疾患や末梢血管疾患と比べて、肥満の程度とハザード比がわりときれいな正比例になる。

日本人では体重の分類やハザード比はそのまま適応できないかもしれないが、高血圧・糖尿病・高脂血症がなくても肥満自体が動脈硬化性疾患・死亡のリスクになるという考えは、日本人にも当てはまると考えていいだろう。

果実・野菜・豆の摂取量と、心血管死・全死亡の関係

Fruit, vegetable, and legume intake, and cardiovascular disease and deaths in 18 countries (PURE): a prospective cohort study.
Lancet. 2017 Aug 28. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32253-5. [Epub ahead of print]

◇この論文のPECOは?
P:35-70歳
E/C:果物、野菜、豆の摂取量
O:全死亡、非心血管死、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、心不全

食事内容は食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いて調査。その他、社会経済的要因(教育、収入、雇用)、ライフスタイル(喫煙、飲酒、身体活動)、既往歴、内服薬、身長、体重、腹囲、血圧なども調査。

調査は3,6,9年後に繰り返し行う。

1servingは、果物と野菜なら125g、豆なら150g。

<デザイン、セッティング>
・前向き観察研究
・135335例 
・5大陸18ヶ国(高所得国:カナダ・スウェーデン・アメリカ、中所得国:アルゼンチン・ブラジル・チリ・中国・カンボジア・イラン・マレーシア・パレスチナ・ポーランド・南アフリカ・トルコ、低所得国:バングラディシュ・インド・パキスタン・ジンバブエ)
・登録期間:2003年1月1日〜2013年5月31日
・観察期間:7.4年(中央値、IQR5.3-9.3年)
・multivariable Cox frailty model

<結果>
平均年齢50歳ぐらいで、男性40%。

Aは年齢、性別で調整。
Bは、年齢、性別、摂取カロリー、喫煙、糖尿病、都市/地方、身体活動、教育レベル、鶏の胸肉・子牛・豚などの肉、牛肉、パン、穀物で調整。

まず、フルーツ。

(本文から引用)

1日125g以上のフルーツの摂取で、非心血管死・全死亡が低下。

続いて、豆。

(本文から引用)

豆も、非心血管死・全死亡の低下と関連あり。
150g/週で、いい感じ。

野菜は。

(本文から引用)

年齢・性別で調整すると、125g/日以上で摂取量に応じて心血管死も非心血管死も減っている。ただ、いろいろ調整すると摂取量に応じたリスクの減少にはつながっていない。

◇まとめと感想
果物・野菜・豆の摂取が多いと非心血管死・全死亡が低下する可能性があり、動脈硬化性疾患も抑えられるかもしれないという結果。

果物125gは、
みかん・・・1個
りんご・・・半分ぐらい
バナナ・・・1本
ぶどう(巨峰)・・・8粒ぐらい

豆125gは、
納豆・・・2−3パック

なので、摂るのはそんにむずかしくないかも。

疫学研究はいろいろ調整できない交絡があるだろうし、そもそも交絡因子としてなにを含めるべきかよくわかりませんが、まあ、果物・野菜・豆は積極的にとりましょう、ということで。

総エネルギー量に占める炭水化物の割合と全死亡の増加

Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study.
Lancet. 2017 Aug 28. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32252-3. [Epub ahead of print]

◇この論文のPECOは?
P:35−70歳
E/C:炭水化物、脂肪、蛋白質の摂取割合
O:死亡と心血管イベント(心血管疾患死、心筋梗塞、脳梗塞、心不全)

食事内容は食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いて調査。その他、社会経済的要因(教育、収入、雇用)、ライフスタイル(喫煙、飲酒、身体活動)、既往歴、内服薬、身長、体重、腹囲、血圧なども調査。

調査は3,6,9年後に繰り返し行う。

<デザイン、セッティング>
・前向き観察研究
・135335例 
・5大陸18ヶ国(高所得国:カナダ・スウェーデン・アメリカ、中所得国:アルゼンチン・ブラジル・チリ・中国・カンボジア・イラン・マレーシア・パレスチナ・ポーランド・南アフリカ・トルコ、低所得国:バングラディシュ・インド・パキスタン・ジンバブエ)
・登録期間:2003年1月1日〜2013年5月31日
・観察期間:7.4年(中央値、IQR5.3-9.3年)
・multivariable Cox frailty model

<結果>
平均年齢50歳ぐらいで、男性40%。


(本文から引用)

炭水化物の摂取割合が大きいと、死亡率も高くなる。それは、非心血管死の増加であり、心血管疾患・心筋梗塞・脳梗塞との関連は見出せず、心血管疾患死も増加しない。


(本文から引用)

飽和脂肪酸の摂取量の増加は、脳梗塞の減少と関連があるが、心筋梗塞との関連はない。一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸の摂取量も、心筋梗塞・脳梗塞・心血管疾患死との関連なし。

◇まとめと感想
飽和脂肪酸はLDLコレステロールを増加させ、それを多価あるいは一価不飽和脂肪酸に置き換えることはLDLコレステロールを減少させる。飽和脂肪酸を含む脂肪の摂取を抑え、多価あるいは一価不飽和脂肪酸へ置き換えることで心血管疾患と全死亡の減少が報告されている。

そのため、AHAのガイドラインでは乳製品や肉から摂取する飽和脂肪酸を、植物油(主にリノール酸)から摂取する多価不飽和脂肪酸へ置き換えることを推奨している(1)。

この疫学研究では、総エネルギーのうち炭水化物の割合が増えると全死亡が増加したが、脂肪、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸と心血管疾患や死亡との関連は明らかではなかった。

(1)Circulation. 2017;136:e1-e23

DAPT 血小板機能測定とクロピドグレル/プラスグレルの選択

VerifyNowを用いて血小板活性を評価し、それに応じてクロピドグレルあるいはプラスグレルの容量調整・薬剤変更を行う方法は、臨床的アウトカムに差がないことが以前報告されている(1−2)。

これは、Roche Diagnostics社の測定器を用いて血小板機能検査を行い、その結果に応じてクロピドグレルかプラスグレルのいずれかのDAPTへの割り付けを行い、臨床的アウトカムについて検証したRCTである。

Guided de-escalation of antiplatelet treatment in patients with acute coronary syndrome undergoing percutaneous coronary intervention (TROPICAL-ACS): a randomised, open-label, multicentre trial.
Lancet. 2017 Aug 25. pii: S0140-6736(17)32155-4.[Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:バイオマーカ陽性のACS
I:クロピドグレルまたはプラスグレルのDAPTへ割り付けを、血小板活性を評価し行う
C:プラスグレルのDAPT
O:12ヶ月後のnet clinical benefit(心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、BARCgrade2以上の出血)

procedure:

(本文から引用)

対照群は12ヶ月のプラスグレルを用いたDAPT。介入群はprimay PCIを施行し退院7日後までプラスグレルのDAPTを継続。その後、プラスグレルからクロピドグレルへ切り替え7日後に血小板活性を評価。血小板活性が高くなければクロピグレルを継続し、血小板活性が高い場合にはプラスグレルへ戻す。

血小板機能はRoche Diagnostics社の測定器を使用。

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験)
地域:オーストリア、ドイツ、ハンガリー、ポーランドの33施設
登録期間:2013年12月2日〜2016年5月20日
観察期間:12ヶ月
必要症例数:secondary endpointに対し2600例(primary endpointだけなら2344例)
症例数:2610例(介入群1304例、対照群1306例)
解析:PP解析
スポンサー:企業の関与あり(Roche Diagnostics、イーライリリー、第一三共など4社)

◇患者背景

(本文から引用)

平均年齢60歳と若め、男性20%、糖尿病20%、腎不全3%。


(本文から引用)

1枝病変と多枝が半分ずつ、LAD lesionが多い、lesion classificationは様々、DESが80%。

◇結果

(本文から引用)

◇まとめと感想
理屈では、CYP2C19のPMであれば、血栓症予防にはクロピドグレルよりもプラスグレルの方がいい。PMでなければ、プラスグレルよりクロピドグレルの方が出血リスクは抑えられるだろう。クロピドグレルの効果が表れているか検査により判断できれば、効果を示していないPMに対してはプラスグレルを継続することは理にかなっている。

この試験デザインなら、出血が抑えられることが期待できたが、有意なイベントの低下は認めなかった(塞栓症と出血の複合エンドポイントで非劣性が証明されただけ)。

しかし、このTROPICAL-ACS試験で使用されたRoche Diagnostics社の測定器でも、またARCTIC試験やTRRIGER-PCI試験で用いられたVerifyNowでもそうだけど、血小板機能を評価して、それに応じて薬剤を変更したり調整したりする方法は、臨床的アウトカムを改善しないみたい。

理屈としては正しいけど、血小板機能をみるその方法がまずいのか。体内での血小板機能と検査での血小板機能の乖離みたいなものがあるのかも。

CYP2C19のPMの頻度、日本人では約20%、白人では3%程度と言われており、この試験では白人が99%でありPMの絶対数が少なかったから、結果に差が出なかった可能性はある。日本人なら、結果が違っていたかもしれない。

(1)J Am Coll Cardiol. 2012;59(24):2159-64.
(2)N Engl J Med. 2012;367(22):2100-9.

院外心停止で難治性VFでは、冠動脈多枝病変・血栓性病変・CTOが多い

Coronary Artery Disease in Patients With Out-of-Hospital Refractory Ventricular Fibrillation Cardiac Arrest.
J Am Coll Cardiol. 2017 Aug 29;70(9):1109-1117.

◇概要
院外心停止、初期波形がVT/VFで、3回のDCとアミオダロン300mgでもROSCしない症例の、冠動脈疾患の有病率や病変の複雑性を調べた研究。

<ミネソタ大学難治性VF/VTプロトコール>
ACLSに準じたCPRを行う。カテラボ到着後、ETCO2<10%、Pa02<50mmHg、SpO2<85%、血清乳酸値>18mmol/Lのいずれかを満たす場合には、CPRを中止。いずれも満たさない場合で、ROSCすれば速やかにCAG/PCIを行い、ROSCしない場合は速やかにVA-ECMOを導入し、CAG/PCIを行う。90分間、電気的な自己心拍を維持できない場合は、死亡と判断する。

・前向きコホート研究
・62例(カテラボまでたどり着き、組み入れ基準を満たす症例)
  7/62例:死亡
  55/62例:カテラボ到着 うち5例がROSC 残り50例はVA-ECMO導入
  46/55例:PCI施行


(本文から引用)

84%が冠動脈疾患
多枝病変が多く、Syntax Score29と高め。
1/3がCTO
血栓性病変も多くを占める。


(本文から引用)

アメリカだから、救急要請からカテラボ到着まで、結構時間がかかっている。
生存例では、要請からEMS到着までの時間が短く、カテラボ到着までの時間も短め。
ETCO2が高く、乳酸が低く、循環不全の影響が少なめ。

脳機能カテゴリ(CPC)1と2の割合は42%で、historical comparison groupでは15.3%で、神経学転帰もよい(オッズ比4.0、95%CI:2.08−7.7)

ちなみに、CPC1は神経障害が軽く、日常生活・就労に問題がない状態。CPC2は神経障害があり、麻痺・失調・記銘力障害などがあるが日常生活は自立できており、保護された状態でパートタイムの仕事ならできるという状態。

◇まとめと感想
初期波形がVT/VFの院外心停止でROSCしない難治性の症例では、冠動脈疾患を有する可能性が高く、血栓性病変・多枝病変も多い。ROSCしない症例に対しては、迅速にVA-ECMOを導入することで、生存率・神経学的予後の改善するかもしれない。

心房細動+ステント留置後の抗血栓療法 ダビガトランなら150mg BIDの方がいい

Dual Antithrombotic Therapy with Dabigatran after PCI in Atrial Fibrillation.
N Engl J Med. 2017 Aug 27. doi: 10.1056/NEJMoa1708454. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:非弁膜症性心房細動+冠動脈疾患(ステント留置後)
I:P2Y12阻害薬に、ダビガトラン110mg BID、または150mg BIDの追加
C:DAPT+ワーファリン
O:大出血、または臨床的に問題となる出血

secondary endpoint:心筋梗塞、脳梗塞、全身性塞栓症、予定していない血行再建

手順:非弁膜症性心房細動(発作性・持続性・慢性でもどれでもいいが二次性のものはダメ)で、ACSまたは安定狭心症でPCIが施行された患者が対象。ステントはDESでもBMSでもどちらを使用してもよく、PCI成功後120時間以内に登録し、3群に割り付ける。なお、米国以外の国の高齢者(≧70歳)は3剤併用群もしくは110mgBIDの2群に割り付け。VKA+DAPTの3剤併用期間は、BMSなら1ヶ月、DESなら3ヶ月で、アスピリンを中止する。P2Y12阻害薬は、いずれの群もクロピドグレルかチカグレロルを使用。

exclusion criteria:機械弁、生体弁、eGFR<30ml/minなど

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル、非劣性試験)
地域:41ヶ国 414施設
登録期間:2014年7月21日〜2016年10月31日
観察期間:14ヶ月(中央値)
必要症例数:最初は8520例だったが、途中で2500例に変更(3剤併用群のイベント発生14%、非劣性マージン1.38)。血栓塞栓イベント(心筋梗塞、脳梗塞、全身性塞栓症、予定していない血行再建)は当初primary endpointに含められていたが、パワー不足のためsecondary endpointへ変更。
症例数:2725例
追跡率:99.8%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(ベーリンガーインゲルハイム社)。同社はデータ解析、論文の執筆にも関与している。

◇患者背景

(本文から引用)

両群間にちょっと差がありそうだが、統計学的な差については記載がない。

平均年齢70歳
CHA2DS2-VASc:3.8、HAS-BLED:2.8
ACS50%で、82%にDES留置
P2Y12阻害薬はクロピドグレルが88%
3剤併用群のワーファリンのTTRは64%

◇結果

(本文から引用)

出血はダビガトラン110mgBIDでも150mgBIDでも、有意に少ない。


(本文から引用)

しかし、心筋梗塞・ステント血栓症についてはダビガトランが良いとは決して言えない。110mgBIDでは統計学的な有意差はないが、多い傾向にある。

◇まとめと感想
ステント留置直後の非弁膜症性心房細動において、VKA+DAPTの3剤併用療法に比べ、ダビガトランとP2Y12阻害薬の2剤併用の方が、出血が少なかった。PIONEERーAF PCI試験でも同様だが、出血という点に関して言えば、VKA+DAPTよりもDOAC+P2Y12阻害薬が良い。

ただ、心筋梗塞・ステント血栓症については、ダビガトラン110mgBID+P2Y12阻害薬で多い傾向にある。心筋梗塞に関しては、もとのサンプルサイズでやっていれば、統計学的な有意差もついたかもしれない。ステント血栓症は数が少ないのでなんとも言えないが、この結果で110mgを使おうとは思わない。

その点、150mgBIDだとVKA+DAPTと比較した場合、血栓症・塞栓症に大きな差はないため、150mgBIDを使うという選択肢はありかもしれない。比較的若く腎機能がよいということが条件にはなるが。

冠動脈疾患標準治療への超低容量リバロキサバン追加 COMPASS試験

Rivaroxaban with or without Aspirin in Stable Cardiovascular Disease.
N Engl J Med. 2017 Aug 27. doi: 10.1056/NEJMoa1709118. [Epub ahead of print]

◇この論文のPICOはなにか
P:冠動脈疾患、末梢血管疾患
I/C:リバロキサバン2.5mg×2+アスピリン100mg、リバロキサバン5mg×2、アスピリン100mgの3群比較
O:心血管死、脳梗塞、心筋梗塞

死因が明確である非心血管死以外は、心血管死としてカウントする。
虚血性疾患死(CHD death)=心筋梗塞による死亡、心臓突然死、心血管治療による死亡

安全性主要評価項目は、致死的出血、重要臓器不全の症候性出血、再手術を要する外科創部出血、入院を要する出血

inclusion criteria:65歳未満なら糖尿病や喫煙などの他のリスクが2つ以上あることなど
exclusion criteria:高い出血リスク、DAPT、他の抗血栓薬の使用など

◇試験の概要
デザイン:RCT(二重盲検、ダブルダミー、3×2 factrial design)
地域:33ヶ国 602施設
登録期間:2013年3月〜2016年5月
観察期間:23ヶ月
必要症例数:27400例(A単独群でpirimary endpointが3.3%/人年、Rの2群で20%の相対リスク減少)
症例数:27395例
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(バイエル社)

◇患者背景

(本文から引用)

平均年齢68歳、OMI60%、冠動脈疾患90%、アジア人15%、βblockerやACE阻害薬/ARBは70%、脂質低下薬は90%

◇結果

(本文から引用)


(本文から引用)

A単独に比べR+Aで、primary endpointが有意に減少。
絶対リスク減少1.3%、相対リスク減少24%

心筋梗塞は減っていないので、心血管死の減少は脳梗塞死によるものかもしれないが、虚血性疾患死は有意に減少しているのは???

R単独では、primary endpointで差はつかない。虚血性脳卒中は減るが、それ以上に出血性脳卒中は増加する。

R+Aでは、やはり大出血は増加し、消化管と皮膚からの出血が増加している。

◇感想
冠動脈疾患を対象として、リバロキサバン2.5mg×2+アスピリン100mg、リバロキサバン5mg×2、アスピリン100mgの3群で、心血管死・脳梗塞・心筋梗塞をアウトカムに比較した試験。

R単独ではA単独より、心血管死・脳梗塞・心筋梗塞の複合エンドポイントは変わらず、大出血は有意に増加させた。なので、アスピリンの代わりにあえてリバロキサバン5mgを使用する理由はない。

ただ、アスピリンにリバロキサバン2.5mg追加すると、アウトカムは改善する(主に心血管死と脳梗塞の減少)。

欧米人に比べると虚血リスクが低い日本人でも有効性があるのか(サブグループ解析をみると有効っぽい)、出血がさらに増えるのではないか、容量は2.5mgで良いのかなど疑問はある。日本人も1500例ほど登録されているようなので、これからデータが出てくるだろう。非弁膜症性心房細動でもDOACがunder-doseで処方されることが少なくない日本では、アスピリン+リバロキサバンという処方は、たとえ有効性が確認されたとしても流行らないだろう。メーカーが、超低容量というなんか出血が少なそうな”響き”、”イメージ”を上手く使って売り込めば、どうかわからないが。

若くて、血圧コントロールが良くて出血リスクが低い人なら、リバロキサバン2.5mgを加えるのはありか。