カテゴリー別アーカイブ: 虚血性心疾患

REAL-CAD試験 日本人での高容量スタチンの効果

High-Dose Versus Low-Dose Pitavastatin in Japanese Patients With Stable Coronary Artery Disease (REAL-CAD)
Circulation. 2018 May 8;137(19):1997-2009.

【リサーチクエスチョン】
日本人(アジア人)でも冠動脈疾患へのスタチン投与は、more is betterなのか?

【PICO】
P:安定冠動脈疾患
I:ピタバスタチン4mg
C:ピタバスタチン1mg
O:心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+不安定狭心症

心血管死=心臓死(突然死+心臓手技関連死)+心臓に由来しない血管死

inclusion criteria:OMIの既往、血行再建から3ヶ月以上、冠動脈造影で75%以上の狭窄
exclusion criteria:スタチン非使用下でLDL100mg/dl以下

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:日本
登録期間:2010年1月31日〜2013年3月31日
観察期間:3.9年(中央値)
症例数:13054例
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(興和創薬)

【患者背景】
ざっくりと。
平均年齢68歳、男性82%、BMI24、EF60%、OMI51%、血行再建歴90%、うっ血性心不全5%、心房細動6%、LDL88mg/dl。

【結果】
3年以上フォローアップできたのは、両群とも89%程度。

高容量群 vs 低容量群
LDLコレステロール値(3年)
76mg/dl vs 91mg/dl

▶︎心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+不安定狭心症(primary endpoint)
累積4年発生率
4.3% vs 5.4% HR:0.81(95%CI:0.69−0.95)

▶︎心血管死
1.4% vs 1.8% HR:0.78(95%CI:0.59−1.04)

▶︎心筋梗塞
0.6% vs 1.2% HR:0.57(95%CI:0.38−0.83)

▶︎脳梗塞
1.3% vs 1.4% HR:1.03(95%CI:0.76-1.40)

▶︎不安定狭心症
1.2% vs 1.4% HR:0.86(95%CI:0.63-1.17)

【まとめと感想】
日本人でもスタチンを高容量にすれば、心血管イベントは減るという結果でした。心血管イベント(primary endpoint)のNNT=91、心筋梗塞のNNT=167なので、費用対効果としてはちょっと微妙だと思います。より効果の高い集団がわかったらいいですが、年齢・性別・DM・LDL・高感度CRP・HDL・中性脂肪・BMIのどのサブグループでも、有意な差はありませんでした。

薬価はピタバスタチン1mg:19円、4mg:72円らしいので、心筋梗塞を1件減らすのに約1290万円かかってしまいます。なので、個人的にはこの結果をみても、冠動脈疾患全員にスタチンを高容量で投与しようとは思いません。心筋梗塞を繰り返しているような人とか、家族性高コレステロール血症は別ですが。

とは言え、OMIが半分を占める集団で心筋梗塞が4年間で1%程度というのは、やっぱり日本人は心筋梗塞が少ないなあと改めて思いました。

DOAC・ワルファリンを開始したAF患者の心筋梗塞発症率と死亡率

Risk of Myocardial Infarction in Anticoagulated Patients With Atrial Fibrillation
J Am Coll Cardiol. 2018 Jul 3;72(1):17-26.

RE-LY試験では、ダビガトランで心筋梗塞の増加を認めた。ARISTOTLE試験やROCKET-AF試験では、アピキサンバンやリバロキサバンに心筋梗塞の増加は認めなかった。これらの試験では、高齢者・フレイルは除かれており、また心筋梗塞をアウトカムにしたDOAC間の比較データはない。

【PECO】
P:AFと診断され初めて抗凝固療薬を内服する患者
E:DOAC(アピキサバン、ダビガトラン、リバロキサバン)
C:VKA(ワルファリン)
O:抗凝固療法開始後1年以内の心筋梗塞による入院
secondary outcome:抗凝固療法開始後1年以内の心筋梗塞による入院+全死亡

exclusion criteria:弁膜症性心房細動、DOACが禁忌となる腎障害

【デザイン、セッティング】
・the Civil Registration System(デンマーク)
・2013年1月1日〜2016年6月30日
・後向き
・31739例(ワルファリン8913例、アピキサバン8611例、ダビガトラン7377例、リバロキサバン6838例)
 うち1年間の脱落が8905例(28%)
・観察期間:1年
・COX比例ハザードモデル

【結果】
1年間の絶対リスク(95%CI)とワルファリンとのリスク差

心筋梗塞(primary endpoint)
ワルファリン 1.56%(1.33-1.80%) 
アピキサバン 1.16%(0.94-1.39%)リスク差-0.40% (−0.72to-0.07%)
ダビガトラン 1.20%(0.95-1.47%)リスク差−0.36%(−0.71to-0.03%)
リバロキサバン 1.07%(0.83-1.32%)リスク差-0.49%(−0.82to−0.16%)

DOAC間では、リスク差に有意差はない。

心筋梗塞+全死亡(secondary endpoint)
ワルファリン 12.2%(11.5-12.9%) 
アピキサバン 10.9%(10.3-11.5%)リスク差-0.40% (−0.72to-0.07%)
ダビガトラン 9.3%(8.6-10.0%)リスク差-0.36% (−0.71to-0.03%)
リバロキサバン 12.0%(11.3-12.7%)リスク差-0.49% (−0.82to-0.16%)

【まとめと感想】
DOACはワルファリンと比べ、低い心筋梗塞発症率と関連あり。心筋梗塞発症率は1.1%-1.2%程度で、ワルファリンとの差も有意とはいえ、年間0.4%程度。

システマティックレビューでは、ダビガトランはワルファリンと比べ心筋梗塞が増えることが報告されているが、このコホート研究ではその傾向は認めなかった。

それよりなにより、全死亡がその10倍起きている。平均年齢70歳ちょっとなので、10%/年の死亡率はインパクトがある。

抗血小板薬併用下でのDOACとワルファリンの比較

Combining Oral Anticoagulants With Platelet Inhibitors in Patients With Atrial Fibrillation and Coronary Disease
J Am Coll Cardiol. 2018 Oct 9;72(15):1790-1800.

【PECO】
P:OMI+AF、もしくはPCI施行後+AF
E:DOAC+抗血小板薬
C:VKA+抗血小板薬
O:出血、虚血性脳卒中、心筋梗塞、全死亡

【デザイン、セッティング】
・Danish nationwide administrative registries
・後向き
・3222例
(VKA+SAPT 875例、DOAC+SAPT 595例、DAPT 1074例、DOAC+DAPT 678例)
・2011年8月〜2017年7月
・観察期間:12ヶ月
・PT-INR、血圧、腎機能のデータは含んでいない
・COX比例ハザードモデル
・著者には、DOAC企業とのCOIあり

【結果】
DOACは、リバロキサバン、ダビガトラン、アピキサバンが1/3ずつぐらい。2/3は減量投与。

VKA+DAPTを基準として、DOAC+DAPTのハザード比は・・・
出血:0.51(95%CI:0.33-0.78)

脳卒中:1.44(95%CI:0.78-2.67)

心筋梗塞:0.92(95%CI:0.58-1.45)

全死亡:0.83(95%CI:0.59-1.17)

VKA+SAPTを基準として、DOAC+SAPTのハザード比は・・・

出血:0.90(95%CI:0.60-1.53)

脳卒中:0.64(95%CI:0.30-1.36)

心筋梗塞:0.63(95%CI:0.40-1.00)

全死亡:1.08(95%CI:0.80-1.44)

【まとめと感想】
VKA+DAPTは、DOAC+DAPTと比較すると心筋梗塞・脳梗塞・全死亡には差はないが、約2倍の出血と関連あり。

VKA+SAPTは、DOAC+SAPTと比較すると出血・脳梗塞・全死亡には差がないが、約2/3倍の心筋梗塞と関連あり。

DOAC betterな結果でした。PT-INR、血圧、腎機能などイベントに関連がありそうな因子は、解析には含まれてないというのはlimitation。

冠動脈疾患のない糖尿病でのn-3脂肪酸の心血管イベント抑制効果 

観察研究では、n-3脂肪酸の摂取により冠動脈疾患が減少することが知られています。動脈硬化の抑制、不整脈の減少、心不全の抑制などいろいろ考えられ、その効果がRCTで検証されてきました。GISSI-Prevensioneのような1990年代の古いRCTでは死亡率が有意に減少しましたが、β遮断薬などの薬物療法は、現在のものとは大きくかけ離れていました。

2000年代になっていくつかのRCTがやられましたが、どれも結果はネガティブなものです1-3)。JELIS試験二次予防のサブグループで心血管イベントを減らしたことは、Lancetにも載り当時はメーカーもよく喧伝していたので広く知られていますが、オープンラベルのRCTで、かつ不安定狭心症というソフトエンドポイントでの有意差なので、かなりバイアスが入ったものだと思います。心筋梗塞や死亡といったハードエンドポイントにはもちろん差はありませんでした4)

個人的には、n-3脂肪酸は動脈硬化の進展抑制に有効で、若い頃から魚をよく摂るような食習慣の人はやっぱいいんだろうと思います。ただ、心血管イベントのハイリスク、あるいはその二次予防のような動脈硬化が進んだ人だと、n-3脂肪酸を多少とったぐらいでは動脈硬化に歯止めが効かないのではないでしょうか。

CochraneやAgency for Healthcare Research and Qualityも、心血管イベント抑制のためのn-3脂肪酸の内服はほとんど効果がないと結論付けています5-6)

上記の2000年代に行われたRCTには心筋梗塞二次予防を対象にしたものもあり、なんで今さら心筋梗塞一次予防を対象にしているかわかりませんが、一次予防で糖尿病がある人にn-3脂肪酸の心血管イベント抑制効果を検証したRCTがNEJMにでました。

Effects of n−3 Fatty Acid Supplements in Diabetes Mellitus
N Engl J Med 2018; 379:1540-1550

【PICO】
P:冠動脈疾患のない糖尿病
I:n-3脂肪酸840mg(EPA460mg、DHA380mg)
C:プラセボ(オリーブオイル)
O:重大な血管イベント(心筋梗塞、脳梗塞、TIA、血管死)

inclusion criteria:40歳以上、1型糖尿病、2型糖尿病

【試験の概要】
デザイン:RCT (オープンラベル、非劣性試験など)
地域:イギリス
登録期間:2005年6月〜2011年7月
観察期間:7.4年
症例数:15480例(n-3脂肪酸群7740例、、プラセボ群7740例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Bayer社、Abbott社、Mylan社)

【患者背景】
両群間に差はない。
ざっくりと。
年齢63歳、BMI≧30が半分弱、アスピリン1/3、スタチン3/4、糖尿病歴7年

アドヒアランス76%

フォローアップ期間中、n-3脂肪酸以外の薬の使用も差はない。

【結果】
n-3脂肪酸群 vs プラセボ群
心筋梗塞、脳梗塞、TIA、血管死 (primary endpoint)
8.9% vs 9.2% HR:0.97(95%CI:0.87-1.08)
内服期間別に解析しても、有意差なし。

全死亡
9.7% vs 10.2% HR:0.95(95%CI:0.86-1.05)

探索的な解析では、全死亡の28%は血管死で、それはn-3脂肪酸群で少なかった。
2.5% vs 3.1% HR:0.82(95%CI:0.68-0.98)

【まとめと感想】
やっぱりと言うべきか、冠動脈疾患のない糖尿病でn-3脂肪酸による心血管イベント抑制効果はありませんでした。

ただ、内服期間別のフォレストプロットをみると、内服期間が長くなるとn-3脂肪酸がbetterな方へだんだん寄っていくので、より長期にn-3脂肪酸を摂取しているといいのかもしれません。この程度のEPAとDHAの量なら魚(マグロ、ブリ、イワシ、サバなど)から摂れるので、わざわざ薬を飲むより魚を食べたほうがよさそうです。

1)Circ 2010;122:2152-2159
2)NEJM 2010;363:2015-2026
3)NEJM 2013:368;1800-1808
4)Lancet2007;369:1090−1098
5)Cochrane Database Syst Rev 2018;7:CD003177.
6)https://effectivehealthcare.ahrq.gov/topics/fatty-acids-cardiovascular-disease/research

ステント留置から1年以上たった心房細動患者の抗血栓療法 OAC-ALONE試験

An Open-Label Randomized Trial Comparing Oral Anticoagulation with and without Single Antiplatelet Therapy in Patients with Atrial Fibrillation and Stable Coronary Artery Disease Beyond One Year after Coronary Stent Implantation: The OAC-ALONE Study

冠動脈疾患があり、カテーテル治療されている患者さんで心房細動も合併している場合、ESCのガイドラインでは、ステント留置から1年たったら抗凝固薬単剤を推奨。AHAでは、ステント留置から1年たって、塞栓リスクが低くて出血リスクが高いなら抗凝固薬単剤を推奨している。ただ、RCTはやられていなかったので、本当にそれでいいかはわからない。これが、冠動脈疾患+心房細動で抗凝固療法単剤で良いか検証した初めてのRCT。

【PICO】
P:ステント留置から1年以上経過した冠動脈疾患+心房細動
I:抗凝固薬単剤
C:抗凝固薬+抗血小板薬
O:全死亡+心筋梗塞+脳梗塞+全身性塞栓症

抗凝固薬はワルファリンかDOAC。ワルファリンは70歳未満はINR:2.0−3.0を、70歳以上はINR:1.6-.26を目標とし、少なくとも3ヶ月おきに測定。DOACは基本的には減量基準に従うことを推奨するが、自由裁量による減量もあり。

【試験の概要】
デザイン:RCT (オープンラベル、非劣性試験)
地域:日本 111施設
登録期間:2013年11月5日〜2016年12月28日
観察期間:2.5年
予定症例数:2000例(event rate:8.0%/1.5年、非劣勢マージン4.0%)
症例数:690例(OAC単剤群344例、併用療法群346例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(第一三共)

【患者背景】
ざっくりと。
年齢75歳、発作性と持続性+慢性は半々ぐらい、CHADS2:2.5±1.2、CHA2DS2-VASc:4.6±1.4、HAS-BLED:3以上 44%、抗凝固薬はワルファリン:3/4、DOAC:1/4、ワルファリンのTTR75%
両群で差があったのは、eGFR<30(10%vs5%)、PPI(53%vs62%)で、いずれもOAC単剤群で少し不利。

【結果】
OAC単剤群 vs 併用療法群
以下はいずれも年率。
全死亡+心筋梗塞+脳梗塞+全身性塞栓症 (primary endpoint)
6.4% vs 5.5%, HR:1.16(95%CI:0.79-1.72)

全死亡
4.6% vs 3.5%, HR:1.30(95%CI:0.82-2.10)

心血管死
2.3% vs 1.9%, HR:1.18(95%CI:0.62-2.28)

心筋梗塞
0.93% vs 0.46%, HR:2.03(95%CI:0.64-7.59)

脳梗塞+全身性塞栓症
1.5% vs 2.2%, HR:0.69(95%CI:0.33-1.38)

TIMI大出血
1.9% vs 3.4%, HR:0.57(95%CI:0.31-1.03)

【まとめと感想】
日本でやられたRCTだし、みんなが知りたい疑問だし、結果が出るのが楽しみでしたが、著者がabstractで述べている通り、パワー不足で結論めいたことは言えないのが残念です。日本でのRCTでは多くの症例を集めるのは本当に大変そうです。

心房細動患者の死因の多くは非心原性ですが、心房細動+冠動脈疾患であってでも心臓死は半分ぐらいで、もう半分は心臓以外の原因で亡くなられるということは頭に入れておく必要があるでしょう。それと、心筋梗塞の再発は1%/年ととても低いことも。

低酸素血症のない急性心筋梗塞患者への酸素投与は不要

DETO2X-AMI試験は、急性心筋梗塞を疑う患者で酸素を投与する群と投与しない群に分けて、死亡率が改善するかどうか検証したRCTです。

心筋梗塞に酸素投与は不要 DETO2X-AMI試験

酸素投与してもしなくても1年後の死亡率は差がありませんでした。

DETO2-AMI試験は急性心筋梗塞疑いの段階でランダム化しているので、そうではない患者さんも含まれています。なので、心筋梗塞に限れば違った結果になるかもしれないという考えは当然浮かびますが、サブグループ解析を見てみるとSTEMIでも有意差がなかったので、やっぱり結果的に心筋梗塞であっても、酸素投与のメリットはないと言えます。

また、SpO2:90-95%のサブグループでも有意差はなく、SpO2が多少低くても酸素投与は不要と言えます。

なので、STEMIであろうが、SpO2がちょっと低めであろうが、別に酸素投与しなくても患者さんの予後は悪くなりません。まあ確かに、急性期の数時間の酸素投与が、生命予後を変えるとはインパクトがあるとは思えません。

で、そのDETO2X-AMI試験のsecondary endpointの結果が、Circulationに出ました。

Long-Term Effects of Oxygen Therapy on Death or Hospitalization for Heart Failure in Patients With Suspected Acute Myocardial Infarction

結果としては、全死亡+心不全入院、心全死亡+心不全入院+心筋梗塞、血管死、心不全入院のいずれも酸素投与の有無で差はありませんでした。

AVOID試験では酸素投与により、トロポニンとかCKが高い傾向にあり、過剰な酸素により再環流障害を増大させる可能性があるので、低酸素血症でなければ急性心筋梗塞で酸素投与しない方が良いようです。

体温管理療法は心原性ショックを合併した心筋梗塞の血行動態や予後を改善しない

院外心停止での体温管理療法(TTM)については以前記事にした。

院外心停止での体温管理療法 (TTM) 目標体温と継続時間

TTMの有効性が示されたRCTでは心原性ショックは除外されているので、心原性ショックでもTTMが有効かはわからないし、心停止していない心原性ショックでTTMが有効かどうかもわからない(1-3)

Mild Hypothermia in Cardiogenic Shock Complicating Myocardial Infarction – The Randomized SHOCK-COOL Trial.
Circulation. 2018 Jul 19. pii: CIRCULATIONAHA.117.032722. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.117.032722. [Epub ahead of print]

心原性ショックを合併する急性心筋梗塞で、体温管理療法が血行動態や予後の改善につながるか検証したRCT。

【PICO】
P:心原性ショックを合併した急性心筋梗塞
I:体温管理療法(33℃、24時間)
C:通常治療
O:24時間時点のCardiac power index(CPI)

CPI=平均動脈圧×Cardiac index/451

inclusion criteria:SBP90mmHg以下が30分以上持続、SBP90mmHg以上を維持するのにカテコラミンが必要など
exclusion criteria:12時間以上持続する心原性ショック、TTM適応の心停止など

primaryPCIの最中にランダム化を行う。
体温管理療法はinvasive cooling catheter(ZOLL社)を用いる。
全員にSwan-Ganzカテーテル挿入し、8時間おきに測定。

【試験の概要】
デザイン:single center, open-label RCT
地域:ドイツ
登録期間:2012年7月〜2015年3月
症例数:40例(各群20例ずつ)
スポンサー:企業の関与なし

【結果】
TTM群 vs 通常治療群
▶︎CPI(primary endpoint)
0.41 [interquartile range 0.31-0.52] vs 0.36 [interquartile range 0.31-0.48] W/m2; p=0.50
▶︎30日死亡率(secondary endpoint)
60% vs 50%, ハザード比 1.27(95%CI:0.55-2.94)

【まとめと感想】
心原性ショックを合併した急性心筋梗塞に、33℃・24時間の体温管理療法を行っても、有意な血行動態の改善はない。死亡率は体温管理療法で多い傾向だったが、このサンプルサイズなのでなんとも言えない。

院外心停止での体温管理療法で生命予後が改善しているのは、低体温自体に意味があるというより、むしろ心停止後の高体温を避けることに意味があるのかなーと思っているので、心原性ショックで体温管理療法を行ってもあまり良いことはないというこのRCTの結果は然もありなんという感じがします。

(1) N Engl J Med. 2002;346:549–56.
(2) N Engl J Med. 2002;346:557–63.
(3) N Engl J Med. 2013;369(23):2197-206.

DAPT(アスピリン+クロピドグレル)は梗塞イベントを25%減らすが、大出血は1.5倍になる

Aspirin Plus Clopidogrel vs Aspirin Alone for Preventing Cardiovascular Events Among Patients at High Riskfor Cardiovascular Events
JAMA. 2018;320(6):593-594.

・既知の心血管疾患(末梢動脈疾患、脳梗塞、ステントが留置されていない冠動脈疾患)、またはそのハイリスク患者
・アスピリンとDAPT(アスピリン+クロピドグレル)を比較
・15RCT、計33970例を解析

アスピリン vs アスピリン+クロピドグレル
▶︎心血管死
3.7% vs 3.7% ハザード比:0.98(95%CI:0.88−1.10)

▶︎全死亡
5.3% vs 5.6% ハザード比:1.05(95%CI:0.87-1.25)

▶︎心筋梗塞
5.8% vs 4.5% ハザード比:0.78(95%CI:0.69-0.90)

▶︎虚血性脳梗塞
8.6% vs 6.3% ハザード比:0.73(95%CI:0.59-0.91)

▶︎大出血
2.1% vs 3.0% ハザード比:1.44(95%CI:1.25-1.64)

【まとめと感想】
DAPTで心筋梗塞・脳梗塞などの虚血イベントを25%減るけど、大出血は1.5倍になる。塞栓予防と出血はトレードオフ。

エボロクマブの心血管イベント抑制 残存病変があるとより効果的

FOURIER試験では、エボロクマブで心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳梗塞、不安定狭心症による入院、冠動脈血行再建)が有意に減少した(ハザード比:0.85)。(1)

ただ、費用対効果は薬価に見合ったものではないので、高容量のスタチンでLDLがさがらないからと言って、全例にPCSK9阻害薬を使うのは微妙かもしれない。(2)

Clinical Benefit of Evolocumab by Severity and Extent of Coronary Artery Disease: An Analysis from FOURIER.
Circulation. 2018 Apr 6. pii: CIRCULATIONAHA.118.034309. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.118.034309. [Epub ahead of print]

FOURIER試験の事前に設定されたサブ解析。

3つのサブグループに分けている。
1) 心筋梗塞発症から2年未満か否か
2) OMIの回数
3) 残存多枝

FOURIER試験のprimary endpointは心血管死+心筋梗塞+脳梗塞+不安定狭心症による入院+冠動脈血行再建。secondary endpointは心血管死+心筋梗塞+脳梗塞。

残存多枝は1枝以上の見た目の狭窄で血行動態的な評価はではない。

primary endpointでは、3つのサブグループで交互作用のPが有意だったものは、MI発症から2年未満と残存多枝病変あり。

エボロクマブ群 vs プラセボ群
MI発症から2年未満
13.5% vs 16.9% ハザード比:0.80 95%CI:0.71-0.91

残存多枝あり
15.8% vs 19.4% ハザード比:0.79 95%CI:0.69−0.91

primary endpointからソフトエンドポイントを除いたsecondary endpoint(心血管死、心筋梗塞、脳梗塞)では、3つのサブグループで交互作用のPが有意だったものは、残存多枝病変ありのみ。

残存多枝あり
9.2% vs 12.6% ハザード比:0.70 95%CI:0.58−0.84

【まとめと感想】
エボロクマブをFOURIER試験で対象になっている患者すべてに処方するのは、費用対効果的には微妙。このサブ解析から、MI発症早期と残存多枝病変があればエボロクマブの費用対効果は高られそう。

個人的には、ハードエンドポイントのみ含んでいるsecondary endpointで唯一有意な差があった残存多枝病変のみだったので、残存多枝病変があればエボロクマブをより積極的に使ってもいいと思います。

(1) N Engl J Med 2017;376:1713-1722
(2) JAMA. 2017;318(8):748-750

FFRガイドPCIは心血管イベントを減らすのか FAME2試験 (5年のフォローアップ)

冠動脈に50%以上の狭窄があり、FFRが0.80以下の安定狭心症・無症候性心筋虚血の患者を対象にして、PCIを行うことで、薬物療法のみで治療よりも、その後の心血管イベントを抑えられるか検証したFAME2試験。

2年間のフォローアップでは、緊急血行再建は有意にPCI施行群で少なかった。ただ、心筋梗塞や死亡の減少といったところまでは至っておらず、また、より長期的にみてFFRガイドPCIが薬物療法より優れるか否かについてのデータはない。

これはFAME2試験の5年のフォローアップの結果である。

Five-Year Outcomes with PCI Guided by Fractional Flow Reserve
N Engl J Med. 2018 May 22. doi: 10.1056/NEJMoa1803538. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:安定狭心症・無症候性心筋虚血で冠動脈に50%以上の狭窄+FFR≦0.80
I:PCI+至適薬物療法
C:至適薬物療法のみ
O:全死亡、心筋梗塞、緊急血行再建の複合エンドポイント

緊急血行再建:持続する、あるいは悪化する胸部症状 (心電図変化・バイオマーカの上昇の有無を問わない) のため予定外に入院し、その入院期間中に血行再建を行うこと

inclusion criteria:冠動脈造影にて1-3枝病変がある患者
exclusion criteria:CABG術後、左室駆出率(EF)<30%、左冠動脈主幹部病変(LMT)

【試験の概要】
デザイン:open label RCT
地域:ヨーロッポ・北米の28施設
登録期間:2010年5月15日〜2012年1月15日
観察期間:5年
症例数:888例 (PCI群:447例、薬物療法群:441例)
解析:ITT解析
スポンサー:St.Jude Medical社 (最初の3年にのみ関与。それ以上のフォローは試験の結果に変化をもたらさないこと、薬物療法群のクロスオーバーが多いことを理由にスポンサーを下りた)

【患者背景】
LVEF<50%の割合のみ、FFR群18%、薬物療法群12%で有意に群間差があった。それ以外は同等。年齢63歳、男性が3/4、喫煙者20%、糖尿病30%弱、腎不全2%。

【結果】
28施設のうち、9施設は3年でフォローアップを中止している。症例数は全体の12%で、追跡率は85%程度。5年間フォローアップした19施設の症例数は88%で、追跡率は93%ほど。

薬物療法群のクロスオーバーは255例 (51.0%)。このクロスオーバーはエンドポイントに含まれている緊急血行再建とは別のもの。

PCI群 vs 薬物療法群
全死亡+心筋梗塞+緊急血行再建 (primary endpoint)
13.9% vs 27.0% HR:0.46 (95%CI:0.34-0.63)

全死亡
5.1% vs 5.2% HR:0.98 (95%CI:0.55-1.75)

心筋梗塞
8.1% vs 12.0% HR:0.66 (95%CI:0.43-1.00)

緊急血行再建
6.3% vs 21.1% HR:0.27 (95%CI:0.18-0.41)

【批判的吟味】
・試験の早期中止 (early determination for benefit) による過大評価
・十分とは言えない追跡率
・少なくないクロスオーバー (薬物療法群で51.0%)
・オープンラベルというデザインで、ソフトエンドポイント (緊急血行再建) のウエイトが大きい

【まとめと感想】
FFRガイドPCIを行えば、薬物療法のみで治療するより心筋梗塞・緊急血行再建を有意に少なかった。2年では差がなかった心筋梗塞も、5年間のより長期のフォローで薬物療法よりも優れるという結果だった。

上にあげたような問題点もあるので、解釈は慎重に。インターベンション医を後押しする解釈としては、これだけクロスオーバーが多いにも関わらず、心筋梗塞が2/3になっているということは、実際の効果はより大きいはずということで、薬物療法を支持する解釈としては、この試験の内的妥当性は相当微妙であてにならないということ (予定した観察期間が2年だから仕方ないけど)。

正直、血行再建というソフトエンドポイントは入れずに、心筋梗塞・死亡といったより重要でハードなアウトカムでのみ検証してもらいたいなあと思う。患者さんが心配なのは、FFRガイドPCIでそれらが本当に防げるのかということだと思うし、血行動態を評価するFFRを用いたPCIが、狭窄が軽度な部位に起こることが多い心筋梗塞を本当に減らせるのかということについても、答えが出ると思われる。