カテゴリー別アーカイブ: 虚血性心疾患

非スタチン療法のガイドライン(ACC)要約

Role of Nonstatin Therapies for Low-Density Lipoprotein Cholesterol Lowering in Management of Atherosclerotic Cardiovascular Disease Risk
JAMA Cardiol. 2016 Nov 30. [Epub ahead of print]

これは、ACCの動脈硬化性心血管疾患に対する非スタチン療法のレコメンデーションです。以下の4つのグループでは、もちろん最大量のスタチンの投与が推奨されており、以下の非スタチン療法を考慮する前に、スタチンのアドヒアランスを向上させたり、生活習慣に介入したり、他のリスクを是正したり、ということが推奨されています。

それにしても、エゼチミブのエビデンスといえばIMPROVE-IT試験しかなく、それなのにエゼチミブが推されすぎている感があります。

IMPROVE-IT試験の結果は微妙で、一番大きな疑問は対照に普通のスタチンを使用していることで、有意に心血管イベント(心血管死から不安定狭心症までいろんなエンドポイントの複合)を減らしたといっても、34%から32%に約2%低下させたにすぎず、Nが大きいために出た結果だと思います。

日本人だと、スタチンを使ってLDLコレステロールが下がらない人はそういないと思うので、このガイドラインが推奨するようにエゼチミブが必要になる人は多くないでしょう。家族性高コレステロール血症ではエゼチミブやPCSK9阻害薬の出番はあるかもしれませんが、スタチンの最大量投与が前提で、適応は慎重に考えたいものです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

1.安定した動脈硬化性心血管疾患(二次予防)
スタチン使用下でLDLコレステロールの少なくとも50%の減少が達成できていなければ、まずエゼチミブを考慮すべきである。それでも目標を達成できない場合には、エゼチミブにPCSK9阻害薬を変更、または追加することは妥当である。動脈硬化性心血管疾患で、かつハイリスクの患者は、上記の治療でLDLコレステロールを少なくとも50%減少させ、70mg/dl未満にすべきである。

2.LDLコレステロールが190mg/dl以上(一次予防)
LDLコレステロールを50%減少(LDLコレステロール100mg/dl未満)させることが推奨され、付加的なLDLコレステロール低下には、まずエゼチミブまたはPCSK9阻害薬を考慮する。脂質の専門医と栄養士に紹介することが望ましく、特に家族性高コレステロール血症のホモ接合体またはベースラインのLDLコレステロールが250mg/dl以上の場合で推奨される。

3.40−75歳の糖尿病(一次予防)
LDLコレステロールの50%の減少(LDLコレステロール100mg/dl未満、またはnonHDLコレステロール130mg/dl未満)が推奨される。この患者群では、PCSK9阻害薬の使用は推奨されず、エゼチミブが第一選択である。中性脂肪が300mg/dl未満のエゼチミブ禁忌症例ではレジンが推奨される。

4.40−75歳で、10年間のCVDイベントが7.5%以下(一次予防、糖尿病なし)
LDLコレステロール100mg/dl以上、あるいはハイリスク症例で、中等度の強度のスタチンで治療しているなら、スタチンの強度を上げることが推奨される。目標が達成できないなら、エゼチミブを考慮する。PCSK9阻害薬は推奨されない。

左冠動脈主幹部の急性心筋梗塞 心電図診断

Prediction of acute left main coronary artery obstruction by 12-lead electrocardiography. ST segment elevation in lead aVR with less ST segment elevation in lead V(1).
J Am Coll Cardiol. 2001 Nov 1;38(5):1348-54.

《要約》
目的
左冠動脈主幹部閉塞の心電図的特徴を特定すること。

背景
左冠動脈主幹部閉塞は重大な血行動態の悪化を招き、予後不良である。そのため、左冠動脈主幹部閉塞の予測は適切な治療戦略を選択する上で重要である。

方法
左冠動脈主幹部の急性閉塞の連続16例(LMCA群)、左冠動脈前下行枝の急性閉塞46例(LAD群)、右冠動脈の急性閉塞24例(RCA群)の入院時心電図を調べた。

結果
aVR誘導でのST上昇(>0.05mV)は、LAD群やRCA群よりLMCA群で有意に多かった(LMCA88%、LAD43%、RCA8%)。aVR誘導でのST上昇は、LAD群よりLMCA群で有意に高かった(LMCA群0.16±0.13mV、LAD群0.04±0.10mV)。V1誘導でのST上昇は、LAD群よりLMCA群で有意に低かった(LMCA群0.00±0.21mV、LAD群0.14±0.11mV)。aVR誘導のST上昇がV1誘導のST上昇より大きい、もしくは同等の場合、感度81%、特異度80%でLMCA群と診断できる。aVR誘導と家壁誘導のST変化でLMCA群とRCA群を区別できる。左冠動脈主幹部の急性閉塞では、aVR誘導でのST上昇が高い群では、ST上昇が高くない群と比較し、死亡率が高い。

結論
V1誘導のST上昇が小さく、aVR誘導でST上昇していることは、左冠動脈主幹部閉塞である重要な予測因子である。左冠動脈主幹部の急性閉塞では、aVR誘導のST上昇は臨床的なアウトカムの予測因子でもある。

AがLMCA、BがLAD、CがRCA
ecg
aVRでST上昇があって、V1では上がっていない。

figure
V1だけではわからないので、aVRのST上昇と合わせて判断する。

プラスグレルとチカグレロルの直接比較 PRAGUE-18試験

Prasugrel Versus Ticagrelor in Patients With Acute Myocardial Infarction Treated With Primary Percutaneous Coronary InterventionMulticenter Randomized PRAGUE-18 Study
Circulation. 2016;134:1603-1612

《要約》
背景
プラスグレルとチカグレロルはクロピドグレルに対し高い有効性が示されているが、プラスグレルとチカグレロルの安全性と有効性の直接比較は行われていない。

方法
急性心筋梗塞(AMI)で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が施行された患者を対象に、プラスグレルとチカグレロルの安全性と有効性を比較した。14施設で、AMI1230例をPCI開始前にプラスグレルとチカグレロルに無作為に割り付けた。4%弱が心原性ショック、5.2%で人工呼吸器管理を行った。主要評価項目は、7日間での死亡、再梗塞、緊急標的血管血行再建、脳梗塞、輸血や入院期間の延長を要する出血の複合エンドポイントである。全フォローアップ期間は1年で、2017年に終了する。

結果
試験は、早期中止となった。プラスグレルとチカグレロルで、主要評価項目に有意差はなかった(4.0%vs4.1%、OR:0.98、95%CI:0.55−1.73)。主要評価項目の中で、どれも有意差はなかった。30日以内の副次評価項目(心血管死、非致死性心筋梗塞、脳梗塞)でも、プラスグレルとチカグレロルに有意差はなかった(2.7%vs2.5%、OR:1.06、95%CI:0.53-2.15)。

結論
こののプラスグレルとチカグレロルの比較試験は、PCIを施行したAMI急性期での梗塞イベントと出血イベントの予防において、一方の抗血小板薬はもう一方より、より有効もしくはより安全であるという仮説を支持しなかった。主要なアウトカムの発生率は似通っていたが、信頼区間は広かった。

◇この論文のPICOはなにか
P:急性心筋梗塞(STEMI、NSTEMI)
I/C:アスピリンに加え、プラスグレルまたはチカグレロルの内服
O:7日以内の全死亡、心筋梗塞の再発、脳梗塞、輸血や入院延長を要するような重大な出血、緊急標的血管再血行再建

プラスグレルは60mgでローディングして、維持容量は10mgを1日1回。76歳以上または60kg未満の場合は維持容量を5mgに減量する。

チカグレロルは180mgでローディングして、維持容量は90mgを1日2回。

inclusion criteria:緊急CAGの適応である症例

exclusion criteria:脳梗塞の既往、6ヶ月以内の重大な出血、長期の抗凝固療法を必要とする症例、クロピドグレル300mg以上の内服をしている症例、その他の抗血小板薬の内服(アスピリンと低容量クロピドグレルを除く)、76歳以上で体重60kg未満、中等度〜高度の肝障害、強力なCYP3A4阻害薬の使用、プラスグレルまたはチカグレロルに対するアレルギー

◇baselineは同等か
characteristics1
平均61歳で、3/4が男性。STEMIが90%で、他は脚ブロックとNSTEMI。他の抗血小板薬の使用率にも差がなく、PCIのアプローチも橈骨動脈が2/3とこれも差がない。

characteristics2
BMSとDESの使用率に差はないが、生体吸収性スキャフォールドはプラスグレル群で多い。PCI後のTIMIグレードは同じ。

◇結果
地域:チェコ共和国
登録期間:2013年4月〜2016年3月
観察期間:30日
無作為化:GraphPad scientific softwareを使用。封筒法。
盲検化:オープンラベル。解析者は盲検化されている。
必要症例数:各群1250例で、1130例が登録された時点で中間解析を行い、試験の早期中止を判断することになっている。
症例数:1230例
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:資金源はチャールズ大学のリサーチプログラムで直接の資金提供はないが、複数のauthorにCOIあり(アストラゼネカ、第一三共)。

result

◇批判的吟味
抗血小板作用による梗塞イベントの抑制と出血イベントの増加はトレードオフである。強力な抗血小板作用により、PCI後の梗塞イベント(ステント血栓症など)を抑えられたとしても、それにより重大な出血が増えてしまえば、そのメリットは相殺されてしまう。なので、梗塞イベントと出血イベントを複合して主要評価項目に設定することは妥当だし、いずれのイベントも急性期に多いので観察期間が1週間というのも妥当だろう。

ただ、この試験はfutilityで早期中止になっている。イベント数が少ないにもかかわらず。もともと2500例で予定されていて、3年間で半分以下しか集まっていないので、しょうがないのかもしれないけど、これだとどちらがいいとも言えない。

◇感想
プラスグレルとチカグレロルの有効性と安全性を直接比較したPRAGUE-18試験。主要評価項目(全死亡、心筋梗塞の再発、脳梗塞、輸血や入院延長を要するような重大な出血、緊急標的血管再血行再建)はどちらも4%程度だったが、イベント数が少なく、”両群とも同等に安全で有効”とは言えない結果だった。

ちなみにチカグレロルはPCI後の抗血小板薬として、2016年9月に日本でも承認されたが、PHILO試験でクロピドグレルと比較し出血を増やしたため、「アスピリンを含む抗血小板剤2剤併用療法が適切である場合で、かつ、アスピリンと併用する他の抗血小板剤の投与が困難な場合に限る」という文言が付いてしまっているようだ。

院外心停止でVT/VFなら、CAG/PCIを行った方が生命予後が良くなるかもしれない

Trends and Outcomes of Coronary Angiography and Percutaneous Coronary Intervention After Out-of-Hospital Cardiac Arrest Associated With Ventricular Fibrillation or Pulseless Ventricular Tachycardia
JAMA Cardiol. 2016;1(8):890-899.

《要約》
重要性
The 2015 cardiopulmonary resuscitation and emergency cardiovascular care guidelinesでは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)と非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)の院外心停止に対し冠動脈造影検査(CAG)を行うことを推奨している。

目的
初期波形が心室頻拍(VT)/心室細動(VF)である院外心停止において、CAGと経皮的冠動脈インターべんション(PCI)の傾向、予測因子、アウトカムを評価すること。

デザイン、セッティング、患者
VT/VFによる院外心停止を対象とした、CAGとPCIに関する観察研究である。2001年1月1日から2012年12月31日までのNationwide Inpatient Sample databeseからデータを抽出した。CAGとPCIを試行することに関連した因子を評価するため多変量解析を行った。データは2015年12月12日から2016年1月5日に解析された。

アウトカム
CAG、PCI、退院時生存率の傾向

結果
407974例がVT/VFによる院外心停止で入院し、143688例(35.2%)にCAGが行われた。全体の平均年齢は65.7±14.9歳で、37.9%が女性であった。74.1%が白人、13.4%が黒人、6.8%がヒスパニック、5.7%が他の人種であった。2000年よりも2012年では、CAGは増加し(27.2%vs43.9%, OR2.47, 95%CI2.25-2.71)、PCIも増加した(9.5%vs24.1%, OR4.80, 95%CI4.21-5.66)。2000年から2012年まで、STEMIの院外心停止ではCAGとPCIは増加し(それぞれ、53.7%vs87.2%, 29.7%vs77.3%)、NSTEMIでも増加した(それぞれ、19.3%vs33.9%, 3.5%vs11.8%)。生存退院は、全体、STEMI、NSTEMIのいずれでも増加した(46.9%vs60.1%, 59.2%vs74.3%, 43.3%vs56.8%)。

結論
VT/VFの院外心停止におけるCAG、PCI、生存退院は増加傾向にある。しかし、VT/VFの院外心停止、特にNSTEMIでのCAG/PCIの施行率は高くない。前向き研究によって、このリミテーションに生存利益があるかどうか検証する必要がある。

◇この論文のPECOは?
P:18歳以上のVT/VFの院外心停止
O:CAG/PCIの施行率、その傾向、生存退院と関連する因子

心拍再開しなかった症例、年齢・性別・退院時生存の有無などの情報が欠落している症例は除外している。

◇デザイン、対象、観察期間
・地域:米国
・後ろ向き
・hierarchical mixed-effects model
・407974例

characteristics
CAG/PCIをやるかどうかは、重大な併存疾患があるとか、activeな悪性腫瘍があるとかでしょうか。悪性腫瘍の割合はCAG未施行群で多い様。意外と収入は関係ないのか。

◇結果
trend
STEMIだと、PCIをやる症例が2000年から倍増して、3/4の症例でやられている。NSTEMIでも増加傾向ではあるが、11%と高くはない。

survival-to-discharge
STEMIでもNSTEMIでもCAGを行った集団では生存退院の割合は多く、年代が進むにつれ生存率は高くなっている。

adjusted-or
PCIをやった方がいいし、若い方がいい。非白人や保険に入っていないと生存退院のオッズ比は低くなるのはアメリカだからなのか。

◇感想
当院だと、VT/VFの院外心停止では、ROSCしたSTEMIやVT/VFが止まらずにPCPSを入れた症例では、ほぼルーチンでCAG/PCIを行っていて、NSTEMIではwitness/bystanderCPRの有無とか、悪そうな併存疾患がないかとかはチェックしてカテをやるようにしている。

院外心停止の症例はもちろん生存退院ができるかどうかは大切なことだけど、神経学的予後も結構重要で、蘇生後脳症のために意識が戻らず気切して転院というケースは少なくない。搬送された時点で神経学的予後についてもわかればいいけど、明確な指標がないので、神経学的に厳しいと予想できる症例であっても、CAG/PCIをやらざるを得ない。

カテをやってみて意外と亜急性期に意識レベル良くなってカテやってよかったと思うこともあれば、予想通り全然戻らなくてカテやった意味があったのかなと思うこともある(むしろ後者の方が多い)。まあ、この研究では、トレンドとしては院外心停止でVT/VFならCAG/PCIをやる傾向になっているし、やった方が生命予後が良くなりそうです。

ステント留置後の心房細動 NOAC+SAPTでいいのか? PIONEER AF-PCI試験

Prevention of Bleeding in Patients with Atrial Fibrillation Undergoing PCI
N Engl J Med. 2016 Nov 14 [Epub ahead of print]

《要約》
背景
PCIを行いステントを留置した心房細動合併患者では、ワーファリン+DAPTの標準的抗血栓療法によって血栓症と脳梗塞のリスクは減少するが、出血のリスクは増大する。リバーロキサバン+SAPTもしくはリバーロキサバン+DAPTの有効性と安全性は明らかではない。

方法
PCIを行った非弁膜症性心房細動の患者2124例を、以下の3群に1:1:1に無作為に割り付けた。
グループ1)低容量リバーロキサバン(15mg/日)+P2Y12阻害薬を12ヶ月内服
グループ2)超低容量リバーロキサバン(2.5mg/日)+DAPTを1・6・12ヶ月内服
グループ3)ワルファリン+DAPTを1・6・12ヶ月内服。
主要安全性評価項目は臨床的に重大な出血(TIMI出血基準で大出血、小出血、治療を要する出血)である。

結果
臨床的に重大な出血の発症率は、リバーロキサバンを内服している2群で、標準的抗血栓療法より低かった(グループ1:16.8%、グループ2:18.0%、グループ3:26.7%、グループ1vs3のハザード比0.59:95%CI0.47−0.76、グループ2vs3のハザード比0.63;95%CI0.50−0.80)。心血管死、心筋梗塞、脳梗塞の発症率は3群で似通っていた(グループ1:6.5%、グループ2:5.6%、グループ3:6.0%、いずれの群間比較でもP値は有意ではなかった)。

結論
PCIでステントを留置した心房細動患者では、12ヶ月の低容量リバーロキサバン+P2Y12阻害薬の内服、1・6・12ヶ月の超低容量リバーロキサバン+DAPTは、1・6・12ヶ月のワルファリン+DAPTの標準的抗血栓療法と比較し、臨床的に重大な出血が少なかった。3群の有効性に差はなかったが、信頼区間の幅は広い。

◇この論文のPICOはなにか
P:PCIを行なった非弁膜症性心房細動患者
I/C:以下の3群に1:1:1に割り付け
グループ1)低容量リバーロキサバン(15mg/日)+P2Y12阻害薬を12ヶ月内服
グループ2)超低容量リバーロキサバン(2.5mg/日)+DAPTを1・6・12ヶ月内服
グループ3)ワルファリン+DAPTを1・6・12ヶ月内服。
O:TIMI出血基準での臨床的に重大な出血(大出血+小出血+治療を要する出血)

inclusion criteria:18歳以上、発作性・持続性・慢性の非弁膜症性心房細動、1年以内に心房細動がドキュメントされていること、1年以内に心房細動がドキュメントされていなくてもPCIの3ヶ月前から抗凝固療法を行なっている場合

exclusion criteria:脳梗塞/TIAの既往、12ヶ月以内の重大な消化管出血、CCr<30ml/min、原因不明の貧血(Hb<10g/dl)、その他出血リスクがある患者

手順:PCIのシースを抜去72時間後にPT-INR2.5未満であれば無作為化を行う。無作為化の前にDAPT期間と使用するP2Y12阻害薬(クロピドグレル/プラスグレル/チカグレロル)を決めておき、それに応じて層別化を行う。

◇baselineは同等か
characteristics
同等。平均70歳で、1/4が女性。ほとんどが白人。CCrは平均だと80ml/minぐらいで良いが、30−60ml/minも30%弱いる。ACSが半分。P2Y12阻害薬はほぼクロピドグレル。ステントは2/3がDESで、1/3がBMS。ワーファリンのTTRは65.0%とちょっと低め(治療域は2.0−3.0と設定)。CHA2DS2-VAScは平均で3−4ぐらい?

◇結果
地域:北米、南米、欧州など
登録期間:2013年3月〜2015年7月
観察期間:12ヶ月
無作為化:記載なし。
盲検化:オープンラベル。アウトカム評価者は盲検化されている。
必要症例数:記載なし。
症例数:2124例
追跡率:100%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Janssen Scientific Affairs社、バイエル社)。リバーロキサバンは無料で提供。

kaplan-meier
DAPT+ワルファリンが有意に出血が多い。
secondary efficacy endpointは心血管死、心筋梗塞、脳梗塞の複合エンドポイントで、有意な差はなかった。

result
治療を要する出血(bleeding requiring medical attention)の定義がいまいちわからないけど、TIMI出血基準の小出血より軽度な出血のことらしい。大出血と小出血は、ワルファリン+DAPTが多い傾向だけど有意差はなくて、有意差がついているのは治療を要する出血という部分だけ。

result2
primary endpointの出血うんぬんより、個人的にはこっちの方が気になる。どれもイベント数が少なくて、有意な差はない。

◇批判的吟味
・primary endpointで有意差がついているが、その内訳をみると治療を要する出血(bleeding requiring medical attention)で有意差がついている。もちろん感覚的には納得できるが、これはソフトなエンドポイントであり、かつオープンラベルなので、バイアスが入るかもしれない。
・なぜ出血をprimary endpointにしているんだろう。梗塞+塞栓イベントをprimary endpointに設定して欲しかった。
・梗塞+塞栓イベントがsecondary outcomeに設定されているが、イベントの発生が少なくて本当に差があるのかどうかはわからない(3群とも同等と解釈してはいけない)。
・可能であれば、3−5年ぐらいの観察期間でsecondary outcomeがどうなっているか見てみたい。
・超低容量リバーロキサバン併用で塞栓イベントは増えないのか?
・日本だと低容量は10mg?、超低容量はどうすれば?
・ロストフォローアップはないが、どの群も20−30%で治療中断あり。

◇感想
PCIを行なった心房細動患者の抗血栓療法について結論はでていないが、WOEST試験の結果を踏まえて、抗血小板薬は単剤にしていることが多い(ACSなら最初は3剤)。それでもステント血栓症は経験してないので、抗血小板薬と抗凝固薬の2剤でいいんだろうなあという感触は持っています。

抗凝固薬はワルファリンじゃなくてNOACでいいのかわからないが、多くの場合にNOACを使っていると思われるし、自分もそうしている。このPIONEER AF-PCI試験は、NOAC+抗血小板薬でもいいのか検証した試験で、結果としてはワルファリン+DAPTよりも出血は有意に少なく、心血管死、心筋梗塞、脳梗塞は増えなかった。

それにしても、なんで出血がprimary endpointになっているんでしょうか。個人的には、むしろNOAC+抗血小板薬の2剤にすることで、梗塞や塞栓が増えないかが知りたかったので、secondary endpointに設定されている心血管死、心筋梗塞、脳梗塞を、primary endpointでやってほしかった。それだと、Nがでかくなりすぎるので難しいのでしょう。

あと、グループ2でATLAS ACS 2-TIMI51試験のレジメンを持ってきているが、この超低容量で塞栓イベントが増えないのかも気になる。

secondary endpointの心血管死、心筋梗塞、脳梗塞はイベント数が少なく、本当に差があるかどうかがわからない。これはもっと長い期間観察しないとわからないと思うので、3−5年のデータがでてくるといいなあと思いますが、1年以降の抗血栓療法をどのようにするかにもよるでしょう。

まあとりあえず、ルーチンで3剤飲まないといけないということはなさそうなので、今の感じの抗血栓療法(NOAC+P2Y12阻害薬の2剤で、ときどき3剤)でよさそうです。

CABGで内胸動脈を両側使用した方がいいのか:ART試験

Randomized Trial of Bilateral versus Single Internal-Thoracic-Artery Grafts
N Engl J Med. 2016 Nov 14 [Epub ahead of print]

《要約》
背景
冠動脈バイパス術(CABG)で、両側内胸動脈のグラフトは、片側内胸動脈と静脈グラフトを使用するより、長期的なアウトカムを改善させるかもしれない。

方法
7ヶ国28施設で、CABGが予定されている患者を、片側内胸動脈を用いたCABGと両側内胸動脈を用いたCABGに無作為に割り付けた。主要評価項目は10年間の全死亡である。全死亡、心筋梗塞、脳梗塞の複合エンドポイントを副次評価項目とした。中間解析は5年時に行うこととした。

結果
3102例を登録し、1554例を片側内胸動脈を用いたCABGに、1548例を両側内胸動脈を用いたCABGに無作為に割り付けた。5年間のフォローアップで全死亡は両側内胸動脈群で8.7%、片側内胸動脈群で8.4%で(HR:1.04、95%CI:0.81−1.32)、全死亡・心筋梗塞・脳梗塞の複合エンドポイントは12.2%vs12.7%であった(HR:0.96、95%CI:0.79-1.17)。胸骨創部に関連した合併症は、両側内胸動脈群で3.5%、片側内胸動脈群で1.9%(P=0.005)、胸骨再建は両側内胸動脈群で1.9%、片側内胸動脈群で0.6%であった(P=0.002)。

結論
CABGで内胸動脈を片側だけ使用するか、あるいは両側使用するかで、5年間の死亡あるいは心血管複合イベントに有意差はなかった。胸骨の創部に関連した合併症は、片側内胸動脈群より両側内胸動脈群で多かった。10年間のフォローアップは現在進行中である。

◇この論文のPICOはなにか
P:CABGを予定されている患者
I:両側内胸動脈を用いたCABG
C:片側内胸動脈を用いたCABG
O:10年間の全死亡(secondary endpoint:全死亡+心筋梗塞+脳梗塞)

inclusion criteria:多枝病変
exclusion criteria:一枝疾患、弁膜症の手術も行う患者、再手術例

◇baselineは同等か
characteristics
同等。EF、僧帽弁閉鎖不全症(MR)の合併の有無とその程度についての記載はない。

◇結果
地域:7ヶ国
登録期間:2004年6月〜2007年12月
観察期間:5年間
無作為化:施設ごとの層別化を伴う置換ブロック法。コーディネーティングセンターへ電話して無作為化を行う。
盲検化:オープンラベルだがアウトカムへの影響はない
必要症例数:3000例(10年間の全死亡は両側内胸動脈群で20%、片側内胸動脈群で25%、power90%、αlevel0.05で2928例と算出され、たぶんロストフォローアップを加味してか、必要症例数を3000例としている)
症例数:3102例(両側内胸動脈群:1548例、片側内胸動脈群:1554例)
追跡率:両側内胸動脈群:1477/1548例(95.4%)、片側内胸動脈群:1492/1554例(96.0%)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

片側内胸動脈群で内胸動脈を使用したのは96.1%、両側内胸動脈群で両側とも内胸動脈を使用したのは予想より高かったらしく83.6%であった。40.6%でoff-pump CABGが行われたようだが、群間差があるのか記載なし。

5年の時点での内服薬には群間差なし。
アスピリン:88.9%
β遮断薬:76.2%
スタチン:89.0%
ACE阻害薬/ARB:73.4%

result

◇批判的吟味
・両側内胸動脈が使用されたのは83%と予想より低く、差を薄める方向に働くかも。
・off-pump CABGの割合に群間差があるかわからない(脳梗塞への影響)。
・生命予後に影響を与える因子として、baselineのLVEFとMRの有無と程度についての記載がない。
・薬剤(アスピリン、スタチンなど)の使用率に群間差はないが、少し低い。
・一般的に静脈グラフトは動脈グラフトより開存率が劣るが、その使用率がわからない。
・追跡率は高い。

◇感想
CABGで両側の内胸動脈を使用しても片側でも、5年の時点での生存率に差はないという結果。5年で差がつかないなら、70歳を超えるような高齢者では、片側の内胸動脈だけで十分かもしれいない。

静脈グラフトとin-situの内胸動脈の差が出てくるのはこれからと思われるので、10年間のフォローアップで有意な差が出てくるかどうか(Kaplan-Meierをみるとあまり変わらない雰囲気)。もし、10年のスパンで差がでてくるなら、若年でCABGをする人には両側内胸動脈で、ということになるかもしれない。

PCSK9阻害薬は冠動脈のプラークを退縮させる GLAGOV試験

Effect of Evolocumab on Progression of Coronary Disease in Statin-Treated PatientsThe GLAGOV Randomized Clinical Trial
JAMA. Published online November 15, 2016 [Epub ahead of print]

《要約》
重要性
高容量のスタチン療法によるLDLコレステロールの減少は、冠動脈の動脈硬化の進展を抑制する。PCSK9阻害薬はスタチンを内服している患者のLDLコレステロールを低下させるが、この薬剤の冠動脈の動脈硬化に対する効果は評価されていない。

目的
スタチンによる治療を受けている患者で、PCSK9阻害薬による冠動脈の動脈硬化の進展に対する効果を検証する。

デザイン、セッティング、患者
GLAGOV試験は、多施設、二重盲検、プラセボ対照、無作為化試験で、2013年3月3日から2015年1月12日に登録された。北米、欧州、南米、アジア、オーストラリア、北アフリカの197施設から968例が組み入れられた。

介入
冠動脈造影で狭窄病変がある患者、月に1回エベロクマブ420mg、またはプラセボを皮下注する群のいずれかに無作為に割り付けた。投与期間は76週で、スタチンも内服している。

アウトカム
主要評価項目は、ベースラインから78週の間のプラーク体積率(PAV)の変化率である。PAVは血管内超音波(IVUS)で測定する。副次評価項目は、正常化全プラーク体積(TAV)の変化率と、プラークの減少のパーセンテージである。安全性や忍容性も評価した。

結果
968例(平均年齢59.8±9.2歳、女性269例、平均LDLコレステロール92.5±27.2mg/dl)のうち、846例がフォローアップ時にIVUSが行われた。プラセボと比較しエボロクマブ群では平均LDLコレステロールが低かった(93.0vs36.6mg/dl、difference:−56.5mg/dl、95%CI:-59.7to-53.4)。有効性主要評価項目であるPAVは、プラセボ群では0.05%増加し、エボロクマブ群では0.95%減少した。副次評価項目であるTAVは、プラセボ群で0.9mm3の減少、エボロクマブ群で5.8mm3の減少であった(difference:-4.9mm3, 95%CI:-7.3to-2.5)。エボロクマブはプラセボと比較し、大きくプラークを減少させた(PAVとしては、64.3%vs47.3%、difference;17.0%, 95%CI:10.4%-23.6%;TAVとしては、61.5%vs48.9%, difference17.0%, 95%CI:5.9%-19.2%)。

結論
スタチンを内服して、冠動脈造影で狭窄病変が確認された患者に、エボロクマブを加えることで、プラセボと比較し76週時点でのPAVを大きく減少した。PCSK9阻害薬の効果を評価するためには、さらなる研究が必要である。

◇この論文のPICOはなにか
P:スタチンを内服しており、冠動脈造影で狭窄病変が確認された患者
I:月に1回、エボロクマブ420mg皮下注
C:月に1回、プラセボ皮下注
O:PAV変化率

inclusion criteria:18歳以上、冠動脈造影にて20%以上の狭窄がありIVUSが施行できる病変、スタチンの容量が4週間安定しておりLDLコレステロール80mg/dl以上、スタチンの容量が4週間安定しておりLDLコレステロール60−80mg/dlで冠動脈リスクを有する患者

exclusion criteria:コントロール不良の糖尿病・高血圧・心不全・腎不全・肝疾患

◇baselineは同等か
characteristics
群間差にはついて記載がない。60歳ぐらいで、男性が70%、ほぼ白人。BMI29とかなり太めで、高血圧やもともと冠動脈疾患を持っている人が多い。60%が高容量のスタチンを内服しており、低容量は1%未満。動脈硬化疾患を有している人を対象にしているだけあって、抗血小板薬が90%半ばと高く、β遮断薬やACE阻害薬/ARBも3/4の人が内服している。

◇結果
地域:北米、欧州、南米、アジア、オーストラリア、北アフリカ
登録期間:2013年3月3日〜2015年1月12日
観察期間:78週
無作為化:interactive voice response systemを用いる。置換ブロック法。
盲検化:二重盲検、アウトカム評価者も盲検化されている
必要症例数:950例(PAV変化率の差が0.71%、power90%、αlevel0.05、25%の治療中止と仮定)
症例数:968例(エボロクマブ群484例、プラセボ群486例)
追跡率:エボロクマブ群87.3%、プラセボ群87.0%
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Amgen社)

biocheical
LDLは90台から30台に低下。HDLも少し上昇する。糖尿病の明らかな悪化はなさそう。

result
PAVが少しでも減少したのは、エボロクマブ群で67%、プラセボ群で47%だった。

◇批判的吟味
・これだけLDLコレステロールが低下したら、どちらに割り付けられたかわかるだろうな。
・仮に盲検化できてなくても、客観性の高いエンドポイントなので影響はなさそう。
・プラークの退縮が心筋梗塞のサロゲートマーカになるのか。
・壊死性プラークが退縮していれば、心筋梗塞は減りそう。
・PAV1%未満の変化が、臨床的にどれほどのインパクトがあるのかわからない。
・筋肉痛、肝障害、新規の糖尿病の発症などの有害事象は変わらないらしいが、サンプルサイズが小さいので評価できない。

◇感想
冠動脈に狭窄があり、スタチンを内服している患者にPCSK9阻害薬を追加すると、冠動脈のプラークは退縮する。

筋肉痛などの副作用でスタチンが内服できない人は少ないけどいるし、スタチンを飲んでLDLが下がっていても心筋梗塞を繰り返す人もいる。そういう人に使う価値はあると思うので、これがどれだけ臨床的なアウトカムを改善させるかとか、有害事象のデータとか、期待して待ちたい。

左冠動脈主幹部病変 5年間のMACCEはCABGよりもPCIで多い

Percutaneous coronary angioplasty versus coronary artery bypass grafting in treatment of unprotected left main stenosis (NOBLE): a prospective, randomised, open-label, non-inferiority trial.
Lancet. 2016 Oct 31. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
冠動脈バイパス術(CABG)は左冠動脈主幹部病変の標準的治療であるが、経費的冠動脈インターベンション(PCI)での治療も増えている。我々は、左冠動脈主幹部病変でPCIとCABGを比較した。

方法
前向き、無作為化、オープンラベル、非劣性試験である。北欧36施設で左冠動脈主幹部病変を有する患者を登録し、PCIとCABGに1:1に無作為に割り付けた。安定狭心症、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)を対象とし、24時間以内のST上昇型心筋梗塞(STEMI)、1年以内の生命予後は除外した。主要評価項目はmajor adverse cardiac or cerebrovascular events(MACCE)で、全死亡、手技に関連していない心筋梗塞、再血行再建、脳梗塞の複合エンドポイントである。5年間のフォローアップで、ハザード比の95%信頼区間が1.35を超えない場合に、PCIはCABGに対し非劣性とし、ITT解析を行った。

結果
2008年12月9日から2015年1月21日までに、1201例をPCIとCABGに無作為に割り付けた。PCI群598例、CABG群603例で、両群とも592例をITT解析に組み入れた。5年間のMACCEは、PCI群で29%(121イベント)、CABG群で19%(81イベント)、HR1.48(95%CI1.11-1.96)で、非劣性の上限を超えており、CABGはPCIと比較し有意にMACCEの発症が低かった(P=0.0066)。as treatment解析では、28%vs19%、HR1.55(95%CI1.18-2.04)であった。5年間の全死亡は、12%vs9%、HR1.07(95%CI0.67-1.72)、5年間の心筋梗塞は、7%vs2%、HR2.88(95%CI1.40-5.90)、5年間の再血行再建は、16%vs10%、HR1.50(95%CI1.04-2.17)、脳梗塞は5%vs2%、HR2.25(95%CI0.93-5.48)であった。

結論
これらの結果から、左冠動脈主幹部病変の治療はPCIよりCABGがベターであると考えられる。

◇この論文のPICOはなにか
P:左冠動脈主幹部病変
I:PCI
C:CABG
O:MACCE(全死亡、手技に関連していない心筋梗塞、再血行再建、脳梗塞の複合エンドポイント)

inclusion criteria:安定狭心症、不安定狭心症、NSTEMI、左冠動脈主幹部に50%以上の狭窄があること、FFR0.80以下であること、その他の病変が複雑でなく3つ以下であること(複雑病変とは、CTO、2stent techniqueが必要な病変、石灰化病変、屈曲病変である)

exclusion criteria:24時間以内のSTEMI、1年以内の生命予後

◇baselineは同等か
baseline
同等。平均年齢66歳、女性は20%、DMが15%。Syntaxスコアは22±8なので、大部分はlowとintermediateで、80%でbifurcationを絡む。

◇結果
地域:北欧(ラトビア、エストニア、リトアニア、ドイツ、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、英国、デンマーク)
登録期間:2008年12月9日〜2015年1月21日
観察期間:4.1年(中央値、四分位範囲3.0−5.0)
無作為化:web-based computer randomisation systemを用いている。permutated block with stratification。
盲検化:オープンラベル。
必要症例数:1200例(2年間のフォローアップでMACCEがPCI群で30%、CABG群で23%、非劣性マージン1.35として算出)
症例数:1201例
追跡率:試験デザインとしては2年間なので、そこまでは約90%と良いが、今回の5年間のフォローアップデータは40%弱の追跡率になっている。
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Biosensors社)

PCIに関して。
88%がbifurcationを絡んでステントを留置されているが、KBTが行われたのは55%。35%が2ステント。第一世代DESは11%で使用されている。IVUSが使用されたのは、preで47%、postで74%と低い。

CABGに関して。
84%がon-pumpで行われている。LADに動脈グラフトを使用したのは93%で、内胸動脈は86%とちょっと低い。

result

◇批判的吟味
・追跡率が低すぎるので、無作為化は維持できていないと考えられる。
・動脈グラフト・内胸動脈の使用率が少し低いので、長期的なグラフト開存率は低くなるはず。
・静脈グラフトは10年で半分ぐらいの開存率なので、これからCABG群で再血行再建が増えてくるかも。
・ほとんどon-pumpなので、周術期の脳梗塞はoff-pumpより高いはず。
・IVUS使用率、KBT施行率が低く、再血行再建を増やす方向に働くかも。
・脳梗塞がPCIで有意に高くなっている理由がわからない。

◇感想
左冠動脈主幹部病変にPCIをやるか、CABGをやるかで比較した試験。追跡率が40%と低いので内的妥当性は微妙だけど、5年間のフォローアップで、全死亡は変わらないが、心筋梗塞は約3倍、再血行再建は1.5倍、PCIで多くなってしまう。

そりゃそうだろうなという結果でした。ただ、追跡率が低かったり、PCIの手技が日本で行われるような手技ではなかったり、on-pumpCABGが多かったりと、日本の実情とは異なる印象でした。

Syntax試験とは異なり、PCI群でSyntaxスコアとイベントに関連はなかった様です。感覚的には、病変の複雑性が増せばイベント発症率は上がりそうなので、これも追跡率が低いことと関連があるのかもしれません。

【VIEWPOINT】コレステロール、心血管疾患、スタチン、PCSK9阻害薬、将来のLDLコレステロール低下療法

Cholesterol, Cardiovascular Risk, Statins, PCSK9 Inhibitors, and the Future of LDL-C Lowering
JAMA. 2016;316(19):1967-1968.

冠動脈疾患一次予防、特に二次予防において、積極的LDLコレステロール低下療法はここ30年間の公衆衛生に最も寄与したもののひとつである。LDLコレステロールが低いと冠動脈疾患が起こりにくく、遺伝子変異によりLDLコレステロールが高くなると冠動脈疾患のリスクが高くなる。LDLコレステロールは動脈硬化により、濃度依存的に冠動脈疾患のリスクを上昇させる。

LDLコレステロール値は、スタチンと冠動脈疾患との関連ではサロゲートマーカーであるが、他の薬剤と冠動脈疾患との関連ではサロゲートマーカーになりえるかは明らかではない。CETP阻害薬であるトルセトラピブは、LDLコレステロールは減少したが、心血管疾患の発症は抑えられず、またエゼチミブでは、スタチンと併用することでLDLコレステロールは低下したが、臨床的なエネフィットはわずかであった。

PCSK9阻害薬は、耐えうる最大量のスタチンと併用してLDLコレステロールを低下させることにより、心血管疾患を減少させることが期待できるが、安全性・有効性についての長期試験が必要である。

PCSK9阻害薬は、臨床での使用期間や心血管アウトカムのデータが十分でなく、特に認知機能と糖尿病への悪影響は興味深い。今後数年でRCTの結果が報告されるだろう。

2013年のACC/AHAのコレステロールガイドラインでは、ハイリスクの患者に対する高容量スタチンを勧めているが、2016年のACCコンセンサスステートメントでは、二次予防でLDLコレステロール低下率が50%未満の患者、LDLコレステロールの目標値を達成できていない患者など残余リスクがある患者に非スタチン療法(エゼチミブ、PCSK9阻害薬)を勧めている。

しかし、患者は多様である。スタチン単独でLDLコレステロールが十分低下する患者、スタチンで筋肉痛などの有害事象が起こる患者、LDLコレステロールが高くても心筋梗塞にならない患者、LDLコレステロールが低くても心筋梗塞を発症する患者など様々である。RCTと観察研究は、実臨床での多様な患者を一般化したものである。

スタチンのLDLコレステロール低下効果のkなりのエビデンスがあるにもかかわらず、高容量スタチン療法が行われている冠動脈疾患患者は半分以下である。この残余リスクに対しては多角的なアプローチが必要である。

アドヒアランスを改善させるために、ソーシャルメディアやデジタルヘルスを用いる方法がある。デジタルプラットフォームでは、患者がスタチンを自己中断する前に筋肉痛などの症状について相談でき、主治医は別のスタチンや減量などの提案が可能になる。

大規模で多様な集団を対象に遺伝子、淡白、環境、行動などのデータを取ることで、よりリスクが高い患者を同定できるようになるかもしれない。集団データから得られた情報は、個別化医療と心血管疾患を減少させるための治療方針の決定に役立つだろう。

STICH試験 年齢別サブグループ解析

Ten-Year Outcomes After Coronary Artery Bypass Grafting According to Age in Patients With Heart Failure and Left Ventricular Systolic Dysfunction: An Analysis of the Extended Follow-Up of the STICH Trial (Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure).
Circulation. 2016 Nov 1;134(18):1314-1324.

《要約》
背景
EFが低下し、冠動脈バイパス術(CABG)の合併症のリスクがより高い心不全において、高齢により冠動脈疾患(CAD)の有病率は高くなる。虚血性心筋症による心不全で、異なる年齢でもCABGの効果が同等にあるかどうかは明らかではない。

方法
STICH試験で、CABGの適応があるEF35%以下のCAD患者1212例を、CABGと薬物療法に無作為に割り付け、9.8年間フォローした。

結果
平均年齢60歳、12%が女性、36%が非白人、baselineのEFは28%であった。年齢により4つのカテゴリに分けた。Quartile1:54歳以下、Quartile2:55−59歳、Quartile3:60−67歳、Quartile4:68歳以上である。より高齢の患者で併存疾患が多かった。高齢者(Quartile4)と若年者(Quartile1)の全死亡を比較した場合、薬物療法でも(79%vs60%、P=0.005)、CABGでも(68%vs48%、P<0.001)、高齢者で高かった。対照的に、心血管死の年齢による統計学的な差は、薬物療法でも(Quartile4vs1、53%vs49%、P=0.388)、CABGでも(Quartile4vs1、39%vs35%、P=0.103)認めなかった。Quartile4でも1でも、もっとも多い死亡原因は心血管死であった(79%、62%)。全死亡に対するCABGの効果は、年齢が上昇するほど減少する傾向にあるが(P for interaction=0.062)、心血管死に対するCABGの効果は、年齢に関わらず一貫している(P for interaction=0.307)。CABGは、高齢者よりも若年者で、全死亡と心血管イベントによる入院を減少させた(P for interaction=0.004)。CABGを行った患者で、人工心肺接続時間およびICU滞在日数は、年齢による違いはなかった。

結論
高齢者と比較し若年者では、薬物療法に加えCABGを行うことで、全死亡および全死亡と心血管イベントによる入院が大きく減少した。年齢に関わらず、薬物療法に加えCABGを行うことが、心血管死を減少させる。

◇この論文のPICOはなにか
P:CABGの適応があるEF35%以下のCAD
I:CABG+薬物療法
C:薬物療法のみ
O:全死亡

◇デザイン、対象、観察期間
・RCTの年齢によるサブグループ解析
・COX比例ハザードモデル?
・1212例
・観察期間:9.8年(中央値)

characeristics
年齢があがるほど白人が多くなる。非白人の方が生命予後が悪くなる要因(経済的要因など)があるのでしょうか。基礎疾患は、やはり年齢が高いほど多い。Quartile4で症状がない人が多いのは活動性の低さを表している気がする。当たり前だが、年齢が高いほど、Hbが低く、Crが高くなる。

medical-and-device
βblockerは入れにくいのか、80%強しか内服していない。スタチンは80%と低め。おそらく100%近い割合で、なんらかの抗血栓薬を内服してそう。

anatomy
MRの程度は年齢による差がない。三枝疾患やLAD近位部病変が多い。

◇結果
result
全死亡は、CABG群で低い。心血管死もQuartile3でほぼ同等だが、他は一応CABG群で低い。

◇批判的吟味
・心血管のアウトカムを評価するのに十分な観察期間。
・交絡因子の調整は??
・Quartile3だと、心血管死は薬物療法と変わらないし、Quartile4だとunkownが多いので、これが心血管死と考えると、高齢になるといろいろ併存疾患もあるし、ちょっとCABGは微妙かもしれない。
・Quartileの年齢の切り方が67歳としているのは、事前に設定されているのか。あるいは事後なのか。
・当たり前だが、60歳を超えると、非心血管死が多くなる。

◇感想
STICH試験の年齢によるサブグループ解析で、どの年齢層でもCABG+薬物療法を行うことで、全死亡、全死亡と心血管イベントによる入院を減らしたという結果。当たり前かもしれないが、CABG群でも薬物療法群でも、年齢が高くなると10年生存率は低くなってしまう。60歳以下の人でも10年生存率が半分ぐらいなので、冠動脈疾患はここまで進行してしまうと厳しい。