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EOLIA試験 重症ARDSへのECMO導入

重症呼吸不全へのExtracorporeal membrane oxygenation (ECMO) により死亡率の低下が報告され、1970年代には2つのRCTが行われた。(UpToDateでは poorly designed randomized trialsと表現されていたが) それらのRCTではECMOの有効性が示されなかったものの、ECMOセンターでECMOを含めた治療を受けることによりARDSの予後 (6ヶ月死亡率+severe disability) が改善することがCESAR試験というRCTで示された。

ECMO群でECMOが導入されていなかったり、標準治療群で人工呼吸器設定が標準化されていなかったりという問題は指摘されている様ではあるが、重症ARDSに対するECMO導入 (ECMOセンターでの治療) は推奨されている(1-2)

肺保護戦略に基づいた人工呼吸器設定をした上で、P/F比<80とか、pH<7.2などがECMOの適応とされる。

このEOLIA試験は、重症ARDSに対する早期のECMO導入の有効性を検証したRCT。

Extracorporeal Membrane Oxygenation for Severe Acute Respiratory Distress Syndrome.
N Engl J Med. 2018 May 24;378(21):1965-1975.

【PICO】
P:重症ARDS
I:VV-ECMO導入
C:ECMOを使用しない通常治療
O:60日死亡率

inclusion criteria:次の3つのうちひとつを満たす。人工呼吸器最適化 (FiO2≧0.8、一回換気量6ml/kg理想体重、PEEP≧10mmHg) にも関わらず、 ①P/F<50mmHgが3時間以上持続、②P/F<80mmHgが6時間以上持続、③PaCO2が60mmHgありpH<7.25が6時間以上持続 (呼吸数35回/分、プラトー圧32以下)
exclusion criteria:18歳未満、7日以上の人工呼吸器管理、高度肥満 (1kg/cm身長またはBMI>45)、妊娠、普段から酸素療法、心原性ショックでECMO、HITなど。

【試験の概要】
デザイン:open label RCT
地域:フランス
登録期間:? 2017年4月の中間解析で早期中止
観察期間:60日
症例数:249例 (ECMO群124例、通常治療群125例)
解析:ITT解析
スポンサー:the French Ministroy of Health。ECMOカニューレはMaquet-Getinge社が提供。

【患者背景】
両群に有意差はない。平均年齢52歳、SOFAスコア10、ARDSの原因 細菌性肺炎44%、ウイルス性肺炎21%、他35%、P/F比73、PEEP11mmHg、呼吸数30/min、一回換気量6.0ml/kg、プラトー圧30cmH2O、動脈血pH7.24、PaCO2 57mmHg、伏臥位56%、筋弛緩薬92%

【結果】
予定症例の75%が集まったところで、早期中止 (early termination for futility)
35/125例 (28%) が通常治療からECMO導入へクロスオーバー。
ECMO群でECMOが導入されたのは121/124例 (98%)

ECMO群 vs 通常治療群
60日死亡率 (primary endpoint)
35% vs 46% RR:0.76 (95%CI:0.55-1.04)

ICU滞在日数
23日 vs 18日 差:5 (95%CI:-1to10日)

在院日数
36日 vs 18日 差:18 (95%CI:6-25日)

ventilator free days
23日 vs 3日 差:20 (95%CI:-5to32)

【批判的吟味】
・通常治療群でECMOへのクロスオーバーが28%あるため、ECMOの効果を薄める方向へ働くかも。
・早期中止により予定症例数に満たずパワー不足。
・通常治療群で、伏臥位療法や筋弛緩薬 (Cisatracurium?) が多いけど、日本だとどれくらいの割合?
・ICU滞在日数や在院日数が通常治療群で少ないのは、死亡率が高いからかもしれない

【まとめと感想】
有意差はないが、ECMOは良さげ。重症ARDSはECMOセンターへの転院を検討。

(1) Extracorporeal membrane oxygenation (ECMO) in adults [Up To Date]
(2) N Engl J Med 2011;365:1905-14

集中治療における不整脈と心臓突然死のマネージメント

How to manage various arrhythmias and sudden cardiac death in the cardiovascular intensive care
J Intensive Care. 2018 Apr 11;6:23. doi: 10.1186/s40560-018-0292-x.

ICU/CCUでのVT/VF・electrical stormのマネージメント
Tokyo CCU Network (2012−2014年) のデータでは、VT/VFの基礎疾患は、虚血性心筋症29.2%、DCM8.2%、HCM7.3%、心サルコイドーシス2.3%、ARVC1.7%だったが、約40%が特発性VT/VFで器質的異常がなかった。

AMIに関連したVT/VF・electrical storm
心室性頻脈性不整脈はAMIのどのフェーズでも起こりうる。electrical stormを24時間以内の2回以上の持続する心室性頻脈性不整脈とすると、その発生率は2.67% (Tokyo CCU Network)。Electrical stormは梗塞サイズと血行動態悪化と関連がある。

βblocker、アミオダロン、ニフェカラントの有効性が示されている。

血行動態の悪い患者では、VT/VFが薬物抵抗性であることがあり、IABPが有効なことがある。おそらく、血行動態の改善と冠血流増加による。心原性ショック、うっ血による低酸素血症、心静止にはPCPSを導入する。星状神経節ブロックや腎交感神経アブレーションが有効とのいくつかの報告がある。

上にあるような治療に抵抗性のVT/VFは、遺残プルキンエ線維起源のVPCによって起こっていることがある。VPCは比較的narrowで、それにより多形性VTが引き起こされる。アブレーションが有効。

非虚血性心疾患に関連したVT/VF・electrical storm
いろんな疾患があり、複数のメカニズムがある (scar関連リエントリー、ヒス束-Purkinje関連リエントリー、自動能亢進、triggered activityなど)。脚枝間リエントリー性頻脈はDCMに特異的だが、虚血性心疾患ではまれ。進行した非虚血性心筋症では、自然に、あるいはペーシングによりQRS波形が多形性を示すことがあり、pleomorphic VTと呼ばれる。DCMでは心外膜起源が多い

HCMのVTは多形性であることが多いが、mid-ventricular HCMで進行すると心尖部が瘤化し、そうなると単形性VTがよく見られる。

心サルコイドーシスは、コーカジアンやアフリカ系アメリカ人では頻度は低いが、日本では多い。よく見られる不整脈は、完全房室ブロックと、それに続くVTである。scar関連VTであり、アブレーションが成功しても再発は多い (30-40%/年)。

非虚血性心筋症の心室性頻脈性不整脈に対する薬物療法のファーストラインはアミオダロン。ただし、SCD-HeFT試験では。死亡率はプラセボと有意差がなかった。なので、DCMに対するルーチンでの使用は推奨されない。アミオダロンはVTのcycle lengthを伸ばす。ICDのショック回数を減らす。

βblockerはDCMの心不全関連死や心臓突然死を減らすが、βblockerにしろアミオダロンにしろ、重症心不全への導入は副作用に用心を。

特発性VT
ベラパミル感受性VTのQRSは比較的narrow。左脚後枝起源では、CRBBB+上方軸に、左脚前枝起源ではCRBBB+下方軸になる。アブレーションの成功率は高い(>90%)。そのほかの特発性VTでは、左室や右室の流出路起源が多く、ついで僧帽弁や三尖弁の弁輪、乳頭筋起源が多い。

ベラパミルのみでコントロール不十分なら、次の選択肢はβblocker。アブレーション前の12誘導心電図は重要。

QT延長とTorsade de Pointes (TdP)
高齢、心疾患 (特にMI)、心不全、肝機能・腎機能障害、電解質異常、徐脈、QT延長や低K血症をきたしうる薬剤の使用 (利尿薬、抗不整脈薬、鎮静薬)がリスク。心電図でのTdP予測因子は、QTc>500ms、macroscopic T wave alternance (TWA)。典型例だと、RR間隔がshort-long-short sequenceでTdPへ移行する。

ICU/CCUでの徐脈のマネージメント
最もコモンなものは房室ブロック (AVB)。原因は、急性虚血、慢性虚血 (虚血性心疾患)、急性炎症(心筋炎)、慢性炎症 (心サルコイドーシス)、薬剤 (CCB、βblocker、抗不整脈薬classⅠ・Ⅲ)、電解質異常 (高K血症)など。これらの原因がない場合は、特発性AVBで遺伝子が関与していることが多い。

洞機能不全
洞機能不全は、特発性に退行性に徐々に進行。非心原性の原因は、薬剤性、迷走神経過緊張、電解質異常、睡眠時無呼吸、甲状腺機能低下など。

一時的ペースメーカと恒久的ペースメーカ
AMIでは、下壁梗塞と関連があり、短期間だが一時的ペースメーカが必要になることがある。恒久的ペースメーカが必要になることはまれ。

ICU/CCUでのAFのマネージメント
AFはCCUではコモン。心不全やAMIでは、さらに多い。

AFと心不全
AFと心不全は、片方がもう一方を悪化させる関係にある。あるメタ解析では、AFは死亡・腎不全・脳梗塞と関連があったが、最もリスク増加が大きかったのは心不全だった (RR:4.9, 95%CI:3.04-8.22)。

AFとAMI
AMIでは様々な要因が関連しPAFを引き起こすが、最も重要な要因は、広範囲の重症心筋梗塞に伴うポンプ不全である。

敗血症
炎症に起因する複数の要因が関与。AFは予後不良と関連あり。電解質異常、アシデミア、β刺激薬、低酸素血症など是正できるものは、速やかに是正する。

重症患者におけるAFのマネージメント
血行動態不安定、コントロールが困難な虚血、適切なrate controlができない場合は、カルディオバージョンを。単相性なら200Jで、二相性なら120−200Jで。だめなら、50−100J上げる。それでもだめならニフェカラントなどのclassⅢの抗不整脈が、血圧を下げずに心拍数を落とせるかもしれない。さらに、ニフェカラントはAF停止に有効で、また除細動域値を下げる作用もある。

心不全やAVBがない患者のrate controlなら、βblockerや非ジヒドロピリジン系CCBを使用する。アミオダロンは血行動態を悪化させずにrate controlができるが、この目的では保険は通らない。

患者の状態が落ち着いたら、rhythm controlと抗凝固療法を検討する。AF-CHF試験では、薬剤もしくはDCでのrhythm controlは、rate controlと比較し、死亡・心不全増悪を減らさなかった。

tachycardia-induced cardiomyopathy (TICM) とtachycardia-mediated cardiomyopathy (TMCM)
心機能低下の原因がAFしかないものがTICMで、rate controlをつければ心機能は可逆的。TMCMは器質的心疾患があり、AFによりさらに心機能が低下したもの。rate controlをつけても心機能が改善しないものは、TICMでもTMCMでもない。完全な心機能の改善には1−6ヶ月要する

心臓突然死のリスク層別化と予防法
デバイスにはICDとCRT-Dがある。

冠動脈疾患での心臓突然死リスク層別化
AMI発症24時間以降に起こったNSVTは、重症心室性頻脈性不整脈と関連があるが、AMI急性期の心室性不整脈に対するICD導入は予後を改善しない。EF≦35%のハイリスク患者では少なくとも1ヶ月は観察を要する。着用型除細動期 (WCD) は致死的不整脈の一過性のリスクを有する患者や、AMI急性期の心室性不整脈に対しICDへのブリッヂ治療として役割があるかもしれない。

MI慢性期で、VF、多形性VT、血行動態の崩れた単形性VT、薬物抵抗性やアブレーションで治療できない単形性VTを認めた場合には、ICDはclassⅠである (JCSガイドライン)。一次予防では、適切な薬物療法にも関わらずEF≦35%、NYHAⅡ-Ⅲ、NSVTの症例には、ICDはclassⅠである。また、EF≦35%、NYHAⅠで、NSVTがあり、EPSにてVTが誘発された症例でもclassⅠである。

非虚血性心筋症での心臓突然死リスク層別化
適応は虚血と同じような感じだが、誘発されたVT症例でのICDの効果は虚血のそれより乏しい。HCMでは、左室壁≧30mm、心臓突然死の家族歴、運動時血圧反応異常、NSVTがリスクファクターで、classⅡaの項目である。

チャネル病での心臓突然死リスク層別化
QT延長症候群では、VF・心静止の既往があればclassⅠのICD適応で、βblocker抵抗性の失神・TdPではclassⅡ。Brugada症候群では、VF・多形性VTの既往はclassⅠ、coved型ST上昇があり、かつ失神・心臓突然死の家族歴・EPSで誘発されたVFのうち2つに当てはまればclassⅠ。

バンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタムの併用は急性腎障害を増加させる

Vancomycin Plus Piperacillin-Tazobactam and Acute Kidney Injury in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Crit Care Med. 2018 Jan;46(1):12-20.

【概要】
VCM + PIPC/TAZと、VCM単独、VCM + 他のβラクタム薬、PIPC単独の腎毒性・AKI発症率を比較したSR。
AKIは、それぞれの試験での定義に則る (ほとんどの試験でAKIN、RIFLE、KDIGO、vancomycin consensus guidelineが使われている)。
RCTと観察研究を統合。
random effect model。

VCM=バンコマイシン
PIPC/TAZ=ピペラシリン/タゾバクタム
CFPM=セフェピム

【結果】
AKI (primary endpoint)
VCM + PIPC/TAZ vs VCM単独
I2=53%
OR:3.40 (95%CI:2.57-4.50)

VCM + PIPC/TAZ vs CFPMまたはカルバペネム
I2=78%
OR:2.68 (95%CI:1.83-3.91)

VCM + PIPC/TAZ vs PIPC/TAZ単独
I2=56%
OR:2.70 (95%CI:1.97-3.69)

重症例に限ると、VCM + PIPC/TAZとVCM + CFPM、VCM + PIPC/TAZとPIPC/TAZ単独ではAKI発症率に差はなかったが、VCM + PIPC/TAZとVCM単独では有意差あり (OR:9.62 [95%CI:4.48-20.68] I2=0%)。

AKI発症までの時間は、VCM + CFPMとVCM + PIPC/TAZを比較した試験が5つあった。それを統合するとVCM + CFPMよりVCM + PIPC/TAZの方が早めだが、有意差はなかった (−1.3日、95%CI:-3.0to0.41)。

【まとめ】
VCM + PIPC/TAZの併用では、AKIが増えるかもしれない。異質性はそこそこ。Discussionには出版バイアスが否定できないと。

重症例に限ると、VCM単独よりVCM + PIPC/TAZでAKIが増加したが、他の薬剤 (VCM + CFPMやPIPC/TAZ単独) とは差がなかった。うーん、VCM単独で投与する患者群とVCM + PIPC/TAZを投与する患者群では、そもそも集団の性質自体、別な気がするが。

VCM + PIPC/TAZがAKIを増やすかもしれないということは、念頭に置いておいた方がいい。

院外心停止での体温管理療法 (TTM) 目標体温と継続時間

心原性心停止で、偶発的低体温になった患者で予後が良かったり、心原性心停止の犬で軽度低体温療法が脳障害を減少させたという報告があった。人を対象とし軽度低体温療法の有効性を検証したRCTは、2002年に初めて報告された (HACA試験)。(1)

心室細動 (VF) による院外心停止を対象とし、32−34℃・24時間の体温管理を行う群と、体温管理を行わない群に無作為化。体温管理にはTheraKoolという冷気が出るマットレスを使用。目標体温に到達するまでの時間は8時間 (中央値) で、復温は受動的に行い、36℃以上になるのに8時間 (中央値) かかっている。標準治療群では、体温は37℃台で推移。

登録が進まず、かつ資金が不足したことにより早期中止になっているが、273例が登録され、6ヶ月死亡率は低体温療法群で41%、通常治療群で55%であった (リスク比:0.74、95%CI:0.58−0.95)。

さらに小規模のRCTではあるが、VFによる心停止を対象とし、32−34℃・12時間の低体温療法と通常体温と比較。低体温療法群で神経学的予後が有意に改善することが示された (49% vs 26%)(2)

この2つのRCTの結果を受け、VFによる院外心停止で体温管理療法 (TTM) が標準治療としてガイドラインで推奨されるようになった。

ただ、TTMの脳保護効果について、遅発性細胞死の抑制、脳代謝抑制、フリーラジカル産生抑制などによるものと推測されているが、そのメカニズムはよくわかっていない。実は、低体温にすることに生命予後や神経学的予後を改善させる効果はないのかもしれない。

ある観察研究では、ROSC後48時間以内に体温が37℃から1℃上昇するごとに、神経学的予後が悪化することが示されている (オッズ比:2.26)(3)。生命予後や神経学的予後の改善が示された上の2つのRCTでも、通常体温群の体温 (中央値) は37℃台になっていたことから、低体温がアウトカムの改善をもたらしたのか、あるいは37℃を超える体温が予後の悪化をもたらしたのかはわからない。

32−34℃の低体温が生命予後や神経学的予後を改善したのではなく、高体温を避けることがそれらのアウトカムの改善につながったことを示唆したのが、TTM試験である(4)

993例の院外心停止を、目標体温33℃と36℃に無作為化し、72時間は両群とも発熱を避けるという方法が取られた。primary endpointは試験終了 (中央値256日) までの全死亡、secondary endpointは180日時点の神経学的予後不良と死亡とし、いずれも両群に有意差はなく同程度だった。

全有害事象は33℃群で多い傾向で、低K血症は有意に、肺炎や穿刺部出血などは多い傾向が見られた。

この結果から、36℃の体温管理を行うことは妥当と考えられるが、すべての患者で33℃が無益かどうかについては明らかではなく、例えば、より重症な患者 (体動がない・脳幹反射消失・頭部CTですでに虚血性変化を認めるなど) では、33℃を目標としたTTMが良いかもしれない。

TTMの目標体温は少なくとも24時間維持することが推奨されているが、24時間と48時間を比較したRCTでは、両群で神経学的予後に差はなく、48時間で有害事象が有意に多かった (そのメインは肺炎)(5)。このRCTは目標体温を33℃としており、低体温による細胞性免疫の低下や筋弛緩薬投与による喀痰排出不全が原因と推測する。

まとめると、VFによる院外心停止には目標体温32−36℃とし24時間以上のTTMが推奨されているが、基本的には35−36℃程度での体温管理を行い (それ以上下げようとすると多くの場合で筋弛緩薬が必要になる)、72時間以内の発熱は避けるというスタンスで良いだろうと思います。

(1) N Engl J Med. 2002;346:549–56.
(2) N Engl J Med. 2002;346:557–63.
(3) Arch Intern Med. 2001;161(16):2007-12.
(4) N Engl J Med. 2013;369(23):2197-206.
(5) JAMA. 2017;318(4):341-350.

せん妄リスクのある重症患者への予防的ハロペリドール投与は無益

Effect of Haloperidol on Survival Among Critically Ill Adults With a High Risk of Delirium: The REDUCE Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2018;319(7):680-690.

【PICO】
P:ICUに2日以上滞在予定の患者
I:予防的ハロペリドール1mgまたは2mg 1日3回静注
C:プラセボ 1日3回静注
O:28日間の生存日数

secondary endpoint:90日生存率、せん妄発生率、delirium free time (28日間)、coma free time (28日間)、人工呼吸器装着期間、ICU滞在日数、入院日数

exclusion criteria:すでにせん妄になっている、パーキンソン病、認知症、アルコール乱用、急性神経疾患、精神疾患の既往、抗精神病薬の使用、重大な心室性不整脈の既往、QTc500ms以上など

【試験の概要】
デザイン:DB-RCT
地域:オランダ
登録期間:2013年7月〜2016年12月
観察期間:90日間
症例数:1789例 (ハロペリドール1mg群350例、ハロペリドール2mg群732例、プラセボ群707例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
同等。ざっくりとした背景は、66歳、外科と内科疾患が半々、緊急入院80%、人工呼吸器70%、APACHE-IIスコア20、PRE-DELIRICスコア26、QTc440。

【結果】
ハロペリドール1mgは無益のため早期中止。

ハロペリドール2mg vs プラセボ
28日間の生存日数 (primary endpoint)
28日 vs 28日、difference:0日、HR:1.003 (95%CI:0.78-1.30)

せん妄の発生
33.3% vs 33.0%、difference:0.4% (95%CI:-4.6to5.4)

28日生存率、delirium free days、ICU滞在日数、入院日数にも差はなかった。

【まとめと感想】
ハロペリドールの予防投与は、28日生存日数を改善しなかった。今まで小規模のRCTでせん妄が減ったというデータはあったが、確たるエビデンスではなかったので、生存日数をアウトカムにしたのはちょっと無理があるかも。残念ながら、せん妄の発生率も差がなかったので、予防的投与にメリットはない。

抗緑膿菌作用を有するβラクタム薬は持続静注がよい?

Prolonged versus short-term intravenous infusion of antipseudomonal β-lactams for patients with sepsis: a systematic review and meta-analysis of randomised trials
Lancet Infect Dis. 2018 Jan;18(1):108-120.

【概要】
・敗血症を対象に、抗緑膿菌作用を有するβラクタム薬の長時間静注 (持続静注もしくは3時間以上の長時間注入) は通常の投与方法と比べ、生命予後を改善するか検証したSR。
・RCTのみ
・期間:2016年11月まで

【結果】
長時間静注 vs 通常投与
全死亡 (primary endpoint)
・全体
RR:0.70 (95%CI:0.56-0.87)、異質性 I2=0%、Egger’s test P=0.44

・カルバペネム
RR:0.67 (95%CI:0.49-0.91)、異質性 I2=0%

・βラクタマーゼ阻害薬配合剤 (PIPC/TAZ, TIPC/CVA)
RR:0.70 (95%CI:0.50-0.98)、異質性 I2=0%

・セファロスポリン
RR:0.83 (95%CI:0.40-1.74)、異質性 I2=28%

【まとめ】
βラクタム薬の長時間静注は、通常投与より死亡率を改善した。Egger’s test P=0.44と出版バイアスはない。異質性が低いが、これは小規模のRCTが多かったせいもあるだろう。ただ、forest plotをみると症例数やイベント数が多めのRCTでは、いずれも長時間静注がfavorableな結果なので、長時間静注はよさそう。

カルバペネム系にしろ・ペニシリン系にしろ・セフェム系にしろ、TAM (time above MIC) が重要で、持続静注にするとMICを超えているのかということがわからず、感受性 (MIC) は施設によって変わってくる。なので、この結果を一般化していいのかという疑問はある。個人的な意見としては、SRで示された結果であるので、自施設での感受性を考慮しながら、実臨床に適応していくのはありだと思う。

注意したいのは投与量と投与時間で、MEPMとPIPC/TAZは米国と同じ量が使えるが、CFPMやCZOPは日本だと少なめなので、やるのであればMEPMもしくはPIPC/TAZがベター。投与時間については、このSRでは長時間静注の定義を3時間以上としているが、ほとんどが持続静注だったので、24時間の持続静注がいいだろう。

ラメルテオンのせん妄予防効果

重症内科疾患を対象としたRCTで、プラセボと比較しラメルテオンにせん妄の予防効果があることが示されている(せん妄の発生:3%vs32%)(1)

これは、ICUセッティングでレメルテオンのせん妄予防効果を明らかにした初めてのRCT。

Effect of Administration of Ramelteon, a Melatonin Receptor Agonist, on the Duration of Stay in the ICU: A Single-Center Randomized Placebo-Controlled Trial.
Crit Care Med. 2018 Mar 27. doi: 10.1097/CCM.0000000000003132. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:ICUに入室した20歳以上の患者で、入室後48時間以内に経口摂取、もしくはNGtubeからの薬剤の投与ができる患者
I:ラメルテオン8mg内服
C:プラセボ内服
O:ICU滞在日数

exclusion criteria:ラメルテオンもしくはフルボキサミン(ルボックス)を内服している患者

ラメルテオンとプラセボは、プラインドされた状態で毎日20時に内服し、ICUを退室するまで継続する。ICU退室は、1日2回のICU医と主治医のカンファレンスで決定する。せん妄の評価は4時間おきにCAM-ICUに基づき行う。

せん妄に対する薬物治療が必要な場合は、リスペリドン1mg内服、もしくはデクスメデトメジン持続静注(最大0.7μg/kg/hr)のいずれかを行い、速やかなせん妄のコントロールが必要な場合は、ハロペリドール5mgを静注する。せん妄の重症度に応じて、さらにリスペリドン、ハロペリドール、その他の薬剤の投与を行う。

【試験の概要】
デザイン:RCT(患者・医療者・解析者の三重盲検)
地域:日本
登録期間:2015年5月〜2017年4月
観察期間:ICU入室〜退室まで
症例数:88例(ラメルテオン群45例、プラセボ群43例)
解析:ITT解析(割り付けられた薬剤を内服する前に退室・死亡した症例が各群2例ずつあり、それを除いて解析)
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
年齢68歳、APACHEⅡスコア23.9、アルコール多飲5%ぐらい、眠剤の使用10%ちょっと、心不全・AMI20%ちょっと、呼吸不全20%、敗血症25%ぐらい

年齢、APACHEⅡスコア、挿管の有無で層別化されていたので、そこはバランスがとれていたが、男性・認知症・敗血症・アルコール多飲は、ラメルテオン群で多かった。

【結果】
ラメルテオン群 vs プラセボ群
ICU滞在日数
4.56日 vs 5.86日(P=0.028、調整後)

せん妄の発生
24.4% vs 46.5%(P=0.044)

せん妄の期間
0.78日 vs 1.40日(P=0.048)

【まとめと感想】
ラメルテオンにより、ICU滞在日数が短くなり、せん妄の発生やせん妄の期間が短くなる。

ICUセッティングでラメルテオンのせん妄予防効果があるか、pro-MEDIC試験という多施設大規模RCTが現在進行中。

(1)JAMA Psychiatry. 2014;71(4):397.

重症患者のストレス潰瘍予防に最も効果が高いのはPPIだが、院内肺炎は増える

ストレス潰瘍は重症患者で問題となる。多くは胃体部・胃底部にできるが、幽門部・十二指腸・食道下部にできることもある。

予防をしないと、1.5−15%ぐらいで起こるという報告がある(1−3)。ただ、これは内視鏡的な診断や、輸血が必要になるなどの臨床的に診断するものなど診断方法がまちまちなので、ストレス潰瘍でないものを多く含んだ数字かもしれない(15%というのは多い気がする)。

ショック、敗血症、48時間以上の人工呼吸器管理、凝固障害(PLT<5万、PT-INR>1.5、APTT>2倍)、消化性潰瘍の既往、外傷などがリスク。

胃酸の抑制がその予防になるが、PPIはH2RAより消化管出血を抑えるが、肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染症を増やす可能性がある。

そして、これはストレス潰瘍予防の薬剤についてのネットワークメタ解析である。

Efficacy and safety of stress ulcer prophylaxis in critically ill patients: a network meta-analysis of randomized trials.
Intensive Care Med. 2018 Jan;44(1):1-11.

【PICO】
P:重症患者
I/C:PPI、H2RA、スクラルファート、プラセボの内服
O:消化管出血、肺炎、死亡率、クロストリジウム・ディフィシル感染症の発生

<研究の選択>
組み入れた試験:57RCT、7293例
文献データベース:Cochrane CENTRAL, MEDLINE, EMBASE
期間:2017年4月まで
研究の種類:RCTのみ
funnel plot:なし
スポンサー:企業の関与なし

【結果】
PPI、H2RA、スクラルファート、プラセボをそれぞれ比較。

<臨床的に重大な消化管出血>
H2RAとプラセボ、スクラルファートとプラセボは有意差なし。
PPIvsH2RAだと、ARR:0.8%、オッズ比0.38(95%CI:0.20−0.78)
PPIvsスクラルファートだと、ARR:1.2%、オッズ比0.30(95%CI:0.13−0.69)

<肺炎>
PPIとH2RA・プラセボとの比較では、PPIと有意差はない。
ORはそれぞれ、1.27(95%CI:0.96-1.68)、1.52(95%CI:0.95−2.42)。

スルラルファートとの比較では、PPIが3.6%(95%CI:1.1−7.0)有意に肺炎を増やす。

<死亡率>
いずれも比較でも、有意な差はない。

<クロストリジウム・ディフィル感染症>
試験が1つしかなく、ネットワークメタ解析できなかった。

◇まとめと感想
ストレス潰瘍予防の薬剤として、PPIはもっとも効果に優れるが、院内肺炎は増やしてしまうかもしれない。絶対リスク減少・リスク増加をみると、消化管出血を減らし多分、肺炎が増えている感じ。いいのやら、悪いのやら。

(1)N Engl J Med. 1994;330(6):377.
(2)Ann Intern Med. 1987;106(4):562.
(3)Ann Intern Med. 1994;121(8):568.

SBT成功後の1時間の人工呼吸器再装着は、再挿管を減少させる

Reconnection to mechanical ventilation for 1 h after a successful spontaneous breathing trial reduces reintubation in critically ill patients: a multicenter randomized controlled trial.
Intensive Care Med. 2017;43(11):1660-1667

◇リサーチクエスチョン
SBT成功から抜管の間に呼吸筋を休ませることに、再挿管の予防的効果があるかどうかは明らかではない。SBT成功後に1時間人工呼吸器を再装着することで、再挿管が減るのか。

◇PICO
P:人工呼吸器管理中の重症患者
I:SBT成功後の1時間の人工呼吸器再装着
C:SBT成功直後に抜管
O:48時間以内の再挿管

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:スペイン
登録期間:2013年10月〜2015年1月
観察期間:48時間
症例数:470例(再装着群227例、対照群243例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

◇結果
SBTは、再装着群で94%が、対照群で87%がTチューブを使用。
時間は、30−60分が35%、1−2時間が39%、2時間以上が26%。

▶︎48時間以内の再挿管(再装着群vs対照群)
5% vs 14%, OR:0.33 (95%CI:0.16-0.65)

▶︎ICU滞在日数
11日 vs 10日、P=0.30

▶︎入院日数
26日 vs 23日、P=0.93

◇まとめと感想
SBTに成功した後に、人工呼吸器をもとの設定で1時間再装着することで、再挿管を有意に減少させた。ただし、ICU滞在日数、入院日数、死亡率に差は出なかった。

再挿管以外の臨床的なアウトカムに差はなくても、再挿管は重大なイベントだし、コストも手間もかからずにそれを予防できるならいいかも。

トレンドレンブルグ体位は人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防には実用的ではない

Randomized, multicenter trial of lateral Trendelenburg versus semirecumbent body position for the preventionof ventilator-associated pneumonia
Intensive Care Med. 2017;43(11):1572-1584

◇リサーチクエスチョン
トレンデレンブルグ体位は人工呼吸器関連肺炎(VAP)を予防する効果があるか。

◇PICO
P:人工呼吸器が装着された重症患者
I:トレンデレンブルグ体位
C:半座位(semirecumbent)
O:細菌学的に証明されたVAP

secondary endpoint:死亡率、人工呼吸器装着期間、ICU滞在日数

◇試験の概要
デザイン:オープンラベルRCT(多施設)
地域:?
登録期間:2010年12月2日〜2015年4月20日
症例数:395例(トレンデレンブルグ体位194例、半座位201例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Hill‐Rom社)

◇結果
▶︎細菌学的に証明されたVAP
0.5% vs 4.0% RR:0.13 (95%CI:0.02-1.03)

▶︎細菌学的に証明されたVAP/1000人工呼吸器装着日数
0.88 vs 7.19 RR:0.12 (95%CI:0.01-0.91)

▶︎ICU死亡率
30.4% vs 23.9% RR:1.27 (95%CI:0.92-1.76)

▶︎院内死亡率
37.1% vs 31.3% RR:1.18 (95%CI:0.90-1.56)

▶︎28日死亡率
30.9% vs 26.4% RR:1.17 (95%CI:0.86-1.60)

▶︎重大な有害事象
6例(酸素飽和度低下、体位変換直後の著しい血行動態の悪化、事故抜管、体位変換直後からの持続する徐脈、正中神経障害、頭蓋内出血)

◇まとめと感想
重大な有害事象のため、試験は早期中止となった。

VAPの予防にはある程度効果がありそうだが、死亡率はちょっと高い傾向。venous returnは増えるし、肺のコンプライアンスは悪くなりそう。そういった循環動態や呼吸への影響が、死亡率増加に繋がっているのかも。