カテゴリー別アーカイブ: 集中治療

重症患者に対するPPI静注による消化管出血予防効果

人工呼吸器、ショック、敗血症などは消化管出血のリスクで、消化管出血は死亡のリスクになります。PPIによる消化管出血の予防効果に関するRCTのシステマティックレビューについては以前記事にしました。プラセボやH2ブロッカーに比べ消化管出血は抑えられるが、肺炎は増えるかもしれないという感じの結果でした。

重症患者のストレス潰瘍予防に最も効果が高いのはPPIだが、院内肺炎は増える

この前、NEJMにSUP-ICU試験という、PPIの予防投与についてのRCTが出ました。

Pantoprazole in Patients at Risk for Gastrointestinal Bleeding in the ICU.
N Engl J Med. 2018 Oct 24. doi: 10.1056/NEJMoa1714919. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:消化管出血のリスクを有する患者
I:パントプラゾール40mg静注
C:プラセボ静注
O:90日死亡
secondary outcome:臨床的に重大な消化管出血、新規発症の肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)、急性心筋梗塞(AMI)

消化管出血のリスク=ショック、抗凝固薬の使用、腎代替療法下、24時間以上の人工呼吸器装着が予想される、肝疾患の既往、凝固異常

【試験の概要】
デザイン:RCT(multicenter、double blind)
地域:デンマーク
登録期間:2016年1月4日〜2017年10月22日
観察期間:90日
症例数:3298例(PPI群1645例、プラセボ群1653例)、脱落16例
解析:mITT解析
スポンサー:メーカーの関与なし

【結果】
患者背景は、肺疾患・凝固異常・緊急手術でちょっとだけ差があるのみ。
以下、ざっくりと。
年齢67歳、男性2/3、慢性肺疾患20%、慢性心不全9%、ICU入室からランダム化まで15時間、ICU入室理由 内科疾患60%;緊急手術30%;待機的手術10%、人工呼吸器80%、カテコラミン2/3、SOFA9点

PPI群 vs プラセボ群
▶︎90日死亡(primary endpoint)
31.1% vs 30.4% HR:1.02(95%CI:0.91-1.13)

▶︎消化管出血(secondary endpoint)
2.5% vs 4.2% HR:0.58(95%CI:0.40-0.86)

▶︎感染症(secondary endpoint)
16.8% vs 16.9% HR:0.99(95%CI:0.84−1.16)

【まとめと感想】
重症患者に消化管出血予防のためにPPIを投与しても、死亡率を改善するまでの効果はないけど、消化管出血は予防できる。上述のシステマティックレビューでも、PPI予防投与による死亡率改善は示されていなかったので、やはりそこまでの効果はないと言えます。著者はdiscussionでこのシステマティックレビューを引用して、死亡と感染に差がないけど消化管出血が減ったのは同じような結果だと言っていました。

ちなみに、AARは1.7%なので、NNTは59です。

感染症は特に有意差はなかったけど、PPIが肺炎とかCDIとかのリスクになり得ることは念頭において、消化管出血予防のために具合が悪い人にはちょこっとPPI入れておくってことでよいでしょう。

カロリー密度の高い経腸栄養を使ったfull feeding

Energy-Dense versus Routine Enteral Nutrition in the Critically Ill
N Engl J Med. 2018 Oct 22. doi: 10.1056/NEJMoa1811687. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:人工呼吸器装着中のICU患者
I:カロリー密度の高い経腸栄養(1.5kcal/ml)
C:通常の経腸栄養(1.0kcal/ml)
O:全死亡
secondary outcome:生存期間、28日死亡率など

カロリー密度の高い製剤は、通常の経腸栄養と比較し、蛋白質の量はほぼ同じで、脂肪と炭水化物が多い。

投与速度の目標は、1ml/kg/h(理想体重)として、48時間以内の到達することを推奨。

【試験の概要】
デザイン:RCT(multicenter, double blind)
地域:オーストラリア・ニュージーランド
登録期間:2016年6月21日〜2017年11月14日
観察期間:90日
症例数:3957例(1.5kcal群1971例、1.0kcal群1986例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【結果】
ざっくりとしたcharacteristics。
年齢57歳、男性60%、BMI29、非手術例73%、緊急手術17%、待機的手術10%、APACHEⅡスコア22、カテコラミン60%、RRT8%

ランダム化から栄養開始まで16時間、経腸栄養を受けた期間は6日で80%が目標カロリーに到達。投与量は約1200ml/日。

▶︎90日死亡率(primary endpoint)
1.5kcal群 vs 1.0kcal群
26.8% vs 25.7% 95%CI 1.05(0.94−1.16)

年齢・敗血症・外科or内科疾患、BMIなどすべてのサブグループで有意差なし。

▶︎28日死亡率(secondary endpoint)
22.9% vs 23.0% 95%CI:1.00(0.89−1.12)

【まとめと感想】
ガイドラインでは、25−30kcal/kg/日の栄養投与が推奨されているけど、そこまで強い根拠はなくて、むしろEDEN trialでは、400kcal/日のtrophic feedingでも1300kcal/日と死亡率や人工呼吸器装着期間に差はなかった。嘔吐は増えるし血糖は上がる。

このRCTでも1.5kcal/kgという多めのカロリーを投与しても、死亡率には影響がなかった。だから、trophic feedingで良いとは言えないけど、full feedingにする必要はなく、カロリー密度が高い経腸栄養をあえて使う必要もない。

経腸栄養は循環動態とかお腹の具合的に大丈夫そうなら、早めにちょこっと入れておく感じでいいのでしょう。

VA-ECMO下の心原性ショック・閉塞性ショックへの早期経腸栄養

重症患者での早期経腸栄養は死亡率は変わらないが、感染は減る可能性がある。ガイドラインなどでは、ショック患者ではせめて循環動態が安定するまでは経腸栄養は控えることが推奨されている。

心原性ショック・閉塞性ショックでVA-ECMOがついているような患者で、早期経腸栄養の安全性・有用性を検証したRCTや前向き研究はない。これが初めてnationwide studyらしい。

Early enteral nutrition for cardiogenicor obstructive shock requiring venoarterial extracorporeal membrane oxygenation: a nationwide inpatient database study
Intensive Care Med. 2018 Aug;44(8):1258-1265.

【PECO】
P:心原性ショックor閉塞性ショックで人工呼吸器とVA-ECMOがついている人
E:早期経腸栄養開始(VA-ECMO導入から2日以内)
C:晩期経腸栄養開始(3日以降)
O:院内死亡率、28日死亡率

【デザイン、セッティング】
・the Japanese Diagnosis Procedure Combination inpatient database
・後向き
・2010年7月〜2016年3月
・1769例(早期220例、晩期1547例)
・人工呼吸器+ノルアドレナリン投与されている心原性ショックまたは閉塞性ショックで、VA-ECMOが導入された症例を抽出
・VA-ECMO導入後2日以内に死亡・離脱した症例は除外

【結果】
baselineはだいたいの値は、ノルアドレナリン0.03γ、ドブタミン1.5γ、IABP30%。

早期経腸栄養 vs 晩期経腸栄養
死亡率
55% vs 64% P=0.007

28日死亡率
37.7% vs 48% P=0.004

肺炎
9% vs 9% P=0.75

腸管虚血
0% vs 1% P=0.26

【まとめと感想】
VA-ECMOがついていてカテコラミンもちょこっと流れているようなショックの患者に早期に経腸栄養を開始すると予後が良いという結果。さすがに早期経腸栄養で予後がよくなるとまでは言えないだろうが、カテコラミンが多くなくて循環動態が安定に向かっているなら、ECMOがついていること自体は経腸栄養の妨げにはならないと考えていいのかも。開始基準や投与量(カロリー・栄養素)は主治医・施設によりけり。

早期経腸栄養 エキスパートオピニオン

ESICMの早期経腸栄養に関するエキスパートオピニオン。

Early enteral nutrition in critically ill patients: ESICM clinical practice guidelines
Intensive Care Med. 2017 Mar;43(3):380-398.

一般的な原則と注意点
・低速(10−20ml/h)から開始し、消化器症状に注意する。
・腹痛、腹部膨満、腹腔内圧上昇を認めた場合には経腸栄養を増やさない。症状が重篤な場合や腸管虚血などの場合には減量中止を。
・最適なカロリー、蛋白量はわからないが、カロリー過多は害で、少ない方が安全。
・胃貯留があり、他に異常がなければ、腸管運動促進薬や幽門後チューブ留置を。
・経腸栄養の開始・増量時には腹腔内圧測定を。
・意識障害や嚥下障害がある場合には、幽門後チューブ留置などの予防を。

推奨
・経静脈栄養より経腸栄養(死亡率は変わらないが、感染は少ない。HR:0.55、95%CI:0.35−0.86)。
・経腸栄養は遅らせるより、早期(48時間以内)に開始した方が感染が少ない(HR:0.64、95%CI:0.46−0.90)。

早期経腸栄養が良い
・ECMO下、外傷性脳損傷、脳梗塞、脊髄損傷、重症急性膵炎、消化管手術や腹部大動脈手術の術後、腹部外傷(腸管が大丈夫なら)、open abdomen。
腸管虚血や通過障害がないなら腸蠕動音に関わらず早期経腸栄養を。
・筋弛緩薬の使用のみ、伏臥位のみでは経腸栄養を遅らせる理由にならない。
・体温管理療法下では低速での経腸栄養を。

経腸栄養を遅らせた方が良い
・ショックや臓器灌流障害があれば、輸液や昇圧剤でコントロールがつくまで経腸栄養開始を遅らせる。ただし、多量の昇圧剤(ノルアドレナリン1γ以上)、高乳酸血症の持続などがある場合はその限りではない。
・コントロール不良の低酸素血症、高二酸化炭素血症、アシドーシス、腸管虚血、腹部コンパートメント症候群、胃からの排液500ml/6h以上。
上部消化管出血のときは出血が確認できるまで待つ。

VA-ECMO下でのHIT発症率

Prevalence and outcome of heparin-induced thrombocytopenia diagnosed under veno-arterial extracorporeal membrane oxygenation: a retrospective nationwide study.
Intensive Care Med. 2018 Sep;44(9):1460-1469.

VA-ECMOとHIT(ヘパリン起因性血小板減少症)との関連を調べたもの。

フランスの20施設のICUの後向きのデータ。

2012年1月から2016年12月までにICUへ入室し、心原性ショックでVA-ECMOを装着した患者で、臨床的にHITを疑いヘパリン血小板第4因子複合体抗体(HIT抗体)陽性だった患者をスクリーニング。

HITの診断は、HIT抗体陽性と少なくとも1つ以上の機能的検査が陽性であること。機能的検査は血小板凝集法、SRA法、HIPA法のいずれか。HIT抗体も機能的検査も陰性であれば、HITではないと診断。

HIT抗体が陽性になったのは39/5797例で、うちHITと診断がついた(機能的検査も陽性)だったのは21/5797例(0.35%、95%CI:0.12-0.52)。

だいたい300人に1人くらい。そんなもんなんですね。ちなみに、HITでもHITが除外された症例でも血小板はbaselineから70%ぐらい低下していて、4Tスコアは5点でした。HIT抗体とか調べてみないとわからないということですね。

敗血症性ショック+AKIに対する腎代替療法導入を急ぐか否か

Timing of Renal-Replacement Therapy in Patients with Acute Kidney Injury and Sepsis
N Engl J Med 2018; 379:1431-1442

【PICO】
P:AKIを合併した発症早期の敗血症性ショック
I:早期の腎代替療法(RRT)導入
C:晩期のRRT導入
O:90日死亡率

・AKI発症から48時間以内。
・AKIはRIFLE基準のfailure=Crがベースラインから3倍、Cr>4mg/dlで0.5mg/dl以上の急激な増加、尿量<0.3ml/hが24時間以上持続、12時間無尿。
・早期は12時間以内、晩期は48時間後にRRT導入。
・晩期RRT群に割り付けられた患者は、慎重にモニタリング(K>6.5mmol/L、pH<7.15、利尿薬抵抗性の肺水腫があれば緊急RRT)。
・晩期RRT群では、Cr低下と尿量増加(1000ml/日以上、利尿薬を使用している場合は2000ml/日以上)があればRRT導入を見送る。
・RRTの方法(持続か間欠的か、HFかHDかHDFか、透析量など)は主治医任せ。

exclusion criteria:維持透析患者、緊急透析が必要(K>6.5mmol/L、pH<7.15、利尿薬抵抗性の肺水腫があれば緊急RRT)

【試験の概要】
デザイン:open label RCT
地域:フランス 多施設(29ICU)
登録期間:2012年7月〜2016年10月
観察期間:90日
症例数:488例(早期RRT群:246例、晩期242例)
解析:ITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【結果】
中間解析で早期中止(early termination for futility)。

RRTをやったのは、早期RRT群で97%、晩期RRT群で62%(RRTをやらなかった38%のうち75%は腎機能は自然に回復)。

早期RRT群 vs 晩期RRT群
▶︎90日死亡率(primary endpoint)
58% vs 54% P=0.38

▶︎28日死亡率
45% vs 42% P=0.48

▶︎RRT free days
12日 vs 16日 P=0.006

▶︎90日時点でのRRT依存
2% vs 3% P=1.00

【まとめと感想】
敗血症性ショックで、AKI発症早期にRRTを導入することは生存率を改善しない。RIFLE基準でfailureになってもちょっと待てばRRT導入を回避できる症例もあるし、導入が遅くなってもRRTの離脱には影響しない。

このIDEAL-ICU試験同様、RRT導入のタイミングについて検証したRCTにAKIKI試験がある。人工呼吸器やカテコラミンを要するAKI患者で、早期群はすぐにRRT導入、晩期群は高K血症、代謝性アシドーシス、高窒素血症がひどくなったら導入。そのAKIKI試験でも60日死亡率の改善はなく、敗血症に限ったpost hoc解析でも差はなかった。

敗血症に合併したAKIのRRT導入は待って良い。

EOLIA試験 重症ARDSへのECMO導入

重症呼吸不全へのExtracorporeal membrane oxygenation (ECMO) により死亡率の低下が報告され、1970年代には2つのRCTが行われた。(UpToDateでは poorly designed randomized trialsと表現されていたが) それらのRCTではECMOの有効性が示されなかったものの、ECMOセンターでECMOを含めた治療を受けることによりARDSの予後 (6ヶ月死亡率+severe disability) が改善することがCESAR試験というRCTで示された。

ECMO群でECMOが導入されていなかったり、標準治療群で人工呼吸器設定が標準化されていなかったりという問題は指摘されている様ではあるが、重症ARDSに対するECMO導入 (ECMOセンターでの治療) は推奨されている(1-2)

肺保護戦略に基づいた人工呼吸器設定をした上で、P/F比<80とか、pH<7.2などがECMOの適応とされる。

このEOLIA試験は、重症ARDSに対する早期のECMO導入の有効性を検証したRCT。

Extracorporeal Membrane Oxygenation for Severe Acute Respiratory Distress Syndrome.
N Engl J Med. 2018 May 24;378(21):1965-1975.

【PICO】
P:重症ARDS
I:VV-ECMO導入
C:ECMOを使用しない通常治療
O:60日死亡率

inclusion criteria:次の3つのうちひとつを満たす。人工呼吸器最適化 (FiO2≧0.8、一回換気量6ml/kg理想体重、PEEP≧10mmHg) にも関わらず、 ①P/F<50mmHgが3時間以上持続、②P/F<80mmHgが6時間以上持続、③PaCO2が60mmHgありpH<7.25が6時間以上持続 (呼吸数35回/分、プラトー圧32以下)
exclusion criteria:18歳未満、7日以上の人工呼吸器管理、高度肥満 (1kg/cm身長またはBMI>45)、妊娠、普段から酸素療法、心原性ショックでECMO、HITなど。

【試験の概要】
デザイン:open label RCT
地域:フランス
登録期間:? 2017年4月の中間解析で早期中止
観察期間:60日
症例数:249例 (ECMO群124例、通常治療群125例)
解析:ITT解析
スポンサー:the French Ministroy of Health。ECMOカニューレはMaquet-Getinge社が提供。

【患者背景】
両群に有意差はない。平均年齢52歳、SOFAスコア10、ARDSの原因 細菌性肺炎44%、ウイルス性肺炎21%、他35%、P/F比73、PEEP11mmHg、呼吸数30/min、一回換気量6.0ml/kg、プラトー圧30cmH2O、動脈血pH7.24、PaCO2 57mmHg、伏臥位56%、筋弛緩薬92%

【結果】
予定症例の75%が集まったところで、早期中止 (early termination for futility)
35/125例 (28%) が通常治療からECMO導入へクロスオーバー。
ECMO群でECMOが導入されたのは121/124例 (98%)

ECMO群 vs 通常治療群
60日死亡率 (primary endpoint)
35% vs 46% RR:0.76 (95%CI:0.55-1.04)

ICU滞在日数
23日 vs 18日 差:5 (95%CI:-1to10日)

在院日数
36日 vs 18日 差:18 (95%CI:6-25日)

ventilator free days
23日 vs 3日 差:20 (95%CI:-5to32)

【批判的吟味】
・通常治療群でECMOへのクロスオーバーが28%あるため、ECMOの効果を薄める方向へ働くかも。
・早期中止により予定症例数に満たずパワー不足。
・通常治療群で、伏臥位療法や筋弛緩薬 (Cisatracurium?) が多いけど、日本だとどれくらいの割合?
・ICU滞在日数や在院日数が通常治療群で少ないのは、死亡率が高いからかもしれない

【まとめと感想】
有意差はないが、ECMOは良さげ。重症ARDSはECMOセンターへの転院を検討。

(1) Extracorporeal membrane oxygenation (ECMO) in adults [Up To Date]
(2) N Engl J Med 2011;365:1905-14

集中治療における不整脈と心臓突然死のマネージメント

How to manage various arrhythmias and sudden cardiac death in the cardiovascular intensive care
J Intensive Care. 2018 Apr 11;6:23. doi: 10.1186/s40560-018-0292-x.

ICU/CCUでのVT/VF・electrical stormのマネージメント
Tokyo CCU Network (2012−2014年) のデータでは、VT/VFの基礎疾患は、虚血性心筋症29.2%、DCM8.2%、HCM7.3%、心サルコイドーシス2.3%、ARVC1.7%だったが、約40%が特発性VT/VFで器質的異常がなかった。

AMIに関連したVT/VF・electrical storm
心室性頻脈性不整脈はAMIのどのフェーズでも起こりうる。electrical stormを24時間以内の2回以上の持続する心室性頻脈性不整脈とすると、その発生率は2.67% (Tokyo CCU Network)。Electrical stormは梗塞サイズと血行動態悪化と関連がある。

βblocker、アミオダロン、ニフェカラントの有効性が示されている。

血行動態の悪い患者では、VT/VFが薬物抵抗性であることがあり、IABPが有効なことがある。おそらく、血行動態の改善と冠血流増加による。心原性ショック、うっ血による低酸素血症、心静止にはPCPSを導入する。星状神経節ブロックや腎交感神経アブレーションが有効とのいくつかの報告がある。

上にあるような治療に抵抗性のVT/VFは、遺残プルキンエ線維起源のVPCによって起こっていることがある。VPCは比較的narrowで、それにより多形性VTが引き起こされる。アブレーションが有効。

非虚血性心疾患に関連したVT/VF・electrical storm
いろんな疾患があり、複数のメカニズムがある (scar関連リエントリー、ヒス束-Purkinje関連リエントリー、自動能亢進、triggered activityなど)。脚枝間リエントリー性頻脈はDCMに特異的だが、虚血性心疾患ではまれ。進行した非虚血性心筋症では、自然に、あるいはペーシングによりQRS波形が多形性を示すことがあり、pleomorphic VTと呼ばれる。DCMでは心外膜起源が多い

HCMのVTは多形性であることが多いが、mid-ventricular HCMで進行すると心尖部が瘤化し、そうなると単形性VTがよく見られる。

心サルコイドーシスは、コーカジアンやアフリカ系アメリカ人では頻度は低いが、日本では多い。よく見られる不整脈は、完全房室ブロックと、それに続くVTである。scar関連VTであり、アブレーションが成功しても再発は多い (30-40%/年)。

非虚血性心筋症の心室性頻脈性不整脈に対する薬物療法のファーストラインはアミオダロン。ただし、SCD-HeFT試験では。死亡率はプラセボと有意差がなかった。なので、DCMに対するルーチンでの使用は推奨されない。アミオダロンはVTのcycle lengthを伸ばす。ICDのショック回数を減らす。

βblockerはDCMの心不全関連死や心臓突然死を減らすが、βblockerにしろアミオダロンにしろ、重症心不全への導入は副作用に用心を。

特発性VT
ベラパミル感受性VTのQRSは比較的narrow。左脚後枝起源では、CRBBB+上方軸に、左脚前枝起源ではCRBBB+下方軸になる。アブレーションの成功率は高い(>90%)。そのほかの特発性VTでは、左室や右室の流出路起源が多く、ついで僧帽弁や三尖弁の弁輪、乳頭筋起源が多い。

ベラパミルのみでコントロール不十分なら、次の選択肢はβblocker。アブレーション前の12誘導心電図は重要。

QT延長とTorsade de Pointes (TdP)
高齢、心疾患 (特にMI)、心不全、肝機能・腎機能障害、電解質異常、徐脈、QT延長や低K血症をきたしうる薬剤の使用 (利尿薬、抗不整脈薬、鎮静薬)がリスク。心電図でのTdP予測因子は、QTc>500ms、macroscopic T wave alternance (TWA)。典型例だと、RR間隔がshort-long-short sequenceでTdPへ移行する。

ICU/CCUでの徐脈のマネージメント
最もコモンなものは房室ブロック (AVB)。原因は、急性虚血、慢性虚血 (虚血性心疾患)、急性炎症(心筋炎)、慢性炎症 (心サルコイドーシス)、薬剤 (CCB、βblocker、抗不整脈薬classⅠ・Ⅲ)、電解質異常 (高K血症)など。これらの原因がない場合は、特発性AVBで遺伝子が関与していることが多い。

洞機能不全
洞機能不全は、特発性に退行性に徐々に進行。非心原性の原因は、薬剤性、迷走神経過緊張、電解質異常、睡眠時無呼吸、甲状腺機能低下など。

一時的ペースメーカと恒久的ペースメーカ
AMIでは、下壁梗塞と関連があり、短期間だが一時的ペースメーカが必要になることがある。恒久的ペースメーカが必要になることはまれ。

ICU/CCUでのAFのマネージメント
AFはCCUではコモン。心不全やAMIでは、さらに多い。

AFと心不全
AFと心不全は、片方がもう一方を悪化させる関係にある。あるメタ解析では、AFは死亡・腎不全・脳梗塞と関連があったが、最もリスク増加が大きかったのは心不全だった (RR:4.9, 95%CI:3.04-8.22)。

AFとAMI
AMIでは様々な要因が関連しPAFを引き起こすが、最も重要な要因は、広範囲の重症心筋梗塞に伴うポンプ不全である。

敗血症
炎症に起因する複数の要因が関与。AFは予後不良と関連あり。電解質異常、アシデミア、β刺激薬、低酸素血症など是正できるものは、速やかに是正する。

重症患者におけるAFのマネージメント
血行動態不安定、コントロールが困難な虚血、適切なrate controlができない場合は、カルディオバージョンを。単相性なら200Jで、二相性なら120−200Jで。だめなら、50−100J上げる。それでもだめならニフェカラントなどのclassⅢの抗不整脈が、血圧を下げずに心拍数を落とせるかもしれない。さらに、ニフェカラントはAF停止に有効で、また除細動域値を下げる作用もある。

心不全やAVBがない患者のrate controlなら、βblockerや非ジヒドロピリジン系CCBを使用する。アミオダロンは血行動態を悪化させずにrate controlができるが、この目的では保険は通らない。

患者の状態が落ち着いたら、rhythm controlと抗凝固療法を検討する。AF-CHF試験では、薬剤もしくはDCでのrhythm controlは、rate controlと比較し、死亡・心不全増悪を減らさなかった。

tachycardia-induced cardiomyopathy (TICM) とtachycardia-mediated cardiomyopathy (TMCM)
心機能低下の原因がAFしかないものがTICMで、rate controlをつければ心機能は可逆的。TMCMは器質的心疾患があり、AFによりさらに心機能が低下したもの。rate controlをつけても心機能が改善しないものは、TICMでもTMCMでもない。完全な心機能の改善には1−6ヶ月要する

心臓突然死のリスク層別化と予防法
デバイスにはICDとCRT-Dがある。

冠動脈疾患での心臓突然死リスク層別化
AMI発症24時間以降に起こったNSVTは、重症心室性頻脈性不整脈と関連があるが、AMI急性期の心室性不整脈に対するICD導入は予後を改善しない。EF≦35%のハイリスク患者では少なくとも1ヶ月は観察を要する。着用型除細動期 (WCD) は致死的不整脈の一過性のリスクを有する患者や、AMI急性期の心室性不整脈に対しICDへのブリッヂ治療として役割があるかもしれない。

MI慢性期で、VF、多形性VT、血行動態の崩れた単形性VT、薬物抵抗性やアブレーションで治療できない単形性VTを認めた場合には、ICDはclassⅠである (JCSガイドライン)。一次予防では、適切な薬物療法にも関わらずEF≦35%、NYHAⅡ-Ⅲ、NSVTの症例には、ICDはclassⅠである。また、EF≦35%、NYHAⅠで、NSVTがあり、EPSにてVTが誘発された症例でもclassⅠである。

非虚血性心筋症での心臓突然死リスク層別化
適応は虚血と同じような感じだが、誘発されたVT症例でのICDの効果は虚血のそれより乏しい。HCMでは、左室壁≧30mm、心臓突然死の家族歴、運動時血圧反応異常、NSVTがリスクファクターで、classⅡaの項目である。

チャネル病での心臓突然死リスク層別化
QT延長症候群では、VF・心静止の既往があればclassⅠのICD適応で、βblocker抵抗性の失神・TdPではclassⅡ。Brugada症候群では、VF・多形性VTの既往はclassⅠ、coved型ST上昇があり、かつ失神・心臓突然死の家族歴・EPSで誘発されたVFのうち2つに当てはまればclassⅠ。

バンコマイシンとピペラシリン/タゾバクタムの併用は急性腎障害を増加させる

Vancomycin Plus Piperacillin-Tazobactam and Acute Kidney Injury in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Crit Care Med. 2018 Jan;46(1):12-20.

【概要】
VCM + PIPC/TAZと、VCM単独、VCM + 他のβラクタム薬、PIPC単独の腎毒性・AKI発症率を比較したSR。
AKIは、それぞれの試験での定義に則る (ほとんどの試験でAKIN、RIFLE、KDIGO、vancomycin consensus guidelineが使われている)。
RCTと観察研究を統合。
random effect model。

VCM=バンコマイシン
PIPC/TAZ=ピペラシリン/タゾバクタム
CFPM=セフェピム

【結果】
AKI (primary endpoint)
VCM + PIPC/TAZ vs VCM単独
I2=53%
OR:3.40 (95%CI:2.57-4.50)

VCM + PIPC/TAZ vs CFPMまたはカルバペネム
I2=78%
OR:2.68 (95%CI:1.83-3.91)

VCM + PIPC/TAZ vs PIPC/TAZ単独
I2=56%
OR:2.70 (95%CI:1.97-3.69)

重症例に限ると、VCM + PIPC/TAZとVCM + CFPM、VCM + PIPC/TAZとPIPC/TAZ単独ではAKI発症率に差はなかったが、VCM + PIPC/TAZとVCM単独では有意差あり (OR:9.62 [95%CI:4.48-20.68] I2=0%)。

AKI発症までの時間は、VCM + CFPMとVCM + PIPC/TAZを比較した試験が5つあった。それを統合するとVCM + CFPMよりVCM + PIPC/TAZの方が早めだが、有意差はなかった (−1.3日、95%CI:-3.0to0.41)。

【まとめ】
VCM + PIPC/TAZの併用では、AKIが増えるかもしれない。異質性はそこそこ。Discussionには出版バイアスが否定できないと。

重症例に限ると、VCM単独よりVCM + PIPC/TAZでAKIが増加したが、他の薬剤 (VCM + CFPMやPIPC/TAZ単独) とは差がなかった。うーん、VCM単独で投与する患者群とVCM + PIPC/TAZを投与する患者群では、そもそも集団の性質自体、別な気がするが。

VCM + PIPC/TAZがAKIを増やすかもしれないということは、念頭に置いておいた方がいい。

院外心停止での体温管理療法 (TTM) 目標体温と継続時間

心原性心停止で、偶発的低体温になった患者で予後が良かったり、心原性心停止の犬で軽度低体温療法が脳障害を減少させたという報告があった。人を対象とし軽度低体温療法の有効性を検証したRCTは、2002年に初めて報告された (HACA試験)。(1)

心室細動 (VF) による院外心停止を対象とし、32−34℃・24時間の体温管理を行う群と、体温管理を行わない群に無作為化。体温管理にはTheraKoolという冷気が出るマットレスを使用。目標体温に到達するまでの時間は8時間 (中央値) で、復温は受動的に行い、36℃以上になるのに8時間 (中央値) かかっている。標準治療群では、体温は37℃台で推移。

登録が進まず、かつ資金が不足したことにより早期中止になっているが、273例が登録され、6ヶ月死亡率は低体温療法群で41%、通常治療群で55%であった (リスク比:0.74、95%CI:0.58−0.95)。

さらに小規模のRCTではあるが、VFによる心停止を対象とし、32−34℃・12時間の低体温療法と通常体温と比較。低体温療法群で神経学的予後が有意に改善することが示された (49% vs 26%)(2)

この2つのRCTの結果を受け、VFによる院外心停止で体温管理療法 (TTM) が標準治療としてガイドラインで推奨されるようになった。

ただ、TTMの脳保護効果について、遅発性細胞死の抑制、脳代謝抑制、フリーラジカル産生抑制などによるものと推測されているが、そのメカニズムはよくわかっていない。実は、低体温にすることに生命予後や神経学的予後を改善させる効果はないのかもしれない。

ある観察研究では、ROSC後48時間以内に体温が37℃から1℃上昇するごとに、神経学的予後が悪化することが示されている (オッズ比:2.26)(3)。生命予後や神経学的予後の改善が示された上の2つのRCTでも、通常体温群の体温 (中央値) は37℃台になっていたことから、低体温がアウトカムの改善をもたらしたのか、あるいは37℃を超える体温が予後の悪化をもたらしたのかはわからない。

32−34℃の低体温が生命予後や神経学的予後を改善したのではなく、高体温を避けることがそれらのアウトカムの改善につながったことを示唆したのが、TTM試験である(4)

993例の院外心停止を、目標体温33℃と36℃に無作為化し、72時間は両群とも発熱を避けるという方法が取られた。primary endpointは試験終了 (中央値256日) までの全死亡、secondary endpointは180日時点の神経学的予後不良と死亡とし、いずれも両群に有意差はなく同程度だった。

全有害事象は33℃群で多い傾向で、低K血症は有意に、肺炎や穿刺部出血などは多い傾向が見られた。

この結果から、36℃の体温管理を行うことは妥当と考えられるが、すべての患者で33℃が無益かどうかについては明らかではなく、例えば、より重症な患者 (体動がない・脳幹反射消失・頭部CTですでに虚血性変化を認めるなど) では、33℃を目標としたTTMが良いかもしれない。

TTMの目標体温は少なくとも24時間維持することが推奨されているが、24時間と48時間を比較したRCTでは、両群で神経学的予後に差はなく、48時間で有害事象が有意に多かった (そのメインは肺炎)(5)。このRCTは目標体温を33℃としており、低体温による細胞性免疫の低下や筋弛緩薬投与による喀痰排出不全が原因と推測する。

まとめると、VFによる院外心停止には目標体温32−36℃とし24時間以上のTTMが推奨されているが、基本的には35−36℃程度での体温管理を行い (それ以上下げようとすると多くの場合で筋弛緩薬が必要になる)、72時間以内の発熱は避けるというスタンスで良いだろうと思います。

(1) N Engl J Med. 2002;346:549–56.
(2) N Engl J Med. 2002;346:557–63.
(3) Arch Intern Med. 2001;161(16):2007-12.
(4) N Engl J Med. 2013;369(23):2197-206.
(5) JAMA. 2017;318(4):341-350.