カテゴリー別アーカイブ: 集中治療

血管拡張性ショックに対するアンギオテンシンⅡの昇圧効果

Angiotensin II for the Treatment of Vasodilatory Shock.
N Engl J Med. 2017 Aug 3;377(5):419-430.

ATHO-3 trial 適切な輸液・NAD0.2γ以上投与下にある血管拡張性ショックに対し、アンギオテンシンⅡの有効性を検証したRCT

◇この論文のPICOはなにか
P:血管拡張性ショック
I:アンギオテンシンⅡ
C:プラセボ
O:開始3時間後のMAP≧75mmHg、またはベースラインから10mmHg以上の上昇

血管拡張性ショックの定義は、cardiac indexが2.3以上、またはScvO2≧70%でCVP8mmHg、MAP55−70mmHg

inclusion criteria:25ml/kgの輸液を行なっているにも関わらずショックが持続、ノルアドレナリン0.2γ以上
exclusion criteria:重症熱傷、ACS、大動脈瘤、腸管虚血など

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:北米、オーストラリア、ヨーロッパの75施設
登録期間:2015年3月〜2017年1月
観察期間:primary endpointは3時間、adverse eventを28日まで観察
盲検化:二重盲検
必要症例数:300例
症例数:344例(各群172例)
追跡率:93.3%
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(La Jolla Pharmaceutical Company社)

◇患者背景


(本文から引用)

80%が敗血症、30%でARDS合併。

◇結果

(本文から引用)

◇感想
ACS、心原性ショックは除外されているし、まあ、循環器疾患ではアンギオテンシンⅡは使いづらいだろうな。

院外心停止後の低体温療法は、24時間でよい

脳神経学的な障害は、院外心停止の主要な死因であり、低体温療法により生命予後と神経学的予後が改善する。高体温は死亡率上昇と神経学的予後の悪化を招くため、避けるべきである。

低体温療法の目標体温は33℃と36℃でアウトカムに差はない(1)。そのため、低体温療法の目標体温は32−36℃で少なくとも24時間継続することが推奨されている(2)。ただ、より低い体温が脳浮腫を改善する効果があり、深い昏睡(体動の消失、脳幹反射の消失)が認められる症例には、ターゲットを33℃にすると良いかもしれない(3)。

脳幹反射は、対光反射、角膜反射、毛様脊椎反射(頚部への痛み刺激で散瞳)、眼球頭反射(人形の目現象:顔を回旋させると、逆方向に眼球が動く)、咽頭反射(咽頭後壁への刺激で吐き出すような反射)、咳嗽反射を確認する。

低体温療法は24時間以上に継続することが推奨されているが、それを検証したRCTはなく、これが初めてのRCTである。

Targeted Temperature Management for 48 vs 24 Hours and Neurologic Outcome After Out-of-Hospital Cardiac ArrestA Randomized Clinical Trial
JAMA. 2017;318(4):341-350.

◇この論文のPICOはなにか
P:院外心停止
I:33±1℃で48時間の低体温療法
C:33±1℃で24時間の低体温療法
O:6ヶ月後の神経学的アウトカム(Cerebral Performance Categories score:CPCスコアで評価)

inclusion criteria:心原性と思われる心停止、ROSCして20分以上自己心拍を維持、GCS<8、shockable rhythm/nonshockable rhythm
exclusion criteria:目撃のない心静止

Intervention:冷却装置、冷却した輸液などを用いて、33±1℃をターゲットに体温を管理する。体温は膀胱・直腸・食道・血管内で測定。低体温療法は、34℃以下になった時点から24−48時間継続する。復温は37℃になるまで、最大で0.5℃/時間の速度とする。重大な出血・致死的不整脈・難治性の心拍出低下があった場合は主治医判断で、36−37℃に戻す。

◇試験の概要
デザイン:RCT
地域:ヨーロッパ 10施設
登録期間:2013年2月〜2016年7月
観察期間:6ヶ月
無作為化:中央割付(web-based)、置換ブロック法、層別化(年齢、初期波形)
盲検化:試験の性質上、open label。評価者のblindあり。
必要症例数:338例
症例数:355例(48h群176例、24h群179例)
追跡率:99%
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

◇患者背景

(本文から引用)

witness、bystanderCPR、初期波形、AEDの使用、BLSやACLSまでの時間、使用した薬剤など、神経学的アウトカムに影響するような要因に差はない。


(本文から引用)

24h群で、ROSCから目標体温に到達するまでの時間が長い。Invasive cooling catheterがポピュラーなアイテムらしい。

◇結果

(本文から引用)

神経学的アウトカムに差はない。adverse eventは48h群で多かった。adverse eventは、痙攣などの脳の異常、低血圧、不整脈、経管栄養投与困難、腎不全、感染、出血と定義。

◇批判的吟味
・予定されていた症例数に達しているが、結果に有意差なし。
・追跡率は高い。
・24h群で目標体温に到達するまでの時間が有意に長い(281分vs320分)のは、神経学的アウトカムの悪化へ働きそう。

◇感想
低体温療法の継続時間は、24時間と48時間で6ヶ月後の神経学的アウトカムに有意差はなかった。adverse eventは48h時間群で有意に多いが、然もありなんという感じ。なかでも、肺炎がウエイトを占めてそう。

基本的には、35-36℃、24時間で、高体温は絶対に避けるというスタンスでいいかなと思っています。

(1)N Engl J Med. 2013 Dec 5;369(23):2197-206.
(2)Circulation. 2015;132:S465-S482
(3)Post-cardiac arrest management in adults(UpToDate)

重症のC.difficile感染症の治療は、バンコマイシンが良い

Comparative Effectiveness of Vancomycin and Metronidazole for the Prevention of Recurrence and Death in Patients With Clostridium difficile Infection.
JAMA Intern Med. 2017 Feb 6. [Epub ahead of print]

《要約》
<重要性>
メトロニダゾール塩酸塩は、軽症から中等症のクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)の治療の第一選択と考えられているが、臨床的な効果ではバンコマイシンに劣る。治療の選択は、その先にあるCDI再発や死亡率といったアウトカムに影響を与えるが、これらのアウトカムを調べた研究は少ない。

<目的>
軽症から中等症および重症のCDIを、メトロニダゾールまたはバンコマイシンで治療した場合の、再発と30日全死亡のリスクを評価すること。

<デザイン、セッティング、患者>
便検査でCDトキシンまたはトキシン遺伝子が陽性となったCDIを対象とした、プロペンシティスコアマッチング、後ろ向き研究である。2005年1月1日〜2012年12月31日の退役軍人病院のデータで、解析は2015年2月7日〜2016年11月22日に行った。

<暴露>
バンコマイシンまたはメトロニダゾールの投与

<アウトカムと測定>
この研究でのアウトカムは、CDI再発と30日全死亡率である。再発の定義は、初回のCDIの診断から8週以内に検査が陽性になること。30日全死亡率の定義は、初回のCDIの診断から30日以内の全死亡率である。

<結果>
47471例(平均68.8±13.3歳、女性1947例、男性45524例)がCDIと診断され、バンコマイシンまたはメトロニダゾールが投与され、この研究の組み入れ基準を満たした。47471例のうち、2068例(4.4%)がバンコマイシンで治療され、メトロニダゾールで治療された患者8069例とプロペンシティスコアがマッチし、計10137例を組み入れた。5452例の軽症から中等症のCDIと、3130例の重症CDIでサブコホートを構成した。全集団では、バンコマイシンで治療してもメトロニダゾールで治療しても、CDI再発リスクになかった。また、全集団では30日全死亡率が低かった(調整後相対リスク0.86、95%CI:0.74−0.98、調整後リスク差:−0.02)。軽症から中等症のCDIでは30日全死亡率に有意差はなかったが、重症CDIではバンコマイシンで有意に30日全死亡率が低かった(調整後相対リスク0.79、95%CI:0.65-0.97、調整後リスク差:-0.04)。

<結論>
CDIをバンコマイシンで治療してもメトロニダゾールで治療しても、再発率に差はなかった。しかし、30日全死亡率はバンコマイシン治療群で有意に低かった。この結果は、重症CDIの初回治療でバンコマイシンを使用することを、一層正当化するかもしれない。

◇批判的吟味
・CDIの再発を8週間以内の検査陽性としていいのか??
・バンコマイシンとメトロニダゾールの選択は主治医次第。

◇感想
UpToDateよると・・・
接触予防と趣旨衛生を。アルコールは効かないので、石鹸と流水で洗った方がいいけど、本当にいいかのエビデンスはないよ。

初発では・・・
重症でないならメトロニダゾールで。
重症CDIではバンコマイシン125mg/回、4回/日を10−14日間。
改善がなければ、500mg/回に増量。

初回の再発では・・・
重症でないならメトロニダゾールだけど、バンコマイシンでも可。

2回目の再発では・・・
バンコマイシンを上記の通り。そのあと、漸減し継続していく。

という感じで推奨されています(2017年2月18日現在)。

この研究は、バンコマイシンとメトロニダゾールのどちらを選択するかは主治医次第であり、プロペンシティスコアマッチですが、調整できない要因(交絡)はあると思います。ただ、今までの流れに一致するデータだと思います。

ちなみに重症CDIとは、白血球<15000、診断から4日以内に血清Cr値がベースラインの1.5倍以上に上昇、ということみたいです。

院外心停止でVT/VFなら、CAG/PCIを行った方が生命予後が良くなるかもしれない

Trends and Outcomes of Coronary Angiography and Percutaneous Coronary Intervention After Out-of-Hospital Cardiac Arrest Associated With Ventricular Fibrillation or Pulseless Ventricular Tachycardia
JAMA Cardiol. 2016;1(8):890-899.

《要約》
重要性
The 2015 cardiopulmonary resuscitation and emergency cardiovascular care guidelinesでは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)と非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)の院外心停止に対し冠動脈造影検査(CAG)を行うことを推奨している。

目的
初期波形が心室頻拍(VT)/心室細動(VF)である院外心停止において、CAGと経皮的冠動脈インターべんション(PCI)の傾向、予測因子、アウトカムを評価すること。

デザイン、セッティング、患者
VT/VFによる院外心停止を対象とした、CAGとPCIに関する観察研究である。2001年1月1日から2012年12月31日までのNationwide Inpatient Sample databeseからデータを抽出した。CAGとPCIを試行することに関連した因子を評価するため多変量解析を行った。データは2015年12月12日から2016年1月5日に解析された。

アウトカム
CAG、PCI、退院時生存率の傾向

結果
407974例がVT/VFによる院外心停止で入院し、143688例(35.2%)にCAGが行われた。全体の平均年齢は65.7±14.9歳で、37.9%が女性であった。74.1%が白人、13.4%が黒人、6.8%がヒスパニック、5.7%が他の人種であった。2000年よりも2012年では、CAGは増加し(27.2%vs43.9%, OR2.47, 95%CI2.25-2.71)、PCIも増加した(9.5%vs24.1%, OR4.80, 95%CI4.21-5.66)。2000年から2012年まで、STEMIの院外心停止ではCAGとPCIは増加し(それぞれ、53.7%vs87.2%, 29.7%vs77.3%)、NSTEMIでも増加した(それぞれ、19.3%vs33.9%, 3.5%vs11.8%)。生存退院は、全体、STEMI、NSTEMIのいずれでも増加した(46.9%vs60.1%, 59.2%vs74.3%, 43.3%vs56.8%)。

結論
VT/VFの院外心停止におけるCAG、PCI、生存退院は増加傾向にある。しかし、VT/VFの院外心停止、特にNSTEMIでのCAG/PCIの施行率は高くない。前向き研究によって、このリミテーションに生存利益があるかどうか検証する必要がある。

◇この論文のPECOは?
P:18歳以上のVT/VFの院外心停止
O:CAG/PCIの施行率、その傾向、生存退院と関連する因子

心拍再開しなかった症例、年齢・性別・退院時生存の有無などの情報が欠落している症例は除外している。

◇デザイン、対象、観察期間
・地域:米国
・後ろ向き
・hierarchical mixed-effects model
・407974例

characteristics
CAG/PCIをやるかどうかは、重大な併存疾患があるとか、activeな悪性腫瘍があるとかでしょうか。悪性腫瘍の割合はCAG未施行群で多い様。意外と収入は関係ないのか。

◇結果
trend
STEMIだと、PCIをやる症例が2000年から倍増して、3/4の症例でやられている。NSTEMIでも増加傾向ではあるが、11%と高くはない。

survival-to-discharge
STEMIでもNSTEMIでもCAGを行った集団では生存退院の割合は多く、年代が進むにつれ生存率は高くなっている。

adjusted-or
PCIをやった方がいいし、若い方がいい。非白人や保険に入っていないと生存退院のオッズ比は低くなるのはアメリカだからなのか。

◇感想
当院だと、VT/VFの院外心停止では、ROSCしたSTEMIやVT/VFが止まらずにPCPSを入れた症例では、ほぼルーチンでCAG/PCIを行っていて、NSTEMIではwitness/bystanderCPRの有無とか、悪そうな併存疾患がないかとかはチェックしてカテをやるようにしている。

院外心停止の症例はもちろん生存退院ができるかどうかは大切なことだけど、神経学的予後も結構重要で、蘇生後脳症のために意識が戻らず気切して転院というケースは少なくない。搬送された時点で神経学的予後についてもわかればいいけど、明確な指標がないので、神経学的に厳しいと予想できる症例であっても、CAG/PCIをやらざるを得ない。

カテをやってみて意外と亜急性期に意識レベル良くなってカテやってよかったと思うこともあれば、予想通り全然戻らなくてカテやった意味があったのかなと思うこともある(むしろ後者の方が多い)。まあ、この研究では、トレンドとしては院外心停止でVT/VFならCAG/PCIをやる傾向になっているし、やった方が生命予後が良くなりそうです。

プロバイオティクスは人工呼吸器関連肺炎(VAP)の予防に有効

Effect of probiotics on the incidence of ventilator-associated pneumonia in critically ill patients: a randomized controlled multicenter trial.
Intensive Care Med. 2016 Jun;42(6):1018-28.

《要約》
目的
プロバイオティクスの人工呼吸器関連肺炎(VAP)に対する予防的効果を評価すること。

方法
オープンラベル、無作為化比較対照、多施設共同試験を行った。人工呼吸器管理が48時間以上必要と予想される重症の成人患者235例を組み入れた。患者は以下の2群に無作為にわりつけ、最大で14日間継続する。1)Bacillus subtilis(枯草菌)とEnterococcus faecalis(腸球菌)0.5g含んだカプセル(Medilac-S)を1日3回、NGチューブから投与し、かつVAPの標準的予防策をとる。2)VAPの標準的予防策のみ。VAPの評価は毎日行い、咽頭ぬぐい液と胃液の培養はbaseline時に加え、1−2回/週行う。

結果
細菌学的なVAPの発症は、プロバイオティクス群で有意に低かった(36.4%vs50.4%, P=0.031)。VAP発症までの時間の平均値は、プロバイオティクス群で有意に長かった(10.4日vs7.5日、P=0.022)。胃内の病原性微生物のコロニゼーションは、プロバイオティクス群で有意に低かった(24%vs44%、P=0.004)。しかし、病原性微生物の咽頭・胃内へのコロニゼーションを認めなかった患者の割合は、両群で差はなかった。臨床的なVAPの発症率、抗生剤使用量、人工呼吸器装着期間、死亡率、在院日数のプロバイオティクスによる改善はなかった。

結論
B.Subtilis, E.faecalisを含んだプロバイオティクスは、VAP予防と胃内の病原微生物のコロニゼーションの予防に効果的であり、安全な方法である。

◇この論文のPICOはなにか
P:48時間以上、人工呼吸器管理が必要と予想される患者
I:VAPの標準的予防策+プロバイオティクス
C:VAPの標準的予防策のみ
O:細菌学的に診断されたVAPと、咽頭と胃内の病原微生物の根絶及びコロニゼーションの割合

inclusion criteria:ICU入室24時間以内、ICUでの気管内挿管、
exclusion criteria:18歳未満、81歳以上、APACHEⅡスコア≧25、72時間以上の人工呼吸器管理、経腸栄養を行えない、免疫不全(悪性腫瘍、AIDS、HIVキャリア)、妊婦、授乳婦

◇baselineは同等か
同等。
characteristics

◇結果
地域:中国
登録期間:2010年3月〜2015年4月
観察期間:抜管まで
無作為化:記載なし
盲検化:記載なし
必要症例数:234例(対照群のVAPの発生が60%、20%のリスク減少、power80%、αlevel5%、脱落10%として算出)
症例数:250例
追跡率:945(235/250例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

result1
臨床的なVAPはprimary endpointに含まれていないが、プロバイオティクス群で少ない傾向。細菌学的なVAPが少なくなれば、臨床的なVAPが減るのも納得できる。

result2
咽頭では、プロバイオティクスによるコロニゼーションの変化はないが、胃内のコロニゼーションはプロバイオティクスで有意に低下している。

◇批判的吟味・感想
・安価な方法。
・Bacillus subtilisとEnterococcus faecalisのカプセルを投与するみたいだけど、日本だとビオフェルミン散がそれにあたる。ただ、カプセルは4℃で保存って書いてあるから、なんか普通のものと違いそう。
・大きなデメリットもなさそうなので、プロバイオティクスをルーチンに使用してもいいだろう。

重症患者のストレス潰瘍予防に、あえてPPIを投与しなくてもよい POP−UP試験

Pantoprazole or Placebo for Stress Ulcer Prophylaxis (POP-UP): Randomized Double-Blind Exploratory Study.
Crit Care Med. 2016 Oct;44(10):1842-50.

《要約》
目的
パントプラゾールは重症患者の消化管潰瘍予防によく使用される。しかしながら、プラセボと比較はなされておらず、パントプラゾールは有害である可能性がある。

デザイン
二重盲検無作為化試験

セッティング
外科内科混合のICU

患者
人工呼吸器管理を要し、経腸栄養を行っている重症患者

介入
プラセボもしくはパントプラゾール静注

結果
主要評価項目は、、臨床的に有意な消化管出血、感染性の人工呼吸器関連合併症もしくは肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染症である。臨床的に有意な消化管出血は0例であった。感染性の人工呼吸器合併症もしくは肺炎は3例(プラセボ群1例、PPI群2例)であった。クロストリジウム・ディフィシル感染症は1例(プラセボ群0例、PPI群1例)であった。パントプラゾールは明らかな出血とも関連がなく(プラセボ群6例、PPI群3例、P=0.50)、血中ヘモグリオビン濃度とも関連がなかった(P=0.66)。

結論
人工呼吸器管理を要し、経腸栄養を行っている重症患者において、消化管出血予防のためのパントプラゾールの投与は、有用でも有害でもなかった。その有効性、有害性については、さらなる検証が必要である。


◇この論文のPICOはなにか
P:人工呼吸器管理を要し、経腸栄養を行っている重症患者
I:パントプラゾール40mgの静注(PPI群)
C:生食の静注(プラセボ群)
O:臨床的に有意な消化管出血、感染性の人工呼吸器関連合併症もしくは肺炎、クロストリジウム・ディフィシル感染症の複合エンドポイント

inclusion criteria:24時間以上人工呼吸器を要し、48時間以内に経腸栄養を開始する患者
exclusion criteria:入院前の制酸薬の使用、消化管出血での入院、胃潰瘍の既往、プレドニゾロン100mg/日以上の使用、上部消化管の手術・心臓手術のための入院、妊娠、エホバの証人の信者、割り付けられた薬剤が36時間以内に投与できない患者、緩和ケア、ICU再入室

◇baselineは同等か
characteristics
processes
同等。50歳ちょっとと比較的若くて、2/3が男性。カテコラミンは半分で使用されている。クロストリジウム・ディフィシル感染症の既往はない。薬剤が投与されたのは3回。経腸栄養を受けた割合・開始までの時間・投与量なども差がない。抗生剤についても差はない。

◇結果
地域:南オーストラリア
登録期間:2014年1月28日〜2015年1月27日
観察期間:人工呼吸器離脱もしくは最大で14日
無作為化:方法についての記載なし
盲検化:患者、治療介入者、アウトカム評価者は盲検化されている
必要症例数:記載なし(この病院では24時間以上人工呼吸器管理を要する患者が年間600例いるので、登録期間は1年間で十分だろうと書かれてあるが、具体的な必要症例数については記載なし)
症例数:214例(PPI群106例、プラセボ群108例)
追跡率:100%
解析:ITT解析とPP解析
スポンサー:企業の関与はなさそう

◯臨床的に有意な消化管出血
プラセボ群0/108例、PPI群0/106例

◯感染性の人工呼吸器合併症もしくは肺炎
プラセボ群1/108例(0.9%、95%CI0.02−5.1)、PPI群2/106例(1,9%、95%CI0.2−5.1)

◯クロストリジウム・ディフィシル感染症
プラセボ群0/108例(97.5%CIの上限3.4)、PPI群1/106例(0.9%、97.5%CI0.02−5.1)

◇批判的吟味
・Nが少なく、イベント発生数が少ない。
・必要症例数についての記載がなく必要症例数を満たしているかどうかわからず、本当に差がないのかわからない。

◇感想
人工呼吸器を要するような重症な患者に、ストレス潰瘍の予防目的にPPIを投与することで、有害事象が抑えられるか検証したもの。出血や呼吸器感染・CDIをエンドポイントにして、その有益性・有害性を検証したものだが、N・イベント数が少なく、これだけでははっきりとした結論はでない。ただ、重症患者だからといって、ルーチンでPPIを投与する必要はないだろう。

院内心停止患者には、低体温療法は有害かもしれない

Association Between Therapeutic Hypothermia and Survival After In-Hospital Cardiac Arrest
JAMA. 2016;316(13):1375-1382.

《要約》
重要性
低体温療法は、院外または院内心停止の患者に対して行われる。しかしながら、院内心停止に対する低体温療法の有効性を検証した無作為化試験はなく、有効性を比較したデータも限られている。

目的
院内心停止後の低体温療法と生存率の関連を評価すること。

デザイン、セッティング、患者
Get With the Guidelines-Resuscitation registryで、2002年3月1日から2014年12月31日までの間、米国の355施設で蘇生に成功した26183例を組み入れた。フォローアップは2015年2月4日までとした。

暴露
低体温療法

アウトカム
主要評価項目は院内生存率である。副次評価項目は神経学的に良好な転帰(Cerebral Performance Category score1または2)とした。プロペンシティスコアを用いて比較解析を行い、全患者、nonshockable(心静止、PEA), shockable(VT、VF)についてそれぞれ検討した。

結果
1568/26183例(6.0%)で低体温療法が施行された。そのうち1524例(平均年齢61.6±16.2歳、男性58.5%)が、低体温療法を施行していない患者(平均年齢62.2±17.5歳、男性57.1%)とマッチした。調整後、低体温療法は院内死亡率の低下と関連しており(27.4% vs 29.2%, RR0.88[95%CI0.80-0.97], risk difference-3.6%[95%CI-6.3%to-0.9%])、nonshockable(22.2% vs 24.5%, RR0.87[95%CI0.76-0.99], risk difference-3.2%[95%CI-6.2%to-0.3%])、shockable(41.3% vs 44.1%, RR0.90[95%CI0.77-1.05], risk difference-4.6%[95%CI-10.9%to1.7%])でも同様の傾向であった。低体温療法は神経学的に良好な転帰の減少とも関連があった(17.0% vs 20.5%, RR0.79[95%CI0.69-0.90], risk difference-4.4%[95%CI-6.8%to-2.0%])。

結論
院内心停止患者において、通常の治療と比べ低体温療法は、退院時生存率や神経学的に良好な転帰の減少と関連があった。無作為化試験により、院内心停止に対する低体温療法の有効性を評価する必要がある。

◇この論文のPICOは?
P:院内心停止
E:低体温療法を行う(低体温療法群)
C:低体温療法を行わない(非低体温療法群)
O:退院時生存率

◇デザイン、対象
・後ろ向きコホート
・プロペンシティスコアマッチ
・5238例(低体温療法群1524例と、プロペンシティスコアがマッチした非低体温療法群3714例)

characteristics
characteristics
ICUがメインで、循環器疾患が多い。

◇結果
result

◇批判的吟味
・予後が悪そうだから低体温療法を行うという、indication biasの可能性
・24時間以内に死亡した患者は感度解析から除外されているため、24時間以内に死亡することが予想される患者の割合が低体温療法群で少なかった可能性
・自己心拍再開時に挿管されていると意識レベルの評価ができないためで、昏睡の患者の割合が両群で異なっていた可能性
などが、低体温療法群の予後に影響を与える交絡因子として考察されている。

◇感想
今まで院内心停止への低体温療法の有効性を検証したRCTはない。いくつかの観察研究があり、低体温療法の有無で死亡率に差がないという結果になっているが、パワー不足である(サンプルサイズが大きいものでも、低体温療法200例程度)。低体温療法により死亡率が改善したというデータもあるが、プロペンシティスコアが不適切に導き出されていた。

このデータは、今までで最も大きなサンプルサイズのデータであるが、低体温療法は生存率と神経学的予後を悪化させるという結果であった。後ろ向きのデータなので、低体温療法と生存率・神経学的予後の因果関係は言えないため、今後RCTで検証してもらいたい。

ステロイドはショックに至っていない重症敗血症には無効 HYPRESS試験

Effect of Hydrocortisone on Development of Shock Among Patients With Severe SepsisThe HYPRESS Randomized Clinical Trial
JAMA. 2016 Oct 3. [Epub ahead of print]

《要約》
重要性
Surviving Sepsis Campaignでは、難治性敗血症性ショックにのみハイドロコルチゾンの投与が推奨されている。ショックではない重症敗血症に対するハイドロコルチゾンの有効性については議論がある。

目的
重症敗血症患者へのハイドロコルチゾン投与が敗血症性ショックへの進展を抑制できるか検証すること。

デザイン、セッティング、患者
二重盲検、無作為化試験を行った。登録期間は2009年1月13日から2013年8月27日までで、観察期間は180日で2014年2月23日までとした。ドイツ国内の34施設(大学病院、または市中病院)のICUで行い、380例のショックではない重症敗血症患者を組み入れた。

アウトカム
主要評価項目は14日以内の敗血症性ショックへの進展である。副次評価項目は敗血症性ショック発症までの時間、ICU死亡率、院内死亡率、180日時点での生存率、二次性感染症、ウィーニングの失敗、筋力低下、高血糖である。

結果
intention-to-treatment populationは353例で、男性が64.9%、平均年齢は65.0±14.4歳であった。敗血症性ショックは、ハイドロコルチゾン群で36/170例(21.2%)、プラセボ群で39/170例(22.9%)であった(difference:-1.8%, 95%CI:-10.7to7.2%)。敗血症性ショック発症までの時間、ICU死亡率、院内死亡率、28日・90日・180日の時点での死亡率も両群間で有意差はなかった。ハイドロコルチゾン群とプラセボ群では、二次性感染症が21.5%vs16.9%, ウィーニングの失敗が30.7%vs23.8%, 高血糖が90.9%vs81.5%であった。

結論
ショックになっていない重症感染症患者において、ハイドロコルチゾンは14日以内のショックのリスクを低下させず、これらの患者に対しハイドロコルチゾンを使用することは支持できない。

◇この論文のPICOはなにか
P:ショックに至っていない重症感染症患者
I:ハイドロコルチゾンの投与(ハイドロコルチゾン群)
C:プラセボの投与(プラセボ群)
O:14日以内の敗血症性ショックへの進展

ハイドロコルチゾンは最初に50mgボーラスし、その後5日間200mg/日持続静注する。6−7日目は100mg/日に、8−9日目は50mg/日に、10−11日目は25mg/日に減量する。

inclusion criteria:感染症の証拠があること、SIRSクライテリアを少なくとも2つ以上満たすこと、48時間以内に臓器不全の証拠があること
exclusion criteria:敗血症性ショック、18歳未満、ハイドロコルチゾンやマンニトール(プラセボ)への過敏症、他の疾患でハイドロコルチゾンを使用する患者

◇baselineは同等か
肺炎がプラセボ群で多いこと以外は同等。
characteristics

◇結果
地域:ドイツ
登録期間:2009年1月13日〜2013年8月27日
観察期間:180日
無作為化:施設と性別で層別化。internet-based computerized randomization。
盲検化:患者、治療介入者、アウトカム評価者、解析者、スポンサーはすべて盲検化されている。
必要症例数:380例(イベント発生率はプラセボ群で40%、ハイドロコルチゾンにより15%の絶対リスク低下、αlevel0.05、power0.8、ドロップアウト10%として算出)
症例数:380例(ハイドロコルチゾン群190例、プラセボ群190例)
追跡率:ハイドロコルチゾン群176/190例(92.6%)、プラセボ群177/190例(93.1%)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

result
14日以内のショックへの進展は、プラセボ群で40%と想定されていたが、実際は22%と大幅に低い。ショックへの進展、死亡率、meanical vetilation-free time, RRT-free timeなどいずれも効果に差がない。せん妄は有意に増えている。

◇批判的吟味
・想定よりプラセボ群でprimary endpointの発生が低い。
・それによるpower不足の可能性はあるが、ハイドロコルチゾン群のイベント率もほぼ同じ。
・必要症例数に足りていて、追跡率もよいのに、primary endpointで有意差がないので、重症敗血症へのハイドロコルチゾンは、ショックへの進展を抑制できないと結論付けていいだろう。
・高血糖、せん妄はむしろ増える。

◇感想
重症敗血症に対しハイドロコルチゾンを投与しても、敗血症性ショックへの進展は抑制できないという結論。ステロイドは、ショックに至っていない敗血症や重篤ではない敗血症性ショックには効果は乏しい。重篤な敗血症性ショックにはステロイドを使ってもよいだろうというのが今のところのコンセンサスらしいが、重篤な患者がどのようなものかは明確にはなっていない様。Up−To-Dateには、輸液やカテコラミンを適切に投与しても1時間以上SBP<90mmHgが遷延する場合にはハイドロコルチゾン200−300mg/日の投与を勧めている。

重症患者への酸素の過剰投与が死亡率を上昇させる Oyxgen-ICU試験

Effect of Conservative vs Conventional Oxygen Therapy on Mortality Among Patients in an Intensive Care UnitThe Oxygen-ICU Randomized Clinical Trial
JAMA. Published online October 5, 2016.

《要約》
重要性
不要な酸素療法の有害性についてのデータはあるが、重症患者はかなりの期間、高酸素血症に晒される。動脈酸素化をコントロールすることは合理的であるが、実臨床での有効性は確認されていない。

目的
控えめな酸素供給がICU患者のアウトカムを改善させるか評価する。

デザイン、セッティング、患者
Oxygen-ICU試験は、単施設、オープンラベル、無作為化試験である。2010年3月から2012年10月まで、イタリアのMondena University HospitalのICUに3日以上滞在することが予想されたすべての患者を組み入れた。計画されたサンプルサイズは660例であったが、登録困難のため480例で早期中止となった。

介入
患者を、PaO2:70-100mmHgもしくはSpO2:94-98%で維持する群(conservative群)と、PaO2を150mmHgまでもしくはSpO2:97−100%で維持する群(conservative群)の2群に無作為に割り付けた。

アウトカム
主要評価項目はICUでの死亡率である。副次評価項目は新たな臓器不全とICU入室48時間以降の感染症の発症である。

結果
434例を登録し、mITT解析を行った。平均PaO2値は、conventional群で有意に高かった(102mmHg vs 87mmHg, P<0.001)。死亡率はconservative群で有意に低かった。conservative群ではショック、肝不全、菌血症の発症が少なかった。

結論
ICUに72時間以上滞在する重症患者において、酸素投与を控えめにすることは従来の酸素療法よりICU死亡率を改善する。この試験は早期中止になったため、このアプローチの有用性を検証するには、さらに大規模な多施設試験が必要である。


◇この論文のPICOはなにか
P:ICUに72時間以上滞在することが予想される患者
I:PaO2:70-100mmHgもしくはSpO2:94-98%で維持する(conservative群)
C:PaO2を150mmHgまでもしくはSpO2:97−100%で維持する(conservative群)
O:ICUでの死亡率

inclusion criteria:18歳以上
exclusion criteria:ICU再入室、生命維持治療をやめることを決定した患者、免疫抑制状態または好中球減少、ほかの試験への登録、COPDの急性増悪、ARDS

◇baselineは同等か
同等
characteristics

◇結果
地域:イタリア
登録期間:2010年3月1日〜2012年10月30日
観察期間:conservative群で平均22日、conventional群で平均24日
無作為化:computerized random-number generatorによって1:1に割り付け。主治医は、患者を試験に組み入れたあと、封筒法(密閉され中は見えない)により割り付けを知らされる(隠匿化できている)。
盲検化:オープンラベル。アウトカム評価者、解析者の盲検化については記載がないが、死亡率なので盲検化の有無の影響はないと考えてよいだろう。
必要症例数:660例(ICU死亡率はconventional群で23%、conservative群で17%、αlevel0.05、power80%)
症例数:480例(マグニチュード5.9の地震が起こり、ICUは避難。病院の病床数も20−25%減少してしまったため、事前に計画はされていなかったが早期中止となった)
追跡率:conservative群216/236例(91.5%)、conventional群218/244例(89.3%)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

result
事前に計画されていない早期中止の場合、P値がいくつになれば有意と判断してよいのかわからないが、ICU死亡率はP=0.01で、また院内死亡率はP=0.03でconservative群で低い。Mechanical ventilation-free hoursが低くなるのは、うなずける。高濃度酸素投与により、心拍出量が減ったり末梢血管抵抗が上昇したりするので、conventional群でショックや肝不全が多いのは、その結果なのかな・・・。

◇批判的吟味
・characteristicsをみると外科の患者さんが多く、循環器疾患は少なそう。
・事前に計画していない早期中止なので、P値がどれぐらいであれば有意と言っていいのかわからない。
・しかも、イベントの発生は両群の合計で69例と少ないので、αエラーの危険性があると思う。
・ただ、酸素毒性については今まで色々でていて、この結果には合点がいく。

◇感想
ICUに入るような重症患者では、酸素投与を控えめ(PaO2:70−100mmHg、SpO2:94−98%)にした方が、死亡率が低くなるという結果。しかも、8.6%の死亡率低下なので劇的と言っていいが、内的妥当性はちょっと微妙で過大評価の可能性があるので、これほどの効果があると期待しない方がいいだろう。

自分の酸素投与の方法としては、PaO2:80−100mmHg、SpO2:94−98%程度を目標としていたので、それはそのままで良さそう。