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重症患者のDVT・PE予防には、抗凝固療法に間欠的空気圧迫法(IPC)を併用すべきか

抗凝固療法と間欠的空気圧迫法(IPC)はどちらがよいのでしょうか。あるいは、それを組み合わせたほうがいいのでしょうか。

コクランのSR(15RCT、7762例)では、IPC単独と比べIPC+抗凝固療法は症候性PEは減りませんでしたが、DVTは有意に減少しています(4.1% vs 2.1%, OR:0.52[0.33-0.82])。その代わり、出血は増えてしまっています(0.6% vs 4.0%, OR:5.04[2.36-10.77])(1)

IPC+抗凝固療法と抗凝固療法単独との比較では、症候性PEは2.9%から1.2%へ減りましたが(OR:0.39[0.23-0.64])、DVTの有意な減少はみとめませんでした(6.2% vs 2.9%, OR:0.42[0.18-1.03])。抗凝固療法にIPCを加えても、大出血は増えません(OR:1.21[0.35-4.18])(1)

つまり、DVT・PEの予防にはIPC+抗凝固療法を行う方がいいけど、出血はIPC単独より増えてしまうよう。ICPよりかは抗凝固療法の方が、DVTの予防効果は高いらしいので、DVT予防は抗凝固療法単独でやるか、あるいは抗凝固療法にIPCを併用するかのどちらかでしょう。

Adjunctive Intermittent Pneumatic Compression for Venous Thromboprophylaxis
N Engl J Med. 2019 Feb 18. doi: 10.1056/NEJMoa1816150. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:72時間以上ICUに滞在しそうな患者
I:間欠的空気圧迫法(IPC)+抗凝固療法
C:抗凝固療法のみ
O:近位部DVT

inclusion criteria:成人(14−18歳以上)の内科疾患・術後・外傷患者、45kg以上

【治療の流れ】
ICU入室48時間以内に登録。IPCは、大腿までの連続圧迫できるマルチチャンバーカフのデバイスを推奨。膝までで非連続圧迫(シングルチャンバーカフ)でも許容する。デバイスは両下肢に少なくとも1日18時間以上装着し、8時間ごとに取り外し皮膚の観察とケアをする。

深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症(PE)を発症した場合・疑う場合・皮膚潰瘍を生じた場合・虚血が生じた場合には、デバイスを取り外す。観察期間は、動けるようになるまでと、ICU退室までと、試験開始後28日までのいずれか。

両群とも弾性ストッキングは使わない。

ランダム化後48時間以内に近位下肢静脈エコーを行う。それ以降も2回/週の頻度で下肢静脈の
行い、臨床的にDVTを疑う場合にも施行する。下肢静脈エコーは大腿静脈・膝窩静脈・下腿三分枝を1cm間隔で評価する。ソノグラファーとは別のブラインドされた放射線科医が画像を評価する。

【試験の概要】
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:サウジアラビア、カナダ、オーストラリア、インド
登録期間:2014年7月〜2018年8月
観察期間:7日(中央値)
症例数:2003例(IPC併用群991例、抗凝固療法単独群1012例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与なし

【患者背景】
両群に差はない。
ざっくりと。58歳、男性6割、BMI29、人工呼吸器2/3、血管収縮薬1/3、抗凝固薬(未分画ヘパリン60%、低分子ヘパリン40%)、大腿静脈へのCV挿入15%

【結果】

治療期間は両群とも中央値7日。IPCを使用したのは、IPC併用群で98%、抗凝固療法単独群で10%、IPC併用群のIPC使用時間は22時間/日、スリーブの長さは大腿19%、膝79%、フットポンプの使用12%。


stage1:nonblanchable erythema, stage2:partial-thickness ulceration, stage3:full-thickness skin or tissue loss

【まとめと感想】
報告によって異なりますが、重症患者でのDVT発生率は5−20%のようで、このPREVENT試験では両群とも4%程度でした(PEは1%程度)。抗凝固療法にIPCを追加しても、効果はありませんでした。ただ、皮膚障害などの有害事象もほとんど同程度なので、IPCを併用しても別に悪くはないでしょう。

予防をしていても、DVTやPEの発生はそこそこあるので、忘れてはいけない疾患です。

1)Cochrane Database Syst Rev. 2016;9:CD005258

悪性腫瘍の静脈血栓塞栓症とリバロキサバンの予防投与

AVERT試験では、アピキサバン2.5mgの1日2回投与により血栓イベントは有意に減りました(出血は有2倍に増えましたが)。このCASSINI試験は同じような試験デザインで、リバロキサバンでのVTE予防効果が検証されています。

Rivaroxaban for Thromboprophylaxis in High-Risk Ambulatory Patients with Cancer.
N Engl J Med. 2019 Feb 21;380(8):720-728.

【PICO】
P:外来化学療法を行う固形癌・リンパ腫でKhoranaスコア2点以上
I:リバロキサバン10mg
C:プラセボ
O:180日間の血栓イベント(下肢の近位部深部静脈血栓症、遠位部深部静脈血栓症、症候性肺血栓塞栓症、血栓塞栓症による死亡)
安全性評価項目:大出血(輸血を要する出血、Hb>2g/dlの出血)

exclusion criteria:脳腫瘍、脳転移、活動性出血

Khoranaスコア
胃癌、膵癌=2点
肺癌、リンパ腫、婦人科腫瘍、膀胱癌、精巣癌=1点
血小板>35万/μL=1点
Hb<10g/dlまたはESA製剤の使用=1点 白血球数>1.1万/μL=1点
BMI>35=1点

Khoranaスコア別のVTE発症リスク(2.5ヶ月)
低リスク群(0点):0.3%
中リスク群(1−2点):2.0%
高リスク群(3−6点):6.7%

【試験の概要】
デザイン:RCT(double blind)
地域:? 11ヶ国143施設
登録期間:?
観察期間:平均4.3ヶ月(予定は180日)
症例数:841例(リバロキサバン群420例、プラセボ群421例)
解析:ITT解析
スポンサー:Janssen社、Bayer社

【患者背景】
DVT既往がリバロキサバン群で多いが、それ以外は有意差なし。
ざっくりと。年齢62歳、男女半々、白人80%、Khoranaスコア2点70%、3点25%、DVT既往(プラセボ群0.5%、リバロキサバン群2.6%)、癌種(膵癌1/3、胃癌20%、肺癌15%、リンパ腫6%)

【結果】
リバロキサバン群の43.7%、プラセボ群の50.2%が薬剤を途中で中止している。

【まとめと感想】
悪性腫瘍のVTE予防のためにルーチンで抗凝固薬が必要かどうかは置いといて、少なくともリバロキサバンでは有意な差にはなりませんでした。

アピキサバンについてはこちらをご参照ください。
悪性腫瘍の静脈血栓塞栓症とアピキサバンの予防投与

悪性腫瘍の静脈血栓塞栓症とアピキサバンの予防投与

Apixaban to Prevent Venous Thromboembolism in Patients with Cancer
N Engl J Med. 2018 Dec 4. doi: 10.1056/NEJMoa1814468. [Epub ahead of print]

【PICO】
P:化学療法を行う新規、または再発の悪性腫瘍で、Khoranaスコア2点以上
I:アピキサバン2.5mg/回 1日2回
C:プラセボの内服
O:180日間の静脈血栓塞栓症(VTE)

Khoranaスコア
胃癌、膵癌=2点
肺癌、リンパ腫、婦人科腫瘍、膀胱癌、精巣癌=1点
血小板>35万/μL=1点
Hb<10g/dlまたはESA製剤の使用=1点
白血球数>1.1万/μL=1点
BMI>35=1点

Khoranaスコア別のVTE発症リスク(2.5ヶ月)
低リスク群(0点):0.3%
中リスク群(1−2点):2.0%
高リスク群(3−6点):6.7%

【試験の概要】
デザイン:RCT
地域:カナダ
登録期間:2014年2月〜2018年4月
観察期間:210日
症例数:563例(アピキサバン群288例、プラセボ群275例)
解析:mITT解析
スポンサー:企業の関与あり(Bristol-Myers社、Squibb–Pfizer社)

【患者背景】
両群間に差はない。
ざっくりとした背景。年齢61歳、男性4割、体重80kg、リンパ腫と婦人科腫瘍が1/4ずつ、肺癌・胃癌・膵癌が10%ずつ、Khonaraスコア2点:2/3、3点:1/4、4点:1/12、抗血小板薬の併用1/4、VTEの既往3%。

【結果】
アピキサバン群 vs プラセボ群
▶︎180日以内のVTE
4.2% vs 10.2% HR:0.41(95%CI:0.26−0.65)

▶︎肺塞栓症
1.7% vs 5.8%(統計学的有意差の検証なし)

▶︎すべての出血
3.5% vs 1.8% HR:2.00(95%CI:1.01-3.95)

アピキサバン群で10例、プラセボ群で5例で、そのうち出血性ショック・頭蓋内出血まで至ったのは、アピキサバン群で1例(10%)、プラセボ群で2例(40%)。致死的な出血はいずれの群でも認めなかった。

▶︎全死亡
12.2% vs 9.8% HR:1.29(95%CI:0.98−1.71)

【まとめと感想】
悪性腫瘍のVTEはアピキサバンにより減らすことができるようです。Khoranaスコアというのは知りませんでしたが、この試験通りVTEリスクが高い2点以上でアピキサバンの予防投与をやってもいいのかもしれません。重大な出血を増やさずに、VTEを予防できる可能性はあると思います。

ただ、自分はこの結果をみても、悪性腫瘍+Khoranaスコア2点以上でアピキサバンを勧めようとは思いません。アピキサバンの内服期間は180日間となっている意味がよくわからないからです。この180日というのは恣意的で、アピキサバンのVTE予防効果が発揮されるだけの期間で、かつ出血がそれほど増えない期間として設定されてるのではないかと勘ぐってしまいます。

実臨床で、VTEの予防として内服し始めた薬を180日でやめるでしょうか。おそらく、副作用などの問題がなければ180日経過した後も続けるケースが大半を占めることになるのではないでしょうか。メーカが狙っているのはそこだろうと思います。企業のマーケティングに乗っかる必要はありません。

この論文の中にはありませんでしたが、Khoranaスコアがより高いグループではどうなのかは気になりますし、どのような患者群で本当に抗凝固療薬の恩恵を享受できるかを知りたいです。

ADDリスクスコアとDダイマーで大動脈解離を否定する

大動脈解離の診断は難しい。胸痛を訴える患者など、大動脈解離が鑑別にあがる状況で、全員にCTを撮るわけにはいかないし、CTのハードルが高いと見逃してしまう。

肺血栓塞栓症では、D-dimerが陰性であれば除外できるが、大動脈解離の場合はそうはいないない。感度が高い検査方法ではあるが、除外する目的では使えない(1)

ADDリスクスコアというものもあるが、これもそれだけでは大動脈解離を否定することには使えず、このスコアをIRAD databeseに当てはめると、大動脈解離2538例のうち108例 (4.3%) がlow risk (ADDリスクスコア=0) だった。

ADDリスクスコア
次の3つのカテゴリで、カテゴリ内の項目をひとつでも該当すれば1点とし、0−3点で評価する。
①マルファン症候群、大動脈疾患の家族歴、既知の大動脈弁疾患、既知の胸部大動脈瘤、大動脈の治療 (手術)
②突然、激痛、引き裂くような痛み
③血流障害 (脈拍の欠損、収縮期血圧の左右差、局所的な神経学的異常)、拡張期逆流性雑音、低血圧・ショック

ただし、ADDリスクスコアとD-dimerの組み合わせは、大動脈解離の除外に有用かもしれない。

Diagnostic Accuracy of the Aortic Dissection Detection Risk Score Plus D-Dimer for Acute Aortic Syndromes: The ADvISED Prospective Multicenter Study.
Circulation. 2018;137(3):250-258

2014年〜2016年に登録された、4ヶ国、6施設の前向き観察研究。

発症14日以内の胸痛、腹痛、背部痛、失神、灌流障害の症状・徴候で救急外来を受診した患者1850例が対象。ADDリスクスコアとD-dimerについて評価し、急性大動脈症候群 (AAS) があやしければCTA・TEE・MRAを行う。

これらの検査をしなかった患者、手術あるいは剖検によるASSの診断がついていない患者、ASSを除外された患者では、14日間のフォローアップを行う。本人または家族に電話をするか、再診外来にきてもらい、質問表に答えてもらう。

ASSの定義は、Stanford AとBの大動脈解離、大動脈壁在血腫 (IMH)、penetrating aortic ulcer (PAU)、大動脈破裂。確定診断は、CTA・TEE・MRA・手術・剖検により、ASSの所見が確認できること。

primary endpointは、ASSを除外する上での、ADDリスクスコア (0または≦1) とD-dimer陰性を組み合わせのfailure rate。

【結果】
1850例のうち、835例は画像検査が行われ、234例がAASであった。画像検査が行われなかった1015例は14日のフォローアップが行われ (lost follow up 2例)、うち30例で画像検査が行われ、AASは7例だった。

ADDリスクスコア=0 + D-dimer陰性
 感度:99.6% (97.7%-100%)
 特異度:18.2% (16.4%-20.2%)
 陽性的中率:15.4% (13.7%-17.3%)
 陰性的中率:99.7% (98.1%-100%)

ADDリスクスコア≦1 + D-dimer陰性
 感度:98.8% (96.4%-99.7%)
 特異度:57.3% (54.9%-59.7%)
 陽性的中率:25.8% (23%-28.7%)
 陰性的中率:99.7% (99.1%-99.9%)

【まとめと感想】
ADDリスクスコア≦1 + D-dimer陰性であれば、99.7%で急性大動脈症候群を除外できる。もちろん、対象となる集団が異なればこの数字は変わってくるわけだけど、否定できる根拠があると助かる。

(1) Ann Emerg Med 2015;65:32-42

近位深部静脈血栓症とカテーテル治療

DVTの慢性期には、下腿浮腫、色素沈着、うっ滞性皮膚潰瘍などの血栓後症候群(PTS)を合併することが知られており、急性近位深部静脈血栓症では約40%で発症すると言われている。そして、PTS予防には、静脈の開存、弁機能維持が重要と考えられている。

DVTの標準的治療は弾性ストッキングと抗凝固療法だが、カテーテル血栓溶解療法(CDT)を加えることにより、PTSの発症率を減少させることが期待されている。発症21日以内のDVTを対象としたCaVenT試験(1)では、CDT群で24ヶ月時点でのPTSが有意に減少した(NNT=7)。

このATTRACT試験は発症14日までのDVTを対象としており、CaVenT試験よりも、より早期の患者を対象としている。そして、PTSリスク低減のため、CDTに加え、血栓吸引・バルーン拡張・ステント留置といった機械的な治療も行うPCDT(pharmacomechanical CDT)も行われた。

Pharmacomechanical Catheter-Directed Thrombolysis for Deep-Vein Thrombosis.
N Engl J Med. 2017 Dec 7;377(23):2240-2252.

◇PICO
P:有症候性の近位深部静脈血栓症
I:標準治療+PCDT
C:標準治療のみ
O:6−24ヶ月でのPTS

両群ともに、長期の抗凝固療法、膝までの弾性ストッキングの着用を行う。血栓溶解薬はアルテプラーゼを用いる。

inclusion criteria:16−75歳、発症14日以内、大腿静脈・総大腿静脈・腸骨静脈の血栓
exclusion criteria:悪性腫瘍、血栓後症候群の既往

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:米国
登録期間:2009年12月〜2014年12月
観察期間:24ヶ月
症例数:692例(PCDT群336例、PCDT群355例)
解析:mITT解析
スポンサー:Boston Scientific社、Covidien社、Genentech社、BSN Medical社などから資金・薬剤・デバイスの提供あり

◇結果
PCDT群で11例割り付けられた治療が行われず、標準治療群で5例PCDTが行われた。

PCDT群 vs 標準治療群
▶︎primary endpoint
47% vs 48%(RR:0.96、95%CI:0.82−1.11)
PP解析・・・RR:0.94、95%CI:0.81−1.10

▶︎中等症〜重症の血栓後症候群
18% vs 24%(RR:0.73、95%CI:0.54−0.98)

▶︎10日以内の重大な出血
1.7% vs 0.3%(RR:6.18、95%CI:0.78-49.2)

◇まとめと感想
標準治療にPCDTを併用してもPTSの発症は抑えらず、PP解析でも有意な差は認めなかった。重大な出血に関しては有意差はないが、PCDT群で多い傾向であった。

CaVenT試験よりもPTS予防効果の期待できる対象(発症早期)、方法(PCDT)だったが、結果は期待したものではなく、CaVenT試験とも矛盾するものだった。

AHAガイドラインでは、CDT/PCDTの適応は、有痛性青股腫のような急性の循環不全をきたしている場合はclassⅠで、抗凝固療法下でも血栓の進展or症状の増悪がある場合や、出血リスクが低い患者に対するPTS予防に対してはclassⅡaで推奨している。そして、出血リスクが高い場合や発症21日以上経過している場合は、classⅢとなっている。

ATTRACT試験の結果を加味すると、CDT/PCDTは有痛性青股腫や、抗凝固療法下でも血栓の進展or症状の増悪がある場合に限った方がいいのかもしれない。

(1)Lancet 2012;379:31–38
(2)Circulation.2011;123:1788-1830

IVCフィルターは肺塞栓症を抑制するが、生命予後は改善せずDVTを増やす

Inferior Vena Cava Filters to Prevent Pulmonary EmbolismSystematic Review and Meta-Analysis
J Am Coll Cardiol. 2017;70(13):1587-1597

◇論文のPICOはなにか
P:PEの一次予防、または二次予防
I:IVCフィルターあり
C:IVCフィルターなし
O:肺塞栓症(PE)の発症率

<文献データベース>
MEDLINE、CENTRAL、ClinicalTrials.gov

<研究の選択>
・組み入れた研究:RCT、IVCの有無で比較した前向き観察研究
・期間:〜2016年10月3日
・ Inverse variance fixed-effects models

◇結果
▶︎PE

(本文から引用)

IVCフィルターの使用は、PEの発症低下と関連あり(オッズ比:0.50、95%CI:0.33-0.75、I2統計量=48%)

論文中にfunnel plotはないが、本文に”funnel plotで出版バイアスが示唆された”と記載あり。

RCTのみの解析でも、同様にIVCフィルターとPE発症率低下の関連あり(オッズ比:0.40、95%CI:0.23-0.69、I2=37%)。

▶︎PE関連死

(本文から引用)

観察研究では、出版バイアスのためかPE関連死は減少しているが、RCTでは有意差はない。

▶︎全死亡

(本文から引用)

全死亡では差がない。

▶︎DVT

(本文から引用)

DVTは増える。

◇まとめと感想
IVCフィルターの有効性を検証したRCTは多くない。その中でもっともサンプルサイズが大きいRCTがPREPIC1試験とPREPIC2試験である。このSRでは、PREPIC 1998、Mismetti 2015というのがそれである。

PREPIC1試験は、近位部DVTを抗凝固療法単独と抗凝固療法+IVCフィルターに割り付けたRCT。12日以内のPEは、IVCフィルターありで1.1%、なしで4.8%と有意に減少したが、2年のフォローアップで有意差はなくなり(3.4%vs6.3%)、DVTは有意に増え(20.8%vs11.6%)、全死亡に差はなかった(21.6%vs20.1%)。

じゃぁ、PEの発症早期だけIVCフィルターを入れておけば、PE再発を予防できDVTも増やさないのではないかという仮説が立つし、理になかっているように思われる。それに応えたのがPREPIC2試験。再発リスクの高いPEを対象に、抗凝固療法単独と抗凝固療法+回収可能型IVCフィルターに割り付け、回収可能型フィルターは3ヶ月後に抜去するというデザイン。抜去成功率は93.2%。

結果は、3ヶ月後のPEはIVCフィルターありで3.0%、なしで1.5%と、PE発症早期のみのIVCフィルター留置でもPEの再発を抑制できなかった。

ただ、IVCフィルターを回収していないPREPIC1試験の8年間のフォローアップでは、PEの再発が6.2%vs15.1%と再び有意差が付いている。多変量解析では、悪性腫瘍とIVCフィルター留置時のPEが予後因子だったので、それらの患者にはIVCフィルターの留置を考慮してもいいのかもしれない(ただし、生命予後には関係がなく、DVTは増える)。

SRでは、PREPIC1試験とPREPIC2試験のサンプルサイズ、イベント数が多く、その2つが大きなウエイトを占める。なので、それ以上の結果はでないのだが、結果としては、PEの一次予防と二次予防をまぜた集団で、IVCフィルターはPEの発症を減少させるが、PE関連死や全死亡は減らなかった。

【総説】深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症 Lancet

Deep vein thrombosis and pulmonary embolism
Lancet. 2016 Jun 30. [Epub ahead of print]

深部静脈血栓症(DVT)と肺血栓塞栓症(PE)、それは集合的に静脈血栓塞栓症(VTE)と言われ、世界的にみられる疾患である。DVTとPEの診断に役立つ検査は、臨床の決定のルールとDダイマー測定である。VTEらしくないDダイマーが陰性の患者では、画像と抗凝固療法を安全に差し控えることができる。それ以外の患者では、DVTを疑う場合は下肢静脈エコーを、PEを疑う場合にはCTを行うべきである。直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)は、ワルファリンより出血が少なく使用法も簡便であり、VTEに対する治療の第一選択薬である。血栓溶解療法は、血行動態が不安定なPEにのみ限定すべきである。抗凝固療法は、再発予防のために少なくとも3ヶ月は継続すべきで、VTEの原因が不明な場合や持続する要因による二次性の場合は、3ヶ月以上の抗凝固療法を考慮すべきである。

◇疫学
・世界中で年間1000万件
・血管疾患では、心筋梗塞、脳梗塞に続く3番目の多さ
・経済的負担は、米国では年間70−100億ドル
・年齢とともに増加し、80歳以上では100人に1人
・発症率 黒人>白人>アジア人
・リスクに男女差なし(妊娠とエストロゲン療法を除けば、男性は女性の2倍起こしやすい)
・VTEの30%は10年以内に再発する
・DVTの20−50%が血栓後症候群に、PEの0.1−4.0%が慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に
・VTEの1/3−1/2は原因不明
・強力なリスクファクターは手術、不動、悪性腫瘍
・大きな整形外科手術では、予防していても1%でVTEを発症する
・全VTE患者のうち、20%が悪性腫瘍、不動と手術は15%ずつ
・最も頻度が高い遺伝子変異は、第Ⅴ因子Leiden変異とプロトロンビン遺伝子変異(日本人にはみられない)

◇診断
臨床症状
・突然の呼吸困難、呼吸困難の増悪、胸痛、失神、めまい、頻脈、頻呼吸
・症状だけで診断は無理
・胸部レントゲン、心電図、血ガスでは特異的な所見なし
・症候性PEの70%にDVTあり
・症候性DVTの1/3に無症候性PEあり

臨床的なそれっぽさとDダイマー
このスコアがよく用いられる

・Wells’ score for deep vein thrombosis
  3点以上 ⇨ DVTらしい

・Wells’ score for pulmonary embolism
  original:5点以上 ⇨ PEらしい
  simplified:2点以上 ⇨ PEらしい

・Revised Geneva score for pulmonary embolism
  original:11点以上 ⇨ PEらしい
  simplified:5点以上 ⇨ PEらしい

・これだとVTEの除外には使えないので、Dダイマーも測定すること
・これらのスコアが低く、Dダイマーが正常値なら、その後の3ヶ月間でVTEを発症する確率は1%未満

・年齢とともにDダイマーは上昇する
・50歳以上の域値は、年齢×10μg/L
・500μg/Lを域値にしたときと比べ、同等の感度で特異度は高くなる

DVTの画像診断
・圧迫法による下肢静脈エコーがゴールドスタンダード
・鼠径から下腿まで描出し、全体を評価
・さらに鼠径と膝窩の圧迫法を行う
・1週間後に下腿のDVTが進展していないか再度エコーを行う
・骨盤内やIVCの血栓はCTもしくはMRIで評価する

PEの画像診断
・CT肺動脈造影がゴールドスタンダード
・腎機能障害、造影剤アレルギー、妊婦では肺換気血流シンチを

◇治療
抗凝固療法
・治療期間を3つに分ける
  急性期:発症5−10日まで
  維持期:3−6ヶ月まで
  延長期:それ以上
・急性期に使用できるのは、低分子ヘパリン、フォンダパリヌクス、未分画ヘパリン、経口Xa阻害薬(リバロキサバン、アピキサバン)
・未分画ヘパリンはAPTTをみて容量調整
・低分子ヘパリンは体重による容量設定で、モニタリングは不要
・安全性、有効性の面で未分画ヘパリンより低分子ヘパリンが好まれる
・腎機能障害(CCr<30ml/min)には低分子ヘパリンやフォンダパリヌクスより未分画ヘパリン
・ワルファリンは少なくとも5日間併用し、INRが2.0を超えたら、ヘパリンまたはフォンダパリヌクスは中止する
・INRは2.0−3.0で維持する
・ダビガトランとエドキサバンはヘパリンと5日間併用
・リバロキサバンとアピキサバンは併用しない
・高容量:リバロキサバンは3週間、アピキサバンは7日間
・DOACは大出血を39%減らした
・どのDOACがいいか明確なエビデンスなし
・中等度の腎機能障害にはダビガトランよりXa阻害薬
・高度の腎機能障害にはDOACよりワルファリン
・活動性の悪性腫瘍にはワルファリンより低分子ヘパリン
・活動性の悪性腫瘍で低分子ヘパリンとDOACは比較されていないので、低分子ヘパリンが第一選択(臨床試験が現在進行中)
・ワルファリンとDOACは胎児への悪影響になりえる
・ワルファリンは授乳婦には安全
・DOACは授乳婦にもダメ

外来治療
・血行動態が安定し死亡リスクが低いなら、外来での治療が可能
・30日死亡率はPESI(Pulmonary Embolism Severity Index)がlowなら1%、highなら11%

血栓溶解療法
・血行動態が不安定だと、死亡率は高い
・PEITHO試験では血行動態が安定した右室機能不全があるPEを対象とし、プラセボと比較し、死亡率は変わらず、大出血を9%、頭蓋内出血を2%増加させた
・腸骨大腿部の深部静脈血栓にはカテーテルによる血栓溶解療法を考慮(24ヶ月時点での血栓後症候群を減らすが、リスクベネフィット比は不明確)

下大静脈フィルター
・抗凝固療法の絶対的な禁忌には適応がある
・活動性の出血、適切な抗凝固療法下での再発
・IVCフィルターはPEの再発を減らさない
・恒久型より回収可能型フィルターが好ましい
・回収可能型は回収できないこともある

弾性ストッキング
・段階式弾性ストッキングは血栓後症候群を減らす
・しかし、RCTで膝までの段階式弾性ストッキングのベネフィットが示されなかった
・近位DVTでの下肢腫脹を抑えるためには考慮すべき

治療期間

・初回VTEなら3ヶ月は続ける
・原因不明のVTEの再発なら3ヶ月以上続ける
・初回のVTEで原因が不明なら3ヶ月の時点で再評価(Dダイマー+下肢近位部エコー、しかしこの有効性は不明)
・抗凝固療法中のDダイマーが繰り返し正常でも、中止1ヶ月後の再発率は3−7%
・活動性の悪性腫瘍だと抗凝固療法を行なっていても8%/6ヶ月の再発率
・下腿のみの血栓、亜区域性のPEの有病率や抗凝固療法のリスクベネフィットは議論がある

抗凝固療法の延長
・ワルファリン、アピキサバン、ダビガトランはプラセボより、VTE再発を80−90%減らすが、出血を2−5倍に増やす
・アスピリンもプラセボと比較し、30%再発を減らす
・抗凝固薬とアスピリンの出血リスクは同等だが、再発への有効性は抗凝固薬が高い
・アスピリンは代替薬にならない
・DOAC間の直接比較データはない

◇感想・コメント
Dダイマーのカットオフは0.5μg/mlだと思っていましたが、年齢調整したカットオフは同等の感度で特異度は高くなるというのは、初めて知りました。これは使えそうです。

失神に占める肺塞栓症の割合

Prevalence of Pulmonary Embolism among Patients Hospitalized for Syncope
N Engl J Med 2016; 375:1524-1531

《要約》
背景
失神のため入院した患者のうち、肺塞栓症の有病率は明らかではなく、現在のガイドラインではこれらの患者に対する肺塞栓症の精査については、ほとんど注意が払われていない。

方法
イタリアの11施設で、初回の失神で入院した患者を対象に、肺塞栓症に代わる失神の原因の有無に関わらず、肺塞栓症のシステマチックな精査を行った。臨床的に検査前確率が低い(Wellsスコアによる)ことと、Dダイマーが陰性であることで除外し、他のすべての患者にCTによる肺動脈造影もしくは肺換気血流シンチを行った。

結果
560例(平均年齢76歳)が試験に組み入れられた。330/560例(58.9%)が、臨床的に低い検査前確率とDダイマー陰性によって肺高血圧症が除外された。残った230例のうち、97例(42.2%)が肺塞栓症と特定された。全集団のうち、肺塞栓症の有病率は17.3%(95%CI14.2−20.5)であった。主肺動脈または葉動脈の肺塞栓症の所見、両肺の25%以上の血流欠損の所見は、61例に認めた。肺塞栓症以外で失神が説明可能である355例のうち45例(12.7%)で、失神の原因が特定されなかった205例のうち52例で、肺塞栓症を認めた。

結論
失神の初回のエピソードがあり入院した患者のうち、約6人に1人で肺塞栓症が特定された。

◇この論文のPICOは?
O:肺塞栓症
P:初回の失神のため入院した患者

失神の定義:突然発症の一過性の意識消失で、1分以内に自然に意識が回復すること。また、癲癇、脳梗塞、頭部外傷などの明らかな原因による一過性の意識消失は除外。

入院の理由:転落による外傷、重篤な併存疾患、原因不明の失神、心原性失神の可能性が高い

除外基準:失神歴があること、抗凝固療法を行っていた患者、妊娠

◇デザイン、対象
・横断研究
・失神を主訴にERを受診したのは、2584例
・診断がついたものなどを除いた560例(肺塞栓症の有病率が10−15%、αlevel0.05として、必要症例数は550例)が対象

◇結果
低い検査前確率、Dダイマー陰性:330/560例

230例のうち、
CTによる確定診断:72/180例
肺換気血流シンチによる確定診断:24/49例
剖検による確定診断:1/1例(肺動脈主幹部)

失神患者全体では、17.3%(97/560例)が肺塞栓症だった。

CTで診断した肺塞栓の血栓の部位は、
肺動脈主幹部30例(41.7%)
肺葉動脈18例(25.0%)
区域動脈19例(26.4%)
亜区域動脈5例(6.9%)

肺換気血流シンチで診断した肺塞栓症で血流の欠損は
50%以上が4例(16.7%)
26−50%が8例(33.3%)
1−25%が12例(50.0%)

characteristics
血圧・心拍数・呼吸数などのバイタルは結構重要。足の所見(発赤・腫脹)も確認すべき。

◇感想
失神を主訴にER受診した患者2584例のうち、97例(3.8%)は肺塞栓症を起こしている。見つかった肺塞栓が、必ずしも失神の原因かどうかはわからない。この試験では、問診とDダイマーからルーチンでCTもしくは肺換気血流シンチを行っているので、他の原因で失神した人にたまたま肺塞栓が見つかったっていう症例も含まれる。

肺塞栓症を疑う際の重要な所見は、呼吸数(>20回/分)、心拍数(>100回/分)、収縮期血圧(<110mmHg)、DVTの臨床所見(下肢の発赤・腫脹)など。Dダイマーももちろん測定すること。

近位深部静脈血栓症に対する弾性ストッキングは24ヶ月続けるのがベター OCTAVIA試験

One versus two years of elastic compression stockings for prevention of post-thrombotic syndrome (OCTAVIA study): randomised controlled trial
BMJ 2016;353:i2691

《要約》
目的
近位深部静脈血栓症を発症後、弾性ストッキングを12ヶ月着用することは24ヶ月着用することに対し非劣性であるか検証する。

デザイン
多施設、盲検化、非劣性、無作為化比較対照試験

セッティング
オランダの大学病院を含む8つの教育研究病院の外来

参加者
エコーで診断がついた症候性の深部静脈血栓症(DVT)を発症後、12ヶ月の弾性ストッキング着用に同意した患者

介入
DVT発症後、弾性ストッキングを12ヶ月で中止するか否か

アウトカム
主要評価項目は血栓後症候群(standardized Villalta scaleで評価)で、事前に定めた非劣性マージンは10%である。副次評価項目はQOL(VEINES−QOL/Sym)である。

結果
DVTの診断から1年が経ち、弾性ストッキングを着用していた血栓後症候群のない患者518例を、弾性ストッキングをもう1年継続するか、あるいは中止するかの2群に無作為化した。弾性ストッキング中止群では、51/256例(19.9%)で血栓後症候群を発症した。弾性ストッキング継続群では85%が弾性ストッキングを週に6−7日着用しており、34/262例(13.0%)で血栓後症候群を発症した。absolute differenceは6.9%(95%CIの上限:12.3%)。95%信頼区間の上限が事前に定めた非劣性マージン10%を超えたため、非劣性は証明できなかった。弾性ストッキングの静脈後血栓症に対するNNTは14(95%CIの下限は8)であった。QOLに群間差はなかった。

結論
近位DVTで1年間弾性ストキングの着用を継続した患者では、弾性ストッキングの着用を1年で中止することは、2年間の着用継続に対し非劣性ではなかった。

◇この論文のPICOはなにか
P:症候性で、エコーにより近位DVTと診断され、発症1年未満の患者
I:12ヶ月で弾性ストッキングの着用を中止する(弾性ストッキング中止群)
C:24ヶ月まで弾性ストッキングを着床する(弾性ストッキング継続群)
O:

inclusion criteria:膝窩静脈より近位のDVT、ガイドラインに準じて抗凝固療法を行っていること、弾性ストッキングclassⅢ(34−46mmHg)を着用していること、週に6日以上弾性ストッキングを着用していること
exclusion criteria:DVTの同側での再発、膝窩静脈より遠位にのみDVTを認めること、試験登録前でDVT発症後1年以内に血栓後症候群を発症している患者、Villalta score5点以上、初回のDVT発症前に弾性ストッキングを使用していること、動脈機能不全やアレルギーなどの弾性ストッキング禁忌、生命予後6ヶ月以内

◇baselineは同等か
characteristics
同等。約60%が外傷・手術・妊娠など一過性の原因。抗凝固療法は、DVT発症後10日ぐらいは低分子ヘパリンで、そのあとワルファリンで6ヶ月ほど。無作為化の際に抗凝固療法を行っていたのは約15%ほど。

◇結果
地域:オランダ
登録期間:2009年2月〜2013年9月
無作為化:online randomisation module provided by the Dutch Julius Centre for Health Sciences and Primary Care in Utrecht,th Netherlands,which ensured concealed allocation.
盲検化:study personnelは盲検化されているということなので、おそらくアウトカム評価者と解析者は盲検化されているはず。
必要症例数:516例(弾性ストッキング継続群で血栓後症候群で2−3%に血栓後症候群を発症、power80%、αlevel0.05、非劣性マージン10%、死亡やDVTの再発があることも加味し算出)
症例数:522例(弾性ストッキング中止群260例、弾性ストッキング継続群262例)
追跡率:489/522例(93.7%)
解析:mITT(弾性ストッキング中止群のうち4例がineligibleということで解析から外されている)
スポンサー:企業の関与あり(sanofi)

弾性ストッキング継続群ではアドヒアランスを把握できたのは218/262例(83.2%)であった。
result

◇感想
外傷、手術、妊娠・出産など一過性の原因については弾性ストッキングを使用しなくてもいいのではないかと思うが、それでも弾性ストッキングを12ヶ月で中止すると血栓後症候群が増えてしまっているので、弾性ストッキングを着用するなら少なくとも24ヶ月は続けておいたほうがよいということだろう。

外傷患者のIVCフィルターと死亡率

Association Between Inferior Vena Cava Filter Insertion in Trauma Patients and In-Hospital and Overall Mortality.
JAMA Surg. 2016 Sep 28. [Epub ahead of print]

《要約》
重要性
入院した外傷患者は出血と血栓症のリスクが増大している。これらの患者に対するIVCフィルターの使用が増えているが、その効果を示す十分エビデンスはない。

目的
外傷患者へのIVCフィルターの留置が死亡率に影響をもたらすか検証する。

デザイン、セッティング、患者
この後方視的コホート研究では、2003年8月1日から2012年12月31日の間にボストンメディカルセンターでIVCフィルターが留置された患者と、層別化しプロペンシティスコアがマッチした患者を組み入れた。IVCフィルターが留置された患者とマッチした対照では、年齢、性別、人種・民族、Injury Severity Score(ISS)を多変量回帰モデルを用いてプロペンシティスコアを算出した。マッチングは受傷日で層別化した。

アウトカム
両群の院内死亡率を比較するために、年齢、性別、人種・民族、ISS、head and neck Abbreviated Injury Scoreによる脳損傷の重症度を調整した多変量ロジスティック回帰分析を用いた。受傷後24,48,72時間後と退院時に、National Death Indexから得たすべての患者のcharacteristicsと死亡率を解析した。

結果
IVCフィルターを留置した外傷患者451例と、それとマッチしたIVCフィルターを留置していない対照1343例で、平均年齢は47.2±21.5歳であった。ISSの中央値は、全体では24(1−75)であった。受傷後24時間生存した患者の平均3.8年(0−9.4年)のフォローアップでは、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)の存在とは独立して、IVCフィルターの有無で死亡率や死因に有意差はなかった。追加的な解析では、退院後6ヶ月と1年時点でも有意差はなかった。フォローアップ期間中、8%(38/451例)でIVCフィルターを抜去した。

結論
この研究では、IVCフィルターの有無では外傷患者の生存率に差はなかった。IVCフィルターの抜去率は低く、IVCフィルターを留置したままの患者では死亡率が上昇するめ、外傷患者へのIVCフィルターの使用は再度検証されるべき

◇この論文のPICOは?
P:外傷患者
I:IVCフィルターの留置あり
C:IVCフィルターの留置なし
O:死亡率

◇デザイン、対象、観察期間
・後ろ向き
・ロジスティック回帰、プロペンシティスコアマッチ
・1794例
・受傷からIVCフィルター留置まで平均3日
・観察期間:平均3.8年

characteristics
外傷なので40歳代後半と比較的若い。外傷スコアがどの程度のものかイメージできないが、平均で24なので結構重症の外傷みたい。

◇結果
全体でみると・・・
・院内死亡率  IVCフィルターあり vs なし
   5.5% vs 22% 、P<0.001

調整後オッズ比は6.5(95%CI:3.9−10.6)と有意にIVCフィルターなし群で高い。

しかし、重症な外傷ほど、それが原因で早期になくなってしまうので・・・
in-hospital-mortality
IVCフィルターなし群では受傷24時間以内に14.5%が、IVCフィルターあり群では0.2%が死亡した(死ななかったから留置できている)。72時間以上生存した症例では、IVCフィルターによる死亡率の改善はない。IVCフィルターが留置されるのは、受傷から平均で3日なので、IVCフィルターは死亡率を改善させないと考えていいだろう。

ちなみに・・・
mortality1
長期的な死亡率では有意差なし。

mortality2
肺塞栓症を起こしてる症例やDVTがある症例に限っても、IVCフィルターの有用性は認められない。

◇感想
重症な外傷患者では、外傷が原因で受傷後早期に死亡する例が多い。受傷後早期にIVCフィルターを留置できる症例は、留置できるだけ状態がよいとも言える。そこにはかなりバイアスが入っていると思う。それは、72時間生存した症例、PE/DVTを合併している症例の死亡率が、IVCフィルター留置によって改善していないことからもわかる。

IVCフィルターはほとんど回収できておらず、長期的な問題(frcture、IVC外への突出、フィルター血栓など)もあるため、使用は慎重に検討しなければならない。