カテゴリー別アーカイブ: 血管疾患

ADDリスクスコアとDダイマーで大動脈解離を否定する

大動脈解離の診断は難しい。胸痛を訴える患者など、大動脈解離が鑑別にあがる状況で、全員にCTを撮るわけにはいかないし、CTのハードルが高いと見逃してしまう。

肺血栓塞栓症では、D-dimerが陰性であれば除外できるが、大動脈解離の場合はそうはいないない。感度が高い検査方法ではあるが、除外する目的では使えない(1)

ADDリスクスコアというものもあるが、これもそれだけでは大動脈解離を否定することには使えず、このスコアをIRAD databeseに当てはめると、大動脈解離2538例のうち108例 (4.3%) がlow risk (ADDリスクスコア=0) だった。

ADDリスクスコア
次の3つのカテゴリで、カテゴリ内の項目をひとつでも該当すれば1点とし、0−3点で評価する。
①マルファン症候群、大動脈疾患の家族歴、既知の大動脈弁疾患、既知の胸部大動脈瘤、大動脈の治療 (手術)
②突然、激痛、引き裂くような痛み
③血流障害 (脈拍の欠損、収縮期血圧の左右差、局所的な神経学的異常)、拡張期逆流性雑音、低血圧・ショック

ただし、ADDリスクスコアとD-dimerの組み合わせは、大動脈解離の除外に有用かもしれない。

Diagnostic Accuracy of the Aortic Dissection Detection Risk Score Plus D-Dimer for Acute Aortic Syndromes: The ADvISED Prospective Multicenter Study.
Circulation. 2018;137(3):250-258

2014年〜2016年に登録された、4ヶ国、6施設の前向き観察研究。

発症14日以内の胸痛、腹痛、背部痛、失神、灌流障害の症状・徴候で救急外来を受診した患者1850例が対象。ADDリスクスコアとD-dimerについて評価し、急性大動脈症候群 (AAS) があやしければCTA・TEE・MRAを行う。

これらの検査をしなかった患者、手術あるいは剖検によるASSの診断がついていない患者、ASSを除外された患者では、14日間のフォローアップを行う。本人または家族に電話をするか、再診外来にきてもらい、質問表に答えてもらう。

ASSの定義は、Stanford AとBの大動脈解離、大動脈壁在血腫 (IMH)、penetrating aortic ulcer (PAU)、大動脈破裂。確定診断は、CTA・TEE・MRA・手術・剖検により、ASSの所見が確認できること。

primary endpointは、ASSを除外する上での、ADDリスクスコア (0または≦1) とD-dimer陰性を組み合わせのfailure rate。

【結果】
1850例のうち、835例は画像検査が行われ、234例がAASであった。画像検査が行われなかった1015例は14日のフォローアップが行われ (lost follow up 2例)、うち30例で画像検査が行われ、AASは7例だった。

ADDリスクスコア=0 + D-dimer陰性
 感度:99.6% (97.7%-100%)
 特異度:18.2% (16.4%-20.2%)
 陽性的中率:15.4% (13.7%-17.3%)
 陰性的中率:99.7% (98.1%-100%)

ADDリスクスコア≦1 + D-dimer陰性
 感度:98.8% (96.4%-99.7%)
 特異度:57.3% (54.9%-59.7%)
 陽性的中率:25.8% (23%-28.7%)
 陰性的中率:99.7% (99.1%-99.9%)

【まとめと感想】
ADDリスクスコア≦1 + D-dimer陰性であれば、99.7%で急性大動脈症候群を除外できる。もちろん、対象となる集団が異なればこの数字は変わってくるわけだけど、否定できる根拠があると助かる。

(1) Ann Emerg Med 2015;65:32-42

近位深部静脈血栓症とカテーテル治療

DVTの慢性期には、下腿浮腫、色素沈着、うっ滞性皮膚潰瘍などの血栓後症候群(PTS)を合併することが知られており、急性近位深部静脈血栓症では約40%で発症すると言われている。そして、PTS予防には、静脈の開存、弁機能維持が重要と考えられている。

DVTの標準的治療は弾性ストッキングと抗凝固療法だが、カテーテル血栓溶解療法(CDT)を加えることにより、PTSの発症率を減少させることが期待されている。発症21日以内のDVTを対象としたCaVenT試験(1)では、CDT群で24ヶ月時点でのPTSが有意に減少した(NNT=7)。

このATTRACT試験は発症14日までのDVTを対象としており、CaVenT試験よりも、より早期の患者を対象としている。そして、PTSリスク低減のため、CDTに加え、血栓吸引・バルーン拡張・ステント留置といった機械的な治療も行うPCDT(pharmacomechanical CDT)も行われた。

Pharmacomechanical Catheter-Directed Thrombolysis for Deep-Vein Thrombosis.
N Engl J Med. 2017 Dec 7;377(23):2240-2252.

◇PICO
P:有症候性の近位深部静脈血栓症
I:標準治療+PCDT
C:標準治療のみ
O:6−24ヶ月でのPTS

両群ともに、長期の抗凝固療法、膝までの弾性ストッキングの着用を行う。血栓溶解薬はアルテプラーゼを用いる。

inclusion criteria:16−75歳、発症14日以内、大腿静脈・総大腿静脈・腸骨静脈の血栓
exclusion criteria:悪性腫瘍、血栓後症候群の既往

◇試験の概要
デザイン:RCT(オープンラベル)
地域:米国
登録期間:2009年12月〜2014年12月
観察期間:24ヶ月
症例数:692例(PCDT群336例、PCDT群355例)
解析:mITT解析
スポンサー:Boston Scientific社、Covidien社、Genentech社、BSN Medical社などから資金・薬剤・デバイスの提供あり

◇結果
PCDT群で11例割り付けられた治療が行われず、標準治療群で5例PCDTが行われた。

PCDT群 vs 標準治療群
▶︎primary endpoint
47% vs 48%(RR:0.96、95%CI:0.82−1.11)
PP解析・・・RR:0.94、95%CI:0.81−1.10

▶︎中等症〜重症の血栓後症候群
18% vs 24%(RR:0.73、95%CI:0.54−0.98)

▶︎10日以内の重大な出血
1.7% vs 0.3%(RR:6.18、95%CI:0.78-49.2)

◇まとめと感想
標準治療にPCDTを併用してもPTSの発症は抑えらず、PP解析でも有意な差は認めなかった。重大な出血に関しては有意差はないが、PCDT群で多い傾向であった。

CaVenT試験よりもPTS予防効果の期待できる対象(発症早期)、方法(PCDT)だったが、結果は期待したものではなく、CaVenT試験とも矛盾するものだった。

AHAガイドラインでは、CDT/PCDTの適応は、有痛性青股腫のような急性の循環不全をきたしている場合はclassⅠで、抗凝固療法下でも血栓の進展or症状の増悪がある場合や、出血リスクが低い患者に対するPTS予防に対してはclassⅡaで推奨している。そして、出血リスクが高い場合や発症21日以上経過している場合は、classⅢとなっている。

ATTRACT試験の結果を加味すると、CDT/PCDTは有痛性青股腫や、抗凝固療法下でも血栓の進展or症状の増悪がある場合に限った方がいいのかもしれない。

(1)Lancet 2012;379:31–38
(2)Circulation.2011;123:1788-1830

IVCフィルターは肺塞栓症を抑制するが、生命予後は改善せずDVTを増やす

Inferior Vena Cava Filters to Prevent Pulmonary EmbolismSystematic Review and Meta-Analysis
J Am Coll Cardiol. 2017;70(13):1587-1597

◇論文のPICOはなにか
P:PEの一次予防、または二次予防
I:IVCフィルターあり
C:IVCフィルターなし
O:肺塞栓症(PE)の発症率

<文献データベース>
MEDLINE、CENTRAL、ClinicalTrials.gov

<研究の選択>
・組み入れた研究:RCT、IVCの有無で比較した前向き観察研究
・期間:〜2016年10月3日
・ Inverse variance fixed-effects models

◇結果
▶︎PE

(本文から引用)

IVCフィルターの使用は、PEの発症低下と関連あり(オッズ比:0.50、95%CI:0.33-0.75、I2統計量=48%)

論文中にfunnel plotはないが、本文に”funnel plotで出版バイアスが示唆された”と記載あり。

RCTのみの解析でも、同様にIVCフィルターとPE発症率低下の関連あり(オッズ比:0.40、95%CI:0.23-0.69、I2=37%)。

▶︎PE関連死

(本文から引用)

観察研究では、出版バイアスのためかPE関連死は減少しているが、RCTでは有意差はない。

▶︎全死亡

(本文から引用)

全死亡では差がない。

▶︎DVT

(本文から引用)

DVTは増える。

◇まとめと感想
IVCフィルターの有効性を検証したRCTは多くない。その中でもっともサンプルサイズが大きいRCTがPREPIC1試験とPREPIC2試験である。このSRでは、PREPIC 1998、Mismetti 2015というのがそれである。

PREPIC1試験は、近位部DVTを抗凝固療法単独と抗凝固療法+IVCフィルターに割り付けたRCT。12日以内のPEは、IVCフィルターありで1.1%、なしで4.8%と有意に減少したが、2年のフォローアップで有意差はなくなり(3.4%vs6.3%)、DVTは有意に増え(20.8%vs11.6%)、全死亡に差はなかった(21.6%vs20.1%)。

じゃぁ、PEの発症早期だけIVCフィルターを入れておけば、PE再発を予防できDVTも増やさないのではないかという仮説が立つし、理になかっているように思われる。それに応えたのがPREPIC2試験。再発リスクの高いPEを対象に、抗凝固療法単独と抗凝固療法+回収可能型IVCフィルターに割り付け、回収可能型フィルターは3ヶ月後に抜去するというデザイン。抜去成功率は93.2%。

結果は、3ヶ月後のPEはIVCフィルターありで3.0%、なしで1.5%と、PE発症早期のみのIVCフィルター留置でもPEの再発を抑制できなかった。

ただ、IVCフィルターを回収していないPREPIC1試験の8年間のフォローアップでは、PEの再発が6.2%vs15.1%と再び有意差が付いている。多変量解析では、悪性腫瘍とIVCフィルター留置時のPEが予後因子だったので、それらの患者にはIVCフィルターの留置を考慮してもいいのかもしれない(ただし、生命予後には関係がなく、DVTは増える)。

SRでは、PREPIC1試験とPREPIC2試験のサンプルサイズ、イベント数が多く、その2つが大きなウエイトを占める。なので、それ以上の結果はでないのだが、結果としては、PEの一次予防と二次予防をまぜた集団で、IVCフィルターはPEの発症を減少させるが、PE関連死や全死亡は減らなかった。

【総説】深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症 Lancet

Deep vein thrombosis and pulmonary embolism
Lancet. 2016 Jun 30. [Epub ahead of print]

深部静脈血栓症(DVT)と肺血栓塞栓症(PE)、それは集合的に静脈血栓塞栓症(VTE)と言われ、世界的にみられる疾患である。DVTとPEの診断に役立つ検査は、臨床の決定のルールとDダイマー測定である。VTEらしくないDダイマーが陰性の患者では、画像と抗凝固療法を安全に差し控えることができる。それ以外の患者では、DVTを疑う場合は下肢静脈エコーを、PEを疑う場合にはCTを行うべきである。直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)は、ワルファリンより出血が少なく使用法も簡便であり、VTEに対する治療の第一選択薬である。血栓溶解療法は、血行動態が不安定なPEにのみ限定すべきである。抗凝固療法は、再発予防のために少なくとも3ヶ月は継続すべきで、VTEの原因が不明な場合や持続する要因による二次性の場合は、3ヶ月以上の抗凝固療法を考慮すべきである。

◇疫学
・世界中で年間1000万件
・血管疾患では、心筋梗塞、脳梗塞に続く3番目の多さ
・経済的負担は、米国では年間70−100億ドル
・年齢とともに増加し、80歳以上では100人に1人
・発症率 黒人>白人>アジア人
・リスクに男女差なし(妊娠とエストロゲン療法を除けば、男性は女性の2倍起こしやすい)
・VTEの30%は10年以内に再発する
・DVTの20−50%が血栓後症候群に、PEの0.1−4.0%が慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に
・VTEの1/3−1/2は原因不明
・強力なリスクファクターは手術、不動、悪性腫瘍
・大きな整形外科手術では、予防していても1%でVTEを発症する
・全VTE患者のうち、20%が悪性腫瘍、不動と手術は15%ずつ
・最も頻度が高い遺伝子変異は、第Ⅴ因子Leiden変異とプロトロンビン遺伝子変異(日本人にはみられない)

◇診断
臨床症状
・突然の呼吸困難、呼吸困難の増悪、胸痛、失神、めまい、頻脈、頻呼吸
・症状だけで診断は無理
・胸部レントゲン、心電図、血ガスでは特異的な所見なし
・症候性PEの70%にDVTあり
・症候性DVTの1/3に無症候性PEあり

臨床的なそれっぽさとDダイマー
このスコアがよく用いられる

・Wells’ score for deep vein thrombosis
  3点以上 ⇨ DVTらしい

・Wells’ score for pulmonary embolism
  original:5点以上 ⇨ PEらしい
  simplified:2点以上 ⇨ PEらしい

・Revised Geneva score for pulmonary embolism
  original:11点以上 ⇨ PEらしい
  simplified:5点以上 ⇨ PEらしい

・これだとVTEの除外には使えないので、Dダイマーも測定すること
・これらのスコアが低く、Dダイマーが正常値なら、その後の3ヶ月間でVTEを発症する確率は1%未満

・年齢とともにDダイマーは上昇する
・50歳以上の域値は、年齢×10μg/L
・500μg/Lを域値にしたときと比べ、同等の感度で特異度は高くなる

DVTの画像診断
・圧迫法による下肢静脈エコーがゴールドスタンダード
・鼠径から下腿まで描出し、全体を評価
・さらに鼠径と膝窩の圧迫法を行う
・1週間後に下腿のDVTが進展していないか再度エコーを行う
・骨盤内やIVCの血栓はCTもしくはMRIで評価する

PEの画像診断
・CT肺動脈造影がゴールドスタンダード
・腎機能障害、造影剤アレルギー、妊婦では肺換気血流シンチを

◇治療
抗凝固療法
・治療期間を3つに分ける
  急性期:発症5−10日まで
  維持期:3−6ヶ月まで
  延長期:それ以上
・急性期に使用できるのは、低分子ヘパリン、フォンダパリヌクス、未分画ヘパリン、経口Xa阻害薬(リバロキサバン、アピキサバン)
・未分画ヘパリンはAPTTをみて容量調整
・低分子ヘパリンは体重による容量設定で、モニタリングは不要
・安全性、有効性の面で未分画ヘパリンより低分子ヘパリンが好まれる
・腎機能障害(CCr<30ml/min)には低分子ヘパリンやフォンダパリヌクスより未分画ヘパリン
・ワルファリンは少なくとも5日間併用し、INRが2.0を超えたら、ヘパリンまたはフォンダパリヌクスは中止する
・INRは2.0−3.0で維持する
・ダビガトランとエドキサバンはヘパリンと5日間併用
・リバロキサバンとアピキサバンは併用しない
・高容量:リバロキサバンは3週間、アピキサバンは7日間
・DOACは大出血を39%減らした
・どのDOACがいいか明確なエビデンスなし
・中等度の腎機能障害にはダビガトランよりXa阻害薬
・高度の腎機能障害にはDOACよりワルファリン
・活動性の悪性腫瘍にはワルファリンより低分子ヘパリン
・活動性の悪性腫瘍で低分子ヘパリンとDOACは比較されていないので、低分子ヘパリンが第一選択(臨床試験が現在進行中)
・ワルファリンとDOACは胎児への悪影響になりえる
・ワルファリンは授乳婦には安全
・DOACは授乳婦にもダメ

外来治療
・血行動態が安定し死亡リスクが低いなら、外来での治療が可能
・30日死亡率はPESI(Pulmonary Embolism Severity Index)がlowなら1%、highなら11%

血栓溶解療法
・血行動態が不安定だと、死亡率は高い
・PEITHO試験では血行動態が安定した右室機能不全があるPEを対象とし、プラセボと比較し、死亡率は変わらず、大出血を9%、頭蓋内出血を2%増加させた
・腸骨大腿部の深部静脈血栓にはカテーテルによる血栓溶解療法を考慮(24ヶ月時点での血栓後症候群を減らすが、リスクベネフィット比は不明確)

下大静脈フィルター
・抗凝固療法の絶対的な禁忌には適応がある
・活動性の出血、適切な抗凝固療法下での再発
・IVCフィルターはPEの再発を減らさない
・恒久型より回収可能型フィルターが好ましい
・回収可能型は回収できないこともある

弾性ストッキング
・段階式弾性ストッキングは血栓後症候群を減らす
・しかし、RCTで膝までの段階式弾性ストッキングのベネフィットが示されなかった
・近位DVTでの下肢腫脹を抑えるためには考慮すべき

治療期間

・初回VTEなら3ヶ月は続ける
・原因不明のVTEの再発なら3ヶ月以上続ける
・初回のVTEで原因が不明なら3ヶ月の時点で再評価(Dダイマー+下肢近位部エコー、しかしこの有効性は不明)
・抗凝固療法中のDダイマーが繰り返し正常でも、中止1ヶ月後の再発率は3−7%
・活動性の悪性腫瘍だと抗凝固療法を行なっていても8%/6ヶ月の再発率
・下腿のみの血栓、亜区域性のPEの有病率や抗凝固療法のリスクベネフィットは議論がある

抗凝固療法の延長
・ワルファリン、アピキサバン、ダビガトランはプラセボより、VTE再発を80−90%減らすが、出血を2−5倍に増やす
・アスピリンもプラセボと比較し、30%再発を減らす
・抗凝固薬とアスピリンの出血リスクは同等だが、再発への有効性は抗凝固薬が高い
・アスピリンは代替薬にならない
・DOAC間の直接比較データはない

◇感想・コメント
Dダイマーのカットオフは0.5μg/mlだと思っていましたが、年齢調整したカットオフは同等の感度で特異度は高くなるというのは、初めて知りました。これは使えそうです。

失神に占める肺塞栓症の割合

Prevalence of Pulmonary Embolism among Patients Hospitalized for Syncope
N Engl J Med 2016; 375:1524-1531

《要約》
背景
失神のため入院した患者のうち、肺塞栓症の有病率は明らかではなく、現在のガイドラインではこれらの患者に対する肺塞栓症の精査については、ほとんど注意が払われていない。

方法
イタリアの11施設で、初回の失神で入院した患者を対象に、肺塞栓症に代わる失神の原因の有無に関わらず、肺塞栓症のシステマチックな精査を行った。臨床的に検査前確率が低い(Wellsスコアによる)ことと、Dダイマーが陰性であることで除外し、他のすべての患者にCTによる肺動脈造影もしくは肺換気血流シンチを行った。

結果
560例(平均年齢76歳)が試験に組み入れられた。330/560例(58.9%)が、臨床的に低い検査前確率とDダイマー陰性によって肺高血圧症が除外された。残った230例のうち、97例(42.2%)が肺塞栓症と特定された。全集団のうち、肺塞栓症の有病率は17.3%(95%CI14.2−20.5)であった。主肺動脈または葉動脈の肺塞栓症の所見、両肺の25%以上の血流欠損の所見は、61例に認めた。肺塞栓症以外で失神が説明可能である355例のうち45例(12.7%)で、失神の原因が特定されなかった205例のうち52例で、肺塞栓症を認めた。

結論
失神の初回のエピソードがあり入院した患者のうち、約6人に1人で肺塞栓症が特定された。

◇この論文のPICOは?
O:肺塞栓症
P:初回の失神のため入院した患者

失神の定義:突然発症の一過性の意識消失で、1分以内に自然に意識が回復すること。また、癲癇、脳梗塞、頭部外傷などの明らかな原因による一過性の意識消失は除外。

入院の理由:転落による外傷、重篤な併存疾患、原因不明の失神、心原性失神の可能性が高い

除外基準:失神歴があること、抗凝固療法を行っていた患者、妊娠

◇デザイン、対象
・横断研究
・失神を主訴にERを受診したのは、2584例
・診断がついたものなどを除いた560例(肺塞栓症の有病率が10−15%、αlevel0.05として、必要症例数は550例)が対象

◇結果
低い検査前確率、Dダイマー陰性:330/560例

230例のうち、
CTによる確定診断:72/180例
肺換気血流シンチによる確定診断:24/49例
剖検による確定診断:1/1例(肺動脈主幹部)

失神患者全体では、17.3%(97/560例)が肺塞栓症だった。

CTで診断した肺塞栓の血栓の部位は、
肺動脈主幹部30例(41.7%)
肺葉動脈18例(25.0%)
区域動脈19例(26.4%)
亜区域動脈5例(6.9%)

肺換気血流シンチで診断した肺塞栓症で血流の欠損は
50%以上が4例(16.7%)
26−50%が8例(33.3%)
1−25%が12例(50.0%)

characteristics
血圧・心拍数・呼吸数などのバイタルは結構重要。足の所見(発赤・腫脹)も確認すべき。

◇感想
失神を主訴にER受診した患者2584例のうち、97例(3.8%)は肺塞栓症を起こしている。見つかった肺塞栓が、必ずしも失神の原因かどうかはわからない。この試験では、問診とDダイマーからルーチンでCTもしくは肺換気血流シンチを行っているので、他の原因で失神した人にたまたま肺塞栓が見つかったっていう症例も含まれる。

肺塞栓症を疑う際の重要な所見は、呼吸数(>20回/分)、心拍数(>100回/分)、収縮期血圧(<110mmHg)、DVTの臨床所見(下肢の発赤・腫脹)など。Dダイマーももちろん測定すること。

近位深部静脈血栓症に対する弾性ストッキングは24ヶ月続けるのがベター OCTAVIA試験

One versus two years of elastic compression stockings for prevention of post-thrombotic syndrome (OCTAVIA study): randomised controlled trial
BMJ 2016;353:i2691

《要約》
目的
近位深部静脈血栓症を発症後、弾性ストッキングを12ヶ月着用することは24ヶ月着用することに対し非劣性であるか検証する。

デザイン
多施設、盲検化、非劣性、無作為化比較対照試験

セッティング
オランダの大学病院を含む8つの教育研究病院の外来

参加者
エコーで診断がついた症候性の深部静脈血栓症(DVT)を発症後、12ヶ月の弾性ストッキング着用に同意した患者

介入
DVT発症後、弾性ストッキングを12ヶ月で中止するか否か

アウトカム
主要評価項目は血栓後症候群(standardized Villalta scaleで評価)で、事前に定めた非劣性マージンは10%である。副次評価項目はQOL(VEINES−QOL/Sym)である。

結果
DVTの診断から1年が経ち、弾性ストッキングを着用していた血栓後症候群のない患者518例を、弾性ストッキングをもう1年継続するか、あるいは中止するかの2群に無作為化した。弾性ストッキング中止群では、51/256例(19.9%)で血栓後症候群を発症した。弾性ストッキング継続群では85%が弾性ストッキングを週に6−7日着用しており、34/262例(13.0%)で血栓後症候群を発症した。absolute differenceは6.9%(95%CIの上限:12.3%)。95%信頼区間の上限が事前に定めた非劣性マージン10%を超えたため、非劣性は証明できなかった。弾性ストッキングの静脈後血栓症に対するNNTは14(95%CIの下限は8)であった。QOLに群間差はなかった。

結論
近位DVTで1年間弾性ストキングの着用を継続した患者では、弾性ストッキングの着用を1年で中止することは、2年間の着用継続に対し非劣性ではなかった。

◇この論文のPICOはなにか
P:症候性で、エコーにより近位DVTと診断され、発症1年未満の患者
I:12ヶ月で弾性ストッキングの着用を中止する(弾性ストッキング中止群)
C:24ヶ月まで弾性ストッキングを着床する(弾性ストッキング継続群)
O:

inclusion criteria:膝窩静脈より近位のDVT、ガイドラインに準じて抗凝固療法を行っていること、弾性ストッキングclassⅢ(34−46mmHg)を着用していること、週に6日以上弾性ストッキングを着用していること
exclusion criteria:DVTの同側での再発、膝窩静脈より遠位にのみDVTを認めること、試験登録前でDVT発症後1年以内に血栓後症候群を発症している患者、Villalta score5点以上、初回のDVT発症前に弾性ストッキングを使用していること、動脈機能不全やアレルギーなどの弾性ストッキング禁忌、生命予後6ヶ月以内

◇baselineは同等か
characteristics
同等。約60%が外傷・手術・妊娠など一過性の原因。抗凝固療法は、DVT発症後10日ぐらいは低分子ヘパリンで、そのあとワルファリンで6ヶ月ほど。無作為化の際に抗凝固療法を行っていたのは約15%ほど。

◇結果
地域:オランダ
登録期間:2009年2月〜2013年9月
無作為化:online randomisation module provided by the Dutch Julius Centre for Health Sciences and Primary Care in Utrecht,th Netherlands,which ensured concealed allocation.
盲検化:study personnelは盲検化されているということなので、おそらくアウトカム評価者と解析者は盲検化されているはず。
必要症例数:516例(弾性ストッキング継続群で血栓後症候群で2−3%に血栓後症候群を発症、power80%、αlevel0.05、非劣性マージン10%、死亡やDVTの再発があることも加味し算出)
症例数:522例(弾性ストッキング中止群260例、弾性ストッキング継続群262例)
追跡率:489/522例(93.7%)
解析:mITT(弾性ストッキング中止群のうち4例がineligibleということで解析から外されている)
スポンサー:企業の関与あり(sanofi)

弾性ストッキング継続群ではアドヒアランスを把握できたのは218/262例(83.2%)であった。
result

◇感想
外傷、手術、妊娠・出産など一過性の原因については弾性ストッキングを使用しなくてもいいのではないかと思うが、それでも弾性ストッキングを12ヶ月で中止すると血栓後症候群が増えてしまっているので、弾性ストッキングを着用するなら少なくとも24ヶ月は続けておいたほうがよいということだろう。

外傷患者のIVCフィルターと死亡率

Association Between Inferior Vena Cava Filter Insertion in Trauma Patients and In-Hospital and Overall Mortality.
JAMA Surg. 2016 Sep 28. [Epub ahead of print]

《要約》
重要性
入院した外傷患者は出血と血栓症のリスクが増大している。これらの患者に対するIVCフィルターの使用が増えているが、その効果を示す十分エビデンスはない。

目的
外傷患者へのIVCフィルターの留置が死亡率に影響をもたらすか検証する。

デザイン、セッティング、患者
この後方視的コホート研究では、2003年8月1日から2012年12月31日の間にボストンメディカルセンターでIVCフィルターが留置された患者と、層別化しプロペンシティスコアがマッチした患者を組み入れた。IVCフィルターが留置された患者とマッチした対照では、年齢、性別、人種・民族、Injury Severity Score(ISS)を多変量回帰モデルを用いてプロペンシティスコアを算出した。マッチングは受傷日で層別化した。

アウトカム
両群の院内死亡率を比較するために、年齢、性別、人種・民族、ISS、head and neck Abbreviated Injury Scoreによる脳損傷の重症度を調整した多変量ロジスティック回帰分析を用いた。受傷後24,48,72時間後と退院時に、National Death Indexから得たすべての患者のcharacteristicsと死亡率を解析した。

結果
IVCフィルターを留置した外傷患者451例と、それとマッチしたIVCフィルターを留置していない対照1343例で、平均年齢は47.2±21.5歳であった。ISSの中央値は、全体では24(1−75)であった。受傷後24時間生存した患者の平均3.8年(0−9.4年)のフォローアップでは、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓症(PE)の存在とは独立して、IVCフィルターの有無で死亡率や死因に有意差はなかった。追加的な解析では、退院後6ヶ月と1年時点でも有意差はなかった。フォローアップ期間中、8%(38/451例)でIVCフィルターを抜去した。

結論
この研究では、IVCフィルターの有無では外傷患者の生存率に差はなかった。IVCフィルターの抜去率は低く、IVCフィルターを留置したままの患者では死亡率が上昇するめ、外傷患者へのIVCフィルターの使用は再度検証されるべき

◇この論文のPICOは?
P:外傷患者
I:IVCフィルターの留置あり
C:IVCフィルターの留置なし
O:死亡率

◇デザイン、対象、観察期間
・後ろ向き
・ロジスティック回帰、プロペンシティスコアマッチ
・1794例
・受傷からIVCフィルター留置まで平均3日
・観察期間:平均3.8年

characteristics
外傷なので40歳代後半と比較的若い。外傷スコアがどの程度のものかイメージできないが、平均で24なので結構重症の外傷みたい。

◇結果
全体でみると・・・
・院内死亡率  IVCフィルターあり vs なし
   5.5% vs 22% 、P<0.001

調整後オッズ比は6.5(95%CI:3.9−10.6)と有意にIVCフィルターなし群で高い。

しかし、重症な外傷ほど、それが原因で早期になくなってしまうので・・・
in-hospital-mortality
IVCフィルターなし群では受傷24時間以内に14.5%が、IVCフィルターあり群では0.2%が死亡した(死ななかったから留置できている)。72時間以上生存した症例では、IVCフィルターによる死亡率の改善はない。IVCフィルターが留置されるのは、受傷から平均で3日なので、IVCフィルターは死亡率を改善させないと考えていいだろう。

ちなみに・・・
mortality1
長期的な死亡率では有意差なし。

mortality2
肺塞栓症を起こしてる症例やDVTがある症例に限っても、IVCフィルターの有用性は認められない。

◇感想
重症な外傷患者では、外傷が原因で受傷後早期に死亡する例が多い。受傷後早期にIVCフィルターを留置できる症例は、留置できるだけ状態がよいとも言える。そこにはかなりバイアスが入っていると思う。それは、72時間生存した症例、PE/DVTを合併している症例の死亡率が、IVCフィルター留置によって改善していないことからもわかる。

IVCフィルターはほとんど回収できておらず、長期的な問題(frcture、IVC外への突出、フィルター血栓など)もあるため、使用は慎重に検討しなければならない。

IVCフィルターでは肺血栓塞栓症の再発は抑えられない

Effect of a retrievable inferior vena cava filter plus anticoagulation vs anticoagulation alone on risk of recurrent pulmonary embolism: a randomized clinical trial.
JAMA. 2015 Apr 28;313(16):1627-35.

《要約》
重要性
急性肺血栓塞栓症の患者に対し、抗凝固療法に加え回収可能型IVCフィルター留置することがよくあるが、そのベネフィットは不明確である。

目標
急性肺血栓塞栓症を発症し再発リスクが高い患者に対し、抗凝固療法+回収可能型IVCフィルターの安全性と有効性を評価すること。

デザイン、セッティング、参加者
無作為化、オープンラベル、エンドポイントを盲検化した臨床試験を行った。登録期間は2006年8月から2013年1月で、フォローアップは6ヶ月とした。重症度基準を1つ以上満たす深部静脈血栓症を有する急性症候性肺血栓塞栓症を、回収可能型IVCフィルター+抗凝固療法(IVCフィルター併用群200例)と抗凝固療法単独(抗凝固療法単独群199例)に割り付けた。

介入
すべての患者で少なくとも6ヶ月は抗凝固療法を行った。IVCフィルター併用群には、回収可能型IVCフィルターを留置した。フィルターの回収は留置から3ヶ月後に予定された。

主要なアウトカム
有効性主要評価項目は3ヶ月時点での症候性の肺血栓塞栓症の再発である。副次評価項目は6ヶ月時点での差肺血栓塞栓症の再発、症候性深部静脈血栓症、大出血、3ヶ月と6ヶ月時点での死亡、フィルター合併症である。

結果
IVCフィルター併用群では、193例でIVCフィルターの留置に成功し、3ヶ月時点で抜去が試みられた164例のうち153例で抜去に成功した。3ヶ月までに、肺血栓塞栓症の再発はIVCフィルター併用群で6例(3%、全例死亡)、抗凝固療法単独群で3例(1.5%、うち2例死亡)で認められた(フィルターの相対リスク2.00、95%CI0.51−7.89)。結果は6ヶ月の時点でも同様であった。他のアウトカムでも両群間に有意差はなかった。フィルター血栓症は3例で認められた。

結論
重症な急性肺血栓塞栓症患者では、抗凝固療法に加え回収可能型IVCフィルターを留置することは、肺血栓塞栓症の再発を減少させなかった。抗凝固療法で治療可能な患者に対しては、このタイプのフィルターの使用は支持できない。

◯この論文のPICOはなにか
P:深部静脈血栓症を有する急性肺血栓塞栓症
I:抗凝固療法に加え、回収可能型IVCフィルターの留置
C:抗凝固療法のみ
O:3ヶ月時点での致死的、もしくは症候性の肺血栓塞栓症の再発

inclusion criteria:18歳以上、下肢の深部もしくは表在静脈に血栓を有する急性症候性肺血栓塞栓症、重症基準をひとつ以上満たすこと(75歳以上、活動性悪性腫瘍、慢性心不全、慢性呼吸不全、脳梗塞による下肢麻痺、腸骨静脈の血栓、右室機能不全もしくは心筋障害)

右室機能不全もしくは心筋障害とは、右室拡大(右室/左室比0.9)、エコーでの肺高血圧(推定肺動脈圧40mmHg以上)、BNP・NT−proBNP・トロポニンI・トロポニンTの異常値と定義する。

exclusion criteria:抗凝固療法が行えない患者、適切な抗凝固療法にもかかわらず再発している患者、すでにIVCフィルターが留置されている患者、下大静脈に血栓がありIVCフィルターが留置困難な患者、3ヶ月以内に非悪性腫瘍の手術を行った患者、10日以内に悪性腫瘍の手術が行われた患者、造影剤アレルギー、血清Cr>2.04mg/dl、生命予後6ヶ月以内、妊娠

◯baselineは同等か
characteristics
慢性呼吸不全は有意にIVCフィルター併用群で多かった。

◯結果
地域:フランス
登録期間:2006年8月〜2012年7月
観察期間:6ヶ月
無作為化:中央割り付け(interactive voice response system)、ブロック無作為化、施設と血清Cr値で層別化
盲検化:試験の性質上、患者と治療介入者は盲検化できない。アウトカム評価者は盲検化されている。
必要症例数:各群200例(抗凝固療法単独群のイベント率が8.0%、IVCフィルターにより75%の相対リスク低下、power80%、αlevel0.05として算出)
症例数:IVCフィルター併用群200例、抗凝固療法単独群199例と必要症例数をほぼ満たしている。
追跡率:IVCフィルター併用群198/200例(99%)、抗凝固療法単独群190/199例(95.4%)
解析:ITT解析
スポンサー:IVCフィルターはALN Implants Chirurgicauxより提供。

IVCフィルター併用群200例のうち、195例でIVCフィルターの留置が試みられ、193例で留置に成功。そして、3ヶ月時点でフォローアップされている180例のうち、164例でIVCフィルターの抜去が試みられ、153例(93.3%)で成功している。一方、抗凝固療法単独群では6例でIVCフィルターが留置された(4例は侵襲的処置や手術のため、2例は抗凝固療法による出血のため)。

result

antithrombotic-therapy

◯感想/批判的吟味
・PEの再発律が想定(8.0%)よりかなり低い。
・近位部DVTは70%で、残りの30%は遠位もしくは表在なので、近位の症例に絞った方が良かったのでは。
・慢性期の抗凝固療法として、フォンダパリヌクスが使われており、日本の状況とは異なる。
・NOACは使用されていない。
・ワルファリンのTTRは60%ほどでコントロールが良いとは言えないが、それでもPEの再発は、この程度しか起きていない。
・IVCフィルターが回収できない症例が存在し、より長期で問題になる可能性がある。

下肢静脈血栓が残存する肺血栓塞栓症において、抗凝固療法に加えIVCフィルターを留置しても、PEの再発は抑制できない。

急性内科疾患での深部静脈血栓症予防 ベトリキサバンの効果

Extended Thromboprophylaxis with Betrixaban in Acutely Ill Medical Patients.
N Engl J Med. 2016 May 27. [Epub ahead of print]

《要約》
背景
急性内科疾患の患者は、長期にわたり静脈血栓症のリスクにさらされている。

方法
急性内科疾患で入院した患者を、エノキサパリン皮下注+ベトリキサバンのプラセボの内服(エノキサパリン群)と、エノキサパリンのプラセボの皮下注+ベトリキサバン内服(ベトリキサバン群)の2群に無作為に割り付けた。エノキサパリン、またはそのプラセボの投与期間は10±4日、実薬の投与量は40mg1日1回とした。また、ベトリキサバン、またはそのプラセボの投与期間は35−42日で、実薬の投与量は80mg1日1回とした。事前に定めた3つのコホート、コホート1:Dダイマーの上昇した患者、コホート2:Dダイマーが上昇した患者または75歳以上の患者、コホート3:登録した全患者、について解析した。いずれの解析でも群間差がない場合、他の解析を考慮することを解析計画で明記した。有効性主要評価項目は無症候性の近位深部静脈血栓症(DVT)と症候性静脈血栓症である。安全性主要評価項目は大出血である。

結果
7513例を無作為化した。コホート1では、有効性主要評価項目は、ベトリキサバン群で6.9%、エノキサパリン群では8.5%であった(ベトリキサバン群の相対リスク0.81、95%CI:0.65−1.00、P=0.054)であった。コホート2では、ベトリキサバン群5.6%、エノキサパリン群7.1%で相対リスクは0.80(95%CI:0.66−0.98)であった。コホート3では、ベトリキサバン群5.3%、エノキサパリン群7.0%で相対リスクは0.76(95%CI:0.63−0.92)であった。全患者で大出血は、ベトリキサバン群で0.7%、エノキサパリン群で0.6%であった(相対リスク1.19、95%CI:0.67−2.12)。

結論
Dダイマーが上昇した急性内科疾患患者では、期間を延長したベトリキサバン投与と、エノキサパリンの標準的なレジメンに有意差はなかった。しかしながら、事前に示した予備的な解析では、2つのより大きい集団でベトリキサバンのメリットが示された。

◯この論文のPICOはなにか
P:急性内科疾患で96時間以上入院している患者
I:エノキサパリンのプラセボの皮下注+ベトリキサバン内服(ベトリキサバン群)
C:エノキサパリン皮下注+ベトリキサバンのプラセボの内服(エノキサパリン群)
O:有効性主要評価項目は、32−47日目に認められた無症候性近位部深部静脈血栓症、1−42日目に起こった症候性の近位部または遠位部深部静脈血栓症、症候性肺血栓塞栓症、静脈血栓症による死亡の複合エンドポイント。安全性主要評価項目は薬剤投与中止7日までに起こる大出血。

procedure:エノキサパリン、またはそのプラセボは、10±4日間投与し、実薬の投与量は40mg1日1回である。ベトリキサバン、またはそのプラセボは、35−42日間投与し、実薬の投与量は80mg1日1回(初回投与量は160mg)である。

inclusion criteria:40歳以上、診断された急性内科疾患(心不全、呼吸不全、感染症、リウマチ疾患、虚血性脳梗塞)

◯baselineは同等か
同等。
characteristics

◯結果
地域:35カ国、460施設
登録期間:2012年3月〜2015年11月
観察期間:47日間
無作為化:地域による置換ブロック法、層別化。interactive voice-response systemを用いる。
盲検化:患者、治療介入者、outcome評価者は盲検化されている。
必要症例数:本文に記載なし
症例数:7513例(ベトリキサバン群3759例、エノキサパリン群3754例)
追跡率:outcomeが不明な患者は、ベトリキサバン群では609例、エノキサパリン群では546例であった。
解析:1回でも薬剤を投与されたものを解析に含めるmITT解析(ベトリキサバン群3721例、エノキサパリン群3720例)
スポンサー:企業の関与あり(Portola Pharmaceuticals)

result

◯感想/批判的吟味
・脱落が少なくない
・途中でプロトコールの変更あり(よりハイリスクな症例を集めるため、Dダイマー上昇、75歳以上を組み入れ基準に加えた)
・途中で解析方法の変更あり
・コホート1でベトリキサバンの優位性が認められればコホート2、3での優位性を解析をすると定められているが、そもそもコホート1でベトリキサバンの優位性が確認されていない(よりハイリスクな集団だとベトリキサバンの効果が認められやすいと考えた様。power不足だと考察されている)
・この試験ではエノキサパリンが用いられているが、日本では未分画ヘパリンを使用することが一般的。医療経済的にはどうなのか気になるところ。ヘパリンは安いし、ヘパリンを使用していてVTEで苦労したという経験はない(無症候性VTEに気づいていないだけかもしれないが)

ベトリキサバンは、急性内科疾患においてエノキサパリンよりもVTE予防効果に優れる。アピキサバン(ADOPT試験)やリバロキサバン(MAGELLAN試験)では、エノキサパリン標準療法よりも有意に大出血を増やしたが、ベトリキサバンでは大出血の有意な増加はなかった。

原因不明の静脈血栓塞栓症(VTE) 悪性腫瘍検索のためのCTはメリットなし

Screening for Occult Cancer in Unprovoked Venous Thromboembolism.
N Engl J Med. 2015 Aug 20;373(8):697-704

《要約》
背景
静脈血栓塞栓症(VTE)は悪性腫瘍の最も早期の兆候である可能性がある。現在、原因不全のVTEに対する悪性腫瘍のスクリーニングは多岐にわたる。初回の原因不明のVTEに患者において、腹部骨盤の広範囲のCTが悪性腫瘍のスクリーニングに有効かどうかを評価した。

方法
カナダで多施設、open-label、無作為化対照試験を行った。悪性腫瘍の限定的な検索をおこなう群(採血、胸部レントゲン、乳がん・子宮頸がん・前立腺癌のスクリーニング)とCTまで行う群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、1年間のフォローアップ期間で、見逃した悪性腫瘍を発見することである。

結果
854例を無作為化した。1年間のフォローアップ期間で悪性腫瘍の診断がついたのは、限定的スクリーニング群で14/431例(3.2%)、CT併用群で19/423例(4.5%)であった。主要評価項目解析では、悪性腫瘍の見逃しが限定的スクリーニング群では4例(29%)、CT併用群では5例(26%)であった(P=1.0)。悪性腫瘍の診断までの時間(限定的スクリーニング群vsCT併用群:4.2vs4.0ヶ月、P=0.88)や悪性腫瘍関連死(1.4%vs0.9%、P=0.75)に群間差はなかった。

結論
初回の原因不明のVTEでは、悪性腫瘍の合併は少ない。ルーチンに腹部と骨盤のCTを撮ることには、臨床的な有益性はなかった。

◯この論文のPICOはなにか
P:初回の原因不明のVTE
I:限定的スクリーニングに加えて腹部と骨盤のCTを行う(CT併用群)
C:限定的スクリーニングのみ行う
O:1年のフォローアップ期間で見逃した悪性腫瘍の発見率

inclusion criteria:近位部下肢静脈あるいは肺塞栓症、もしくはその両方
exclusion criteria:18歳未満、同意が得られない、造影剤アレルギー、CCr<60ml/min、閉所恐怖症、広場恐怖、体重>130kg、潰瘍性大腸炎、緑内障

原因不明のVTEの定義
以下のいずれもないこと。活動性の悪性腫瘍、妊娠、栓友病、原因不明のVTEの既往、麻痺、不全麻痺、下肢の安静、大手術

限定的スクリーニングとは
病歴の聴取と身体診察、血算、Cr、電解質、肝機能検査、胸部レントゲン、乳房の診察とマンモグラフィー(50歳以上の女性)、子宮頸部のパパニコロー検査(性的活動のある18−70歳の女性)、PSA測定(40歳以上の男性)

◯baselineは同等か
同等。以下、ざっくりと。
年齢54歳、男性70%、白人90%、悪性腫瘍の既往5%、2/3が深部静脈血栓症、1/3が肺血栓塞栓症、両者の合併が1/8、ピル5%、エストロゲン2%

◯結果
地域:カナダ
登録期間:2008年10月〜2014年4月
観察期間:1年間
無作為化:その方法についての記載なし
盲検化:open-label(otcome評価者の盲検化についての記載なし)
必要症例数:862例(VTE発症時の悪性腫瘍診断率6%、1年後の悪性腫瘍診断率10%、CTによる診断3%(相対リスク低下75%)、power80%、αlevel0.05、プロトコール逸脱もしくはフォローアップ不能8%)
症例数:862例(限定的スクリーニング群423例、CT併用群431例、不適切な症例の登録8例)
追跡率:96.3%(限定的スクリーニング群96.5%、CT併用群96.1%)
解析:ITT解析(randomization後に不適切な症例8例を除外しているため、厳密にはmITT)
スポンサー:企業の関与なし

result
(本文より引用)

◯感想/批判的吟味
VTEに合併した悪性腫瘍のスクリーニングには、ルーチンで腹部・骨盤のCTをとる必要がないという結果。診断をする際のCTで、骨盤から下肢まで撮ってしまうことも多いので、自分のプラクティスに当てはめると腹部まで撮る必要はないといったところでしょうか。ただ、この試験と異なり子宮頸部の細胞診はルーチンではやっていないため、考慮してもいいのかもしれません。

この研究では、どの悪性腫瘍も満遍なくといった感じですが、膵臓、脳、肺、卵巣でVTE合併が多いという報告はあるようです。